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審決分類 審判 全部申し立て   A47L
審判 全部申し立て   A47L
管理番号 1025098
異議申立番号 異議1999-72985  
総通号数 15 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2001-03-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-08-02 
確定日 2000-06-05 
異議申立件数
事件の表示 登録第2589773号「たわし」の実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 登録第2589773号の請求項1ないし2に係る実用新案登録を維持する。
理由 1. 本件は、実用新案登録2589773号に関し、その実用新案登録請求の範囲【請求項1?2】に係る考案につき、受けた登録を取り消すべき旨請求して提起された実用新案登録異議申立事件に存する。
2. 事件の経緯の概要は、以下のとおりである。
1) 出 願 日: 昭和62年4月24日出願{実願平3-73043( 実願昭62-63125の分割出願)}
2) 登 録 日: 平成10年11月27日
3) 公 報: 平成11年2月3日実用新案登録公報発行
4) 異 議: 平成11年8月2日実用新案登録異議申立人川嶋康宏 より実用新案登録異議申立書を提出
5) 取消理由 : 平成11年9月30日付けで、当審が取消理由を通知
6) 意見書等 : 平成11年12月20日実用新案権者より異議意見書 (後日補正)並びに乙第1?第6号証を提出
7) 補 正 書: 平成11年12月24日実用新案権者より、上記異議 意見書の全文補正書を提出
3. 本件請求項1,2に係る考案は、明細書の実用新案登録請求の範囲に記載されたつぎのとおりのものである。
「【請求項1】 繊維条1を編成してなるネット生地10の表面に、金属平線2を織り込んでネット生地10の表面のみに金属平線のパイル2′を形成してなることを特徴とするたわし。
【請求項2】 前記ネット生地10を、金属平線2のパイル2′が表側となるように袋20となし、その袋の中に芯体30を封入してなる前記実用新案登録請求の範囲第1項記載のたわし。」
4. [異議申立人の主張]
異議申立人は、以下のとおり主張する口吻と思料される。
「1) 請求項1に係る考案の登録について
イ) 甲第1号証における基布、片面に金属膜を設けた合成樹脂フィルムテープは、それぞれ本件登録実用新案の請求項1に係る考案のネット生地、金属平線に相当すること、甲第1号証に記載のたわしもその裏側には金属平線がほとんど露出しないので表面は繊維の柔らかいソフト感がそのまま附与され、裏側を研磨力の強いたわしとして有効に使用できるという効果をもつ点においても一致しているから、甲第1号証には請求項1に係る考案が記載されているというべきである。
ロ) しからずとしても、少なくとも甲第1号証から、当業者がきわめて容易に想到しうるものであるというべきである。
2) 請求項2に係る考案の登録について
甲第2号証に記載されたたわしは、ネット生地に相当する平布地を、金属平線に相当する軟質プラスチックフィルムテープの屈曲が表側になるように袋となし、その袋の中にスポンジ等の中芯を封入してなるものであるから、ネット生地を、金属平線のパイルが表側となるように袋となすことは、いわゆる当業者がきわめて容易に想到しうるものである。
従って、甲第2号証に記載のたわしと甲第1号証に記載のたわしとを寄せ集めることによって、ネット生地を、金属平線のパイルが表側となるように袋となすことは、その考案の属する技術の分野における通常の知識を有するものがきわめて容易になしうる程度のことにすぎない。
3) 外の取り消し理由
考案の詳細な説明において、繊維条と金属平線を一緒にしないで、ネット地にあとから金属平線を織り込む手段について、その具体的構成が実質的に記載されておらず、いわゆる当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていない。」
5. [提出刊行物等証拠類]
1) 申立人は、右主張を裏付ける為以下の証拠方法を提出している。
(1) 甲第1号証: 「実公昭56一6058号公報」(以下、「第1引用例」という。)
(2) 甲第2号証: 「実公昭57-44942号公報」(以下、「第2引用例」という。)
2) 他方、実用新案権者の提出したところの乙号証の一部は、以下のとおりのものである。
イ) 乙第3号証:本件考案のたわし生地見本片
ロ) 乙第4号証:他社製のたわし生地見本片
