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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効としない D04B
管理番号 1024935
審判番号 審判1999-35328  
総通号数 15 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2001-03-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-06-28 
確定日 2000-05-08 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の登録第2085287号実用新案「編機用選針装置」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1.手続の経緯
本件登録第2085287号実用新案は、平成1年1月25日に実用新案登録出願され、平成6年12月21日に出願公告(実公平6-50554号)された後、平成7年10月18日に設定の登録がなされたもので、その後、ミツテック株式会社より無効審判の請求がなされ、平成11年10月12日に答弁書の提出と同時に訂正請求がなされ、平成12年1月24日に弁駁書が提出されたものである。
2.訂正の適否について
上記平成11年10月12日付け訂正請求書により訂正された訂正明細書(以下、「本件訂正明細書」という。)について検討する。
(ア)訂正明細書の考案
本件訂正明細書の請求項1及び2に係る考案は、実用新案登録明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】 回転する編成シリンダの外周の複数の縦溝に、編成針が上下動可能に配置されていると共に、突出長の異なる複数のバットを有する選針ジャックが、それぞれ揺動自在に編成針の下方位置に嵌装されている編機に用いられる編機用選針装置であって、該選針装置が上記選針ジャックのバットに対応するように配置され、且つ選針ジャックのバットに対して選択的に係合可能に編機の縦溝を含む平面内で揺動可能な複数の選針レバーを有し、編成に際して選針レバーを選択的に揺動させることにより、選針レバーの先端部のフィンガを前記選針ジャックのバットに当接させることにより編成シリンダ側に選針ジャックのバットを押圧して、該選針ジャックを揺動させ、それによって選針ジャックの下端と編機の上げカムとの係合による選針ジャックの上下動を制御して編成針を上下動させる編機用選針装置において、
該選針装置の選針レバーの先端部のフィンガの前記選針ジャックのバットに当接する角度を、選針ジャックの押し込みを所定のスピードとするよう、バットの突出長に対応して変更して成ることを特徴とする編機用選針装置。
【請求項2】 選針装置が選針レバーを上下方向に適宜間隔で多段に積み重ねしてなる選針装置であって、当該選針レバーの先端部のフィンガのバットに当接する角度を、バットの突出長に応じて、下から上にあるいは上から下に順次大きくあるいは小さく構成して成る、請求項1記載の編機用選針装置。」
(イ)訂正事項
訂正事項a
実用新案登録第2085287号の明細書(以下、訂正前の明細書という)の実用新案登録請求の範囲の請求項1の記載
「【請求項1】編機における編成シリンダーの外周の複数の縦溝に、突出長の異なるバットを突設した選針ジャックを、当該ジャックに当接する編成針を上下動させるようにして揺動自在に複数嵌装し、当該ジャックの当該バットを、適宜間隔で複数配設した選針レバーの先端部のバット当接面に当接して前記編成シリンダー側に選択的に押圧して前記編成針の選針を行う編機用選針装置において、当該選針装置の前記各選針レバーの先端部の各バット当接面のバットに当接する角度を、選針ジャックに突設したバットの突出長に対応して変更して成ることを特徴とする編機用選針装置。」を、
「【請求項1】回転する編成シリンダの外周の複数の縦溝に、編成針が上下動可能に配置されていると共に、突出長の異なる複数のバットを有する選針ジャックが、それぞれ揺動自在に編成針の下方位置に嵌装されている編機に用いられる編機用選針装置であって、該選針装置が上記選針ジャックのバットに対応するように配置され、且つ選針ジャックのバットに対して選択的に係合可能に編機の縦溝を含む平面内で揺動可能な複数の選針レバーを有し、編成に際して選針レバーを選択的に揺動させることにより、選針レバーの先端部のフィンガを前記選針ジャックのバットに当接させることにより編成シリンダ側に選針ジャックのバットを押圧して、該選針ジャックを揺動させ、それによって選針ジャックの下端と編機の上げカムとの係合による選針ジャックの上下動を制御して編成針を上下動させる編機用選針装置において、
