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審決分類 |
審判 全部申し立て B32B |
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管理番号 | 1028351 |
異議申立番号 | 異議2000-70514 |
総通号数 | 16 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案決定公報 |
発行日 | 2001-04-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2000-02-02 |
確定日 | 2000-10-23 |
異議申立件数 | 2 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 登録第2598325号「パネル」の請求項1に係る実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 登録第2598325号の請求項1に係る実用新案登録を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件実用新案登録第2598325号の考案は、平成4年10月14日に出願され、平成11年6月11日に設定登録(請求項の数1)されたものであるが、実用新案登録異議の申立てに基いて実用新案登録の取消理由を通知したところ、明細書の訂正請求がなされたものである。 2.訂正の適否について (1)請求された訂正の内容は、次の(a)?(c)からなるものである。 (a)実用新案登録請求の範囲請求項1における「異質材」を「合成樹脂板または合成樹脂含浸板」と訂正する。 (b)考案の詳細な説明段落番号[0007]における「異質材」を「合成樹脂板または合成樹脂含浸板」と訂正する。 (c)同[0013]における「異質材としては、・・・が例示される。」を「異質材として、合成樹脂板または合成樹脂含浸板を用い、中比重繊維板の間に少なくとも1層配する。」と訂正する。 (2)上記(a)の訂正は、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、(b)、(c)の訂正は、前記(a)の訂正に整合させたものであるから明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。 そして、これらの訂正は、いずれも願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであり、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 したがって、上記訂正請求は、平成6年改正法附則第9条第2項の規定により準用され、同附則第6条第1項の規定によりなお従前の例とされる、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する特許法第126条第2?4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 3.実用新案登録異議の申立てについて (1)本件登録実用新案は、訂正された明細書の実用新案登録請求の範囲請求項1に記載されたとおりのものと認める。 (2)実用新案登録異議申立人段谷産業株式会社(以下、申立人段谷産業という。)は、甲第1号証(特開平4-176641号公報)、甲第2号証(特開平4-216041号公報)、甲第3号証〔実願平2-10860号(実開平3-101626号)のマイクロフィルム〕及び甲第4号証(実開昭61-93231号公報)を提出して、請求項1に係る考案(以下、本件考案という。)は、甲第1?4号証に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案することができたものであるから、その実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定により拒絶の査定をしなければならない実用新案登録出願に対してされたものであると主張しており、 実用新案登録異議申立人川股宏一郎(以下、申立人川股という。)は、甲第1号証(特開平4-216041号公報)、甲第2号証〔実願平2-10860号(実開平3-101626号)のマイクロフィルム〕及び甲第3号証(「改訂3版 木材工業ハンドブック」、昭和57年6月30日丸善株式会社発行、第609、627?635頁)を提出して、本件考案は、甲第1?3号証に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案することができたものであるから、その実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定により拒絶の査定をしなければならない実用新案登録出願に対してされたものであると主張している。 (3)申立人段谷産業の甲第1号証には、複数の木質繊維層及び/又は木削片層を積層して成るものにおいて、その表裏面近傍に夫々金属箔層が介在せしめられて成ることを特徴とする複合板(特許請求の範囲請求項1)が記載され、同甲第2号証には、木質繊維又は木削片に熱硬化性樹脂接着剤を添加し仮圧締して得られる木質マット層と、金属箔層とを、交互に配して表裏に前記木質マット層が配置されるよう積層した後、加熱圧締して接着一体成形することを特徴とする、複合板の製造方法(特許請求の範囲請求項1)が記載され、同甲第3号証には、中比重ファイバーボードによる木ネジ保持基材の考案(実用新案登録請求の範囲参照)が記載され、「中質繊維板が厚み方向に比重傾斜を有し、表・裏両層の数mm間は岩盤層といわれて硬度も高く、0.8?1.2と高比重であるのに対して中層は0.4?0.8程度であるという特性」との記載がなされ、同甲第4号証には、芯層を除く両表面層のみがチップで構成されている軽量ボード(実用新案登録請求の範囲第1項)、芯層が、挽板、単板、合板および発泡材料の中から選ばれたひとつからなる実用新案登録請求の範囲第1項記載の軽量ボード(同第2項)が記載され、 申立人川股の甲第1、2号証には、申立人段谷産業の甲第2、3号証と同じ事項が記載され、同甲第3号証には、ファイバーボードの分類及び製造方法について記載されていることが認められる。 