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審決分類 審判 全部申し立て   B32B
管理番号 1020898
異議申立番号 異議1999-74747  
総通号数 14 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2001-02-23 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-12-14 
確定日 2000-07-24 
異議申立件数
事件の表示 登録第2596358号「化粧板」の請求項1,2に係る実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 登録第2596358号の請求項1、2に係る実用新案登録を維持する。
理由 [1]手続の経緯・本件考案
本件実用新案登録第2596358号の請求項1?2に係る考案は、平成4年4月21日に出願され、平成11年4月9日にその実用新案の設定登録がなされたものである。
その後、住友林業株式会社、川股宏一郎、ホクシン株式会社、大建工業株式会社及び大倉工業株式会社より実用新案登録異議の申立があった。
本件の請求項1?2に係る考案は、実用新案登録請求の範囲請求項1及び2に記載された事項により特定される下記のとおりのものである。
【請求項1】厚さ方向における中心層に比べ比重が高く、しかも中心層に比べ非透水性の高い硬質層が表裏層に設けられ、硬質層を形成する木質繊維中に含浸される接着剤量が中心層を形成する木質繊維中に含浸される接着剤量よりも多く、少なくとも片側の表面あるいは裏面に硬質層が露出した木質繊維板の、硬質層の上に化粧シートが貼着されてなる化粧板。
【請求項2】表裏層の硬質層を形成する木質繊維中に2重量%以上の割合でサイズ剤が含有されてなる請求項1記載の化粧板。
[2]実用新案登録異議申立人の主張の概要
実用新案登録異議申立人・住友林業株式会社は、甲第1号証として特公昭31-3548号公報(昭和31年5月14日発行、以下、刊行物1という。)、甲第2号証として特開平4-106264号公報(平成4年4月8日発行、以下、刊行物2という。)、甲第3号証として特開昭63-134237号公報(昭和63年6月6日発行、以下、刊行物3という。)、甲第4号証として藤田彰介外2名著「実用木材加工全書第7巻 ファイバーボード・パーティクルボードの加工」(昭和45年6月20日、森北出版株式会社発行、以下、刊行物4という。)第11頁?第12頁、甲第5号証として特開昭54-162738号公報(昭和54年12月24日発行、以下、刊行物5という。)、甲第6号証として小西信著「木材の接着」(1982年12月20日、社団法人日本木材加工技術協会発行、以下、刊行物6という。)第48頁?第51頁及び第56頁?第57頁、甲第7号証として実願平2-10860号(実開平3-101626号)の願書に最初に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム(平成3年10月23日発行、以下、刊行物7という。)及び甲第8号証として佐道健代表編著「新編 木材工学」(昭和60年7月20日、株式会社養賢堂発行、以下、刊行物8という。)第409頁を提示して、請求項1?2に係る考案は、刊行物1?刊行物8記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、その実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してされた旨の主張をしている。
実用新案登録異議申立人・川股宏一郎は、甲第1号証として上村武著「木材の実際知識第3版」(昭和63年9月16日、東洋経済新報社発行、以下、刊行物9という。)第149頁?第155頁、甲第2号証として特開昭52-135387号公報(昭和52年11月12日発行、以下、刊行物10という。)、甲第3号証として北原覚一外1名著「実用木材加工全書第6巻 ファイバーボード・パーティクルボード」(昭和37年9月30日、森北出版株式会社発行、以下、刊行物11という。)第162頁、及び甲第4号証として刊行物3を提示して、請求項1?2に係る考案は、刊行物3及び刊行物9?刊行物11記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、その実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してされた旨の主張、及び本件明細書の記載には不備があるから、本件実用新案登録は、実用新案法第5条第4項及び第5項の規定に違反する実用新案登録出願に対してされた旨の主張をしている。
実用新案登録異議申立人・ホクシン株式会社は、甲第1号証として特開昭62-225304号公報(昭和62年10月3日発行、以下、刊行物12という。)、甲第2号証として「木材学会誌」第13巻第8号(1967年12月発行、以下、刊行物13という。)第336頁?第340頁、甲第3号証として須藤彰司著「南洋材」(昭和45年5月30日、株式会社地球社発行、以下、刊行物14という。)第112頁?113頁、第122頁?123頁及び第92頁?第95頁、甲第4号証として桜内雄二郎著「プラスチック材料読本」(1971年11月10日、株式会社工業調査会発行、以下、刊行物15という。)第96頁?第97頁、甲第5号証として実公平3-51459号公報(平成3年11月5日発行、以下、刊行物16という。)、甲第6号証として特開昭51-28176号公報(昭和51年3月9日発行、以下、刊行物17という。)、甲第7号証として農林省林業試験場編「木材工業ハンドブック1958年版」第5版(昭和42年10月20日、丸善株式会社発行、以下、刊行物18という。)第558頁?第563頁、及び甲第8号証として農林省林業試験場編「木材工業ハンドブック1973年版」(昭和48年1月15日、丸善株式会社発行、以下、刊行物19という。)第684頁?第685頁を提示して、請求項1?2に係る考案は、刊行物12?刊行物19記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、その実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してされた旨の主張をしている。
