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審決分類 審判 全部申し立て   F16C
管理番号 1028352
異議申立番号 異議1999-71166  
総通号数 16 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2001-04-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-03-24 
確定日 2000-07-24 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 登録第2581947号「摺動体保持部材」の実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 訂正を認める。 登録第2581947号の実用新案登録を維持する。
理由 I.手続の経緯
本件実用新案登録第2581947号の請求項1に係る考案についての出願は、平成5年12月28日に実用新案登録出願されたもので、平成10年7月17日にその実用新案の設定登録がなされ、その後、平成11年3月24日に日本精工株式会社より実用新案登録異議の申立てがなされ、平成11年6月3日(起案日)に取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年8月18日に意見書提出と共に訂正請求がなされた後、平成11年12月13日(起案日)に訂正拒絶理由通知がなされ、訂正拒絶理由通知に対して平成12年2月21日に意見書提出と共に手続補正書が提出されたものである。
II.訂正の適否についての判断
1.訂正請求書の補正の適否
そこで、先ず、平成12年2月21日付けの補正について検討する。
この補正は、実用新案登録権者が平成11年8月18日付けでした訂正請求書に添付された全文訂正明細書について、以下のa、bのとおり補正をしようとするものである。
a.訂正明細書中の実用新案登録請求の請求項1を下記のとおり補正する。
【1】リニアガイドを摺動可能に支持する支持体の長さ方向両端部にそれぞれ前記リニアガイドの摺動を係止させる係止体が設けられていると共に、該係止体の少なくとも一方が係止状態と非係止状態とに変形可能に構成された摺動体保持部材であって、
前記係止体の少なくとも一方を、平板状の係止板と該係止板の一端部に薄肉部を介して一体に連設された弾性変形可能な断面略く字状の弾発板とからなると共に、前記支持体の長さ方向両端部の少なくとも一方に形成した四角貫通穴の互いに対向する一対の内周縁部にそれぞれ前記係止板の他端縁部及び弾発板の先端縁部を薄肉部を介して一体に連結することにより、薄肉部が支持体の長さ方向と直交する状態で配設されたヒンジ体にて形成し、該ヒンジ体を前記係止板と弾発板との間で屈曲させて前記係止板と弾発板とを揺動させた際、弾発板の弾性により両揺動限でその状態が保持され、前記係止板の下面を押圧することにより、前記係止板と弾発板との連結部が前記支持体の上面から山形に突出した係止状態となると共に、このときこの山形に突出した連結部が鋭角を形成し、また前記係止板の上面を押圧することにより下方へと反転して前記連結部が前記支持体上面から退没した非係止状態となることを特徴とする摺動体保持部材 。」
b.考案の詳細な説明の段落【0011】【課題を解決する手段】の「本考案は、上記目的を達成するため、リニアガイド等の摺動体を摺動可能に支持する支持体の長さ方向両端部にそれぞれ前記摺動体の摺動を係止させる係止体が設けられた摺動体保持部材であって、」との記載を「本考案は、上記目的を達成するため、リニアガイドを摺動可能に支持する支持体の長さ方向両端部にそれぞれ前記リニアガイドの摺動を係止させる係止体が設けられていると共に、該係止体の少なくとも一方が係止状態と非係止状態とに変形可能に構成された摺動体保持部材であって、」と補正し、「薄肉部が支持体の長さ方向と直交する状態で配設されたヒンジ体にて形成し、該ヒンジ体を前記係止板と弾発板との間で屈曲させて前記係止板と弾発板とを揺動させた際、弾発板の弾性により両揺動限でその状態が保持されると共に、一方の揺動限において前記係止板と弾発板との連結部が前記支持体の一面から山形に突出した係止状態となると共に、このときこの山形に突出した連結部が鋭角を形成するように構成した」との記載を「薄肉部が支持体の長さ方向と直交する状態で配設されたヒンジ体にて形成し、該ヒンジ体を前記係止板と弾発板との間で屈曲させて前記係止板と弾発板とを揺動させた際、弾発板の弾性により両揺動限でその状態が保持され、前記係止板の下面を押圧することにより、前記係止板と弾発板との連結部が前記支持体の上面から山形に突出した係止状態となると共に、このときこの山形に突出した連結部が鋭角を形成し、また前記係止板の上面を押圧することにより下方へと反転して前記連結部が前記支持体上面から退没した非係止状態となる」と補正する。
