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審決分類 審判 全部申し立て   E04F
管理番号 1020868
異議申立番号 異議1997-73763  
総通号数 14 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2001-02-23 
種別 異議の決定 
異議申立日 1997-08-05 
確定日 2000-04-12 
異議申立件数
事件の表示 登録第2525284号「建築用セラミックパネル」に係る実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 実用新案登録第2525284号の実用新案登録を取り消す。
理由 第一 手続の経緯について
実用新案登録第2525284号の請求項1に係る考案は、平成2年8月31日に実用新案登録出願され、平成8年11月7日に登録がなされ、その後、吉田義男、ナショナル住宅産業株式会社及び井上薫より実用新案登録異議の申立てがなされた。そして、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成10年7月31日に訂正請求がなされた後、訂正拒絶理由が通知されたものである。なお、この訂正拒絶理由の通知に対して、実用新案権者は意見書を提出している。

第二 訂正の適否について
一 訂正明細書の請求項1に係る考案
訂正明細書の請求項1に係る考案は、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された、下記のとおりのものと認められる。
「表面積が約0.25m^(2)を越える大型のセラミック板と、下地板とが、厚さが約1?約3mm、剪断弾性係数が約2?約10Kg/cm^(2)の弾性接着剤を介してセラミック板裏面の面積の少なくとも約50%において接着されている建築用セラミックパネル。」(以下、「本件訂正考案」と言う。)

二 引用刊行物記載の考案
本件訂正考案に対して、当審で通知した訂正拒絶理由において、下記の刊行物1及び2が引用されている。

1 刊行物1:特開平2-157348号公報
刊行物1には、
a.「パネル基板に、変成シリコン樹脂を含む弾性を有する接着剤層でもってタイルを接着したことを特徴とするタイル貼りパネル。」(特許請求の範囲)
b.「この発明は、建物の外壁などに用いられるタイル貼りパネルに関するものである。」(同公報1頁下段左欄16,17行)
c.「[課題を解決するための手段]
この発明は上記課題を解決するためにその構成を、パネル基板に、変成シリコン樹脂を含む弾性を有する接着剤層でもってタイルを接着したことを特徴とするタイル貼りパネルにある。
[作用]
この発明によれば、変成シリコン樹脂を含む弾性を有する接着剤層でもってタイル接着しているから、パネルに衝撃や振動が加わっても、これを弾性を有する接着剤層が吸収、緩衝してタイルが剥がれ落ちるのを防止する。
また、変成シリコン樹脂を含む弾性を有する接着剤層の一層のみでタイルを接着することが可能であるから、接着作業が簡単になり、しかもコストが低いものになる。」(同公報2頁上段左欄10行?右欄4行)
d.「接着剤層3の厚みとしては、150ミクロン以上が好ましく、更に好ましくは190?475ミクロンである。」(同公報2頁下段右欄6?8行)
e.「他は実施例1と同様にして、タイル4を接着した。タイル4は強固に接着され、接着剤層3の物性は、せん断応力度が2.9Kg/cm^(2)、弾性限界時のせん断歪みが0.51であった。」(同公報3頁上段左欄13?16行)
f.「例えば実施例では小型のタイルを接着したが、大型の陶板タイルを接着してもよい。」(同公報3頁上段右欄4?6行)
g.「[発明の効果]
この発明のタイル貼りパネルは、上述の通りの構成とされているので、変成シリコン樹脂を含む弾性を有する接着剤層が、パネルに衝撃や振動が加わっても、これを吸収、緩衝してタイルが剥がれ落ちるのを防止し、タイルの接着力が大きく、衝撃に強いものになっている。
また、この発明のタイル貼りパネルは、変成シリコン樹脂を含む弾性を有する接着剤層の一層のみでタイルを接着することが可能であるから、接着作業が簡単になり、コストも低いものになる。
この発明のタイル貼りパネルは、衝撃に強いものになっているから、予め工場生産する建物ユニットの外壁や戸などのパネルとして用いても、輸送時等の振動、衝撃にも耐えられる有効なものとなっている。」(同公報3頁上段右欄7行?下段左欄3行)
の記載があり、上記a?gの記載からみて、
「大型の陶板タイルと、パネル基板とが、厚さが約0.19?0.475mm、剪断弾性係数が約5.69Kg/cm^(2)の弾性接着剤を介して接着されている建築用タイル貼りパネル」(以下、「刊行物1記載の考案」と言う。)
が記載されているものと認める。