実用新案登録異議申立人・大建工業株式会社は、甲第1号証として刊行物3、甲第2号証として刊行物2、甲第3号証として刊行物7、甲第4号証として「木材工業」第42巻第8号(昭和62年8月1日、社団法人日本木材加工技術協会発行、以下、刊行物20という。)第17頁?第20頁、甲第5号証として農林省林業試験場編「改訂3版 木材工業ハンドブック1982年版」(昭和57年6月30日、丸善株式会社発行、以下、刊行物21という。)第618頁?第621頁、第634頁?第637頁、第646頁?第649頁、第676頁?第679頁及び第692頁?第693頁、甲第6号証として越島哲夫外4名共著「基礎木材工学」(昭和48年6月15日、株式会社フタバ書店発行、以下、刊行物22という。)第400頁?第411頁、甲第7号証として刊行物4、第10頁?第13頁、甲第8号証として刊行物12、甲第9号証として刊行物11、第208頁?第211頁、及び甲第10号証として「日本工業規格 中質繊維板 JIS A 5906」(昭和59年1月31日、財団法人日本規格協会発行、以下、刊行物23という。)を提示して、請求項1?2に係る考案は、刊行物2?刊行物4、刊行物7、11、12及び刊行物20?刊行物23記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、その実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してされた旨の主張をしている。
実用新案登録異議申立人・大倉工業株式会社は、甲第1号証として特公昭49-49186号公報(昭和49年12月25日発行、以下、刊行物24という。)、甲第2号証として刊行物4、第11頁?第12頁、第19頁及び第52頁?第54頁、甲第3号証として「木材学会誌」第37巻第9号(1991年9月発行、以下、刊行物25という。)第795頁?第801頁、甲第4号証として「木材工業」第30巻第10号(昭和50年10月1日発行、以下、刊行物26という。)第452頁?第455頁、甲第5号証として特開昭56-99654号公報(昭和56年8月11日発行、以下、刊行物27という。)、甲第6号証として特開昭58-194529号公報(昭和58年11月12日発行、以下、刊行物28という。)及び甲第7号証として特公昭51-29753号公報(昭和51年8月27日発行、以下、刊行物29という。)を提示して、請求項1?2に係る考案は、刊行物4及び刊行物24?刊行物29記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、その実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してされた旨の主張をしている。
[3]当審の判断
進歩性についての判断:
〔各刊行物の記載事実〕
刊行物1には次の記載がなされている。
「小裂木片或は小砕木片を適当に乾燥し、これに結合材を加えて各方向に不規則に集合配置して核心層となし、其の一面又は両面に薄くて平らな幅広い鉋屑状の小削木片に、核心層に於ける結合材と水の含有量よりも大なる多量の結合材と水を加えて核心層に比して高含水率としたものを、各小削木片の平らな幅広い面が水平になる様に水平方向に不規則に集合配置して表面層となし、之を熱プレスに挿入し、生ずる蒸気を核心層に介在する小木片間の空隙より外部に排除して、全体を膠着乾燥することを特徴とする、平滑で密着した耐水性の高い抗張力大なる一面又は両面の表層と肉眼で認め得る空隙を残し表層と完全に一体をなす核心層からなる表面強化繊維板の製造法。」(特許請求の範囲)
「さてこゝに示す発明は、その表層の中の少く共一層が他の材料で形成せられた核心層よりもはるかに強く圧縮せられたより緻密なものであってその結果それが木板の堅固で且平滑な表面を形成する事を特徴とする。加圧加熱状態の下に加圧加工機により結合剤で結合せられた小木片より成る人工木板特に表面強化繊維板に関するものである。」(第1頁右欄第7行?第13行)
「この方法によって、木材屑をその材種、大きさ、形状及び色彩に無関係に利用する事が可能となる更に板の主要部を形成する核心層に対してはエネルギー及び結合材の消費が少なくてすみ、しかも平滑な表面が得られるという二つの利点を両立させる事ができる様になる。」(第1頁右欄第18行?第23行)
「かくして得られた板の平均密度は正に核心層にある多数の且顕著な空隙の為に集結した木片群よりなる従来提示されたいかなる木板よりもはるかに小さい。上述した如く薄い表層のみが高い密度を有している。しかしこの表層がごく薄い為に、それが板の平均密度に与える影響は比較的小さい結果となっているのである。」(第3頁左欄第41行?右欄第3行)
「以下に本発明による2,3の実施例を説明してある。それに先立ちまづ次の一般的注意をなすこととなる。・・・核心層に用いる小裂木片或は小砕木片は含水率約5%に表層に用いる鉋屑状の小削木片は約10%に乾燥する。尿素系樹脂接着剤を用いる場合核心層には乾燥木材重量の4%、表層には7%乃至10%を針葉樹又は闊葉樹に応じて使用する。これに対しては更に水を加え針葉樹又は闊葉樹に応じて含水率が表層では18%乃至30%中核層では8-12%になる様にする。」(第3頁右欄第24行?第42行)