ハ) 乙第6号証:平成6年5月10日付け「和歌山県工業技術センターの試験分析等成績書」の写し
6. 刊行物の記載
1) 申立人の提出した第1引用例には、以下の事項が、図面とともに記載されている。
イ) 「(1)合成樹脂フイルムの面にアルミ箔又は銅等の金属膜を設けてなる平糸状細幅のフイルムテープを、布地となる経緯両糸又はその一方と一緒に織成し、基布の面に前記フイルムテープの織目を露出せしめてなるたわし。
(2) 前記実用新案登録請求の範囲第1項記載のたわしにおいて、基布の表面に前記フイルムテープのパイルを形成したもの。」(公報第1頁左欄実用新案登録請求の範囲の項)
ロ) 「以下その詳細を図面の実施例について説明すると、1はフイルムテープであり、合成樹脂フィルムlaの面にアルミ箔又は銅等の金属膜lbを設けて平糸状細幅に形成し、それを布地となる経緯両糸2a,2b又はその一方と一諸に織成してフイルムテープ入り基布2となすものである。したがって基布2の表裏両面には前記フイルムテープ1の織目が前記経緯両糸2a,2bと共に露出する。第1図は基布2を円筒状に織成した場合であり、これに織込まれるフイルムテープ1を緯糸にしてパイル織りすれば第3図のように基布2の表面にはフィルムテープのパイル1′が形成され、裏面側に前記両糸と共にフィルムテープの平織目1″が形成される。」(公報第1頁左欄26行?右欄2行目)
ハ) 「フィルムテープ1の金属膜lbはアルミ又は銅、或いは同質の金属を合成樹脂フイルムlaの面に真空蒸着により接着させるとよい。このようにすると金属膜lbとフイルムlaとが完全に一体化するからこのようにして得られたフィルムテープは合成樹脂特有の抗張力,伸長力が大でありながら金属膜によつて通常の金属線より柔らかで、たわしとしての抵抗感があり、又アルミ箔は任意に着色可能であるから全体をカラフルにつくれる。
本考案は上述のように、合成樹脂フィルムの面にアルミ等の金属膜を設けてなるフイルムテープを、布地となる経緯両糸又はその一方と一緒に織成して基布の面にフィルムテープの織目を露出せしめたものであるから、全体が柔らかくて手で特ち易いので使い易いばかりでなく、フィルムテープが基布に織込まれてたわしとしての適度な抵抗感で従来のスポンジたわしや金属線を絡めてつくった金属たわしに較べ柔かすぎたり、かたすぎるようなことがなく、従って傷をつける心配もなく、汚れを効果的に落すことができる。」(公報第1頁右欄5行?25行目)
2) 第2引用例には、以下の事項が図面とともに記載されている。
イ) 「本考案は軟質プラスチックシートの面にアルミ蒸着等の金属膜を設けてなるフイルムテープを強度のある糸を添え糸にして平布地を編成し、それをたわしにしたもので、以下その詳細を図面の実施例について説明すれば次の通りである。1はフィルムテープであり、軟質プラスチックシートlaの面にアルミ蒸着、又はアルミ箔、アルミ塗膜等の金属膜lbを形成したもので、2は前記フィルムテープ1を補強する為の繊維糸等の添え糸であり、この両方を一つにして第3図のような平織又は第4図のように亀甲編等の平布地3をつくる。このようにすると添え糸2は細いが,フイルムテープ1には幅があるために目が荒くなる上に、そこへフイルムテープが屈曲して表面にあらわれるので平布地3の表裏両面にエッジの立つたザラツキが形成される。
この平布地3を適当な大きさにしてそのままたわしとして使用するか又は2つ折りにして袋状となし、又はその袋の中にスポンジ等の中芯4を入れて使用する。」(公報第1頁左欄19行?同頁右欄8行目)
7. 対比・判断
1) 本件【請求項1】に係る考案について
(1) 第1引用例に記載された「基布2」は、大略本件【請求項1】に係る考案(以下、「本件考案」という。)の「生地」に相当すると捉えることができる(ただ、第1引用例に記載の考案の基布は織成であるのに対し、本件考案の生地は、編成である。詳細は、後述する。)。
また、第1引用例に記載の「合成樹脂フイルムの面にアルミ箔又は銅等の金属膜を設けてなる平糸状細幅のフイルムテープ」は、本願考案の「金属平線」に相当しており、この金属平線が、生地の表面にパイル形成されて「たわし」を構成している考案が、第1引用例に開示されていると捉えることができるものである。
しかしながら、第1引用例に記載の考案は、前記のとおり生地が織成であり、本願考案の「編成されたネット生地」とは、相違するものである。
さらに、第1引用例に記載のたわしは、金属平線を、生地となる経緯両糸又はその一方と一緒に織成し生地の表面に金属平線のパイルを形成するものである(本件考案は、予め編成してなるネット生地の表面に、金属平線のみのパイルを形成するのに対し、第1引用例に記載のたわしは、織成と同時にパイルの形成をなすものである。)。