そこで、これらの補正a、bについて検討すると、これらの補正は、訂正請求書に添付された全文訂正明細書の登録請求の範囲をさらに減縮しょうとするものであるから、訂正請求書で求めた訂正事項を変更するものであり、訂正請求書の要旨を変更するものに該当する。
したがつて、平成12年2月21日付けの訂正請求書の補正は、訂正請求書の要旨を変更するものであるから、特許法等の一部を改正する法律(平成6年第116号)附則第9条第2項の規定により準用され、特許法第120条の4第3項でさらに準用する特許法第131条第2項に違反したものであって認めることはできない。
2.訂正の内容
(1)訂正事項a
実用新案登録第2581947号に係る明細書又は図面(以下、「実用新案登録明細書」という。)における実用新案登録請求の範囲の請求項1を下記のとおりに訂正する。
【1】リニアガイド等の摺動体を摺動可能に支持する支持体の長さ方向両端部にそれぞれ前記摺動体の摺動を係止させる係止体が設けられた摺動体保持部材であって、
前記係止体の少なくとも一方を、平板状の係止板と該係止板の一端部に薄肉部を介して一体に連設された弾性変形可能な断面略く字状の弾発板とからなると共に、前記支持体の長さ方向両端部の少なくとも一方に形成した四角貫通穴の互いに対向する一対の内周縁部にそれぞれ前記係止板の他端縁部及び弾発板の先端縁部を薄肉部を介して一体に連結することにより、薄肉部が支持体の長さ方向と直交する状態で配設されたヒンジ体にて形成し、該ヒンジ体を前記係止板と弾発板との間で屈曲させて前記係止板と弾発板とを揺動させた際、弾発板の弾性により両揺動限でその状態が保持されると共に、一方の揺動限において前記係止板と弾発板との連結部が前記支持体の一面から山形に突出した係止状態となると共に、このときこの山形に突出した連結部が鋭角を形成するように構成したことを特徴とする摺動体保持部材。」
(2)訂正事項b
考案の詳細な説明の段落【0011】の「薄肉部が支持体の長さ方向と直交する状態で配設されたヒンジ体にて形成した」との記載を「 薄肉部が支持体の長さ方向と直交する状態で配設されたヒンジ体にて形成し、該ヒンジ体を前記係止板と弾発板との間で屈曲させて前記係止板と弾発板とを揺動させた際、弾発板の弾性により両揺動限でその状態が保持されると共に、一方の揺動限において前記係止板と弾発板との連結部が前記支持体の一面から山形に突出した係止状態となると共に、このときこの山形に突出した連結部が鋭角を形成するように構成した」と訂正。
(3)訂正事項c
考案の詳細な説明の段落【0019】の「これにより摺動体bの摺動が係止される(図4)」との記載を「これにより摺動体bの摺動が係止される(図4)。このとき、図14に示されているように、略山形状に突出した上記係止板8と弾発板9との連結部(薄肉部)10の角度は、90゜未満の鋭角を形成するようになつている。」と訂正。
(4)訂正事項d
「図面の簡単な説明」の欄の、【図7】、【図8】の「同摺動部材」との記載を「同保持部材」と訂正。
3.訂正の目的の適否・新規事項の有無及び拡張・変更の存否
(1)訂正事項aに係る訂正は、願書に添付した明細書の段落【0012】及び願書に添付した図面の【図4】に基づき、実用新案登録明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された「薄肉部が支持体の長さ方向と直交する状態で配設されたヒンジ体にて形成した」ものを「薄肉部が支持体の長さ方向と直交する状態で配設されたヒンジ体にて形成し、該ヒンジ体を前記係止板と弾発板との間で屈曲させて前記係止板と弾発板とを揺動させた際、弾発板の弾性により両揺動限でその状態が保持されると共に、一方の揺動限において前記係止板と弾発板との連結部が前記支持体の一面から山形に突出した係止状態となると共に、このときこの山形に突出した連結部が鋭角を形成するように」したものであると限定すると共に、ヒンジ体の形成状態をより明りょうにしたもので、これらの記載を総合してみれば、この訂正は実用新案登録請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とするもので、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正であるということができる。そして、実質上、実用新案登録請求の範囲を拡張しまたは変更するものとも認められない。