「核心層をなす材料は含水率5%に乾燥し、木材の乾燥重量に対して2.5%のパラフイン及び3.5%の尿素系樹脂接着剤粉未と共に既知の装置に従い対応する0.4%流動性硬化剤及び5%の水と混合される。表層をなす材料は薄い鉋屑状の小削木片を含水率10%に乾燥し之に4%パラフィン及び7%の尿素系樹脂接着剤を加え更に水を与えて含水率18%とする。」
「この製品は光沢ある表面を有する美しい両側共平滑な木材を成し、壁板、扉板、間仕切その他に好適なものとなる。」(第5頁左欄第10行?第12行)
刊行物2には次の記載がなされている。
「中質繊維板からなる所定厚さの基板の表裏両面に、略同厚の表面化粧単板と裏打ち単板とが貼着されてなる木質化粧床材。」(特許請求の範囲請求項1)
「基材として用いられる中質繊維板は、材質上表面が相当に硬い。このためこの表面硬さによって、化粧単板の表面の耐傷性を改善し、殊に土足用床材にあっても表面にヒールマーク等の凹損を生じにくいものとする。」(第3頁左上欄第10行?第14行)
「表面の化粧単板(2)は、天然銘木材から得られる厚さ0.15?3.0mm程度のツキ板が一般に好適に用いられる。」(第3頁左下欄第8行?第10行)
「(実施例1?2) 厚さ5.0mmの中質繊維板を基材として用い、これの上下両面に、ナラ材からなる厚さ1.0mm及び0.25mmの単板を、それぞれ表面化粧単板及び裏打化粧単板として貼着一体化した。ここに、接着操作は、接着剤として尿素メラミン系接着剤を用い、5kg/cm^(2)×2分間の条件で熱圧することにより行った。・・・」(第4頁左下欄第12行?右下欄第2行)
刊行物3には次の記載がなされている。
「パーティクルボードや中質繊維板などの木質材料基板の表面に接着剤を塗布し、その上に化粧紙を貼着して化粧板をえる方法において、該接着在中にマイカを添加することを特徴とする化粧版の製造方法。」(特許請求の範囲第1項)
刊行物4には次の記載がなされている。
「ボードの耐水湿性向上あるいは強度増加、または両目的をかねて、ボードの内部又は表面に耐水・湿性物質を沈着させることをサイジングという。これに用いる耐水・湿性物質をサイズといい、通常はパルプ液に添加し、沈着剤(硫酸アルミニューム、明ばん他)によりパルプに沈着させる。サイズには一般に、(イ)パラフィン、(ロ)水溶性フェノール樹脂、アルリル系樹脂等が、単独または混合して用いられ、このほかに、(ハ)アスファルト、(ニ)乾性油等も用いられる。・・・乾式法ハードボード製造の場合は、(イ)を溶融状態でダイゼスター中に添加し(固形分2%程度)、(ロ)をリファイナーでチップ解繊時に2?5%添加する方法がとられる。」(第1編 ファイバーボード 第1章 概説 2.サイズ処理工程の項 第11頁第19行?第12頁第1行)
「一般的にボードの比重が大きくなるにつれて、吸水率は少なくなり耐水性はよくなるが・・・」( 吸水性の項 第19頁第2行?第3行)
刊行物4には更に、プラスチック化粧材料オーバーレイについて記載されている。( プラスチック化粧材料オーバーレイの項 第52頁第9行?第54頁第23行)
刊行物5には次の記載がなされている。
「木質繊維化粧板及びその製造方法」(発明の名称)
「木質繊維板は木質繊維の絡み合いによって板状に形成されたものであり、この木質繊維板を基材として吸音板その他の化粧板を製造する場合に、厚さ調整や表面の凹凸部の除去の目的でもってサンデイングが行われている。」(第1頁右下欄第5行?第9行)
刊行物6には次の記載がなされている。
「木材の種々な性能がそれぞれの樹脂の比重と相関することはよく知られている。接着強さもまた比重とは非常によく相関して、同一接着剤で接着した材は国際材、輸入材を問わず比重の増加に比例して接着強さを増加する(図6-2、6-3)。」(6 木材接着に関係する因子 6.1 木材に関する因子 6.1.2 比重の項 第49頁10行?第14行)
「・・・接着剤にとって表面は平滑なほど良い接着が得られる。挽材の場合図6‐10で、最大面粗さ280ミクロンの鋸断面では圧締圧力が2kg/cm^(2)ではもちろん、10?20kg/cm^(2)と圧力を増加しても十分な接着強さが得られないが、プレーナー掛けした最大面粗さ22ミクロンのものや最大面粗さを12ミクロンにまで200番手サンダーで仕上げたものでは少々の圧力の違いにかかわらず良い接着が得られている。」
(6.1.6 材面の平滑度の項 第56頁下から4行?第57頁第9行)
刊行物6には更に、容積密度(比重)と接着強さの関係(ユリア樹脂接着剤の場合)を示す図6-2、比重と曲げはく離接着強さ(酢酸ビニル樹脂エマルジョン接着剤の場合)を示す図6-3、被接材面の粗さと接着強さを示す図6-10が記載されている。(第50頁及び第56頁)
刊行物7には次の記載がなされている。
「中比重ファイバーボードによる木ネジ保持基材」(考案の名称)
「複数枚の中比重ファイバーボードを重合接着して、所定の厚さとしたことを特徴とする中比重ファイバーボードによる木ネジ保持基材。」(実用新案登録請求の範囲)
「〔課題を解決するための手段〕・・・中質繊維板が厚み方向に比重傾斜を有し、表・裏面層の数mm間は岩盤層といわれて硬度も高く、0.8?1.2と高比重であるのに対して中層は0.4?0.8程度であるという特性を利用し、複数枚の中質繊維板を重合接着して必要な厚みのドア枠基材を構成したことによって、中質繊維板からなる木ネジ保持基材の・・・課題を解決したものである。」(第2頁第8行?第16行)
刊行物8には次の記載がなされている。
「なお、耐水剤を蒸煮中に添加するが、接着剤は高温下の解繊では解繊後に、常温下の解繊ではリファイナ内で添加する。添加量はHBではフェノール樹脂を2?5%、中比重ファイバーボード(MDF)ではユリア又はユリア・メラミン樹脂を8?12%で、3層や多層ボードの場合は表層は内層より多くする。」(応用編 32 木質材料 32.4.5 ファイバーボードの項 第409頁第10行?第14行)