2 刊行物2:「総合建築N0.209[接着工法によるわが国初の大型セラミックの壁面設計]」(第122?126頁、昭和63年1月15日発行、株式会社建築資材社)
刊行物2には、
a.「2.外装材に大型セラミック採用
・・・そこに耐用年数が長く、メンテナンスフリーで施工に手間のかからない大型セラミックが浮上して来た。」(同122頁左欄17行?右欄11行)
b.「3.大型セラミック用セメダイン弾性接着剤の開発
・・・裏足のない600mm角以上の大型セラミックの壁面取付け接着施工・設計にはこれ以外にも重要な要因があり、それを解明し適応した接着剤が、すなわち新しい弾性接着剤であろう。」(同122頁右欄25行?123頁左欄4行)
c.「4.聖蹟桜ヶ丘京王百貨店の実施例
・・・当件が外壁用大型セラミックタイルの接着施工の実用化第1号となったもの。」(同124頁左欄下より4行?右欄12行)
d.「5.接着施工と設計
塗布方法
塗布にはビード塗布と全面塗布があり今回はビード塗布を活用した。」(同125頁左欄1?4行)
e.図-3の「〔PM-100塗布断面図〕(同125頁)
f.「施工留意事項 内装壁貼り付け施工の基準仕上げ寸法」の欄における、「被着材貼合せのセメダインPM-100の厚さは弾性接着効果を維持するために必ず1mm以上とする。」、さらに、「4.・・・上図は、600mm幅のタイルと、下地材貼合せ後の弾性接着剤PM-100塗布位置である。」、及び図面(同125、126頁)
の記載があり、上記a?fの記載等からみて、
「表面積が約0.25m^(2)を越える大型のセラミック板と、下地材とが、厚さが約1mmの弾性接着剤を介してセラミック板裏面において接着されている点」(以下、「刊行物2記載の考案」と言う。)
が記載されているものと認める。

三.対比・判断
1 本件訂正考案と刊行物1記載の考案との対比
本件訂正考案と、刊行物1記載の考案とを対比すると、刊行物1記載の考案における、「大型の陶板タイル」及び「パネル基板」は、本件訂正考案における、「大型のセラミック板」及び「下地板」に相当し、両者は、下記の相違点1?3を除いて、その余の点で一致している。
相違点1
本件訂正考案では、表面積が約0.25m^(2)を越える大型のセラミック板を使用した建築用セラミックパネルであるのに対し、刊行物1記載の考案では、大型の陶板タイルを使用した建築用タイル貼りパネルである点。
相違点2
本件訂正考案では、弾性接着材の厚さが、約1?約3mmであるのに対し、刊行物1記載の考案では、厚さが約0.19?0.475mmである点。
相違点3
上記相違点1に関連して、本件訂正考案では、弾性接着剤を介してセラミック板裏面の面積の少なくとも約50%において接着されているのに対し、刊行物1記載の考案では、特に、このような明示がない点。

2 相違点に対する判断
(1) 相違点1及び2について
前記の刊行物2記載の考案によると、「表面積が約0.25m^(2)を越える大型のセラミック板と、下地材とが、厚さが約1mmの弾性接着剤を介してセラミック板裏面において接着されている点」が記載されている。
又、本件訂正考案は、「建築用の壁パネルに関する」ものであるが、刊行物1記載の考案も、「建物の外壁などに用いられるタイル貼りパネルに関するもの」であって、「建築用の壁パネル」に関するものであり、さらに、刊行物2記載の考案は、外装材を「壁面接着取付け」するものに関し、それぞれは同一の技術分野に関するものである。
してみると、刊行物1記載の考案における「大型の陶板タイル」として、刊行物2記載の考案におけるような、大型のセラミック板を採用するとともに、その接着に際し、弾性接着剤の厚さを、刊行物2記載の考案におけるように構成することに格別の困難性はなく、このようなことは当業者がきわめて容易になし得た程度のことである。
(2) 相違点3について
刊行物2の上記d?fの記載によると、接着剤の塗布にあたり、「ビード塗布を活用した」とし、弾性接着剤が「セラミック板裏面の面積の少なくとも約50%において接着されている」との明示はされてはいない。しかし、同時に、刊行物2には、「塗布にはビード塗布と全面塗布があり」との記載もある。
してみると、セラミック板裏面に弾性接着剤をどのような態様で塗布するか、換言すれば、その裏面にビード塗布するのか、全面塗布するのか、又は、その裏面の面積のどの程度の割合を塗布するのかは、例えば、セラミック板の大きさ、重量等、さらには支持材(板)との関係等を考慮して決定されるべきことであり、適宜に選択し得る設計的事項に過ぎない。
結局、相違点3におけるようなことは、当業者がきわめて容易になし得た程度のことである。

