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審決分類 審判 全部申し立て   A63F7
審判 全部申し立て   A63F7
管理番号 1028358
異議申立番号 異議2000-72135  
総通号数 16 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2001-04-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-05-22 
確定日 2000-10-23 
異議申立件数
事件の表示 登録第2601520号「パチンコ機の通過チャッカー」の実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 登録第2601520号の実用新案登録を維持する。
理由 一、手続の経緯
本件登録第2601520号実用新案は、平成5年12月29日に実願平5-75526号として出願され、平成11年9月24日にその実用新案の設定登録がなされ、その後、実用新案登録異議申立人河井清悦(以下、「申立人」という。)より実用新案登録異議の申立てがなされたものである。

二、本件考案
本件の請求項1に係る考案(以下、これを「本件考案」という。)は、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】遊技板に取り付ける取付基板と、該取付基板の前面に球検出部を臨ませた通過スイッチと、該通過スイッチの下に位置するように取付基板の前面に突設され、前記球検出部を通過したパチンコ球を受けて一定の向きに横送りする横送り部材と、からなり、通過スイッチを通ったパチンコ球が横送り部材で横向きに進路を変え、高さ方向の中間位置から側方に向けて放出されるようになっていることを特徴とするパチンコ機の通過チャッカー。」

三、実用新案登録異議申立ての理由の概要
申立人は、下記の証拠方法を提示して、次の理由により、本件実用新案登録は取り消されるべきものである旨を主張している。
[理由1]:本件考案は、本件出願前に頒布された甲第1号証に記載された考案及び同甲第2号証乃至甲第9号証(甲第3号証を除く)に記載の周知技術に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、本件考案は実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものである。
[理由2]:本件考案は、本件考案の実用新案登録出願前の特許出願であって本件考案の実用新案登録出願後に公開特許公報が発行された特許出願の願書に最初に添付した明細書又は図面(甲第3号証)に記載された発明と同一であるから、本件考案は実用新案法第3条の2第1項の規定により実用新案登録を受けることができないものである。

[甲第1号証]:特開平5-192437号公報
[甲第2号証]:特開平5-329249号公報
[甲第3号証]:特願平4-224880号(特開平6-47138号公報参照)の願書に最初に添付した明細書又は図面
[甲第4号証]:実願昭59-5650号(実開昭60-119473号)のマイクロフィルム
[甲第5号証]:特開平5-49728号公報
[甲第6号証]:実願昭59-189046号(実開昭61-103181号)のマイクロフィルム
[甲第7号証]:実願昭58-175935号(実開昭60-83672号)のマイクロフィルム
[甲第8号証]:特開平5-161744号公報
[甲第9号証]:実願昭55-159553号(実開昭57-81876号)のマイクロフィルム