(2)訂正事項b、cに係る訂正は、実用新案登録請求の範囲の請求項1の訂正に伴い、実用新案登録請求の範囲の記載と考案の詳細な説明との整合を図るもので、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、訂正事項(a)と内容自体は同じであるから、訂正事項(a)と同様、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正であり、実質上、実用新案登録請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
(3)訂正事項dに係る訂正は、誤記の訂正を目的とするものであり、また、願書に添付した明細書又は図面に記載した範囲内でした訂正であり、実質上、実用新案登録請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
4.独立実用新案登録要件の判断
(1)訂正明細書の請求項1に係る考案
訂正明細書の請求項1に係る考案(以下、「訂正考案」という。)は、(1)訂正事項aのとおりのものである。
(2)引用刊行物に記載された考案
刊行物1:実願平3-109636号(実開平5-49717号)のCD-ROM
刊行物2:特公平2-47068号公報
上記刊行物1には、
「リニアガイド等の摺動体を摺動可能に支持する支持体の長さ方向両端中央部にそれぞれ上記摺動体の摺動を係止させる係止体が設けられた摺動体保持部材であって、上記係止体の少なくとも一方を、中央部及び両端部がそれぞれ薄肉に形成された上下方向反転可能な扁平V字状板よりなり、常時は上記支持体上面より上方に逆V字状に突出して上記摺動体を係止していると共に、下方への押圧力により弾性的にV字状に変形して上記支持体上面より下方に突出して摺動体の係止を解除するヒンジ体にて形成したことを特徴とする摺動体保持部材。」(実用新案登録請求の範囲)について記載されている。
また、刊行物2には、収容した端子の後方への抜け防止を図るコネクタハウジングの端子係止構造に関して、
「端子収容室3の上方または下方には窓孔部6が形成され、窓孔部6には、窓孔部6の前後両縁に形成した一対の端部にヒンジポイント8を介して係止部材7が一体に橋設してある。
そして、係止部材7は中間に設けた中間ヒンジポイント9を介して一体に成る前方係止部材7Aと後方係止部材7Bとから形成されると共に、・・・係止部材7は中間ヒンジポイント9を介して二つ折れ状の山形を成して窓孔部6に橋設してある。即ち、端部ヒンジポイント8および中間ヒンジポイント9は、雄ハウジング1を形成する樹脂材を薄肉にし、ヒンジポイント8,9を節点とするぶざを相対回転可能に一体連結した滑節状(・・・)に成っており、係止部材7は端部ヒンジポイント9を節点として窓孔部6に橋設したトラス体状に形成されている。」(第3欄9?28行)と記載されている。
(3)対比・判断
そこで、訂正明細書の請求項1に係る考案と刊行物1に記載された考案とを対比すると、リニアガイド等の摺動体を摺動可能に支持する支持体の長さ方向両端中央部にそれぞれ上記摺動体の摺動を係止させる係止体が設けられた摺動体保持部材である点で一致するが、
訂正考案は、
「前記係止体の少なくとも一方を、平板状の係止板と該係止板の一端部に薄肉部を介して一体に連設された弾性変形可能な断面略く字状の弾発板とからなると共に、前記支持体の長さ方向両端部の少なくとも一方に形成した四角貫通穴の互いに対向する一対の内周縁部にそれぞれ前記係止板の他端縁部及び弾発板の先端縁部を薄肉部を介して一体に連結することにより、薄肉部が支持体の長さ方向と直交する状態で配設されたヒンジ体にて形成し、該ヒンジ体を前記係止板と弾発板との間で屈曲させて前記係止板と弾発板とを揺動させた際、弾発板の弾性により両揺動限でその状態が保持されると共に、一方の揺動限において前記係止板と弾発板との連結部が前記支持体の一面から山形に突出した係止状態となると共に、このときこの山形に突出した連結部が鋭角を形成するように構成した」のに対して、
刊行物1に記載された考案は、
「中央部及び両端部がそれぞれ薄肉に形成された上下方向反転可能な扁平V字状板よりなり、常時は上記支持体上面より上方に逆V字状に突出して上記摺動体を係止していると共に、下方への押圧力により弾性的にV字状に変形して上記支持体上面より下方に突出して摺動体の係止を解除するヒンジ体にて形成した」点で相違する。
上記相違点について検討する。