つまり、第1引用例に記載の金属平線には常に添え糸(経緯両糸又はその一方)が設けられており、金属平線のみを別途織り込むものではないというべきである{第1引用例における「フイルムテープを、布地となる経緯両糸又はその一方と一緒に」とは、
イ) フイルムテープを経緯両糸と一緒に織成する場合、
ロ) フイルムテープを経糸と一緒に織成する場合、
ハ) フイルムテープを緯糸と一緒に織成する場合、
の3通りが選択肢として考えられるが、このことは金属平線単体のみを別途織り込む場合は全く存在しないことを含意していると捉えられる。}。
上記のとおりであるから、本件考案は、第1引用例に記載された考案であると解することはできないというべきである。
それ故、本件考案は、第1引用例に記載された考案であるから、実用新案法第3条第1項第3号に該当しており、ために本件考案につき受けた登録を、取り消すべきである旨主張する異議申立人の論旨は、採用することができない。
(2) 次に、本件考案が第1引用例に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に推考することができたか否かにつき、審案する。
もとより、本件考案者は、第1引用例に記載の考案即ち「金属平線に繊維糸を添えて一緒に織成した」技術を十分知悉のうえ、斯かる従前の技術のもつ問題点を克服すべく本件考案を創成したものというべきである。
即ち、従前の手法は、金属平線に繊維糸を添えて一緒に織成するために、強度の弱い金属平線が織成中に切れ易いという問題があったこと、
又加工機械も特殊な機構を取入れた高価なものとなりがちであったこと、
その上、でき上ったものは表裏両面にフイルムテープの織り目が露出するため、繊維糸の柔らかさが殆んど殺されてしまうという問題があった。
本件考案は、かかる従来の技術の有する上記のような問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、
イ) 繊維条と金属平線を一緒にしないで、
ロ) ネット地にあとから金属平線を織り込むことを可能にしてたわし生地の表面のみに金属平線のパイルを形成すること、
ハ) これによって繊維の柔らかさを保ちながらたわしとしての研磨力を高め、ニ) 且つ製作加工を容易に行ない安価で品質の優れたたわしを提供しようとするものである。
斯かる課題解決を目途として、本件考案におけるたわしは、
「繊維条1を編成してなるネット生地10の表面に、金属平線2を織り込んでネット生地10の表面のみに金属平線のパイル2′を形成してなる」ものである。
そして、本件考案の右構成要件に基づき、繊維条1を網状に編成してネット生地10となし、このネット生地の表面に、金属平線2を繊り込んでネット生地10の表面のみに金属平線のパイル2′を形成したので、
イ) 金属平線2の生地10への織り込みは、繊維条1のネット編成とは別であり、又従来のように添え糸を要しないため製作加工が容易で、加工機械も通常一般のものが用いられる為コストの低減を図ることができること、
ロ) さらにたわしの裏側は金属平線がほとんど露出しないので表面は繊維の柔らかいソフト感がそのまま附与され、裏側を研磨力の強いたわしとして有効に使用できること、
という特有の効用が、もたらされるものである。
したがって、上記の如き目的、構成、効果の整合性を担った本件考案を全体的に観察すると、本件考案につき、第1引用例に記載の考案に基づ、当業者においてきわめて容易に推考することができたものとすることは相当でないというべきである。
よって、本件考案は、第1引用例に記載された考案に基づいて、当業者が、きわめて容易に推考することがきたものであるから、本件考案につき、受けた登録を取り消すべきであるとする異議申立人の主張は採用の限りではない。
2) 本件【請求項2】に係る考案について
本件【請求項2】に係る考案は、前記ネット生地10を、金属平線2のパイル2′が表側となるように袋20となし、その袋の中に芯体30を封入してなる前記実用新案登録請求の範囲第1項記載のたわしであり、前記本件考案を引用して本件考案以上に構成要件を特定してなるたわしである。
前記において審案したとおり、第1引用例の記載を以ては、そもそも本件考案の構成を包括しないところである。偶々袋生地に芯体を封入したたわしを開示する第2引用例に記載の考案が存在したとしても、第1引用例に記載の考案は、本【請求項2】に係る考案の技術的前提を欠いているものであるところ、これ等両引用例に記載の考案を如何様に組み合わせても、本【請求項2】に係る考案を創成する限りではないというべきである。
故に、本【請求項2】に係る考案は、第1,第2の各引用例に記載の考案に基づいて、当業者がきわめて容易に推考することを得たものであるところ、これにつき受けた登録は取り消しを免れない旨の異議申立人の主張は、採用することができない。