四、理由1(実用新案法第3条第2項違反)について
1.甲号各証(甲第3号証を除く)の記載内容
[甲第1号証]には、遊技機に関して、次の事項が記載されている。
「【0007】【実施例】次に、本発明の一実施例を図面にしたがって説明する。遊技機の遊技盤11の遊技盤面11aの中央部の若干下方には第1の入賞装置1が取付けられるとともに、遊技盤面11aの下端には第1の入賞装置1の直下に隣設された第2の入賞装置2が取付けられている。【0008】遊技盤面11aにおいて、第1の入賞装置1の上方には天入賞口3aおよび左右の通過口3bを有する天普通役物3と、天下入賞口4aを有する天下普通役物4と、普通電動役物8とが上から順に取付けられている。」(1欄38行?48行)
「【0009】遊技盤11には左右1対の始動口入賞検出スイッチ90と、天下入賞口入賞検出スイッチ91と、電動役物作動スイッチ92と、チューリップ式役物入賞検出スイッチ93と、電動役物開放ソレノイド94とが取付けられる」(2欄4行?8行)
「この前カバー板16gの後面には外端が内板16fの左上端に連接されて右方へ下傾状に延出された上樋板16hと、上端がこの上樋板16hの内端に連接されて下端が内板16fの中央部付近に連接されかつ上部から中央部にわたって円弧状に湾曲された下樋板16iとの前端縁が連接されている。【0014】前球受ケース16の前板16cと前カバー板16gとの間には半円形状の入球口16jが開口されるとともに、上樋板16h上および、下樋板16iと内板16fとの間には入賞口16dおよび入球口16jを通った遊技球を球受ケース16内の下端中央部へ誘導するための誘導路20が形成されている。この誘導路20は上樋板16h上へ転落した各遊技球が誘導路20内で一列に整列されるように設定されている。【0015】器体15の前端には前球受ケース16が前面にビス着されて円形状の開口部を有する基枠21が形成され」(2欄45行?3欄11行)
「【0017】基枠21の上端には後方へ突出された角筒状のスイッチ取付部21aが形成され、このスイッチ取付部21a内には前球受ケース16の入賞口16d内に突入された検出部27aが前部に開設された特定入賞口入賞検出スイッチ27が水平姿勢で貫挿されている。【0018】後球受ケース22の仕切板22bの上端部には1個の遊技球の通過が可能なほぼ丸孔状の特定球通し口29が開口されるとともに、仕切板22bの上部で特定球通し口29の一側方には1個の遊技球の通過が可能なほぼ丸孔状の普通球通し口30が特定球通し口29から若干離隔して開口され、仕切板22bの中心から特定球通し口29の中心側孔縁29aまでの間隔は仕切板22bの中心から普通球通し口30の中心側孔縁30aまでの間隔より短縮されている。」(3欄23行?36行)
「【0063】遊技球が天下入賞口4a内へ入球すると上連動役物7の普通電動役物作動口7aが開放され、続いて下連動役物7の普通電動役物作動口7aが開放される。【0064】遊技球が下連動役物7の普通電動役物作動口7a内へ入球すると、電動役物開放ソレノイド8cが作動して普通電動役物8の特定入賞口8aが5.8秒間開放される。但し、開放中の特定入賞口8a内に6個の遊技球が入球したときには6個目の入球の時点で特定入賞口8aが閉鎖される。特定入賞口8aの開放中に遊技球が新たに普通電動役物作動口7a内へ入球しても、特定入賞口8aは再度開放されない。【0065】遊技球が開放中の特定入賞口8a内へ入球して第1の入賞装置1の入賞口16d内および誘導路20内へ落入すると、その遊技球は特定球受部42および普通球受部43の何れかに分配される。特定入賞口8a内へ落入した遊技球が特定球受部42内へ導入されると、特定球受部42が特定球通し口29の正面へ旋回したときに特定球受部42内の遊技球が特定球通し口29内を通り抜けて特定通路36へ転落し、特定通路36内を通行して特定領域通過検出スイッチ38によってその通行が検出され、特定領域通過検出スイッチ38の検出信号によって特別装置が作動する。また、特定入賞口8a内に落入した遊技球が普通球受部43の何れかに導入されると、その遊技球が普通球通し口30を通り抜けて球通路37内へ転落し、前記特別装置は作動しない。【0066】特別装置の作動中に遊技球が左右始動口6a内へ入球すると、第2の入賞装置2の大入賞口51が約9.8秒間開放される。但し、開放中の大入賞口51内へ10個目の遊技球が入球した時点で大入賞口51が閉塞される。【0067】大入賞口51の開放中に遊技球が左右始動口6a内へ入球しても規定数の賞品球が払い出されるだけで、大入賞口51の閉塞後引き続き大入賞口51が開放されることはない。【0068】前記特別装置の作動中に遊技球が左右始動口6a内へ16個入球したとき、若しくは遊技球が特定通路36を再度通行したときには特別装置が作動を停止する。【0069】大入賞口51の開放中にその途中で特別装置の作動が停止したときには大入賞口51は残り時間分開放される。」(10欄17行?11欄8行)
[甲第2号証]には、弾球遊技機に関して、次の事項が記載されている。
