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審決分類 審判 全部申し立て   H04R
審判 全部申し立て   H04R
管理番号 1025112
異議申立番号 異議1998-71702  
総通号数 15 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2001-03-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-04-08 
確定日 2000-09-01 
異議申立件数
事件の表示 登録第2550327号「オーディオ再生装置」の請求項1ないし2に係る実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 登録第2550327号の請求項1ないし2に係る実用新案登録を取り消す。
理由 1.手続きの経緯
実用新案登録第2550327号に係る出願は、平成1年10月31日に実用新案登録出願され、平成9年6月13日にその考案について実用新案権の設定登録がなされ、その後その実用新案登録について廣田修一より実用新案登録異議の申立がなされ、当審より取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年11月2日に実用新案権者より実用新案登録異議意見書とともに訂正請求書が提出され、この訂正請求書の訂正請求に対して当審より訂正拒絶理由通知がなされ、その指定期間内に実用新案権者より意見書が提出されたものである。

2.訂正の適否についての判断
(1) 訂正明細書の請求項1ないし2に係る考案の要旨は、その実用新案登録請求の範囲の請求項1ないし2に記載された次のとおりのものと認める。
「1.オーディオ信号(Sa)の音量および音質を設定する信号レベル設定部(1)と、該信号レベル設定部(1)から入力されるオーディオ信号(Sa)に残響効果を付加して所定の音場を生成するための音場生成部(2)とを有し、
該音場生成部(2)は、前記オーディオ信号(Sa)に対してフィルタ係数等をもとに演算処理を行い、該演算処理の結果として得られる残響信号を利用して前記所定の音場に制御するディジタル信号処理回路により構成されるオーディオ再生装置において、前記所定の音場として設定されている第1の音場を消滅させて音場効果のない第2の音場を生成する際に、該第1の音場を生成するために該第1の音場の消滅直前に採用したフィルタ係数等を含む該第1の音場に対応する音場コードを記憶し保持する音場コード保持部(3)と、
該第1の音場を生成するために該第1の音場の消滅の直前に採用した音量および音質の一方または両方からなる信号レベルを記憶し保持する信号レベル保持部(4)と、
該第1の音場に再び設定する場合に、前記音場コード保持部(3)および前記信号レベル保持部(4)にそれぞれ保持されている音場コードおよび信号レベルを対にして呼び出す音場切替スイッチからなる呼出手段(5)とを備え、該呼出手段(5)の音場切替スイッチの操作により、該音場コードおよび該信号レベルを対にして呼び出し、前記音場生成部(2)および前記信号レベル設定部(1)の各内容を前記第1の音場を生成するための状態に復帰させて前記オーディオ信号(Sa)を再生することを特徴とするオーディオ再生装置。
2.オーディオ信号(Sa)の音量および音質を設定する信号レベル設定部(1)と、該信号レベル設定部(1)から入力されるオーデイオ信号(Sa)に残響効果を付加して所定の音場を生成するための音場生成部(2)とを有し、
該音場生成部(2)は、前記オーディオ信号(Sa)に対してフィルタ係数等をもとに演算処理を行い、該演算処理の結果として得られる残響信号を利用して前記所定の音場に制御するディジタル信号処理回路により構成されるオーディオ再生装置において、
予め設定された複数種の音場のそれぞれに対応するフィルタ係数等を含む複数種の音場コードを記憶し保持する音場コード保持手段(3′)と、該複数種の音場コードにそれぞれ適応する音量および音質の一方または両方からなる信号レベルを記憶し保持する信号レベル保持手段(4′)と、前記複数種の音場コードの一つと該音場コードの一つに適応する前記複数種の信号レベルの一つの対を選択する音場選択スイッチからなる選択手段(6)とを備え、該選択手段(6)の音場選択スイッチの操作毎に、前記複数種の音場コードの一つと該音場コードの一つに適応する前記複数種の信号レベルの一つの対を順次切り替えるようにして前記音場生成部(2)および前記信号レベル設定部(1)の各内容を設定して前記前記オーディオ信号(Sa)を再生することを特徴とするオーディオ再生装置。」