8. 外の取り消し理由
1) 外に、異議申立人は、明細書の記載不備を理由に本件の登録を取り消すべき旨主張する。その具体的な内訳は、以下のとおりである。
「本件実用新案登録公報第2頁【0005】に「繊維条と金属平線を一緒にしないで、ネット地にあとから金属平線を織り込むことを可能にしてたわし生地の表面にのみに金属平線のパイルを形成する」と記載されると共に、【0015】の【考案の効果】として、「製作加工が容易で、加工機械も通常一般のものが用いられる為コストの低減を図る」と記載されているが、通常一般の加工機械(横編み機であれたて編み機であれ)で、ネット地にあとから金属平線を織り込むこと、しかもネット生地の表面にのみ金属平線のパイルを形成するように織り込むことは実質上不可能である。
而して、本件登録実用新案の明細書には、かかる手段の具体的構成は何ら
記載されておらず、かかる手段は周知のものでもない。
従って、考案の詳細な説明は、その考案の属する技術の分野における通常
の知識を有するものが容易にその実施をすることができる程度に明確かつ十
分に記載されていないというべきである。」
2) そこで、右主張につき審案する。
異議申立人の主張は、察するに、織物組織は、たて糸とよこ糸との2つの交錯方式,すなわちたて糸がよこ糸の上に出るか,たて糸がよこ糸の下に入るかによって作られる”浮き”と“沈み”の交錯点である組織点を,織物の組合わせとして持つと捉えられるが、編成してなるネット生地では、たて糸もよこ糸も存しないから、織り込むということは、そもそも不可能であるというにあると思料される。
しかし、論旨は、文言の形式に固執し過ぎるという憂いが存するものというべきであろう。
本件考案におけるネット生地の表面に、金属平線を織り込んでネット生地の表面のみに金属平線のパイルを形成することに関する実施例は、明細書の【0008】?【0010】に記載されている如き態様のものである。
即ち、第2図(a)は、普通に知られている「よこ編みの編み目生地を用いたもの」であり、金属平線をこのものの繊維条一本を潜った後上方で繊維条を(二本)跨いでまた繊維条一本を潜る如く下降し再び上方で繊維条を跨ぐ態様を採っておりこの手法自体格別不可能なことではないというべきである。
なお、本件考案における「織り込んで」を、厳密な意味での経緯両糸の交差による織成と捉えるのは相当ではないというべきである。
このことは、実用新案登録権者が提出した前記乙第3?4号証に徴表される如く、現に本件考案における技術的思想の創作のもとに、繰り返し製造されたことを暗に裏付ける間接事実が垣間見られることから推して、本件考案の実現可能性が推測せられていると捉えるべきである。
また、同じく実用新案登録権者の提出したところの前記乙第6号証に示された、たわし生地の組織図からも、暗に、本件考案を実現したことが推認せられ、本件考案の実現可能性が徴表せられているものということができよう。
したがって、斯かる徴表事実(間接証拠事実)群を総合考量するときは、本件考案の、実現可能性が、担保されていると解するのが相当である。
それ故、本件考案につき、実施不可能であるとする論旨は、当を得ないものというべきである。
前記のとおり、本件考案の、実現可能性が担保されていると解すべきであるところ、具体的手段が明細書上示されていなくても、斯界における通常の知識を有する者にとっては、実現可能な状況のもとに存するものと捉えて何等妨げない。
よって、このくだりにおける異議申立人の主張は、採用することができない。
9. 以上のとおりであるから、本件考案につき受けた登録、及び本件【請求項2】に係る考案につき受けた登録を、それぞれ、取り消すべきであるとする異議申立人の主張は、全て採用することができない。
10. 結語
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2000-05-10 
出願番号 実願平3-73043 
審決分類 U 1 651・ 121- Y (A47L)
U 1 651・ 113- Y (A47L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 岡田 孝博  
特許庁審判長 田中 秀夫
特許庁審判官 藤原 稲治郎
藤本 信男
登録日 1998-11-27 
登録番号 実用新案登録第2589773号(U2589773) 
権利者 西田 起夫
大阪府南河内郡美原町さつき野西1丁目2-15
考案の名称 たわし  
代理人 森脇 康博  
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