「【0023】まず、図5を参照して第2実施例に係る振分装置70について説明する。図5は、振分装置70の概略正面図である。図において、振分装置70の取付基板71には、その上部中央に打玉P1が入球する入球口72が形成され、該入球口72から連続してクランク状の第1通路73が形成されている。第1通路73の流下端には、入賞玉が通過し得る落下口74が形成され、該落下口74に第1モータ77によって回転せしめられる第1回転体75が臨むように配置されている。第1回転体75の外周には、落下口74を閉塞する中心角θ(本実施例の場合には、45度)となる玉当接部76が形成され、該玉当接部76以外の外周は、落下口74を閉塞しない切欠部となっている。したがって、入賞玉が落下口74に到達した際に玉当接部76が閉塞している状態においては、入賞玉は下流側の第2通路78に誘導されるが、玉当接部76が閉塞していない状態においては、入賞玉が落下口74から下方に落下して後述する通常入賞口85に導かれる。したがって、通常の状態において下流側の第2通路78に導かれる誘導率は、1/8である。一方、予め定めた条件が成立したときには、玉当接部76が落下口74を閉塞した状態で停止保持されるので、第2通路78に導かれる誘導率は、8/8である。【0024】落下口74の左側側方には、第2通路78が下り傾斜状に形成され、該第2通路78の流下端にモータ83によって反時計方向に回転せしめられる第2回転体79が設けられている。第2回転体79の外周には、複数(3つ)の玉受穴80、81が形成され、第2通路78を転勤してきた入賞玉がいずれかの玉受穴80、81に導かれる。この玉受穴のうち、深さの深い1つの特別玉受穴80に入賞玉が受け入れられたときには、取付基板71に穿設された特定入賞口82に取り込まれて特定入賞玉検出器84をONさせ、権利発生遊技状態とする。一方、深さの浅い2つの通常玉受穴81に入賞玉が受け入れられたときには、そのまま回転移動せしめられて、最終的に通常入賞口85に導かれる。」(7欄12行?46行)
[甲第4号証]には、パチンコ機の通過型チャッカーに関して、次の事項が示されている。
「(1)遊技盤に開設した貫通穴を覆って遊技盤表面に止着する取付基板部と、取付基板部の表面に設けた球の流下する球通路を形成する相対向する側壁部とを有し、上記側壁部内の一方には発光素子を、又他方の側壁部内には該発光素子からの光を受光する受光素子を配設し、上記側壁部の前面側には入賞領域を形成する前面板を設けることを特徴とするパチンコ機の通過型チャッカー。」(1頁5行?12行)
「通過型チャッカーは、流入したパチンコ球を遊技盤裏面の機内に取込まず、そのまま遊技盤面上を流下させるものである。この通過型チャッカーに於ては、一般に打球が捕捉されても所謂入賞球とならず、従って、賞球は放出されないが、他の入賞器或いは入賞装置を打球の受け入れ易い状態に変換させるなどの機能が与えられている。第1図及び第2図に於て、本考案のチャッカーは、取付穴11を有する取付基板部10と、該取付基板部の表面に設けた相対向する側壁部であって、球の流下する通路14を形成する側壁部12、13とを有し、側壁部の前面側には入賞領域を形成する前面板15を装着してある。この実施例では、各側壁部12、13は完全に一体ではなく、一部は他の部材で構成されている。即ち、側壁部12、13の一部に設けた凹部(差込受け)16、17に、コ字型ホルダー20の腕22、23を差し込んでおり、この腕が上記の側壁部12、13の一部を構成している。」(3頁1行?20行)
「側壁部12、13内、正確にはホルダー20の両腕22、23内には、第3図及び第4図から分るように、球通路を挟んで相対向する位置に、それぞれ発光素子1及び受光素子2が埋設してあり、両者は球検出用の光センサを構成している。」(5頁2行?6行)
[甲第5号証]には、弾球遊技機に関して、次の事項が示されている。
「【0007】また、始動入賞装置4の左右には、本実施例の要部を構成する通過口装置20a,20bが配置され、該通過口装置20a,20bに打玉が入賞すると、可変入賞球装置50に設けられる可変表示装置としての2つのドットLED55a,55bが変動表示し、その表示結果が予め定められた表示結果となったときに、前記電動役物からなる始動入賞装置4が所定時間の開放動作を2回行う。このような動作を行うために、通過口装置20a,20bには、通過玉検出器40a,40bが内蔵され」(2欄41行?50行)
「【0010】次に、本実施例の要部を構成する通過口装置20a,20bの構成について図1及び図2を参照して説明する。図1は、通過口装置20a,20bの平面図であり、図2は、通過口装置20a,20bの背面から見た分解斜視図である。図において、通過口装置20a,20b(2つの通過口装置は、全く同じ構造であるので、1つの通過口装置を図示する)は、前記遊技盤1の表面に取り付けられる取付基板21を有し、該取付基板21の中央に開設された長方形状の貫通開口22の両側面に沿って取付基板21を前後に貫通するように装着枠23が形成されている。装着枠23は、上面、底面前方部、及び後部側面が開放して形成されており、その前面壁上部に押え突起24が突設され、その底面後方に係止爪25aを有する係止片25が形成されている。この押え突起24及び係止爪25aは、後述する通過玉検出器40a,40bを着脱自在に且つ所定の位置に固定するものである。」(3欄30行?46行)
「【0013】ところで、装飾カバー部材30は、打玉が通過するように上下に入口開口33及び出口開口34が形成されている。このうち上部の入口開口33には、前方及び両側面から内側に向かって被覆部35が突設されている。この被覆部35は、次に説明する通過玉検出器40a,40bが装着されたときに、通過玉検出器40a,40bの前方に形成される玉通過穴41の上端開口縁を被覆するものである。このため、遊技領域3を落下する打玉が通過口装置20a,20bを通過する際には、被覆部35に衝突して通過玉検出器40a,40bの玉通過穴41の開口縁には、衝突しないものである。」(4欄31行?41行)
「【0015】また、通過玉検出器40a,40bの前方に形成される玉通過穴41の内部には、通過する打玉によって押圧されるアクチュエータ42が臨み、通過玉検出器40a,40bの後端には、配線が接続される端子金具43a,43bが突出されている。」(5欄5行?9行)