該選針装置の選針レバーの先端部のフィンガの前記選針ジャックのバットに当接する角度を、選針ジャックの押し込みを所定のスピードとするよう、バットの突出長に対応して変更して成ることを特徴とする編機用選針装置。」と訂正する。
訂正事項b
訂正前の明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項2の記載
「【請求項2】選針装置が選針レバーを上下方向に適宜間隔で多段に積み重ねしてなる選針装置であって、当該選針レバーのバット当接面のバットに当接する角度を、バットの突出長に応じて、下から上にあるいは上から下に順次大きくあるいは小さく構成して成る、請求項1記載の編機用選針装置。」を、
「【請求項2】選針装置が選針レバーを上下方向に適宜間隔で多段に積み重ねしてなる選針装置であって、当該選針レバーの先端部のフィンガのバットに当接する角度を、バットの突出長に応じて、下から上にあるいは上から下に順次大きくあるいは小さく構成して成る、請求項1記載の編機用選針装置」と訂正する。
訂正事項c
訂正前の明細書の第2頁第8行乃至同頁第17行(実公平6-50554号公報の第2欄第10行乃至第3欄第2行)における記載
「第4図?第7図に示すように、柄編み編機において、編地の編成を行うに際し、編成シリンダー1の外周の多数の縦溝2内に、バット3を突設した選針ジャック(以下単にジャックという)4を、当該ジャック4に当接する編成針5を上下動するようにして嵌挿して、当該ジャック4のバット3を、選針装置6の選針フィンガ(選針レバー)(以下単にフィンガという)7により選択的に押圧して編成針を行うことが行われている。」を、
「第4図?第7図に示すように、柄編み編機において、編地の編成を行うに際し、回転する編成シリンダ1の外周の複数の縦溝2に、編成針5が上下動可能に配置されていると共に、突出長(β)の異なる複数のバット3を有する選針ジャック(以下単にジャックという)4が、それぞれ揺動自在に編成針の下方位置に嵌装されている編機に用いられる編機用選針装置においては、該選針装置が上記選針ジャックのバットに対応するように配置され、且つジャック4のバット3に対して選択的に係合可能に編機の縦溝を含む平面内で揺動可能な複数の選針レバー(以下、フィンガという)7を有し、編成に際してフィンガ7を選択的に揺動させることにより、フィンガ7の先端部を前記選針ジャックのバットに当接させることにより編成シリンダ1側にジャック4のバットを押圧して、ジャック4を揺動させ、それによってジャック4の下端と編機の上げカム8との係合によるジャック4の上下動を制御して編成針を上下動させることにより、編成針5の選針が行われている。」と訂正する。
(ウ)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項aに関する記載として、願書に最初に添付した明細書の[従来の技術]および「その解決すべき課題]の欄には、第4図から第8図に基づいて従来技術の柄編み編機の選針装置について記載されており、「編機用選針装置において」までの訂正は、本件考案の対象とする選針装置がこのような従来技術の柄編み編機の選針装置であることに減縮したものである。
また、「該選針装置の選針レバーの先端部のフィンガの前記選針ジャックのバットに当接する角度を、選針ジャックの押し込みを所定のスピードとするよう、」との訂正は、訂正前の明細書の第11頁第9行乃至第12頁第11行(実公平6-50554号公報の第6欄第3行乃至同欄第10行)及び第2図により、選針ジャックのバットの突出長にかかわらず一定のスピードで選針ジャックの押し込みをすることが記載されているから、訂正前の明細書の請求項1の「当該選針装置の前記各選針レバーの先端部の各バット当接面のバットに当接する角度を、選針ジャックに突設したバットの突出長に対応して変更して成る」との記載を願書に最初に添付した明細書に記載した事項の範囲内で明りょうにしたものである。
そうすると、訂正事項aは、実用新案登録請求の範囲の減縮と明りょうでない記載の釈明を目的とした訂正に該当するものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