(2) 引用刊行物記載の発明
一方、当審が訂正拒絶理由通知書で引用した特開昭63-87000号公報(以下「刊行物」という。異議申立人が引用した甲第1号証)には、以下の記載がある。
a.「この発明は、ソース再生音に付加する音場特性とソース再生音自身の周波数特性を組み合わせて記憶し、同時に再現できるようにした再生特性制御回路に関する。」(第1ページ右下欄第3行ないし第6行参照)
b.「ディジタルイコライザ1でフィルタリングされた出力はサウンドフィールドプロセッサ2に入力される。このプロセッサ20はCPU4からの指令に基づき反射音パターンメモリ3に記憶された反射音データと入力信号とを畳み込み演算をして音場効果信号を生成する。反射音データの各パラメータ(後述するように、ルームサイズ、ライブネス、イニシャルディレイ、ハイパスフィルタ、ローパスフィルタ等がある)は変更することができる。
メモリ5はディジタルイコライザ1において設定されたパラメータと反射音パターンメモリ3内の反射音データのパラメータを変更して作った別の反射音データのパラメータを組み合わせて記憶している。CPU4からの指令により、それらのパラメータを同時に呼び出して、ディジタルイコライザ1とプロセッサ2を制御する。これにより、呼び出された周波数特性がソース信号自身の再生周波数特性付加となり、また呼び出された反射音のパラメータに基づいてソース再生音に所定の音場特性が付加される。
ディジタルイコライザ1の出力はメイン信号としてD/A変換器6を介して出力される。また、プロセッサ2から出力される音場効果信号は、前方音の信号がD/A変換器7を介して出力され、後方音の信号がD/A変換器8を介して出力される。」(第3ページ左上欄第6行ないし右上欄第12行参照)
c.「(10)ディジタルイコライザパラメータ設定部100
ディジタルイコライザ42(第2図)のパラメータの設定を行なう部分である。ここでは、第6図に示すように、帯域を低、中、高の3バンドに分けて、各帯域について中心周波数fL、fM、fHレベル、Qを設定できる。また、ローカットおよびハイカットのカットオフ周波数fC およびスロープを設定できるようになっている。
各帯域の中心周波数fL、fM、fHは、1/6 octステップでそれぞれ次の範囲で設定できる。
fL:20?500Hz fM:100?5kHz fH:1k ?20kHz ただし、fL<fM<fH の条件で設定される。レベルは各帯域とも0.1dBステップで-6?+6dBの範囲で設定される。」(第8ページ左下欄第19行ないし右下欄第16行参照)
d.「○1 イコライザオン/オフキー110
ディジタルイコライザ42の機能をオン/オフするためのキーである。このキー110がオフされると、ディジタルイコライザ42は特性がフラットになる。また、アナログソース10が入力されている場合は、メイン信号の経路としてアナログストレート経路12が生かされる(第2図)。なお、オフされてもオフされる前のパラメータ値はメモリ保持される。また、このキー110がオフされるとサウンドフイールドプロセッサ20がオフされているとき(音場効果オン/オフキー135(第4図)による。)は、表示部102の表示は消え、バックライトも消える。このときの状態を第16図に示す。また、サウンドフィールドプロセッサ20がオンされているときは、周波数スケール104のみが表示される(上部の▼104aはいずれも表示されないので特性がフラットであることが示される。)。イコライザオン/オフキー110がオンされると(他のイコライザ関連キー112,114等の操作によってもオンする。)、各パラメータがオフする前の状態に復帰する。」(第9ページ左下欄第4行ないし右下欄第5行参照)
e.「○3 音場効果オン/オフキー135
音場効果音の創生処理をオン/オフするキーである。オンすれば音場効果音が創生され、オフすれば音場効果音が創生されなくなる(オフする前の状態は保持する。)。オフ状態からオンすれば(他の音場効果関連キー140,144,146等によってもオンすることができる。)、オフする前の状態に復帰する。
オフのとき、前記ディジタルイコライザ42もオフ(イコライザオン/オフキー110で操作)していれば、表示部90は何も表示されなくなり、ディジタルイコライザ42がオンしていれば、表示部90に「DSP OFF」(「DSP」はサウンドフィールドプロセッサ20を意味する。)と表示される。