[甲第6号証]には、パチンコ機の光電式通過球検出器に関して、次の事項が示されている。
「第1図及び第2図に示す通過球検出器1は、パチンコ球ほぼ1個分の通路11を形成する相対向する側壁12A、12Bを有するホルダー10と、該ホルダーの一方の側壁内に設けた発光素子2と、他方の側壁内に発光素子に対向させて設けた受光素子3と、この発受光素子対を外部から被うため側壁12A、12Bの内側面即ち通路側の面に配設した透明部材20とから成る。ホルダー10はこの実施例ではコ字型をしており、従って基部壁12C(コ字型の連接部)から相対向するように延びる2つの側壁12A、12Bを有する。コ字状に連接するこれらの壁12A,12B,12Cの内側面には、通路11の周方向に、帯状のくぼみ13が形成されている。このくぼみ13が形成されている領域内に於て、両側壁12A,12B内には、球通路11を挟んで相対向する位置に、それぞれ発光素子2及び受光素子3が埋設してある。」(5頁4行?6頁1行)
「第16図及び第17図は、ホルダー10を取付ケース40にセットし、該ケ一スによって取付ける例を示す。取付ケース40は、全体としてホルダー10を差込み収納可能な形状をしており、その基部41Cからコ字状に延在する2つのアーム41A、41Bと、アームの外側面に基部41Cから突設した外向フランジ42とを有する。取付ケース40のアーム41A、41Bの内側面には、またホルダー10の側壁12A、12Bを差し込んで収納するための凹部43が設けてある。また、取付ケース40の基部41Cには、ホルダー10の基部壁12Cの裏面に凸状に設けた検出回路埋設部25を通すための開口44が開設してある。」(19頁5行?18行)