刊行物2に記載された考案には、収容した端子の後方への抜け防止を図るコネクタハウジングの端子係止構造に関して、「端子収容室3の上方または下方には窓孔部6が形成され、窓孔部6には、窓孔部6の前後両縁に形成した一対の端部にヒンジポイント8を介して係止部材7が一体に橋設してある。 そして、係止部材7は中間に設けた中間ヒンジポイント9を介して一体に成る前方係止部材7Aと後方係止部材7Bとから形成されると共に、・・・係止部材7は中間ヒンジポイント9を介して二つ折れ状の山形を成して窓孔部6に橋設してある。即ち、端部ヒンジポイント8および中間ヒンジポイント9は、雄ハウジング1を形成する樹脂材を薄肉にし、ヒンジポイント8,9を節点とするぶざを相対回転可能に一体連結した滑節状(・・・)に成っており、係止部材7は端部ヒンジポイント9を節点として窓孔部6に橋設したトラス体状に形成されている。」と記載されているように、刊行物2に記載されたものは、単に、端子を固定するコネクタハウジングであり、一旦コネクタハウジングに係止固定した端子を取り外すことは想定されておらず、係止部材を可逆的に屈曲反転させて、係止、係止解除を行うことは示唆されていない。即ち、リニアガイド等の摺動体を摺動可能に支持する支持体の長さ方向両端中央部にそれぞれ上記摺動体の摺動を係止及び係止解除させる係止体が設けられた摺動体保持部材において、「該ヒンジ体を前記係止板と弾発板との間で屈曲させて前記係止板と弾発板とを揺動させた際、弾発板の弾性により両揺動限でその状態が保持される共に、一方の揺動限において前記係止板と弾発板との連結部が前記支持体の一面から山形に突出した係止状態となると共に、このときこの山形に突出した連結部が鋭角を形成する」(係止状態、係止解除状態)点については何ら記載されておらず、この点により、薄肉部を支持体の長さ方向と直交する状態で配したので、大きな力がかかっても破損等の不都合を生じることなく、係止状態と係止解除とを切り替える際にも薄肉部に過大な力が加わることなく安定的かつ確実に摺動体を保持係止することができるという明細書記載の効果を奏するものであり、当業者にとってきわめて容易になすことができたものとは認めることができない。
したがつて、上記相違点が格別のものであり、訂正考案は刊行物1及び刊行物2に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案することができたものとすることができないので、本件考案は、独立して実用新案登録を受けることができるものと認める。

(4)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年第116号)附則第9条第2項の規定により準用され、同附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項で準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
III.異議申立てについての判断
1.異議申立理由の概要
異議申立人 日本精工株式会社は、甲第1号証として、 実願平3-109636号(実開平5-49717号)のCD-ROM(上記刊行物1)及び甲第2号証として特公平2-47068号公報(上記刊行物2)を提示し、本件実用新案登録第2581947号の請求項1に係る考案は
刊行物1及び刊行物2に記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案することができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により、取り消されるべきである旨主張している。
2.本件考案
平成11年8月18日付けの訂正請求による訂正が上記II.3.(訂正の目的の適否・新規事項の有無及び拡張・変更の存否)で説示したように、認められるものであるから、本件第2581947号の請求項1に係る考案(以下、「本件考案」という。)は訂正された明細書の登録請求の範囲に記載された事項により特定されるもの、即ち訂正考案と同じである。
3.検討・判断
本件考案は、訂正考案と同じであるので、上記II.4.(独立実用新案登録要件の判断)で説示したように、登録異議申立人が証拠として提示した刊行物1及び刊行物2に基づいて当業者がきわめて容易に考案することができたものとは認められない。
4.むすび
以上のとおりであるから、
実用新案登録異議申立ての理由及び証拠によつては、本件考案に係る実用新案登録を取り消すことはできない。
また、他に本件考案についての実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。
よつて、結論のとおり決定する。
発明の名称 (54)【考案の名称】
摺動体保持部材
(57)【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 リニアガイド等の摺動体を摺動可能に支持する支持体の長さ方向両端部にそれぞれ前記摺動体の摺動を係止させる係止体が設けられた摺動体保持部材であって、
