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審決分類 |
審判 全部申し立て B32B 審判 全部申し立て B32B |
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管理番号 | 1020863 |
異議申立番号 | 異議1999-74653 |
総通号数 | 14 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案決定公報 |
発行日 | 2001-02-23 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1999-12-03 |
確定日 | 2000-05-31 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第2596796号「後塩素化塩化ビニル樹脂複合板」の実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第2596796号の実用新案登録を維持する。 |
理由 |
1.本件登録実用新案 本件請求項1に係る登録考案(以下、「本件考案」という)は、本件実用新案登録明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。 「塩素化率が62-65%、塩素化前の平均重合度が500-800である中層と、塩素化率が58-62%、塩素化前の平均重合度が800-1000である表層とからなる後塩素化塩化ビニル樹脂複合板。」 2.申し立ての概要 実用新案登録異議申立人内田照和は、甲第1号証(実願平2-39802号(実開平4-531号)のマイクロフィルム)、甲第1号証の1(特公昭45-30833号公報)、甲第2号証(実公平3-1250号公報)、甲第3号証(実願昭61-14339号(実開昭62-126932号)のマイクロフィルム)、甲第4号証(特開平3-243333号公報)及び甲第5号証((社)近畿化学協会ビニル部会、「ポリ塩化ビニル -その基礎と応用-」、日刊工業新聞社、昭和63年10月25日、168-170頁)を提出し、 [主張1] 本件考案のうち中層の塩素化率が62%、塩素化前の平均重合度が800、表層の塩素化率が62%、塩素化前の平均重合度が800である場合のものは、甲第1号証に記載された考案であるから、本件請求項1に係る実用新案登録は、実用新案法第3条第1項第3号の規定に該当しているにもかかわらず登録されたものであり、そうでないとしても、甲第1及び5号証に記載された考案から当業者が極めて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項に違反して登録されたものであるので、取り消されるべきであり、 [主張2] 本件考案は、甲第2ないし5号証に記載された考案から当業者が極めて容易に考案をすることができたものであるから、本件請求項1に係る実用新案登録は、実用新案法第3条第2項に違反して登録されたものであるので、取り消されるべきであると主張している。 3.実用新案登録異議申立人の主張についての検討 (1)甲第1-5号証には、下記の事項が記載されている。 1)甲第1号証 ア.「塩素化塩化ビニル樹脂からなる芯層の両側にマイカが添加された塩化ビニル樹脂からなる剛性付与層を介して塩化ビニル樹脂からなる表面層が一体的に積層されていることを特徴とする耐熱高剛性樹脂積層板」(第1頁、実用新案請求の範囲第1項)、 イ.「この考案において芯層に用いられる塩素化塩化ビニル樹脂は、一般的には塩素含有率が60-70%、平均重合度300-1500程度のものが好適に用いられる」(第4頁、10-13行)、 ウ.「先ず、芯層用材料として塩素含有率65%の塩素化塩化ビニル樹脂を用い、カレンダー成形により厚さ0.5mmの芯層用シート(2a)を得た。」(第8頁下から2行-第9頁2行)、 エ.