3 まとめ
全体として、本件訂正考案によってもたらされる効果も、刊行物1記載の考案及び刊行物2記載の考案から、当業者であれば当然に予測することができる程度のものであって、顕著なものとは言えない。
したがって、本件訂正考案は、刊行物1記載の考案及び刊行物2記載の考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。

四.訂正の可否
以上によると、訂正明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された考案は、実用新案法3条2項の規定により実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができないものであるから、この訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律116号)附則9条2項の規定により準用される、同附則10条1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法120条の4第3項で準用する同法126条4項の規定に適合しないので、この訂正請求は認められない。

第三 実用新案登録異議申立について
一 本件考案
本件考案は、請求項1に記載された、以下のとおりのものである。
「表面積が約0.25m^(2)を越える大型のセラミック板と、下地板とが、厚さが約1?約3mm、剪断弾性係数が約2?約10Kg/cm^(2)の弾性接着剤を介して接着されている建築用セラミックパネル。」(以下、「本件考案」と言う。)

二 引用刊行物記載の考案
当審で通知した、平成10年5月14日付け取消理由通知書において引用した刊行物1:特開平2-157348号公報、及び刊行物2:「総合建築No.209[接着工法によるわが国初の大型セラミックの壁面設計]」(第122?126頁、昭和63年1月15日発行、株式会社建築資材社)には、さきの「第二 訂正の適否について」の「二 引用刊行物記載の考案」において認定した、「刊行物1記載の考案」及び「刊行物2記載の考案」がそれぞれ記載されているものと認められる。

三 対比・判断
1 本件考案と刊行物1記載の考案との対比
本件考案と、刊行物1記載の考案とを対比すると、両者は、下記の相違点1、2を除いて、その余の点で一致している。
相違点1
本件考案では、表面積が約0.25m^(2)を越える大型のセラミック板を使用した建築用セラミックパネルであるのに対し、刊行物1記載の考案では、大型の陶板タイルを使用した建築用タイル貼りパネルである点。
相違点2
本件考案では、弾性接着材の厚さが、約1?約3mmであるのに対し、刊行物1記載の考案では、厚さが約0.19?0.475mmである点。

2 相違点1及び2に対する判断
刊行物2記載の考案によると、「表面積が約0.25m^(2)を越える大型のセラミック板と、下地材とが、厚さが約1mmの弾性接着剤を介してセラミック板裏面において接着されている点」が記載されている。
又、本件考案は、「建築用の壁パネルに関する」ものであるが、刊行物1記載の考案も、「建物の外壁などに用いられるタイル貼りパネルに関するもの」であって、「建築用の壁パネル」に関するものであり、さらに、刊行物2記載の考案は、外装材を「壁面接着取付け」するものに関し、それぞれは同一の技術分野に関するものである。
してみると、刊行物1記載の考案における「大型の陶板タイル」として、刊行物2記載の考案におけるような、大型のセラミック板を採用するとともに、その接着に際し、弾性接着剤の厚さを、刊行物2記載の考案におけるように構成することに格別の困難性はなく、このようなことは当業者がきわめて容易になし得た程度のことである。

3 まとめ
全体として、本件考案によってもたらされる効果も、刊行物1記載の考案及び刊行物2記載の考案から、当業者であれば当然に予測することができる程度のものであって、顕著なものとは言えない。
したがって、本件考案は、刊行物1記載の考案及び刊行物2記載の考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法3条2項の規定により実用新案登録を受けることができないものである。

第四 むすび
以上、本件実用新案登録は、拒絶の査定をしなければならない実用新案登録出願に対してなされたものである。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律116号)附則9条7項の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令205号)3条1項及び2項の規定により、結論のとおり決定する。
異議決定日 2000-02-01 
出願番号 実願平2-91683 
審決分類 U 1 651・ 121- ZB (E04F)
最終処分 取消    
前審関与審査官 蔵野 いづみ  
特許庁審判長 幸長 保次郎
特許庁審判官 鈴木 公子
小野 忠悦
登録日 1996-11-07 
登録番号 実用新案登録第2525284号(U2525284) 
権利者 株式会社日本設計
東京都新宿区西新宿2丁目1番1号 鹿島建設株式会社
東京都港区元赤坂1丁目2番7号 東レグラサル株式会社
東京都中央区日本橋室町2丁目5番13号 三井第5別館
考案の名称 建築用セラミックパネル  
代理人 吉川 俊雄  
代理人 中尾 充  
代理人 野口 繁雄  
代理人 中尾 充  
代理人 中尾 充  

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