前記係止体の少なくとも一方を、平板状の係止板と該係止板の一端部に薄肉部を介して一体に連設された弾性変形可能な断面略く字状の弾発板とからなると共に、前記支持体の長さ方向両端部の少なくとも一方に形成した四角貫通穴の互いに対向する一対の内周縁部にそれぞれ前記係止板の他端縁部及び弾発板の先端縁部を薄肉部を介して一体に連結することにより、薄肉部が支持体の長さ方向と直交する状態で配設されたヒンジ体にて形成し、該ヒンジ体を前記係止板と弾発板との間で屈曲させて前記係止板と弾発板とを揺動させた際、弾発板の弾性により両揺動限でその状態が保持されると共に、一方の揺動限において前記係止板と弾発板との連結部が前記支持体の一面から山形に突出した係止状態となると共に、このときこの山形に突出した連結部が鋭角を形成するように構成したことを特徴とする摺動体保持部材。
【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、重量物を積載してレール上を移動するリニアガイド等の摺動体を保管しておく等のために使用される摺動体保持部材に関する。
【0002】
【従来の技術及び考案が解決しようとする課題】
従来、リニアガイドを摺動可能に保持するキャリア(摺動体保持部材)としては、図9に示すようなブロー成形法等により成形されたプラスチック製の四角ブロック状キャリアaが用いられている。
【0003】
このキャリアaには、断面逆凹状のリニアガイドbが摺動可能に嵌挿され、保持されるもので、キャリアaに保持されたリニアガイドbは図10に示すように、キャリアaの長さ方向一端面をレールcの長さ方向一端面に当接し、リニアガイドbをキャリアaからレールcに摺動移行させるものである。
【0004】
この場合、キャリアaにリニアガイドbを保持した状態において、そのままではリニアガイドbがキャリアaを自由に摺動し、保管中にキャリアaから抜け出すおそれがあるため、リニアガイドbをキャリアaに係止する必要があるが、この係止方法としては、図11に示すようにキャリアaの長さ方向両端部に形成された溝d,d(図9参照)にそれぞれバンドeを巻き付ける方法が一般に採用されている。
【0005】
しかしながら、バンドeを用いてキャリアaにリニアガイドbを係止する方法は、バンドeをキャリアaに巻き付ける作業及びキャリアaから取り外す作業が煩雑であり、この場合バンドeはキャリアaの両端部にそれぞれ取り付ける必要があり、バンドeの着脱操作が面倒である。またバンドeを2本必要とし、部品点数が多くなり、しかもバンドを取りはずした場合において、バンドを別途保管しなければならない面倒もある。
【0006】
そこで、本出願人は、これらの問題点を解消するため、図5?8に示した構成の摺動体保持部材を先に提案した(実開平5-49717号公報)。即ち、この保持部材mは、リニアガイドを摺動可能に支持する支持体fの長さ方向両端部の少なくとも一方(図示した例では両方)にそれぞれ幅方向両端部から長さ方向に沿って外方へ一体に延出形成した弾性変形可能な突出片g,gを設け、該突出片g,g先端部問に、中央部h及び両端部i,iがそれぞれ薄肉に形成された上下方向反転可能な偏平V字状板からなるヒンジ体jの両端部i,iを一体に連結して、該ヒンジ体jを上記リニアガイドbの摺動を係止させる係止体kとしたものであり、該係止体k(ヒンジ体j)が、常時は図8に示したように、上記支持体f上面より上方に逆V字状に突出していると共に、下方への押圧力により、図5?7に示されているように、弾性的にV字状に変形して上記支持体f上面より下方に突出するようになっている。
【0007】
この摺動保持部材mを用いて上記リニアガイドbを保持する場合、両係止体k,k(ヒンジ体j,j)をそれぞれ図7に示したV字状でかつ上記支持体bの上面より下方に突出している状態で、リニアガイドbの凹部内に挿入し、係止体k,kの中央部hを上方に押圧する。これにより係止体k,kを構成するヒンジ体j,jがそれぞれ反転し、図8に示すように逆V字状に弾性変形して支持体fの上面より上方に突出した状態になり、これによりリニアガイドbの摺動が係止される。また、リニアガイドbの係止状態を解除する場合は、図8に示した状態からそのヒンジ体j,jの中央部hを下方に押圧して該ヒンジ体j,jを反転させ、図7に示すようにV字状に弾性変形させて、支持体fの上面より下方に突出させる。これにより、リニアガイドbは係止状態が解除され、自在に摺動可能となるものである。
【0008】
従って、この保持部材mによれば、ワンタッチでヒンジ体j,jを上向き(逆V字状)又は下向き(V字状)に変えることができ、リニアガイドbの係止及び係止解除を行うことができるので、操作性に優れたものであり、しかも該保持部材m一部品により良好にリニアガイドb等の摺動部材を保持し得るものである。しかしながら、本考案者の検討によれば、この保持部材mはその構造上の理由から上記係止体k,k(ヒンジ体j,j)の強度が必ずしも十分でないことが判明した。