上記訂正事項bは、上記訂正事項aによる訂正後の実用新案登録請求の範囲における請求項1の記載と請求項2の記載とを整合させるための訂正であるから、明りょうでない記載の釈明に該当するものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
上記訂正事項cは、上記訂正事項aによる訂正後の実用新案登録請求の範囲の記載と考案の詳細な説明の欄の記載とを整合させるための訂正であるから、明りょうでない記載の釈明に該当するものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(エ)独立実用新案登録要件
本件訂正明細書の請求項1及び2に係る考案は、本件審判請求人の主張する本件実用新案登録の無効の理由及び提出した証拠方法をもってしても、本件出願の際独立して実用新案登録を受けることができるものであることは、後述のとおりであり、他に本件訂正明細書の請求項1及び2に係る考案が、本件出願の際独立して実用新案登録を受けることができないとする理由も発見しない。
(オ)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、平成5年法律第26号附則第4条第2項において読み替えるものとする旧実用新案法第40条第2項の規定及び同法第40条第5項で準用する同法第39条第2-4項の規定に適合するので当該訂正を認める。
3.実用新案登録無効の申立てについての判断
(1)本件請求項1及び2に係る考案
本件訂正明細書の請求項1及び2に係る考案は、「2.訂正の適否についての判断」の「(ア)訂正明細書の考案」の項に記載されたとおりのものと認める。
(2)請求人及び被請求人の主張
【請求人の主張】
請求人は、「本件実用新案登録の請求項1及び2の考案は甲第2号証公報記載の発明と実質的に同一であるから、実用新案法第3条第1項第3号の規定により実用新案登録を受けることができない。もし、両者の間の僅かな相違に着目するなら、本件実用新案登録の請求項1及び2の考案は甲第2号証公報記載の発明に基づいて当業者が容易になしえたものであるので、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。いずれにしても、本件実用新案登録の請求項1及び2の考案は無効とされるべきである。」旨主張している。
証拠方法
甲第1号証;実用新案登録第2085287号登録原簿
甲第2号証;特開昭53-49154号公報
なお、請求人は、平成12年1月24日付けで提出した弁駁書で被請求人が訂正請求書中で編機用選針装置の従来技術として引用した特開昭62-28451号公報を新たに甲第3号証として、本件訂正明細書の請求項1及び2に係る考案が甲第2号証及び甲第3号証の刊行物に記載されたものからきわめて容易である旨主張しているが、上記主張は、新たな証拠を追加して無効理由の要旨を変更するものであるから、採用することができない。
【被請求人の主張】
一方、被請求人は、「請求人が引用した甲第2号証には本願考案の特徴的な構成、作用効果について何ら開示、示唆するものではなく、このような甲第2号証から本願考案がきわめて容易に成し得たものではないことは明らかであるから、本件無効審判請求は理由がないものである。」旨主張している。
(3)請求人の主張する無効理由について
そこで、請求人の主張する無効理由について検討する。
(ア)甲第2号証の記載事項
請求人が提出した、甲第2号証である特開昭53-49154号公報には、丸編機の選択機構の改良に関して、下記の事項が図面とともに記載されている。
「1 編針の根元に回動可能に取り着けられたジャッキ4によって各々の編針3が非操作位置又は操作位置に保持され、選択レバー17a及び17bによって前記編針が選択される型式の丸編機において、中間ジャッキと呼ばれる該ジャッキ4は二つのバット15a及び15bを具備した選択ジャッキ5と係合し、編針3を非操作位置に移す16a群に属した選択レバー17aによってバット15aは制御され、編針3を操作位置に戻す16a群と相補的な16b群に属した選択レバー17bによってバット15bは制御され、所望の編み模様を得るに必要な一連の編みフィードの各々において、選択レバーは編針を前記二つの位置に保ち、編みフィードの全長に亘って選択レバー17a及び17bは選択ジャッキ5のバット15a及び15bと係合し動作することを特徴とする丸編機の編針の選択及び制御機構。