○4 パラメータ選択キー140
音場効果のパラメータを変更する場合にパラメータの種類を選択するキーで、キーを押すごとにパラメータの種類が順送りで選択される。」(第10ページ左下欄第16行ないし右下欄第14行参照)
f.「○9 プログラムキー150
16種のファクトリプログラムと16種のユーザプログラムのうち1つを選択するキーである。16個のキーを有し、それぞれファクトリプログラムとユーザプログラムが1種類ずつ割り当てられている。選択されたプログラムナンバが表示部132に表示される。
○10 プリセツトキー152 …(省略)…
○11 ユーザプログラムキー154
ユーザプログラムを記憶する場合にプログラムナンバを設定し、あるいは記憶されたユーザプログラムを呼び出すためのキーで、これを押すとプログラムキー150はユーザプログラムの選択キーとなる。すなわち、ユーザプログラムの記憶を行うときは、プログラムキー150で押されたナンバにそのユーザプログラムが記憶され、ユーザプログラムの呼び出しを行うときは、プログラムキー150で押されたナンバに記憶されたユーザプログラムが呼び出される。記憶されあるいは呼び出されたプログラム名は表示部90に表示される。
なお、ファクトリプログラムが選択された状態からユーザプログラムキー154が押されると、その以前最後に選択されていたユーザプログラムが読み出される。
また、ユーザプログラムが選択された状態からプリセットキー152が押されると、それ以前最後に選択されていたファクトリプログラムが読み出される。
○12 ユーザプログラムメモリキー156
ユーザが作ったユーザプログラム(ファクトリプログラムを呼び出しておいて、そのパラメータを変更して作られる.)を記憶するためのキーである。これをオンすると、表示部132の「PROG.NO.」の表示が点滅し、続いてプログラムキ-150のいずれかを押すことにより、そのプログラムナンバにユーザプログラム音場効果のレベルや前後バランス、プログラム名等も組合わせて記憶される(そのナンバにおける前のユ-ザプログラムは消去される。)ファクトリプログラムは音場効果のみに関するプログラムであるが、ユーザプログラムは音場効果に関するプログラムとそのときのディジタルイコライサ42の設定内容がセットで記憶される。すなわち、ファクトリプログラムを呼び出してもディジタルイコライザ42の設定内容は変化しないが、ユ-サプログラムを呼び出した場合は、これを記憶した際のディジタルイコライザ42の設定内容も同時に呼び出される。」(第11ページ右下欄第4行ないし第12ページ右上欄第16行参照)
g.「ROM400は音場効果用ファクトリプログラム等を記憶している。RAM402は音場効果用ユーサドプログラムとディジタルイコライザ42の設定内容を組合わせたプログラム、インプットレベル設定値、現在の各部の設定状態等を記憶する。この記憶はパワースイッチをオフしても消えない。」(第19ページ左下欄第10行ないし第16行参照)
h.図面第1図(1実施例のブロック図)、第2図(コントロールアンプの1実施例を示すブロック図)、第4図(コントロールアンプの前面パネル)等
ここで、この刊行物で言っているディジタルイコライザは周波数特性を制御するものであるから音質を制御するものということができ、また、所定の音場特性を得るために反射音を制御することはあらゆる反射音を集合したものが残響音となることから残響音を制御するものということができる。(ちなみに、「音場」は、「サウンドフィールド」の訳語で同義である。)
したがって、上記刊行物には、概括的に言って、反射音データのハイパスフィルタ、ローパスフィルタなどの各パラメータは変更することができるものであって、メモリ5にディジタルイコライザ1において設定されたパラメータと反射音パターンメモリ3内の反射音データのパラメータを変更して作った別の反射音パラメータを複数個ユーザプログラムとして組合わせて記憶するようにし、複数あるプログラムキーのいずれかを押すことによりそれに対応する記憶されているパラメータを同時に呼び出して、ソース再生音に所望の音場特性と音質特性を付加できるようにした装置が開示されているということができる。
(3) 対比・判断
そこで訂正後の請求項2に係る考案と刊行物に開示されている考案を対比する。