【0009】
即ち、上記保持部材mは、上述のように上記ヒンジ体jの反転運動によりリニアガイドbの係止、係止解除を行うものであり、このヒンジ体jの反転運動は、薄肉に形成された両端部i,i及び中央部hが屈伸運動することにより行われるように構成されているが、この場合リニアガイドbを保持係止した状態においてこのヒンジ体jにかかる力は、リニアガイドbの摺動方向、即ち支持体fの長さ方向(図8中、矢印F方向)の力であり、ヒンジ体jに対しては薄肉の両端部i,iを引き裂く方向に大きな力がかかることになる。このため、大きな力がかかるとヒンジ体jが薄肉に形成されたその両端部i,iから破損してしまうおそれがある。
【0010】
本考案は、上記事情に鑑みなされたもので、取り扱い性に優れ、かつ摺動体保持部材として十分な強度を有し、確実かつ安定的にリニアガイド等の摺動体を保持係止することができる摺動体保持部材を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本考案は、上記目的を達成するため、リニアガイド等の摺動体を摺動可能に支持する支持体の長さ方向両端部にそれぞれ前記摺動体の摺動を係止させる係止体が設けられた摺動体保持部材であって、前記係止体の少なくとも一方を、平板状の係止板と該係止板の一端部に薄肉部を介して一体に連設された弾性変形可能な断面略く字状の弾発板とからなると共に、前記支持体の長さ方向両端部の少なくとも一方に形成した四角貫通穴の互いに対向する一対の内周縁部にそれぞれ前記係止板の他端縁部及び弾発板の先端縁部を薄肉部を介して一体に連結することにより、薄肉部が支持体の長さ方向と直交する状態で配設されたヒンジ体にて形成し、該ヒンジ体を前記係止板と弾発板との間で屈曲させて前記係止板と弾発板とを揺動させた際、弾発板の弾性により両揺動限でその状態が保持されると共に、一方の揺動限において前記係止板と弾発板との連結部が前記支持体の一面から山形に突出した係止状態となると共に、このときこの山形に突出した連結部が鋭角を形成するように構成したことを特徴とする摺動体保持部材を提供する。
【0012】
【作用】
本考案の摺動体保持部材は、少なくとも一方の係止体を平板状の係止板と該係止板の一端部に薄肉部を介して一体に連設された弾性変形可能な断面く字状の弾発板とからなる屈曲板状のヒンジ体にて形成し、このヒンジ体を支持体端部に設けた四角貫通穴の互いに対向する一対の内周縁部にそれぞれ上記係止板の他端縁部及び弾発板の先端縁部を薄肉部を介して一体に連結することにより、薄肉部が支持体の長さ方向と直行する状態で配設したので、該ヒンジ体は上記係止板と弾発板との間の薄肉部で屈曲させ、支持体の上面から略山形状に突出した状態とすることができ、この状態から下方に押圧すれば、上記弾発板が弾性的に屈伸運動すると共に、薄肉に形成された係止板と弾発板との連結部(薄肉部)及び貫通穴内周縁部と係止板、弾発板との連結部(薄肉部)が屈曲反転して、支持体上面から下方に略逆山形状に突出した状態となり、またこの状態から上方に押圧すれば、再び弾発板が屈伸運動すると共に、各連結部(薄肉部)が屈伸反転して元の状態に復帰する。これにより、上記ヒンジ体は上方又は下方への押圧によりワンタッチで簡単に略山形状また略逆山形状に変形するため、保持部材に摺動可能に保持された摺動体をワンタッチで係止し又は係止を解除することができる。
【0013】
しかも本考案の保持部材によれば、薄肉に形成されたヒンジ体の各連結部(薄肉部)が力のかかる方向である支持体の長さ方向と直交した状態でヒンジ体が配設されているので、各連結部(薄肉部)に引き裂き力が生じることがなく、安定的かつ確実にリニアガイド等の摺動体を係止することができるものである。
【0014】
なお、本考案の保持部材は、摺動体を保持、係止した状態でそのヒンジ体を設けた側の端部をレールの一端に当接し、この状態で略山形形状にあるヒンジ体を下方に押圧することにより、ヒンジ体を略逆山形状に弾性変形させて摺動体の係止状態を解除し、摺動体を保持部材からレールに摺動移行させることができ、また、上記と逆の操作を行うことにより、レールから保持部材に摺動体を移行させることができる。
【0015】
【実施例】
以下、本考案の実施例につき図面を参照して説明する。図1?4は本考案の一実施例にかかる摺動体保持部材であり、この保持部材はリニアガイド等の摺動体が摺動可能に嵌挿される支持体1と、その長さ方向両端部にそれぞれ設けられた係止体2,2とを具備している。
【0016】