「なお、比較例として、・・芯層用シート(2a)のみ・・を用いてそれぞれ厚さ10mmの各積層板(No.6、7、8)を作成」(第10頁、8-11行)、 2)甲第1号証の1 オ.「1.1 配合 塩素化ポリ塩化ビニル及び他の配合剤を・・混合する」(第9頁、左欄、14-17行)、 カ.「1.2 混練 上記コンパウンド・・厚さ約0.5mmのシートを得る」(第9頁、左欄、18-21行)、 キ.「3.1 板 上記1.2項で得られたシートを190℃35kg/cm^(2)(ゲージ圧)の成形温度及び成形圧条件下に10分間加熱圧縮し、得られた板をJIS K 6742に規定された寸法(長さ15mm、幅10mm、厚さ2mm)に仕上げた試験片を試料とする」(第9頁、左欄、37-43行)、 3)甲第2号証 ク.「厚味が3-20mmの塩素化塩化ビニール板を芯材とし、その片面もしくは両面に硬質塩化ビニール板を熱溶着してなる硬質塩化ビニール複合板」(第1頁、実用新案登録請求の範囲) 4)甲第3号証 ケ.「硬質塩化ビニル板を芯材とし、少なくともその片面に塩素化塩化ビニル板を熱溶着してなる塩化ビニル複合板」(第1頁、実用新案登録請求の範囲) 5)甲第4号証 コ.「熱可塑性樹脂を押し出して内層管を成形し、該内層管の外面に多数のフィラメントよりなる補強繊維に熱可塑性樹脂が保持されてなる繊維複合体を巻回あるいは囲ぎょうして融着せしめる繊維強化熱可塑性樹脂管・・前記内層管を塩素化塩化ビニル樹脂を用いて成形し、前記繊維複合体を構成する熱可塑性樹脂として、前記内層管を形成する塩素化塩化ビニル樹脂よりも塩素含有率が低い塩素化塩化ビニル樹脂を用いる」(第1頁、特許請求の範囲)、 6)甲第5号証 サ.「塩素化ポリ塩化ビニル(CPVC)は、塩素含量(Cl%)が56.8%であるポリ塩化ビニル(PVC)を原料に、塩素(Cl_(2))を反応させて製造される。Cl含量60-70%のCPVCが日本では実用に供せられている。用いられるPVCの平均重合度は500-1,400である。」(第168頁、5-8行) (2)主張1について 1) 実用新案登録異議申立人は、上記記載事項イ、ウ及びエを考慮すれば甲第1号証に塩素含有率が60-70%、平均重合度300-1500の塩素化塩化ビニル樹脂の積層板が記載されているので、甲第1号証には、本件考案において中層、表層ともに塩素化率が62%で塩素化前の平均重合度が800である特定の後塩素化塩化ビニル樹脂を積層した後塩素化塩化ビニル樹脂複合板が記載されているという旨の主張(実用新案登録異議申立書、第3-4頁、「1.甲第1号証」の項)をしている。 記載事項イには「この考案において・・」とあるから、記載事項イの点は、甲第1号証の実用新案登録請求の範囲に記載の考案の「塩素化塩化ビニル樹脂からなる芯層の両側にマイカが添加された塩化ビニル樹脂からなる剛性付与層を介して塩化ビニル樹脂からなる表面層が一体的に積層されていることを特徴とする耐熱高剛性樹脂積層板」(上記記載事項ア参照)の芯層に用いられる塩素化塩化ビニル樹脂の塩素含有率及び平均重合度の好ましい範囲に関するものである。 これに対し記載事項エには「なお、比較例として、・・」とあるから、記載事項エの点は、比較例に関するものであってNo.7として塩素含有率65%の塩素化塩化ビニル樹脂からなる芯層部分のみを積層した積層板が単に示されているだけである。 したがって、甲第1号証の実用新案登録請求の範囲に記載の考案における芯層の塩素含有率及び平均重合度に関する記載(記載事項イ)は、芯層と表層の3層からなる積層板においてその芯層の塩素含有率及び平均重合度の好ましい範囲を示しているだけであって、該芯層部分のみを積層してなる積層板における塩素含有率及び平均重合度の好ましい範囲については何ら示唆するものでないから、甲第1号証に塩素含有率が60-70%、平均重合度300-1500の塩素化塩化ビニル樹脂の層のみからなる積層板に係る考案が記載されているとすることはできないし、ましてや、本件考案に係る中層、表層ともに塩素化率が62%で塩素化前の平均重合度が800である特定の後塩素化塩化ビニル樹脂を積層した後塩素化塩化ビニル樹脂複合板について示唆するところは何もない。 