刊行物9には次の記載がなされている。
「繊維板の標準的な製造工程を図6.1および図6.2に示す。湿式法は古くからおこなわれてきたパルプ製造に類似した方法で、木材を多量の水とともに解繊し、調整したパルプ液に耐水性向上と強度付与のために接着剤その他のサイズ剤を添加した後、濃度0.5?2%の水に分散されたパルプ液を金網上に流して、脱水しながら成形し、これを乾燥し、あるいは予備的に乾燥してホットプレスで熱圧硬化させ、あるいは圧縮脱水してホットプレスで硬化成板する。これに対して乾式法は解繊当初から水分の少ない状態で作業が進められ、接着剤などの添加は解繊時かその直後におこなわれる。その後繊維はさらに乾燥されてから分級され層状に散布されて均一なマットをつくり、これを熱圧成形する。」(6 ファイバーボード 6.2 製造法 6.2.1 概説の項 第149頁第9行?第18行)
「サイジング:できあがったパルプは、洗浄されてサイジングボックスでサイズ剤が添加される。サイズ剤は強度向上用と耐水性向上用がある。強度向上用としては、フェノール樹脂がもっとも普通に中比重以上のボードに0.5?2%添加され、その大きい接着効果により強度を向上するばかりでなく、耐水性もかなり向上させる。」(6.2.2 湿式法の項 第151頁第16行?第20行)
刊行物9には更に、湿式法による繊維板の製造工程を示す図6.1及び乾式法による繊維板の製造工程を示す図6.2が記載されている。(第150頁)
刊行物10には次の記載がなされている。
「繊維板の表層を高密度に、中心層を低密度に形成して、表層と中心層に繊維板の比重以上の比重差を設けたことを特徴とする半硬質繊維板。」(特許請求の範囲第1項)
「繊維板の湿式製造方法において、抄造したウエットマットをスペーサーを介在した熱圧プレスで初期圧縮したのち、初期圧縮圧力より低く圧縮されたウエットマットの内部応力より高い圧力の減圧状態にするか、または初期圧縮の圧力状態を継続し、内部応力がほぼ零の含水繊維板を形成して熱圧プレスを除圧し、この含水繊維板を取り出し加熱乾燥して製造することを特徴とする半硬質繊維板の製造方法。」(特許請求の範囲第2項)
「湿式法により厚さ30mm含水率170%のウエットマットを形成し、このウエットマットを6mm厚さのスペーサーを介在した230℃の熱圧プレスに挿入し、第2図に実線で示すプレス圧力線図に示すように、プレス圧力を50kg/cm^(2)に昇圧しウエットマットを加圧加熱してスペーサー厚さに圧縮し、その圧力状態を30秒間継続して初期圧縮した後、プレス圧力を図に破線で示す圧縮されたマットの内部応力より高い20kg/cm^(2)に減圧し、その減圧状態を4分40秒間継続してマットの内部応力がほぼ零となったときに除圧し、含水率5%の含水繊維板を形成して熱圧プレスより取出し、この含水繊維板を140?180℃の乾燥機で60分間加熱乾燥して厚さ6mm、比重0.79の半硬質繊維板を製造した。この半硬質繊維板(IA)は、厚さ方向の粗密状態を示す第7図の実線の比重線図に示すように中芯層(3)のlmm中の部分の比重は0.4で、それより表層(2)に行くに従って密度は高くなり、表層(2)の比重は1.33で、中芯増との比重差は繊維板の比重0.79より大きい。第7図の破線、鎖線の各比重線図は、それぞれ初期圧縮に本例と同じプレス圧力で加圧した第11図、第14図に示す各プレスサイクルで製造した本例と同厚、同比重の従来の半硬質繊維板のもので、図で明らかなように、本例の半硬質繊維板の表層密度は上記従来半硬質繊維板の表層密度より高密度で、中心層の密度は逆に低密度である。」(第2頁左下欄第4行?右下欄第11行)
刊行物10には更に、第7図?第10図として実施例の半硬質繊維板の厚さ方向の粗密を示す比重線図が記載されている。(第7頁)
刊行物11には次の記載がなされている。
「比重はファイバーボードの性質に非常な影響を与える。今日まで両者の関係について多くの研究がなされている。一般に比重が高くなると、曲げ強さ、曲げヤング係数、引張り強さは直線的に上昇し、耐水性も改善される。」(第1編 ファイバーボード 第5章 性質 §4 機械的性質 1.強さと比重との関係の項 第162頁第14行?第20行)
「現在は接着剤の使用量が単層ボードで6?9%、3層ボードで表層が約11%、中心層が約7%、、平均9%位である。」(第2編 パーティクルボード 第2章 製造理論および設備 §7 接着剤 2.接着剤の添加量の項 209頁第1行?第5行)
刊行物12には次の記載がなされている。
「チップ又はファイバーを熱圧成形してパーティクルボードまたは中質繊維板を製造する方法において、熱圧成形工程時に、プレスがマットに接触した時点で加圧せずに所要時間放置し、その後加圧を開始することを特徴とするパーティクルボード又は中質繊維板を製造する方法。」(特許請求の範囲第1項)
「パーティクルボード(PB)や中質繊維板(MDF)を製造する際のプレス工程では、ローターでマットが運ばれ全段が一杯になると直ちにプレスが加圧されてボードが成形されていた。そしてまた、表層のチップ又はファイバーの含水率は内層のものより高くなるようにフォーミングされているので、高圧で加圧されると表層部分にごく近いところで高密度層が形成される。」(第1頁右下欄第1行?第8行)
「熱圧成形後の仕上げ工程におけるサンディングの際に、表面のプリキュア層と共に,そのすぐ内側にある高密度層も削り落としてしまう。」(第1頁右下欄第10行?第13行)
「表面にごく近い部分の高密度層がサンディングにより削りとられる従来法のボードに比べ、本発明の方法により得られたボードは、サンディングを行った後も高密度層が残るため、サンディング後の物性の低下が防止できる。」(第2頁右上欄第9行?第13行)