しかしながら、前記両申立人の甲号証のいずれにも、本件考案の構成要件である表裏の中比重繊維板の間に「水分変化に伴う寸法変化率が中比重繊維板よりも小さい合成樹脂板または合成樹脂含浸板」を配することについての記載ないし示唆はなされていないものと認められる。 そして、本件考案は、前記事項を構成要件とすることにより明細書に記載されたとおりの効果を奏し得たものと認められるから、本件考案は、申立人段谷産業の甲第1?4号証、または申立人川股の甲第1?3号証に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるとすることはできない。 4.また、他に本件考案の実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【考案の名称】 パネル (57)【実用新案登録請求の範囲】 【請求項1】 接着剤を添加乾燥した木質繊維の加熱圧締により形成され、全体比重が0.4?0.8であってその表裏部に中心層に比べて比重の高い硬質層を有する中比重繊維板を少なくともパネル表裏に配し、水分変化に伴う寸法変化率が中比重繊維板よりも小さい合成樹脂板または合成樹脂含浸板をこれら中比重繊維板の間に少なくとも1層配してなることを特徴とするパネル。 【考案の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本考案は、壁面材、床材、建具部材、造作部材、家具部材、或いは柱や梁等の構造部材等、広範な用途に使用されるパネルに関する。 【0002】 【従来の技術】木質繊維板は均質性に優れ、また強度特性や加工性も良好であることから、必要に応じて表面に任意化粧を施して、上記したような各種用途に広範に用いられている。 【0003】木質繊維板は、例えば乾式法によるときは、木材を解繊して得られる木質繊維に接着剤を塗布し、これをフォーミング、仮圧締して繊維マットとし、この繊維マットを一定寸法に裁断して定尺マットとした後、加熱圧締することによって製造される。 【0004】 【考案が解決しようとする課題】木質繊維板は上述のように概ね満足すべき総合性能を有するものではあるが、更に諸物性を向上させることが望まれる。 【0005】例えば、表面から大きな荷重が作用する用途に用いられる場合には、曲げ強度を更に増大させ、荷重による撓み変化量を減少させることが望まれる。 【0006】また、木質繊維板の含水率変化による膨張収縮は等方性であって、板材の幅方向と長さ方向とにおいて等しいが、木材の繊維方向における膨張収縮と比べると大きいものであるので、これを抑制し、より一層の寸法安定性を付与することが望まれる。 【0007】 【課題を解決するための手段】本考案は上記従来技術の問題点を解消することを目的として創案されたものであり、接着剤を添加乾燥した木質繊維の加熱圧締により形成され、全体比重が0.4?0.8であってその表裏部に中心層に比べて比重の高い硬質層を有する中比重繊維板を少なくともパネル表裏に配し、水分変化に伴う寸法変化率が中比重繊維板よりも小さい合成樹脂板または合成樹脂含浸板をこれら中比重繊維板の間に少なくとも1層配してなることを特徴とするパネルである。比重が0.4以上である中比重繊維板は、含水率1%当たりの寸法変化率が0.03?0.04%と極めて小さく、しかもいずれかの方向においても略均等であるので、優れた寸法安定性を発揮する。また、切削加工性にも優れ、釘打ちも比較的容易であるため、パネルの表裏面材として用いるのに好適である。また、パネル表裏に配される中比重繊維板は、その表裏部に中心層よりも比重の高い緻密な硬質層を有するものであるため、パネル全体としての曲げ強度を高め、パネル表裏面の耐水性を向上させると共に、合成樹脂板または合成樹脂含浸板との接合面においては接着剤が中比重繊維板に必要以上に浸透することを抑制してそれらの間の接着力を向上させる。 【0008】中比重繊維板は、松、杉、桧等の針葉樹材又はラワン、カポール、栗、ポプラ等の広葉樹の原木や、家屋又は製材廃材を解繊し、圧締接着して得られる木質繊維板であって、比重0.4?0.8のものである。中比重繊維板は中質繊維板あるいはMDFとも呼ばれ、強度や重量、加工性等のバランスに優れている。 【0009】 【0010】 【0011】中比重繊維板には、その製造過程で生ずるサンダーダスト、ソーダスト、チップダスト等の粉体屑材を混入することができる。 【0012】 【0013】一方、中比重繊維板よりも水分変化に伴う寸法変化率が小さい異質材として、合成樹脂板または合成樹脂含浸板を用い、中比重繊維板の間に少なくとも1層配する。 【0014】これらの異質材の寸法変化は含水率1%当たりにして0.01%以下と極めて小さく寸法安定性に優れている。また、曲げ強度、引張り強度、圧縮強度等の機械的強度にも優れている。 【0015】従って、表裏の中比重繊維板の間に、水分変化に伴う寸法変化率のより小さな異質材を少なくとも1層介在させることにより、これらの収縮膨張が互いに抑制され、寸法安定性が著しく向上されたパネルが得られる。 