訂正後の請求項2に係る考案と上記刊行物に開示されている考案とを対比すると、後者のディジタルイコライザパラメータ設定部100は、上記(2)aの記載によれば各帯域の中心周波数のレベルを設定できるものであるから、音質のみならず音量も音質によっては設定できるということができ、従って後者のディジタルイコライザパラメータ設定部100で設定されるパラメータで制御されるディジタルイコライザは、前者の「オーディオ信号の音量及び音質を設定する信号レベル設定部」に相当し、後者の音場効果操作部で設定されるサウンドフィールドプロセッサパラメータで制御されるサウンドフィールドプロセッサは、前者の「信号レベル設定部から入力されるオーディオ信号に残響効果を付加して所定の音場を生成するための音場生成部」に相当し、後者のサウンドフィールドプロセッサはハイパスフィルタ、ローパスフィルタなどのパラメータからなる反射音データと入力信号とを演算をして音場効果信号を生成するものであるから、前者の「音場生成部は、前記オーディオ信号に対してフィルタ係数等をもとに演算処理を行い、該演算処理の結果として得られる残響信号を利用して前記所定の音場に制御するディジタル信号処理回路により構成される」に相当するということができる。
また、後者は、ユーザプログラムはユーザプログラムナンバに対応して予め設定された複数種の音場のそれぞれに対応するフィルタ係数等を含む複数種の音場効果に関するプログラムと、該複数種の音場効果に関するプログラムにそれぞれ対応する音量および音質の一方または両方からなる信号レベルからなるディジタルイコライザの設定内容とを対にしてメモリに記憶保持できるようになっており、プログラムキー150により前記複数種の音場効果に関するプログラムと、該複数種の音場効果に関するプログラムにそれぞれ対応するディジタルイコライザの設定内容の一つの対を選択できるものであるから、前者の「予め設定された複数種の音場のそれぞれに対応するフィルタ係数等を含む複数種の音場コードと、該複数種の音場コードにそれぞれ適応する音量および音質の一方または両方からなる信号レベルを記憶し保持する保持手段と、前記複数種の音場コードの一つと該音場コードの一つに適応する前記複数種の信号レベルの一つの対を選択する音場選択スイッチからなる選択手段とを備え、該選択手段の音場選択スイッチの操作によって、前記複数種の音場コードの一つと該音場コードの一つに適応する前記複数種の信号レベルの一つの対を切り替えるようにして前記音場生成部および前記信号レベル設定部の各内容を設定して前記前記オーディオ信号を再生する」ことに相当するものを有しているということができる。
従って、両者は、「オーディオ信号の音量および音質を設定する信号レベル設定部と、該信号レベル設定部から入力されるオーデイオ信号に残響効果を付加して所定の音場を生成するための音場生成部とを有し、
該音場生成部は、前記オーディオ信号に対してフィルタ係数等をもとに演算処理を行い、該演算処理の結果として得られる残響信号を利用して前記所定の音場に制御するディジタル信号処理回路により構成されるオーディオ再生装置において、
予め設定された複数種の音場のそれぞれに対応するフィルタ係数等を含む複数種の音場コードと、該複数種の音場コードにそれぞれ適応する音量および音質の一方または両方からなる信号レベルを記憶し保持する保持手段と、前記複数種の音場コードの一つと該音場コードの一つに適応する前記複数種の信号レベルの一つの対を選択する音場選択スイッチからなる選択手段とを備え、該選択手段の音場選択スイッチの操作によって、前記複数種の音場コードの一つと該音場コードの一つに適応する前記複数種の信号レベルの一つの対を切り替えるようにして前記音場生成部および前記信号レベル設定部の各内容を設定して前記前記オーディオ信号を再生することを特徴とするオーディオ再生装置。」という点で一致し、
(a) 前者が、音場コードを記憶し保持する保持手段と信号レベルを記憶し保持する保持手段を有しているのに対して、後者が、音場コードと信号レベルを組合せて記憶し保持するメモリ(保持手段)を有している点。
(b) 前者が、選択手段の音場選択スイッチの操作毎に、前記複数種の音場コードの一つと該音場コードの一つに適応する前記複数種の信号レベルの一つの対を順次切り替えるようにしているのに対して、後者は、選択手段の音場選択スイッチということができる複数のプログラムキーの選択操作により、前記複数のプログラムキーそれぞれに対応した音場コードの一つと該音場コードの一つに適応する複数の信号レベルの一つの対を切り替えるようにしている点。