上記支持体1は、横断面逆凹状の基部3と、その上壁3aから長さ方向及び幅方向に一体に延出形成された上板4とから形成されており、上記上壁3a下面及び上板4下面周縁部には、補強リブ5,5が一体に形成されている。また、該支持体1の長さ方向両端部は端縁部に向かうに従って漸次幅狭に形成されていると共に、長さ方向中間部両側面にはレール状のガイド突条6,6が長さ方向に沿って一体に設けられている。更に、長さ方向両端部幅方向中間部には、四角貫通穴7,7が形成されており、この四角貫通穴7,7内に上記係止体2,2が設けられている。
【0017】
上記係止体2,2は、それぞれ平板状の係止板8の一端部に断面く字状の弾性変形可能な弾発板9を薄肉部10を介して一体に連結形成した屈曲板状のヒンジ体11として形成されたいる。このヒンジ体11,11は、上記四角貫通穴7,7の互いに対向する一対の内周縁上端部に上記係止板8及び弾発板9の端部を薄肉部12,12を介して一体に連結することにより、薄肉部10,12,12が支持体1の長さ方向と直交する状態で配設されている。
【0018】
なお、この保持部材の長さ方向一端部と他端部とは上記係止体2,2を構成するヒンジ体11の配設方向が一端側と他端側で反転している以外は、同一の構成となっている。
【0019】
上記実施例の摺動体保持部材は、図4に示されているように、その支持体1にリニアガイド等の摺動体bを摺動可能に嵌挿するもので、該摺動体bを支持体1に保持、係止する場合は、両係止体2,2(ヒンジ体11,11)をそれぞれ図3に示されているように、略逆山形状で上記支持体1の上面より下方に突出している状態からその係止板8の下面を上方に押圧する。これにより、弾発板9が弾性的に屈伸運動すると共に、係止板8と弾発板9との連結部(薄肉部)10及び貫通穴7内周縁部と係止板8,弾発板9との連結部(薄肉部)12,12がそれぞれ屈伸反転して、支持体上面から上方に略山形状に突出した状態となり、これにより摺動体bの摺動が係止される(図4)。このとき、図14に示されているように、略山形状に突出した上記係止板8と弾発板9との連結部(薄肉部)10の角度は、90°未満の鋭角を形成するようになっている。
【0020】
また、図4に示した摺動体bの係止状態を解除する場合は、図4に示した状態からヒンジ体11,11の係止板8を下方に押圧する。これにより再び弾発板9が屈伸運動すると共に、各連結部(薄肉部)10,12,12が屈伸反転してヒンジ体11,11が略山形状で上記支持体1の上面より下方に突出した図3の状態となり、摺動体bの係止状態が解除されて、摺動体bが自在に摺動可能となる。
【0021】
ここで、本実施例の保持部材については、摺動体bを保持係止した状態(図4)において、薄肉に形成されたヒンジ体11,11の各連結部(薄肉部)10,12,12の力のかかる方向である支持体1の長さ方向(図4中、矢印F方向)と直交した状態となるので、各連結部(薄肉部)10,12,12に引き裂き力が生じることがなく、安定的かつ確実に摺動体bを係止することができるものである。
【0022】
このように、本実施例の保持部材によれば、ワンタッチでヒンジ体11,11を上向き(略山形状)又は下向き(略逆山形状)に変えることができ、この操作のみによって摺動体bの係止及び係止解除を行うことができるので、操作性に優れたものである上、本保持部材一部品により摺動体bを保持係止することができる。しかも、摺動体bを保持係止した状態において、ヒンジ体11,11の各連結部(薄肉部)10,12,12に引き裂き力を生じることがなく、従って大きな力がかかっても破損等の不都合を生じることなく、確実かつ安定的に摺動体bを保持係止することができるものである。
【0023】
なお、上記実施例では、両係止体2,2をそれぞれ上述した構成のヒンジ体11,11により構成したが、一方の係止体2のみを上記ヒンジ体11で構成し、他方の係止体2は必ずしも係止解除を行わなくてもよいので、例えば単に上方に突起した不動突起体にて構成することもでき、その他の構成についても本考案の要旨を逸脱しない範囲で種々変更して差し支えない。
【0024】
【考案の効果】
以上説明したように、本考案の摺動体保持部材は、ワンタッチでリニアガイド等の摺動体を係止し或いは係止を解除することができ、操作性、取り扱い性が優れている上、部品点数も1点で簡単かつ安価に製作し得る。しかも、大きな力がかかっても破損等の不都合を生じることなく、安定的かつ確実に摺動体を保持係止することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本考案の一実施例にかかる摺動体保持部材を示す平面図である。
【図2】
同保持部材を示す裏面図である。
【図3】