「〔実施例〕従来方法による比較例1及び本発明の実施例を以下に示す。 比較例1 表層を細かいファイバー・チップとし、プレス温度150℃、プレス圧力26kgf/cm^(2)、プレス時間5.5分で従来のプレス方法で厚み15mm、比重0.72のパーティクルボードを製造した。 実施例1 プレスがマットに接触した時間・・・を45秒とる以外は、比較例1と同じ条件でパーティクルボードを製造した。」(第2頁右上欄第14行?左下欄第6行)
刊行物13には次の記載がなされている。
「乾式法ボード形成メカニズムに関する研究(第11報)ボードの低比重化(その1)」(表題)
「4.実験条件 4.1 3.5mm厚ボード ファイバー:ラワン・杉混合チップ使用。蒸気圧8kg/cm^(2)、蒸煮時間7分の通常乾式解繊ファイバー、ワックス1%添加。・・・4.2 8mm厚ボード ファイバー:材種は3.5mm厚の場合と同じ。ただし蒸気圧7kg/cm^(2)、7分処理」(第338頁左欄第40行?右欄第12行)
刊行物13には更に、「4.2」におけるマット条件としてトップ、ボトムのレジン添加率8%、水分9%であり、コアのレジン添加率6%、水分8%であることが記載されている。(第338頁右欄第13行?第15行)
刊行物14には、南洋材に属するある種の木材の気乾比重としては0.4?0.9又は0.48?0.74であることが記載されている。(第94頁第8行?第17行及び第123頁第11行?12行)
刊行物15には、フェノール樹脂、ユリア樹脂及びメラミン樹脂の比重がそれぞれ1.27?1.42、1.47?1.52及び1.47?1.52であることが記載されている。(第96頁 図5・4)
刊行物16には次の記載がなされている。
「合板製基板1上に乾式法で得た中比重ファイバーボード2を重合・貼着してなる床材であって、床材の一側に削成される本ざね部3を上記基板により形成する一方、該本ざね部の最上層の単板1aの上面を上記ファイバーボード2の下側硬質層2aで被蔽するようにしたことを特徴とする床材。」(実用新案登録請求の範囲第1項)
「〔作用〕上記構成の床材は、本ざね部上面に重合・貼着されるファイバーボードの下側硬質層が該本ざね部の上面を蔽い、その欠損に対する強度を大幅に増大させるという作用を奏するものである。」(第2頁左欄第11行?第15行)
「・・・5は上記ファイバーボード2の表面に張設される化粧板を示す。」
(第2頁左欄第28行?第31行)
刊行物16には更に、床材の断面を示す第1図が記載されている。
刊行物17には次の記載がなされている。
「耐水性の優れたボード類の製造方法」(発明の名称)
「従来、繊維板及びパーティクルボードはその材質上またはその構造上、水を吸収し易くかつ耐水性に乏しいために、水を吸収し膨張して強度が低下するなど実用上しばしば種々の不都合が生じている。このためこれらのボード類の製造に際しては、ボード類に対して耐水性を付与することを目的として、パラフィン・ワックス、ロジン、石油樹脂またはクロマン樹脂等の物質を内添あるいは外添せしめることは一般に知られている。」(第1頁左下欄末行?右下欄第7行)
「・・・耐水化剤の使用量を増やして行くにつれ得られたボード類の乾燥時における強度が低下するものであり、従って従来公知の耐水化剤による場合は、一の要件を改善するのあまり、同様に改善しなければならない多数の要件を犠牲にしつつ、尚高価な耐水化剤を増量していくことを余儀なくされるという実に珍妙なジレンマに陥いるもので、いずれにもせよ性能上並びに価格上工業的に優れた耐水化剤とはなり得ないというのが実情である。」(第2頁左上欄第5行?第12行)
刊行物18には次の記載がなされている。
「ロジンまたはパラフィン・サイズは、一般に強度の低下を伴う・・・。使用量は通常1?2%(固形分として)で、これ以上添加しても耐水効果がそれほど上がらず、またボードの強度低下がはなはだしくなる。」(9.ファイバーボード 9.3 製造法 c.サイジング (iv)サイジング効果の項 第561頁第2行?第562頁第2行)
刊行物18には更に、インシュレーションボードのアスファルト処理効果及び他のサイズとの混用の比較について記載され、その中に、サイズ剤としてアスファルト・エマルジョンを5重量%添加した例が記載されている。(第561頁、表9・13 種別Cの欄)
刊行物19には次の記載がなされている。
「低比重の製品ほど多量の耐水サイズ剤を用い通常ハードボードでは固形分として0.3?1.0%(重量以下同様)、インシュレーションボードでは1?2%が加えられるがサイズ剤の歩どまりは50?60%といわれる。」(9.ファイバーボード 9.3 製造法 c.サイジング (iv)サイジング効果 (1)耐水サイジングの項 第685頁第6行?第8行)
刊行物19には更に、サイジング効果に及ぼすパルプ液pHの影響がサイズ剤として水溶性フェノール樹脂を4%とした場合が示されている。(第685頁、図9.13)
刊行物20には次の記載がなされている。
「中比重ファイバーボードの木ねじ保持力」(表題)
「本実験で使用したボードは3層構造であり、木ねじが、比重の高い表層部を通ってねじ込まれたflat面の場合と比較的比重の低いcore部にねじ込まれたedge面の場合とでは、flat面の方がedge面より大きなδwが得られたものと考えられる。」(第18頁右欄第18行?第23行)
刊行物21には、圧締圧力がボード厚さ方向密度分布に及ぼす影響(第635頁、図9.38)及び、ファイバボードでは、密度が大きくなるにつれて吸水率は少なくなり、耐水性がよくなること(第646頁下から3行?下から2行)が記載され、更に次の記載がなされている。
「ボードの耐水性向上及び強度補強の目的のため、原質中に薬品を添加しパルプ繊維上に沈着する工程をサイジングという。その薬品をサイズ剤という。」(第619頁第13行?第14行)
「耐水剤・接着剤の添加,オイルテンパリングあるいは熱処理などにより製品の寸法安定性を増す処理が行われている・・・」(第636頁第18行?第19行)