[甲第7号証]には、パチンコ機の光電式通過球検出器に関して、次の事項が示されている。
「第1図及び第2図に於て、本考案の通過球検出器1は、パチンコ球ほぼ1個分の通路11を形成する相対向する側壁12A、12Bを有するホルダー10と、該ホルダーの側壁に相対向する位置にて設けた発光素子2及び受光素子3と、この発受光素子対2、3を外部から被うため側壁12A、12Bの内側面即ち通路側の面に配設した透明部材20とから成る。」(3頁18行?4頁5行)
「第5図及び第6図は、上記通過球検出器1をパチンコ機の所謂チャッカーに適用した例を示す。このチャッカーは、U字形の縦溝32を形成した検出器保持部材31と、該部材の前面に設けた前面飾板38とを有する。33は、検出器保持部材31後面の縁に設けた取付用外向フランジを示す。」(8頁17行?9頁4行)

[甲第8号証]には、遊技機に関して、次の事項が示されている。
「【0029】また、遊技盤3の裏面側には、遊技球が上述の各入賞口(入賞装置)の何れに流入したかを検出するための複数の入賞球検出スイッチ(SW1?SW9,SW11)が入賞球流路の所定の位置に設けられている。又前記貫通孔3Eには特定ゲート7を通過する遊技球を検出するためのゲートスイッチSW1Oが挿着されている。」(7欄31行?37行)
「【0031】概略上記のように構成された遊技機1はそれに設置された後述の役物制御装置600等の制御手段によって概ね次のように制御される。遊技者が操作ダイヤル21を回動して遊技が開始され、遊技領域4に発射された遊技球が遊技盤3の特定ゲート7を通過すると、該通過が特定ゲートスイッチSW10によって検出され、該スイッチSW10からのON信号に基いて後述の役物制御装置600が、補助変動入賞装置50に設けられた補助図柄表示装置52によるゲーム(第1の可変表示ゲーム)を開始させる。このゲーム結果が「当り」となったとき(このとき表示される数値は所定値(例えば、「3」,「5」,「7」)となる)には、これを条件に上記役物制御装置600は、補助変動入賞装置50の可動部材51,51を所定時間(例えば6sec)に亘って開成する(但し、該装置50に遊技球が入賞したときには直ちに閉成される)。【0032】上記補助変動入賞装置50が開成されている間に遊技球が、該装置50の始動入賞口6に入賞すると、その旨が第1の始動入賞スイッチSW7によって検出され、該スイッチSW7からのON信号に基いて、後述の役物制御装置600が変動入賞装置10に設置された可動翼片101,101を、所定時間(例えば0.3sec)に亘って所定回数(例えば1回)開閉させる(後述の図27参照)。」(8欄1行?24行)

[甲第9号証]には、通過球検出装置に関して、次の事項が示されている。
「例えば、盤面に通過球検出装置を設け、遊技球が適数回この検出装置を通過すると、すべてのチューリップを開放させるとか、あるいは複数設けた検出装置のすべてを遊技球が通過すると、チューリップを一定時間開放させるとかの手段を用いて遊技性の向上を図ったものが提供させている。」(2頁19行?3頁5行)
「本考案は、遊技盤面(50)に固定する固定枠(10)と、固定枠(10)に固定して球通路(31)を形成する飾り枠(30)と、固定枠(10)に装入するスイッチ(40)とから形成してある。固定枠(10)は、盤面(50)に穿設した連通孔(51)に装入する筒部(1)と、筒部(11)に連設され、盤面(50)表側に固定するフランジ部(12)と、フランジ部(12)から反筒部(11)側に遊技球(B)直径より大きい巾で並設した側板(13)とから形成されている。」(5頁8行?18行)
「飾り枠(30)は、平板状に形成され、固定枠(10)の側板(13)に固定されて、フランジ部(12)と側板(13)とによって球通路(31)を形成するものである。(32)はフランジ部(12)のねじ穴(19)に対応する固定孔、(33)は適宜文字、図形等を記載した飾り板(34)を固定する飾り面である。スイッチ(40)は、固定枠(10)の筒部(11)内に装入した時に、球通路(31)に突出する検出杆(41)と、係止舌片(16)の鉤部(15)に係止する係止突片(42)とが設けてある。」(6頁8行?19行)