2 編針3が非操作位置にある時非操作の全期間に亘り該編針を非操作位置に確実に保持するように中間ジャッキ4の下部バット10は分枝11の内部で掛止され、前記選択ジャッキ5の上部が分枝状となっていることを特徴とする前記特許請求の範囲第1項記載の機構。
3 編針3を操作位置又は非操作位置に各々移せるように回動可能に選択ジャッキ5の長さ方向の真中で挿着可能なリブ13に選択ジャッキが枢支されていることを特徴とする前記特許請求の範囲第1項記載の機構。
4 丸編機の針筒の針を制御し位置決めすることを特徴とする前記特許請求の範囲第1項、第2項又は第3項のいずれかに記載の機構。」(特許請求の範囲)
「スロット部1で枢支点12の周りにのみリブ13と平行な面で選択ジャッキは揺り動くことができる。」(第4頁右下欄2行?5行)
「選択ジャッキ5は枢支点12の周りを揺り動きバット15aがスロット部1を動き出し選択レバー17aにぶつかる位置を占める。」(第5頁左上欄5行?7行)
「選択レバー17は編みフィードの全長に亘って選択ジャッキ5のバット15と圧接するように形づくられ(第3図)、第2図に説明した方式で選択レバー17a及び17bが操作されるかぎり恒常的な選択操作の全期間で該選択ジャッキの制御を確実に行う。」(第5頁左上欄14行?右上欄1行)
「選択レバー17aが突出する選択群16aの前を選択ジャッキ5が通るとき(第5図)、選択レバー17aは針筒2のスロット部1にバット15aを押し入れる。」(第5頁右上欄2行?5行)
また、第2図乃至第5図からは選択レバー17a及び17bには、バット当接面に角度がつけられていることがみてとれる。
(イ)対比・判断
甲第2号証に記載された上記技術事項からみて、甲第2号証に記載された丸編機選針機構は、訂正明細書の請求項1に係る考案の選針機構と基本的な構成が相違しており、選択レバー17a及び17bのバット当接面についても、図面から当接面に角度がつけられていることが認められるにすぎないものであって、当接面に角度をつけることの技術的意義及び作用効果については、記載されておらず、示唆する記載も認めることができない。
そうすると、訂正明細書の請求項1に係る考案の「選針装置の選針レバーの先端部のフィンガの選針ジャックのバットに当接する角度を、選針ジャックの押し込みを所定のスピードとするよう、バットの突出長に対応して変更して成る」点については、甲第2号証に記載されたものから当業者がきわめて容易に想到することができるものとは認めることができない。
また、訂正明細書の請求項2に係る考案は、請求項1に係る考案の技術事項を引用して、更に構成を限定したものであるから、同様に甲第2号証に記載されたものから当業者がきわめて容易に想到することができるものとは認めることができない。
以上のとおりであって、訂正明細書の請求項1及び2に係る考案は、甲第2号証に記載された考案と同一であるとすることができないばかりでなく、甲第2号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるとすることもできない。
(ウ)むすび
したがって、請求人が主張する理由及び提出した証拠方法によっては、訂正明細書の請求項1及び2に係る考案の実用新案登録を無効とすることができない。
よって、結論のとおり審決する。
発明の名称 (54)【考案の名称】
編機用選針装置
(57)【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】回転する編成シリンダの外周の複数の縦溝に、編成針が上下動可能に配置されていると共に、突出長の異なる複数のバットを有する選針ジャックが、それぞれ揺動自在に編成針の下方位置に嵌装されている編機に用いられる編機用選針装置であって、該選針装置が上記選針ジャックのバットに対応するように配置され、且つ選針ジャックのバットに対して選択的に係合可能に編機の縦溝を含む平面内で揺動可能な複数の選針レバーを有し、編成に際して選針レバーを選択的に揺動させることにより、選針レバーの先端部のフィンガを前記選針ジャックのバットに当接させることにより編成シリンダ側に選針ジャックのバットを押圧して、該選針ジャックを揺動させ、それによって選針ジャックの下端と編機の上げカムとの係合による選針ジャックの上下動を制御して編成針を上下動させる編機用選針装置において、
該選針装置の選針レバーの先端部のフィンガの前記選針ジャックのバットに当接する角度を、選針ジャックの押し込みを所定スピードとするよう、バットの突出長に対応して変更して成ることを特徴とする編機用選針装置。