の2点で相違しているということができる。
そこでこれらの相違点について検討する。
(a)の点は、刊行物1のものは音場コードと信号レベルに相当するものをメモリ5に組み合わせて記憶するようにしているが、要は音場コードと信号レベルに相当するものを組合わせて取り出すことができる記憶保持手段であればよいことは明らかであるから、これらをそれぞれ別の記憶(保持)手段に記憶(保持)するようにすること、すなわち、音場コードを記憶し保持する保持手段と信号レベルを記憶し保持する保持手段をそれぞれ有するようにすることは、当業者の必要に応じて適宜なしうる設計事項の域を出ないものと認められる。
(b)の音場選択スイッチの操作毎に対のものを順次切り替えるようにした点については、上記(2)eで摘示のパラメータ選択キー140の箇所に、音場選択のためのキーではないもののパラメータ選択キーを押す毎に順送りで選択される選択キーについての記載があるのみならず、複数の状態を選択するスイッチ類において、異なる状態に対応してそれらそれぞれに対応するスイッチを設けて所望の状態に切り替えるときはそれに対応するスイッチを操作するようにすることも、スイッチ自体は1個設けてその操作がある度に予め順序付けられた異なる状態に順次遷移していくようにすることも、例えば受信機のチューニング機構などに両者とも採用されているようにきわめて周知の技術であって、前者にあってはスイッチの数が多くなり選択するときに複数のスイッチからそれを探す必要があるのに対して後者にあってはそのような必要がないことも当業者の技術常識と認められるから、刊行物1に記載のものにおいてプログラムキーを1個のみ設けそのプログラムキーを操作する毎に異なる対のものに順次切り替える形式のものに置き換えることは当業者ならばきわめて容易に推考し得る程度のものと認められる。
そして、訂正後の請求項2に係る考案の上記相違点に係る効果も当業者の予測できる域を出ないものと認められるから、本件訂正後の請求項2に係る考案は、上記刊行物に記載された考案に基づいてきわめて容易になしえたものと認められる。
(4)結び
以上から明らかなように、本件訂正後の実用新案登録請求の範囲2に係る考案は、実用新案法第3条第2項の規定により出願の際独立して実用新案登録を受けることができないものである。
したがって、本件訂正は認められない。

3.実用新案登録異議の申立について
(1) 本件実用新案登録請求の範囲の記載
実用新案登録第2550327号の実用新案登録請求の範囲の請求項1、2の記載は、次のとおりである。
「1 オーディオ信号(Sa)の音量および音質を設定する信号レベル設定部(1)と、該信号レベル設定部(1)から入力されるオーディオ信号(Sa)に残響効果を付加して所定の音場を生成するための音場生成部(2)とを有し、
該音場生成部(2)は、前記オーディオ信号(Sa)に対する演算処理を行い、該演算処理の結果として得られるフィルタ係数等をもとに前記所定の音場を制御するディジタル信号処理回路により構成されるオーディオ再生装置において、
前記所定の音場として設定されている第1の音場を消滅させて第2の音場を生成する際に、該第1の音場を生成するために該第1の音場の消滅直前に採用したフィルタ係数等を含む該第1の音場に対応する音場コードを記憶し保持する音場コード保持部(3)と、
該第1の音場を生成するために該第1の音場の消滅の直前に採用した音量および音質の一方または両方からなる信号レベルを記憶し保持する信号レベル保持部(4)と、
該第1の音場に再び設定する場合に、前記音場コード保持部(3)および前記信号レベル保持部(4)にそれぞれ保持されている音場コードおよび信号レベルを対にして呼び出す呼出手段(5)とを備え、該呼出手段(5)により前記音場生成部(2)および前記信号レベル設定部(1)の各内容を前記第1の音場を生成するための状態に復帰させて前記オーディオ信号(Sa)を再生することを特徴とするオーディオ再生装置。
2 オーディオ信号(Sa)の音量および音質を設定する信号レベル設定部(1)と、該信号レベル設定部(1)から入力されるオーディオ信号(Sa)に残響効果を付加して所定の音場を生成するための音場生成部(2)とを有し、
該音場生成部(2)は、前記オーディオ信号(Sa)に対する演算処理を行い、該演算処理の結果として得られるフィルタ係数等をもとに前記所定の音場を制御するディジタル信号処理回路により構成されるオーディオ再生装置において、
予め設定された複数種の音場のそれぞれに対応するフィルタ係数等を含む複数種の音場コードを記憶し保持する音場コード保持手段(3′)と、