2.本件考案と甲号各証(甲第3号証を除く)記載の考案との対比・判断
(1)甲第1号証に記載の考案
甲第1号証における記載からみて、甲第1号証には、遊技盤11に取り付けられる器体15の基枠21上端に後方に突出形成された角筒状のスイッチ取付部16d内に該スイッチ取付部16d内に突入される検出部27aが前部に開設されている特定入賞口入賞検出スイッチ27が水平姿勢で貫挿され、前球受けケース16と前記器体15との間の内部空間内に内装される回転体41を有する第1の入賞装置1が遊技機の遊技盤11の遊技盤面11aの中央部の若干下方に取付けられる遊技機において、前記特定入賞口入賞検出スイッチ27を通った遊技球が第1の入賞装置1の前球受けケース16の入賞口16d内から、或いは、前記特定入賞口入賞検出スイッチ27を通らずに遊技球が直接に前球受けケース16の半円形状の入球口16jから前記特定入賞口入賞検出スイッチ27の下方位置にあり前球受けケース16の右方へ下傾状に延出された上樋板16h上へ転落し、該上樋板16hの傾斜に従い前記上樋板16h上でさらに下方へ転落移送されて、各遊技球は下樋板16iと内板16fとの間に形成された誘導路20内へ落入することにより誘導路20内で一列に整列され、誘導路20の下端へ誘導された遊技球が、さらに前記回転体41に凹設された1つの特定球受部42又は5つの普通球受部43のいずれかに択一的に分配されて、回転体41が前記内部空間内で一方向に回転されることにより回転体41の上端へ積極的に移送され、遊技球は前記器体15の後球受ケース22に形成された仕切板22b背面の隔壁33により仕切られた隔壁33の右位置の特定通路36と隔壁33の左位置の球通路37とにそれぞれ開口する特定球通し口29と普通球通し口30とに選択的に振り分けられて、特定球受部42に分配された遊技球だけが特定球通し口29内を通り抜けて特定通路36へ転落し特定通路36内を通行して特定領域通過検出スイッチ38によってその通行が検出されると特別装置が作動し、一方普通球受部43のいずれかに分配された遊技球は普通球通し口30内を通り抜けても球通路37内へ転落するだけで特別装置が作動しないようになっている第1の入賞装置1を有する遊技機、が記載されていると認める。

(2)対比・判断
本件考案と甲第1号証に記載の考案とを比較・対比すると、甲第1号証に記載の考案の「遊技盤11」「基枠21」「検出部27a」「特定入賞口入賞検出スイッチ27」「遊技機」が、本件考案の「遊技板」「取付基板」「球検出部」「通過スイッチ」「パチンコ機」にそれぞれ相当する。
しかしながら、甲第1号証に記載の考案の「第1の入賞装置1」は、前述したように、特定入賞口入賞検出スイッチ27を通った遊技球が第1の入賞装置1の前球受けケース16の入賞口16d内から、或いは、前記特定入賞口入賞検出スイッチ27を通らずに遊技球が直接に前球受けケース16の半円形状の入球口16jから前記特定入賞口入賞検出スイッチ27の下方位置にあり前球受けケース16の右方へ下傾状に延出された上樋板16h上へ転落し、該上樋板16hの傾斜に従い前記上樋板16h上でさらに下方へ転落移送されて、各遊技球は下樋板16iと内板16fとの間に形成された誘導路20内へ落入することにより誘導路20内で一列に整列され、誘導路20の下端へ誘導された遊技球が、さらに前記回転体41に凹設された1つの特定球受部42又は5つの普通球受部43のいずれかに択一的に分配されて、回転体41が前記内部空間内で一方向に回転されることにより回転体41の上端へ積極的に移送され、遊技球は前記器体15の後球受ケース22に形成された仕切板22b背面の隔壁33により仕切られた隔壁33の右位置の特定通路36と隔壁33の左位置の球通路37とにそれぞれ開口する特定球通し口29と普通球通し口30とに選択的に振り分けられて、特定球受部42に分配された遊技球だけが特定球通し口29内を通り抜けて特定通路36へ転落し特定通路36内を通行して特定領域通過検出スイッチ38によってその通行が検出されると特別装置が作動し、一方普通球受部43のいずれかに分配された遊技球は普通球通し口30内を通り抜けても球通路37内へ転落するだけで特別装置が作動しないようになっているものであるから、甲第1号証に記載の考案の前記「第1の入賞装置1」は、本件考案のような「通過スイッチを通ったパチンコ球が放出されるようになっている通過チャッカー」とは、もともと異なるものである。
そうしてみると、本件考案のような型式の「通過チャッカー」が、甲第2号証?甲第9号証(甲第3号証を除く)に記載されているように、本件考案の実用新案登録出願前の周知技術であったとしても、甲第1号証に記載の考案に上記周知技術を適用して本件考案のような構成を得ることは、できない。