【請求項2】 選針装置が選針レバーを上下方向に適宜間隔で多段に積み重ねしてなる選針装置であって、当該選針レバーの先端部のフィンガのバットに当接する角度を、バットの突出長に応じて、下から上にあるいは上から下に順次大きくあるいは小さく構成して成る、請求項1記載の編機用選針装置。
【考案の詳細な説明】
[産業上の利用分野]
本考案は、編機用選針装置に関し、特に、電子柄出し靴下編機などにおいて柄編み編成する際の編成針の選針装置に関する。
[従来の技術]および[その解決すべき課題]
第4図?第7図に示すように、柄編み編機において、編地の編成を行うに際し、回転する編成シリンダ1の外周の複数の縦溝2に、編成針5が上下動可能に配置されていると共に、突出長(β)の異なる複数のバット3を有する選針ジャック(以下単にジャックという)4が、それぞれ揺動自在に編成針の下方位置に嵌装されている編機に用いられる編機用選針装置においては、該選針装置が上記選針ジャックのバットに対応するように配置され、且つジャック4のバット3に対して選択的に係合可能に編機の縦溝を含む平面内で揺動可能な複数の選針レバー(以下、フィンガという)7を有し、編成に際してフィンガ7を選択的に揺動させることにより、フィンガ7の先端部を前記選針ジャックのバットに当接させることにより編成シリンダ1側にジャック4のバットを押圧して、ジャック4を揺動させ、それによってジャック4の下端と編機の上げカム8との係合によるジャック4の上下動を制御して編成針を上下動させることにより、編成針5の選針が行われている。すなわち、上記フィンガ7により、第5図に模式的に示すように、ジャック4のバット3を編成シリンダー1方向に押圧して、当該ジャック4のバット3に対する反対側側面を編成シリンダー1に当接するようにするときには、ジャック4のバット3が当接シリンダー1下部の上げカム8に係合することができず、従って、ジャック4の上部に当接する編成針5が上昇運動をせず、その結果、編成針5による編目の形成を行わないが、一方、逆に、第6図に示すように、当該ジャック4のバット3を押圧しないときには、ジャック4が上げカム8と係合して、ジャック4の上部に当接する編成針5を上昇させ、編目の編成を行うようになっている。
かかるフィンガ7のジャック4との上記係合の形成または解除は非常な高速化で行われており、近時はその高速化の要求も益々増大しており、ジャック4は編成シリンダー1の溝2の壁面に非常な勢いで衝突する。かかる選針動作にあっては、ジャック4のバット3に対するフィンガ7の上記の如き押込スピードが、パターニングされたバット3の各々において一定であることが要求され、当該押込スピードに差異があったりすると、編成作用に乱れを生じたりする。
また、当該動作が適当に行われていないときには、ジャック4が中途で折れ(以下中折れという)たりする。
従来の選針装置にあっては、第8図に示すように、選針装置6から突出した複数フィンガ7の各バット当接面9のバットに当接する角度は上下方向に同じであり、上記の如き、選針動作に際し、中折れが生じ易く、その取換作業に多大の時間を要し、また押込スピードに乱れを生じ易く、編成の歩留も悪いものであった。
なお、当該選針装置について述べた考案の例としては、特開昭61-47856号公報、特開昭62-28451号公報、特開昭57-139543号公報、特公昭62-15664号公報、実開昭63-167187号公報が挙げられる。
本考案はフィンガによるジャックの押込スピードを一定にし、中折れを生せず、高速化に対処できる選針装置におけるフィンが部の改良技術を提供することを目的とする。
本考案の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面からも明らかとなるであろう。
[課題を解決するための手段]
本願において開示される考案のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば、下記のとおりである。
本考案では、選針装置のフィンガにおいて、突出長の異なるバットを有するジャックの当該バットの突出長に応じて、複数フィンガの各当該バットに当接する面(当接面)のバットに当接する角度を変えて構成してなる。
例えば、バット突出長が順次上から下にかけて長くなっている場合、フィンガの当該バット当接面のバットに当接する角度を順次上から下にかけて急傾斜となっていくように構成する。
[作用]