「防水剤添加によるボード性能向上にはパラフィンエマルジヨンが用いられる」(第677頁第32行?第33行)
「吸水率はボード比重の増加とともに減少するが、厚さ膨張率はマキシマムカーブを描き、その程度は含脂率の影響を受ける・・・。しかし、短時間吸水の場合は、パラフィンエマルジョンの添加により、吸水率,同厚さ膨張率を大幅に下げることができる・・・」(第693頁下から第11行?第5行)
刊行物22には次の記載がなされている。
「添加量はHBではフェノール樹脂を2?5%、中比重ファイバーボード(MDF)ではユリアまたはユリア・メラミン樹脂を8?12%で、3層や多層ボードの場合は表層は内層より多くする。」(32.4.5 ファイバーボードの項 第409頁第11行?第14行)
「乾式法の場合はPB(パーテイクルボード)と同様、3層や多層構造とすることが可能であり、またボードが層状化されている場合もある。」(32.3.2 ファイバーボードの項 第404頁第20行?第22行)
刊行物23には次の記載がなされている。
「乾式製造法による板は、密度が0.4g/cm^(3)?0.8g/cm^(3)であることから、中密度の繊維板ということになり、諸外国ではMedium Density Fibre Board(略称M.D.F)と呼んでいる。」(第11頁第10?第16行)
刊行物24には次の記載がなされている。
「ファイバーボード用マットを形成する方法」(発明の名称)
「図面中1は裏層マット形成装置、 2は第1芯層マット形成装置、3は第2芯層マット形成装置・・・7は表裏用ファイバー供給路、8は芯用ファイバー供給路・・・である。」(第2頁左欄第10行?第20行)
「このマットは、プリプレス装置により圧縮され、裁断され、ホットプレスされてファイバーボードになる。」(第2頁左欄第27行?第30行)
「供給路7を通って送られてきたファイバーは、リファイナーで十分に解繊され供給路8を通って送られてくるファイバーに比し精細であり、且つ接着剤の含量が多い。」(第2頁右欄第7行?第10行)
刊行物25には、「低比重ボードの形成と材質発現機構(第3報)」として「ボードの小片間結合力」(表題)について記載されており、ボード厚さ方向の比重分布測定の結果が記載されている。(第797頁 Fig.1)
刊行物26には、「成型パーティクルボードと中比重ファイバーボードの製造技術」(表題)について記載されており、次の記載がなされている。
「・・・岩盤層はMDF全体の比重が0.65程度の時でも比重は0.8?0.9もあり・・・」(第454頁右欄第15行?第19行)
刊行物27には次の記載がなされている。
「所定の含有率を有し、嵩密度が8kg/m^(3)?25kg/m^(3)の木質ファイバーに対し、合成時のホルマリン中のメタノール含有率が低く、かつ低分子のメチロール化合物が主成分であるホルマリン系熱硬化性樹脂接着剤をPH7?12に調整して、8%?25%(固形分重量)塗布した後、乾式抄造によりマットとし、該マットを熱板温度170℃?240℃のホットプレスで急速圧締して成板することを特徴とした乾式法による木質ファイバーボードの製法。」(特許請求の範囲第1項)
刊行物28には次の記載がなされている。
「(a)セルロース性物質を加圧下に蒸気の作用に付しそして加熱湿潤繊維に精製し、(b)該加熱湿潤繊維を部分的に脱水し、(c)該部分脱水繊維をマット状に加工し、そして(d)該マットを加熱および加圧して 合成ボードを製造する方法において、前記精製工程(a)からの加熱湿潤繊維に有機ポリイソシアネート結合材を適用することを特徴とするセルロース性物質および結合材から合成ボードを製造する方法。」(特許請求の範囲第1項)
「ポリイソシアネートを全固形分重量当り約3ないし6重量%の量で適用する特許請求の範囲第1項記載の方法。」(特許請求の範囲第8項)
刊行物29には次の記載がなされている。
「乾式ファイバーボードの製法」(発明の名称)
「一般に乾式ファイバーボードは塗装や接着などその表面における二次加工性を良好ならしめるために熱圧後のボード表層を一定量研削して硬く緻密な岩盤層を露呈せしめ、その表面を平滑なものとする必要があったが・・・」(第1頁左欄第23行?第30行)
〔対比・判断〕
刊行物2に記載された木質化粧床材は、化粧板の範疇に属するものであるから、刊行物2には、化粧板の考案が記載されており、また、刊行物3には、化粧板の製造方法の発明と共に、該方法により製造された化粧板の考案が記載されている。
先ず、請求項1に係る考案について検討する。
請求項1に係る考案と、刊行物2及び刊行物3記載の考案とを対比する。
これらの考案は、木質繊維板の上に化粧シートが貼着されてなる化粧板の考案である点で軌を一にするものであるが、請求項1に係る考案では、木質繊維板が、厚さ方向における中心層に比べ比重が高く、しかも中心層に比べ非透水性の高い硬質層が表裏層に設けられ、硬質層を形成する木質繊維中に含浸される接着剤量が中心層を形成する木質繊維中に含浸される接着剤量よりも多く、少なくとも片側の表面あるいは裏面に硬質層が露出したものであることを規定しているのに対して、刊行物2及び刊行物3記載の考案は、厚さ方向における中心層に比べ比重が高く、しかも中心層に比べ非透水性の高い硬質層が表裏層に設けられ、硬質層を形成する木質繊維中に含浸される接着剤量が中心層を形成する木質繊維中に含浸される接着剤量よりも多く、少なくとも片側の表面あるいは裏面に硬質層が露出した木質繊維板を用いることを明らかにしていない点で相違する。
そこで、この相違点について検討する。