3.むすび
上記のとおり、甲第1号証に記載の考案に、申立人の提示した甲第2号証ないし甲第9号証(甲第3号証を除く)に記載されているような周知技術を適用したとしても、本件考案の構成を得ることができないから、本件考案は、上記甲第1号証ないし甲第9号証(甲第3号証を除く)記載の考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとすることができない。
そして、本件考案は、その実用新案請求の範囲の請求項1に記載された技術事項により、明細書に記載されているような「以上のように本考案の通過チャッカーは、通過スイッチの球検出部を通り抜けたパチンコ球が横送り部材の上に落下して急激に流路を変える、という視覚的な変化が遊技客の注意を惹き、また、横送り部材で送り出される方向に入賞口などを設けておけば、通過チャッカーを通った後の入賞確率を高めることができるため、通過チャッカーの存在感を飛躍的に高めることができ、パチンコ遊技に減り張りを与えて興趣をより一層増大させることができる。」という効果を奏するものである。

五、理由2(実用新案法第3条の2第1項違反)について
1.甲第3号証の記載内容
[甲第3号証]には、弾球遊技機の可変入賞球装置に関して、次の事項が記載されている。
「【実施例】以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。まず、図5及び第6図を参照して、実施例に係る弾球遊技機の一例としてのパチンコ遊技機の遊技盤1の構成について説明する。図5は、遊技盤1の正面図であり、図6は、遊技盤1の背面図である。図において、遊技盤1の表面には、発射された打玉を誘導するための誘導レール2がほぼ円状に植立され、該誘導レール2で区画された領域が遊技領域3を構成している。」(2欄21行?28行)
「【0012】遊技領域3には、上記した構成以外に、前記可変表示装置4の左右に通過玉検出器34a,34bを有する通過口装置30a,30bが配置されている。この通過口装置30a,30bは、前記したように普通図柄用可変表示器7の変動を許容するものである。ここで、通過口装置30a,30bの構成について図7及び図8を参照して説明する。図7は、一方(遊技領域3の左側に配置される)の通過口装置30aの正面図(A)と他方の通過口装置30bの主要部の部分正面図(B)であり、図8は、通過口装置30aの断面図である。なお、以下の説明では、一方の通過口30a(番号に後にaを付したもの)について、主として説明するが、他方の通過口30bにおいても全く同じ構造である。【0013】図において、通過口装置30aは、前記遊技盤1の表面に取り付けられる取付基板31aを有し、該取付基板31aの上部に打玉を受け止める受口32aが突設され、該受口32aに受け入れられた打玉は、取付基板31aの後方に形成された玉通路33aを通って再度取付基板31aの前方に放出される。なお、玉通路33aの途中には、通過玉検出器34aが臨み、通過する打玉Pを検出するようになっている。更に、玉通路33aの出口には、放出された打玉を左右に振り分ける振分部材35aが突設されている。この振分部材35aは、その上面が山形に形成され、その頂点が玉通路33aの出口の中心からずれて形成されている。したがって、玉通路33aから放出された打玉Pは、いずれか一方に優先的に導かれるようになる。この優先的に導かれる面を優先誘導面36aとし、優先的に導かれない面を非優先誘導面37aとした場合、遊技領域3の左側に配置される通過口装置30aにおいては、図7(A)に示すように、右側の面が優先誘導面36aとされ、遊技領域3の右側に配置される通過口装置30bにおいては、図7(B)に示すように、左側の面が優先誘導面36bとされる。このような構成とすることにより、通過口装置30a,30bを通過した打玉を遊技領域3の中心方向に放出させ、前記始動口装置11や可変入賞球装置50に入賞し易くしている。また、振分部材35aの前面には円形状の装飾板が一体的に形成され、該装飾板の前面にシール貼付面38aが形成されている。このシール貼付面38aには、貼付されるシールが正確に貼り付けられるようにシール位置決め突起39aが形成されている。」(4欄10行?5欄1行)