これにより、バット突出長が短いものについては、緩傾斜の当接面をもつフィンガにより、シリンダー側に押圧し、一方、バット突出長がこれよりも長いものについては、より急な角度の当接面をもつフィンガにより、シリンダー側に押圧することにより、これらフィンガによるジャックの押込スピードを一定にすることができる。
従って、極端に早いスピードでシリンダー溝壁面に衝突することも避けられ、ジャックの中折れを防ぐことができる。
それ故、編地の編成作用を円滑に行うことができる。
[実施例]
次に、本考案の実施例を図面に基づいて説明する。
第3図に示すように、厚みを有するジャック4の片側側面には突出したバット3-1?3-10が複数上下方向に適宜間隔を置いて突設されている。ここでは、バットが符号3-1?3-10で示す10個設けられている例を示す。
当該ジャック4は、シリンダー1の外周に複数適宜間隔を置いて配設され、当該ジャック4におけるバット3-1?3-10は編地の編成柄に応じてパターニングされているが、当該図示例では、パターニングの様子の図示を省略してある。
当該ジャック4のバット3-1?3-10の突設された反対側側面40は、当該バットの突設された側面とは平行ではなく、図示例のように、シリンダー1の側面との間で、上から下にかけて、順次その距離αが大きくなるようにして選針動作が行われる。
すなわち、ジャック4は、図示F点を支点として、フィンガ7により押圧されることにより、その下端部41を矢標42で示すように、シリンダー1側に押圧(押込)され、前記のように選針動作が行われる。尚その際シリンダー1は一定の回転スピードで回転している。シリンダー1の構2に嵌挿されたジャック4も一緒に回転する。また、フィンガ7は電磁駆動あるいは圧電駆動などにより一定のスピードで押圧動作をしている。
上記バット3-1?3-10は、上から下に向って、順次、その突出長βが長くなっている。
従来例では、第8図に示すように、各フィンガ7‥‥のバット当接面9‥‥の各バットに当接する角度を、上下方向に同じものとしているが、本考案では、第1図に示すように、当該角度を、第3図に示すような突出長が上下方向に異なるジャック4のバット3-1?3-10に対応して変えて構成する。
すなわち、この第1図は、第8図に示すような、選針装置6のフィンガ7の部分のみを取り出し模式的に図示したもので、当該フィンガ7を上方向から見て図示してある。各フィンガ7‥‥は、第8図にも示すように、上下方向に間隔を置いて複数積み重ねして配設されており、当該選針装置6からその先端部70が同じ長さに外部に突出している。ここでは、フィンガ7について、符号7-1?7-5で5個設けられている例を示す。
図示のように、バットの突出長βに対応して、上から下にかけて、当該フィンガ7-1?7-5の各先端部70-1?70?5の各バット当接面9-1?9-5のバットに当接する角度θ_(1)?θ_(5)を変えてある。
すなわち、当該角度θ_(1)?θ_(5)は、当該フィンガ7-1?7-5の各先端部70-1?70-5の両側に対し直角に線(一点鎖線で示す)を引いたときに、当該各線と各当接面9-1?9-5とのなす角度であり、当該角度θ_(1)?θ_(5)は上から下にかけて順次急傾斜に構成してある。
尚、第1図では、図示便宜上、上記線はフィンガの先端部の両側面に対し直角に引いていないが、当該角度θ_(1)?θ_(5)は、当該直角に引いた線との間で形成される角度と定義される。
このように、ジャック4のバット3-1?3-10の突出長βが異なることに応じて、第1図に示すように、バットに当接する角度θ_(1)?θ_(5)を変えることにより、突出長βの短い例えばバット3-1に対しては、当該角度の緩やかな例えば角度θ_(1)をもつフィンガ7-1の先端部70-1のバット当接面9-1により押圧動作をさせるようにし、一方、突出長βの長い例えばバット3-5に対しては、それよりも角度が急な例えば角度θ_(5)をもつフィンガ7-5の先端部70-5のバット当接面9-5により押圧動作させるようにする。
ここで、徒来例と本考案とを第2図および第3図に基づいて対比説明する。
第2図(B)に示すように、従来の如く、フィンガについて、その角度{(第2図(A)の角度θ_(3)に合せてある。}を上下方向に同じとしたフィンガ70-3に、突出長βに差異のある例えばバット3-3とバット3-1とが当接する場合、突出長の長いバット3-3は、矢標Aで示すように、フィンガ70-3の図示右コーナーから左コーナーへと上昇して、第3図に示す押込距離α_(10)を移動する。
一方、突出長の短いバット3-1(仮想線で示す)は、矢標Bで示すように、フィンガ70-3の当接面を上昇して、第3図に示す押込距離α_(1)を移動する。