同保持部材を示す図1のA-A線に沿った断面図である。
【図4】
同保持部材にリニアガイド(摺動体)を保持係止した状態を示す断面図である。
【図5】
従来の摺動体保持部材を示す平面図である。
【図6】
同保持部材の係止体部分を示す部分斜視図である。
【図7】
同保持部材にリニアガイド(摺動体)を非係止状態に保持した状態を示す斜視図である。
【図8】
同保持部材にリニアガイド(摺動体)を係止状態に保持した状態を示す斜視図である。
【図9】
従来の他の摺動体保持部材とリニアガイド(摺動体)とを示す斜視図である。
【図10】
同保持部材に保持したリニアガイド(摺動体)をレールに移す際の手順を説明する概略図である。
【図11】
同保持部材にリニアガイド(摺動部材)を係止状態に保持した状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 支持体
2 係止体
7 四角貫通穴
8 係止板
9 弾発板
10,12 連結部(薄肉部)
11 ヒンジ体
b リニアガイド(摺動体)
訂正の要旨 1.訂正の内容
(1)訂正事項a
実用新案登録第2581947号に係る明細書又は図面(以下、「実用新案登録明細書」という。)における実用新案登録請求の範囲の請求項1を、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的に、下記のとおりに訂正する。
【1】リニアガイド等の摺動体を摺動可能に支持する支持体の長さ方向両端部にそれぞれ前記摺動体の摺動を係止させる係止体が設けられた摺動体保持部材であって、
前記係止体の少なくとも一方を、平板状の係止板と該係止板の一端部に薄肉部を介して一体に連設された弾性変形可能な断面略く字状の弾発板とからなると共に、前記支持体の長さ方向両端部の少なくとも一方に形成した四角貫通穴の互いに対向する一対の内周縁部にそれぞれ前記係止板の他端縁部及び弾発板の先端縁部を薄肉部を介して一体に連結することにより、薄肉部が支持体の長さ方向と直交する状態で配設されたヒンジ体にて形成し、該ヒンジ体を前記係止板と弾発板との間で屈曲させて前記係止板と弾発板とを揺動させた際、弾発板の弾性により両揺動限でその状態が保持されると共に、一方の揺動限において前記係止板と弾発板との連結部が前記支持体の一面から山形に突出した係止状態となると共に、このときこの山形に突出した連結部が鋭角を形成するように構成したことを特徴とする摺動体保持部材。」
(2)訂正事項b
考案の詳細な説明の段落【0011】の「薄肉部が支持体の長さ方向と直交する状態で配設されたヒンジ体にて形成した」との記載を、明りょうでない記載の釈明を目的として、「薄肉部が支持体の長さ方向と直交する状態で配設されたヒンジ体にて形成し、該ヒンジ体を前記係止板と弾発板との間で屈曲させて前記係止板と弾発板とを揺動させた際、弾発板の弾性により両揺動限でその状態が保持されると共に、一方の揺動限において前記係止板と弾発板との連結部が前記支持体の一面から山形に突出した係止状態となると共に、このときこの山形に突出した連結部が鋭角を形成するように構成したことを特徴とする摺動体保持部材を提供する。」と訂正。
(3)訂正事項c
考案の詳細な説明の段落【0019】の「これにより摺動体bの摺動が係止される(図4)」との記載を、明りょうでない記載の釈明を目的として、「これにより摺動体bの摺動が係止される(図4)。このとき、図14に示されているように、略山形状に突出した上記係止板8と弾発板9との連結部(薄肉部)10の角度は、90°未満の鋭角を形成するようになっている。」と訂正。
(4)訂正事項d
「図面の簡単な説明」の欄の、【図7】、【図8】の同摺動部材との記載を、誤記の訂正を目的として、同保持部材と訂正。
異議決定日 2000-06-29 
出願番号 実願平5-76117 
審決分類 U 1 651・ 121- YA (F16C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 松下 聡  
特許庁審判長 舟木 進
特許庁審判官 秋月 均
和田 雄二
登録日 1998-07-17 
登録番号 実用新案登録第2581947号(U2581947) 
権利者 テイエチケー株式会社
東京都品川区西五反田3丁目11番6号 株式会社ニフコ
神奈川県横浜市戸塚区舞岡町184番地1
考案の名称 摺動体保持部材  
代理人 内藤 嘉昭  
代理人 森 哲也  
代理人 西川 裕子  
代理人 小島 隆司  
代理人 西川 裕子  
代理人 小島 隆司  
代理人 崔 秀▲てつ▼  
代理人 西川 裕子  
代理人 小島 隆司  
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