2.対比・判断
本件考案と甲第3号証に記載の発明とを比較・対比すると、甲第3号証に記載の発明の「遊技盤1」「取付基板31a」「通過玉検出器34a、34b」「打玉」「振分部材35a」「弾球遊技機」「通過口装置30a、30b」が、本件考案の「遊技板」「取付基板」「通過スイッチ」「パチンコ球」「横送り部材」「パチンコ機」「通過チャッカー」にそれぞれ相当することは明らかであるから、両者は「遊技板に取り付ける取付基板と、通過スイッチと、該通過スイッチの下方に位置するように取付基板の前面に突設され、前記球検出部を通過したパチンコ球を受けて横送りする横送り部材と、からなり、通過スイッチを通ったパチンコ球が横送り部材で横向きに進路を変え、高さ方向の中間位置から側方に向けて放出されるようになっているパチンコ機の通過チャッカー」の点で構成が一致し、次の点で相違する。
[相違点1]:本件考案の通過スイッチが「取付基板の前面に球検出部を臨ませ」てあるのに対し、甲第3号証に記載の発明は「取付基板31aの後方に形成された玉通路33aの途中に通過玉検出器34aが臨」むように設けてある点。
[相違点2]:本件考案の横送り部材が「通過スイッチの下に位置するように取付基板の前面に突設され」るのに対し、甲第3号証に記載の発明では、振分部材35aが通過玉検出器34aの斜め前下方に位置するように取付基板31aの前面に突設されている点。
[相違点3]:本件考案の横送り部材が「前記球検出部を通過したパチンコ球を受けて一定の向きに横送りする」のに対し、甲第3号証に記載の発明の振分部材35aは、優先誘導面36a及び非優先誘導面37aを有し、通過玉検出器34aを通過し玉通路33aから放出された打玉を左右のいずれか一方に優先的に導くことにより振り分けるものである点。

3.むすび
してみると、本件考案と甲第3号証に記載の発明との間には、上記の相違点1、相違点2及び相違点3が認められ、かつ、それらの相違点が本件考案の実用新案登録出願前の自明な技術事項であるとも認められないから、本件考案が甲第3号証に記載された発明と同一である、ということはできない。

六、まとめ
以上のとおりであるから、実用新案登録異議申立ての理由及び提出した証拠方法によって、本件考案の登録を取り消すことはできない。
また、他に本件考案の登録を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2000-10-03 
出願番号 実願平5-75526 
審決分類 U 1 651・ 161- Y (A63F7)
U 1 651・ 121- Y (A63F7)
最終処分 維持    
前審関与審査官 神 悦彦  
特許庁審判長 藤井 俊二
特許庁審判官 吉村 尚
佐藤 昭喜
登録日 1999-09-24 
登録番号 実用新案登録第2601520号(U2601520) 
権利者 株式会社三洋物産
愛知県名古屋市千種区今池3丁目9番21号
考案の名称 パチンコ機の通過チャッカー  

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