従って、このように突出長に長短があるにもかかわらず、各フィンガのバット当接面の角度を同じとすると、バット3-1はフィンガ70-3の左上部コーナー部のみしか当接しないので、押込距離α_(1)を非常に早いスピードでシリンダー1側に押込されることになる。
すると、バット3-1部位をフィンガ70-3により押圧されたときのジャック4は急激な勢いでシリンダー1の側面に衝突し、当該バット3-1の部位で、ジャック4に亀裂を生じ、中折れし、ジャック4の取換え作業に多大な時間を要したり、また、編地の編成に乱れを生じ、製品歩留りを著しく悪化させることになる。
これに対し、本考案では、かかる事態を回避するために、これよりも突出長の短い例えばバット3-1,3-2に対しては、第2図(A)に示すように、当該角度θ_(1),θ_(2)をそれに応じて小さくしてやることにより、すなわち、角度が緩やかになったことにより、フィンガにより押込が急激に行われないようにし、突出長の長いバット3-3に対するものと同じ時間内に押込距離αをジャック4の下端部41が移動するようにする。
換言すれば、第2図(A)に示す中間のバット3-2を標準としたら、それよりも突出長の長いバット3-3に対してはその角度θ_(2)よりも角度の急な角度θ_(3)のフィンガ7-3とし、また、それよりも突出長の短いバット3-1に対しては、その角度θ_(2)よりも角度の緩やかな角度θ_(1)のフィンガ7-1として、中間のバット3-2とそれよりも突出長に長短のあるバット3-3,3-1との押込距離αにおけるジャック4の下端部41の移動時間を揃えてやることにより、ジャック4の上下のバット3-1‥‥の突出長の差異によって急激に押込されることがないようにする。これにより、中折れもなく、一定のスピードで押込動作をすることができる。
従って、本考案によれば、中折れによるジャックの煩雑な取換作業も必要とせず、編成作業が円滑に行われ、特に、中折れの生じ易い高速で選針動作を行うときに有利となる。
以上本考案者によってなされた考案を実施例にもとづいて具体的に説明したが、本考案は上記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
例えば、前記実施例では、ジャックのバットが上から下に向って順次その突出長が長くなる例を示したが、この逆の場合であっても差支えないし、また、突出長は異なるがランダムにその長さが異なる場合、さらには、個々に突出長の異なるものを複数組合せる場合などの場合であってもよい。
本考案は、フィンガを作動させる選針装置として、圧電式、電磁式のみならずその他の方式のものであっても適用することができる。
[考案の効果]
本願において開示される考案のうち代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、下記のとうりである。
本考案によれば、フィンガによるジャックの押込スピードを上下で一致させることができ、ジャックの中折れがなく、編地の編成作業を円滑に行うことができた。
【図面の簡単な説明】
第1図は本考案の実施例を示す説明図、第2図(A)は本考案の実施例を示す説明図、第2図(B)は従来例を示す説明図、第3図は本考案の実施例を示すシリンダーとジャックとの関係を示す一部断面側面図、第4図は従来例を示す断面図、第5図?第7図は各々フィンガの動作説明図、第8図は従来例を示す選針装置の外観斜視図である。
1……編成シリンダー
2……縦溝
3……バット
4……選針ジャック
5……編成針
6……選針装置
7……選針レバー(フィンガ)
8……上げカム
9……バット当接面
θ_(1)?θ_(5)……バットに当接する角度
β……バットの突出長
【図面】








訂正の要旨 訂正の要旨
1.明細書の請求項1の記載
「【請求項1】編機における編成シリンダーの外周の複数の縦溝に、突出長の異なるバットを突設した選針ジャックを、当該ジャックに当接する編成針を上下動させるようにして揺動自在に複数嵌装し、当該ジャックの当該バットを、適宜間隔で複数配設した選針レバーの先端部のバット当接面に当接して前記編成シリンダー側に選択的に押圧して前記編成針の選針を行う編機用選針装置において、当該選針装置の前記各選針レバーの先端部の各バット当接面のバットに当接する角度を、選針ジャックに突設したバットの突出長に対応して変更して成ることを特徴とする編機用選針装置。」を、減縮と明りょうでない記載の釈明を目的として、