【0016】これら中比重繊維板及び異質材は共に水分変化に伴う寸法変化率が小さいだけでなく、いずれの方向においても略同一の寸法変化率を有する等方性を持つので、異質材の均等な収縮膨張の抑制作用が均等な収縮膨張特性を持つ中比重繊維板に働くこととなり、パネル全体としての反りやねじれ等の形状変化を生ずることがない。 【0017】中比重繊維板は、フエノール樹脂処理、アセチル樹脂処理、エステル化処理、エーテル化処理、ホルマール化処理、PEG(ポリエチレングリコール処理)、WPC(樹脂含浸)処理等を施して、予め寸法安定性及び機械的強度を更に向上させたものとして用いることができる。 【0018】これらの処理は、例えば、針葉樹又は広葉樹のチップを常法に従って解繊した木質繊維の段階で、常法によって行うことができ、得られた処理木質繊維を用いて中比重繊維板を製造する。 【0019】また、リン酸アンモニウム、リン窒素化合物、ハロゲン化合物、スルファミン酸、ホウ酸等の公知の難燃化薬剤による防火処理を施した木質繊維を用いて中比重繊維板を製造し、この中比重繊維板をパネル表裏に用いることにより、防火機能をも有するパネルが得られる。 【0020】パネルの表面には、必要に応じて、天然木突板や人工突板、不織布、紙、合成樹脂シート等のシート状物で裏打ちした突板シート、化粧紙、化粧樹脂シート或いはフィルム等の化粧シートを貼着して任意化粧を施すことができる。また、任意塗装を施すことができる。 【0021】本考案のパネルは、予め製造した中比重繊維板及び異質材を準備し、異質材が少なくとも1層設けられるように接着剤を介して積層接着し、常法に従ってプレスすることによって得られる。 【0022】パネルの表裏面は、その表裏部に中心層に比べて比重の高い硬質層を有する中比重繊維板で構成される。この理由は次の通りである。 【0023】即ち、中比重繊維板は表面が緻密で圧縮強度が優れているためため、表面への鉄球落下試験においても好結果が得られることが実証されており、重量物を落としたときにも凹みにくいという特性を有する。 【0024】また、パネル表面に曲げ荷重が作用したとき、表面側において生ずる圧縮の負荷に対しては表面に配される中比重繊維板の優れた耐圧縮性が働き、裏面側において生ずる引張りの負荷に対しては裏面に配される中比重繊維板の優れた耐引張り性が働き、曲げ強度に優れたパネルとなる。そして、この作用は、その表裏部に中心層に比べて比重の高い硬質層を有する中比重繊維板を用いることによって更に効果的に発揮され、中比重繊雑板を用いながらも硬質繊維板と同等以上の曲げ強度をパネルに与えることができる。 【0025】更に、中比重繊維板、特にその表裏部に設けられてパネル表裏に露出する硬質層の有する優れた平滑性により、化粧シートを貼着し或いは塗装処理を施す場合の仕上がり状態が良好であり、また表裏面において同じ仕上がり状態が得られるので、表裏の使い勝手を考慮することなく用いることができ、施工性が向上する。 【0026】 【作用】中比重繊維板よりも水分変化に伴う寸法変化率が小さい異質材を少なくとも1層介在させることにより、中比重繊維板の収縮膨張が抑制され、寸法安定性の極めて良好なパネルが得られる。また、中比重繊維板をパネル表裏に用いることにより、切削加工や現場での取扱が容易な中比重繊維板の有する特性をパネル全体として発揮させることができる。更に、中比重繊維板と異質材の水分変化に伴う収縮膨張は共に等方性であるので、パネル全体としての反りやねじれ等の形状変化を生ずることがない。 【0027】また、パネル表裏に配される中比重繊維板が、その表裏部に中心層に比べて比重の高い級密な硬質層を有しているため、パネル表裏面の耐水性やパネル全体の曲げ強度をより一層向上させると共に、異質材との接合面においては接着剤が中比重繊維板に必要以上に浸透することを抑制してこれらの間の接着力を高める作用をなす。 【0028】 【実施例】図1は表裏2層の中比重繊維板1、1の間に異質材2を介在させた実施例、図2は表裏及び中心の3層の中比重繊維板1、1、1の間にそれぞれ異質材2を介在させた実施例を示す。図示されていないが、これら中比重繊維板1、1、1はいずれもその表裏部に中心層よりも比重の高い硬質層を有している。 【0029】 【考案の効果】本考案によれば、各種用途に広範に用いられている木質繊維板に比べてより一層の寸法安定性の向上を図り、しかも機械的強度にも優れたパネルを得ることができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】本考案によるパネルの一実施例を示す断面図である。 【図2】本考案の他の実施例を示す断面図である。 【符号の説明】 1 中比重繊維板 2 異質材 |
訂正の要旨 |
(a)実用新案登録請求の範囲請求項1における「異質材」を「合成樹脂板または合成樹脂含浸板」と訂正する。 (b)考案の詳細な説明段落番号[0007]における「異質材」を「合成樹脂板または合成樹脂含浸板」と訂正する。 (c)同[0013]における「異質材としては、・・・が例示される。」を「異質材として、合成樹脂板または合成樹脂含浸板を用い、中比重繊維板の間に少なくとも1層配する。」と訂正する。 |
異議決定日 | 2000-10-02 |
出願番号 | 実願平4-77833 |
審決分類 |
U
1
651・
121-
YA
(B32B)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 野村 康秀、平井 裕彰 |
特許庁審判長 |
小林 正巳 |
特許庁審判官 |
仁木 由美子 蔵野 雅昭 |
登録日 | 1999-06-11 |
登録番号 | 実用新案登録第2598325号(U2598325) |
権利者 |
株式会社ノダ 東京都台東区浅草橋5丁目13番6号 |
考案の名称 | パネル |
代理人 | 古部 次郎 |
代理人 | 大場 充 |
代理人 | ▲桑▼原 史生 |
代理人 | ▲桑▼原 史生 |