また、甲第1号証の1の記載を参酌したとしても、甲第1号証の1には、塩素化塩化ビニル樹脂の積層板が記載されているだけであるから、甲第1号証には、本件考案に係る中層、表層ともに塩素化率が62%で塩素化前の平均重合度が800である特定の後塩素化塩化ビニル樹脂を積層した後塩素化塩化ビニル樹脂複合板について記載されていると認めることはできない。 2) 実用新案登録異議申立人は、甲第1号証と甲第5号証に記載された考案から塩素含有率が60-70%、塩素化前の平均重合度500-1400の塩素化塩化ビニル樹脂の積層板を当業者が極めて容易に考案することができるから、結局当業者であれば甲第1号証と甲第5号証に記載された考案に基づいて本件考案において中層、表層ともに塩素化率が62%で塩素化前の平均重合度が800である特定の後塩素化塩化ビニル樹脂を積層した後塩素化塩化ビニル樹脂複合板を極めて容易に考案することができるとも主張している。 甲第1号証には、その実用新案登録請求の範囲に記載されている考案である芯層と表層を有する積層板については芯層の塩素含有率及び塩素化前の平均重合度の好ましい範囲が記載されているが、これは芯層部分のみを積層した積層板の塩素含有率及び塩素化前の平均重合度の好ましい範囲を示すものではない。 一方、甲第5号証には、後塩素化塩化ビニル樹脂の製造方法とその工業板について、及び、これに関連して後塩素化塩化ビニル樹脂の塩素含有率及び塩素化前の平均重合度の一般的な値についての記載があるだけに過ぎない。 したがって、甲第1及び5号証のいずれにも本件考案において中層、表層ともに塩素化率が62%で塩素化前の平均重合度が800である特定の後塩素化塩化ビニル樹脂を積層した後塩素化塩化ビニル樹脂複合板について記載も示唆もない。 よって、上記主張1は採用することができない。 (3)主張2について また、実用新案登録異議申立人は、甲第2-5号証に記載された考案に基づいて本件考案に係る後塩素化塩化ビニル樹脂複合板を当業者が極めて容易に考案することができると主張している。 しかしながら、甲第2又は3号証に記載の考案は、塩素化塩化ビニル樹脂と塩化ビニル樹脂を積層したものであるから、後塩素化塩化ビニル樹脂同士を積層した複合板である本件考案を何ら示唆していないし、甲第4号証に記載の考案は、積層板ではなく管である点で本件考案と相違している上に、内層管の塩素化塩化ビニル樹脂に積層しているのは繊維複合体であって塩素化塩化ビニル樹脂ではない点でも相違しているから、後塩素化塩化ビニル樹脂同士を積層した複合板である本件考案を何ら示唆していない。 本件考案は、塩素化率が62-65%、塩素化前の平均重合度が500-800である中層と、塩素化率が58-62%、塩素化前の平均重合度が800-1000である表層とからなる後塩素化塩化ビニル樹脂複合板という甲第1-5号証に記載のない構成を有することによって、加工性に優れるとともに耐薬品性にも優れるという効果を奏する。 よって、上記主張2も採用することができない。 4.むすび 以上のとおりであるから、実用新案登録異議申立の理由及び証拠によっては本件請求項1に係る実用新案登録を取り消すことはできない。 また、他に、本件請求項1に係る実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論の通り決定する。 |
異議決定日 | 2000-05-09 |
出願番号 | 実願平5-63679 |
審決分類 |
U
1
651・
121-
Y
(B32B)
U 1 651・ 113- Y (B32B) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 芦原 ゆりか |
特許庁審判長 |
石橋 和美 |
特許庁審判官 |
藏野 雅昭 藤井 彰 |
登録日 | 1999-04-16 |
登録番号 | 実用新案登録第2596796号(U2596796) |
権利者 |
三菱樹脂株式会社 東京都千代田区丸の内2丁目5番2号 |
考案の名称 | 後塩素化塩化ビニル樹脂複合板 |