刊行物1に記載の表面強化繊維板は、小裂木片或は小砕木片を適当に乾燥し、これに結合材を加えて各方面に不規則に集合配置して核心層となし、其の一面又は両面に薄くて平らな幅広い鉋屑状の小削木片に、核心層に於ける結合材と水の含有量よりも大なる多量の結合材と水を加えて核心層に比して高含水率としたものを、各小削木片の平らな幅広い面が水平になる様に水平方向に不規則に集合配置して表面層となし、之を熱プレスに挿入し、生ずる蒸気を核心層に介在する小木片間の空隙より外部に排除して、全体を膠着乾燥することにより製造されたもので、平滑で密着した耐水性の高い抗張力大なる一面又は両面の表層と肉眼で認め得る空隙を残し表層と完全に一体をなす核心層からなるものであるから、請求項1に係る考案で規定する木質繊維板の特徴をほぼ具備している。
ところが、「この製品は光沢ある表面を有する美しい両側共平滑な木材を成し、壁板、扉板、間仕切その他に好適なものとなる。」と記載されているとおり、刊行物1記載の表面強化繊維板は、壁板、扉板、間仕切等に用いられるほど光沢ある表面を有する美しく、平滑なものであるから、更にその表面に化粧シートを貼着する技術的必然性のないものであるから、当該繊維板を上記刊行物2及び3の木質繊維板として用いる技術的動機を見いだせない。
刊行物7に記載の中比重ファイバーボードは、厚さ方向に中比重ファイバーボードを、複数枚重合接着して所定の厚さとして木ネジ保持基材を構成するものであるから、化粧シートを貼着すべき技術的必然性はないものである。
刊行物10に記載の半硬質繊維板は、厚さ方向における中心層に比べ比重が高い硬質層が表裏層に設けられたものであるが、この半硬質繊維板は、抄造したウエットマットをスペーサーを介在した熱圧プレスで初期圧縮したのち、初期圧縮圧力より低く圧縮されたウエットマットの内部応力より高い圧力の減圧状態にするか、または初期圧縮の圧力状態を継続し、内部応力がほぼ零の含水繊維板を形成して熱圧プレスを除圧し、この含水繊維板を取り出し加熱乾燥するという、特殊な方法によって製造したものであり、硬質層を形成する木質繊維中に含浸される接着剤量が中心層を形成する木質繊維中に含浸される接着剤量よりも多い、というものではない。
刊行物12に記載のパーティクルボード又は中質繊維板は、厚さ方向における中心層に比べ比重が高い硬質層が表面層に設けられたものであるが、熱圧成形工程時に、プレスがマットに接触した時点で加圧せずに所要時間放置し、その後加圧を開始することにより製造されたものであり、硬質層を形成する木質繊維中に含浸される接着剤量が中心層を形成する木質繊維中に含浸される接着剤量よりも多いというものではない。
刊行物20記載の中比重ファイバーボードは、厚さ方向における中心層に比べ比重が高い硬質層が表面層に設けられたものであるが、刊行物20には、硬質層を形成する木質繊維中に含浸される接着剤量が中心層を形成する木質繊維中に含浸される接着剤量よりも多いことは明らかにされていない。
刊行物21記載のボードは、厚さ方向における中心層に比べ比重が高い硬質層が表面層に設けられたものであるが、この分布は、圧締圧力によってもたらされたものであり、硬質層を形成する木質繊維中に含浸される接着剤量が中心層を形成する木質繊維中に含浸される接着剤量よりも多いということはできない。
刊行物22記載の3層ボードは、ユリア又はユリア・メラミン樹脂を内層より表層に多く添加しているので、厚さ方向における中心層に比べ比重が高い硬質層が表裏層に設けられ、硬質層を形成する木質繊維中に含浸される接着剤量が中心層を形成する木質繊維中に含浸される接着剤量よりも多いと考えられるが、その上に化粧シートを貼着することについては具体的に記載されておらず、また、硬質層が露出した木質繊維板も記載されていない。
刊行物24記載のファイバーボードは、芯に比べて表裏の接着剤含量が多いことから、厚さ方向における中心層に比べ比重が高い硬質層が表裏層に設けられ、硬質層を形成する木質繊維中に含浸される接着剤量が中心層を形成する木質繊維中に含浸される接着剤量よりも多いと考えられるが、その上に化粧シートを貼着することについては具体的に記載されておらず、また、硬質層が露出した木質繊維板も記載されていない。
刊行物25記載の低比重ボードは、厚さ方向における中心層に比べ比重が高い硬質層が表面層に設けられたものであるが、刊行物25には、硬質層を形成する木質繊維中に含浸される接着剤量が中心層を形成する木質繊維中に含浸される接着剤量よりも多いことは明らかにされていない。
刊行物26記載の成型パーティクルボード及び中比重ファイバーボードは、厚さ方向における中心層に比べ比重が高い硬質層が表面層に設けられたものであるが、刊行物26には、硬質層を形成する木質繊維中に含浸される接着剤量が中心層を形成する木質繊維中に含浸される接着剤量より多いことは明らかにされていない。
刊行物29記載の乾式ファイバーボードは、厚さ方向における中心層に比べ比重が高い硬質層が表面層に設けられたものであるが、刊行物29には、硬質層を形成する木質繊維中に含浸される接着剤量が中心層を形成する木質繊維中に含浸される接着剤量より多いことは明らかにされていない。
刊行物4?6、8、9、11、13?19、23、27及び28には、請求項1に係る考案の部分的な特徴が断片的に記載されているだけで、厚さ方向における中心層に比べ比重が高く、しかも中心層に比べ非透水性の高い硬質層が表裏層に設けられ、硬質層を形成する木質繊維中に含浸される接着剤量が中心層を形成する木質繊維中に含浸される接着剤量よりも多く、少なくとも片側の表面あるいは裏面に硬質層が露出した木質繊維板は記載されていない。
そのため、刊行物1及び4?29の記載を以てしても、厚さ方向における中心層に比べ比重が高く、しかも中心層に比べ非透水性の高い硬質層が表裏層に設けられ、硬質層を形成する木質繊維中に含浸される接着剤量が中心層を形成する木質繊維中に含浸される接着剤量よりも多く、少なくとも片側の表面あるいは裏面に硬質層が露出した木質繊維板を用いることは、当業者がきわめて容易に想到し得ることとはいえない。