該複数種の音場コードにそれぞれ適応する音量および音質の一方または両方からなる信号レベルを記憶し保持する信号レベル保持手段(4′)と、
前記複数種の音場コードの一つと該音場コードの一つに適応する前記複数種の信号レベルの一つの対を選択する選択手段(6)とを備え、該選択手段(6)により前記音場生成部(2)および前記信号レベル設定部(1)の各内容を設定して前記オーディオ信号(Sa)を再生することを特徴とするオーディオ再生装置。」
(2) 当審が通知した取消理由
当審が通知した取消理由の1は次のとおりである。(この取消理由の趣旨は、実用新案登録異議申立人も主張していたものである。なお、実用新案登録請求の範囲中の考案の詳細な説明欄の記載と整合していない点の記載が、考案の詳細な説明欄の記載と整合するような訂正請求が出された場合には、それらの考案は上記刊行物記載の考案によっていわゆる進歩性を欠如している旨を、予備的に取消理由の2として通知した。)
『本願明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1,2中の「該音場生成部(2)は、前記オーディオ信号(Sa)に対する演算処理を行い、該演算処理の結果として得られるフィルタ係数等をもとに前記所定の音場を制御するディジタル信号処理回路により構成される」という記載は、フィルタ係数等がオーディオ信号(Sa)を演算処理した結果から得られるとしか解しようのない記載となっているが、考案の詳細な説明の記載をみると〔概要〕欄と〔課題を解決するための手段〕欄に上記と同様の記載があるものの、開示しようとする技術を具体的に説明した〔実施例〕欄の記載をみると「音場生成部2の主要部は、各種のディジタルフィルタからなるDSP12から構成される。DSP12では、電子ボリューム11から入力されるオーディオ信号Saに対して乗算加算等の演算処理をすべて実時間内で行い、この結果得られる残響効果に対応する残響音に元のオーディオ信号Saを付加して目的とする音場を生成している。・・・(中略)・・・音場生成用スイッチ(図示されていない)によりDSP12のフィルタ係数や、残響時間などの残響パラメータを変化させて目的とする音場を生成している。」という記載があるだけで、フィルタ係数等をオーディオ信号(Sa)を演算処理した結果から得ていると解される記載は、実施例の説明中には見当たらない。しかるに、オーディオ信号(Sa)をどのように演算処理すればフィルタ係数等が得られるのか明らかでないから、請求項1,2に記載の考案は、実質的に明細書の考案の詳細な説明に記載したものとは認められず、従って、本件請求項1,2に記載の考案に係る実用新案登録は、実用新案法第5条第4項の規定に違反してなされたものである。』
(3) 判断
上記2で説示したとおり実用新案権者がした訂正請求は認められず、したがって本件の審理の対象とすべき明細書及び図面は実用新案登録時のものとなるのでこれらについてみると、上記(2)の判断は妥当なものであって、撤回または変更すべき理由は見あたらない。
(4) むすび
以上から明らかなように、本件請求項1、2に係る実用新案登録は、拒絶の査定をしなければならない実用新案登録出願に対してなされたものと認められる。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第7項の規定の基づく、特許法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第3条第1項及び第2項の規定により、結論のとおり決定する。
異議決定日 2000-07-13 
出願番号 実願平1-126633 
審決分類 U 1 651・ 121- ZB (H04R)
U 1 651・ 534- ZB (H04R)
最終処分 取消  
前審関与審査官 田中 秀夫  
特許庁審判長 高瀬 博明
特許庁審判官 江頭 信彦
藤井 浩
登録日 1997-06-13 
登録番号 実用新案登録第2550327号(U2550327) 
権利者 富士通テン株式会社
兵庫県神戸市兵庫区御所通1丁目2番28号
考案の名称 オーディオ再生装置  
代理人 樋口 外治  
代理人 石田 敬  
代理人 倉地 保幸  
代理人 鶴田 準一  
代理人 下道 晶久  
代理人 西山 雅也  
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