「【請求項1】回転する編成シリンダーの外周の複数の縦溝に、編成針が上下動可能に配置されていると共に、突出長の異なる複数のバットを有する選針ジャックが、それぞれ揺動自在に編成針の下方位置に嵌装されている編機に用いられる編機用選針装置であって、該選針装置が上記選針ジャックのバットに対応するように配置され、且つ選針ジャックのバットに対して選択的に係合可能に編機の縦溝を含む平面内で揺動可能な複数の選針レバーを有し、編成に際して選針レバーを選択的に揺動させることにより、選針レバーの先端部のフィンガを前記選針ジャックのバットに当接させることにより編成シリンダ側に選針ジャックのバットを押圧して、該選針ジャックを揺動させ、それによって選針ジャックの下端と編機の上げカムとの係合による選針ジャックの上下動を制御して編成針を上下動させる編機用選針装置において、
該選針装置の選針レバーの先端部のフィンガの前記選針ジャックのバットに当接する角度を、選針ジャックの押し込みを所定のスピードとするよう、バットの突出長に対応して変更して成ることを特徴とする編機用選針装置。」と訂正する。
2.訂正した請求項1の記載と請求項2の記載を整合させるために、不明瞭な記載の釈明を目的として、請求項2の記載
「【請求項2】選針装置が選針レバーを上下方向に適宜間隔で多段に積み重ねしてなる選針装置であって、当該選針レバーのバット当接面のバットに当接する角度を、バットの突出長に応じて、下から上にあるいは上から下に順次大きくあるいは小さく構成して成る、請求項1記載の編機用選針装置。」を、
「【請求項2】選針装置が選針レバーを上下方向に適宜間隔で多段に積み重ねしてなる選針装置であって、当該選針レバーの先端部のフィンガのバットに当接する角度を、バットの突出長に応じて、下から上にあるいは上から下に順次大きくあるいは小さく構成して成る、請求項1記載の編機用選針装置。」と訂正する。
3.訂正された実用新案登録請求の範囲の各請求項の記載と考案の詳細な説明の記載を整合させるために、不明瞭な記載の釈明を目的として、明細書の第2頁第8行乃至同頁第17行(実公平6-50554号公報の第2欄第10行乃至第3欄第2行)における記載
「第4図?第7図に示すように、柄編み編機において、編地の編成を行うに際し、編成シリンダー1の外周の多数の縦溝2内に、バット3を突設した選針ジャック(以下単にジャックという)4を、当該ジャック4に当接する編成針5を上下動するようにして嵌挿して、当該ジャック4のバット3を、選針装置6の選針フィンガ(選針レバー)(以下単にフィンガという)7により選択的に押圧して編成針を行うことが行われている。」を、
「第4図?第7図に示すように、柄編み編機において、編地の編成を行うに際し、回転する編成シリンダ1の外周の複数の縦溝2に、編成針5が上下動可能に配置されていると共に、突出長(β)の異なる複数のバット3を有する選針ジャック(以下単にジャックという)4が、それぞれ揺動自在に編成針の下方位置に嵌装されている編機に用いられる編機用選針装置においては、該選針装置が上記選針ジャックのバットに対応するように配置され、且つジャック4のバット3に対して選択的に係合可能に編機の縦溝を含む平面内で揺動可能な複数の選針レバー(以下、フィンガという)7を有し、編成に際してフィンガ7を選択的に揺動させることにより、フィンガ7の先端部を前記選針ジャックのバットに当接させることにより編成シリンダ1側にジャック4のバットを押圧して、ジャック4を揺動させ、それによってジャック4の下端と編機の上げカム8との係合によるジャック4の上下動を制御して編成針を上下動させることにより、編成針5の選針が行われている。」と訂正する。
審理終結日 2000-02-04 
結審通知日 2000-02-29 
審決日 2000-03-14 
出願番号 実願平1-6498 
審決分類 U 1 112・ 121- YA (D04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐々木 正章  
特許庁審判長 村本 佳史
特許庁審判官 市野 要助
佐藤 久容
登録日 1995-10-18 
登録番号 実用新案登録第2085287号(U2085287) 
考案の名称 編機用選針装置  
代理人 丸山 幸雄  
代理人 岡本 昭二  
代理人 大塚 康徳  
代理人 松本 研一  
代理人 竹内 卓  
代理人 丸山 幸雄  
代理人 松本 研一  
代理人 大塚 康徳  
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