そして、請求項1に係る考案は、明細書記載の効果、即ち、資源の有効利用となり自然破壊の防止に役立つ、硬質層全体が非透水性の高い層を形成するため、吸湿による寸法変化や反りが生じにくく、腐敗菌による腐り等も生じない、木質繊維板の表面に露出した硬質層は、表面の圧縮強度が強く、平滑性にも優れたものであり、吸放湿による収縮膨張が小さいため、化粧シートを貼着した後の仕上がりが優れ、化粧シートとして突板シートを貼着しても割れが生じにくいなど優れた特性を有するという効果を奏したものと認められる。
従って、請求項1に係る考案が刊行物1?29に記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものと認めることはできない。
次に、請求項2に係る考案について検討する。
請求項2に係る考案は、請求項1に係る考案を技術的に限定するものであるから、請求項1に係る考案と同様、刊行物1?29に記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものと認めることはできない。
明細書の記載事項についての判断:
〔異議申立人が述べる不備の理由〕
異議申立人・川股宏一郎が本件明細書の記載に不備があるとする理由の概要は次のとおりである。
(1)願書に最初に添付した明細書には、「例えば中心層形成木質繊維への接着剤の添加量を3?5重量%加え、表層形成木質繊維および裏層木質繊維への接着剤の添加量を10?30重量%加えた後に加熱圧締することにより、前述の水分による硬質層の形成方法とあわせて硬質層の比重を上げると共に強度の向上を図ることができる。」との記載はあるものの、本件特許明細書には請求項1における「硬質層を形成する木質繊維中に含浸される接着剤量が中心層を形成する木質繊維中に含浸される接着剤量よりも多く」とは記載されていない。 そのため、実用新案登録請求の範囲には、発明の詳細な説明に記載した考案の構成が記載されていないことになり、本件明細書の記載は、実用新案法第5条第6項第1号の規定に違反する。
(2)請求項1には、「厚さ方向における中心層に比べ比重が高く、しかも中心層に比べ非透水性の高い硬質層が表裏層に設けられ硬質層が表裏層に設けられ」との記載と共に、「少なくとも、片側の表面あるいは裏面に、硬質層が露出した木質繊維の、硬質層の上に化粧シートが貼着されてなる」との記載がなされおり、前者の記載では、硬質層が表層と裏層の両側に形成されることを要件としているが、後者の記載では、硬質層は表層又は裏層のいずれか一方の場合であってもよいことになる。
このため、これらの記載に矛盾がある。
〔判断〕
(1)について
願書に最初に添付した明細書には、異議申立人が指摘するとおり、「例えば中心層形成木質繊維への接着剤の添加量を3?5重量%加え、表層形成木質繊維および裏層形成木質繊維への接着剤の添加量を10?30重量%加えた後に加熱圧締することにより、前述の水分による硬質層の形成方法とあわせて硬質層の比重を上げると共に強度の向上を図ることができる。」との記載がなされており(段落【0032】)、このような中心層と表裏層を有する板を圧締すれば、硬質層(表裏層)を形成する木質繊維中に含浸される接着剤量が中心層を形成する木質繊維中に含浸される接着剤量よりも多くなることは当業界における技術常識から当然のことであるということができるから、異議申立人の当該主張は理由がない。
(2)について
「厚さ方向における中心層に比べ比重が高く、しかも中心層に比べ非透水性の高い硬質層が表裏層に設けられ」との記載からは、硬質層が表層と裏層の両側に形成されることが理解できる。
また、「少なくとも片側の表面あるいは裏面に硬質層が露出した木質繊維の、硬質層の上に化粧シートが貼着されてなる」という記載は、段落【0007】?【0008】における「本考案の化粧板は、図1に示すように、表裏層に硬質層laおよびlbと、その間に中心層2が配された一体成形により得られる3層構造からなり、表面側の硬質層laが表面に露出した木質繊維板3の、該硬質層1‐aの上に化粧シート4が貼着された化粧板を示している。また、本考案の他の態様として、図2に示すように、表裏面の硬質層laおよびlbを表面に露出し、表面側のみ化粧シ-トを貼着したもの、あるいは図3に示すように裏面側の硬質層の上にも化粧シートを貼着し、両面を化粧面として用いるものなどが挙げられる。」との記載を参酌すると、硬質層は、表側又は裏側のいずれか一方の場合であってもかまわないのではなく、表層と裏層の両側に形成された硬質層のうち、露出した硬質層は、硬質層は表側又は裏側のいずれか一方の場合であってもかまわないことが理解できる。
そのため、これらの記載に矛盾があるとはいえない。
従って、明細書の記載に不備があるとは認めることはできない。
以上のとおりであるから、異議申立人の理由及び証拠によって請求項1?2に係る考案の実用新案登録を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?2に係る考案の実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する
異議決定日 2000-06-20 
出願番号 実願平4-37906 
審決分類 U 1 651・ 121- Y (B32B)
最終処分 維持    
前審関与審査官 野村 康秀平井 裕彰  
特許庁審判長 石橋 和美
特許庁審判官 喜納 稔
蔵野 雅昭
登録日 1999-04-09 
登録番号 実用新案登録第2596358号(U2596358) 
権利者 株式会社ノダ
東京都台東区浅草橋5丁目13番6号
考案の名称 化粧板  
代理人 古部 次郎  
代理人 羽鳥 修  
代理人 前田 弘  
代理人 竹内 宏  
代理人 小山 廣毅  
代理人 濱田 俊明  
代理人 大場 充  

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