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審決分類 |
審判 全部申し立て H02M |
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管理番号 | 1028386 |
異議申立番号 | 異議2000-70171 |
総通号数 | 16 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案決定公報 |
発行日 | 2001-04-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2000-01-05 |
確定日 | 2000-11-09 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 登録第2597311号「ダイオード内蔵形スナバ回路」の請求項1ないし2に係る実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 登録第2597311号の請求項1ないし2に係る実用新案登録を取り消す。 |
理由 |
【1】手続の経緯 本件実用新案登録第2597311号の請求項1及び2に係る考案についての出願は、平成5年1月28日に実用新案登録出願され、平成11年4月30日に設定登録され、その後、株式会社指月電機製作所より実用新案登録異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされたところ、その指定期間内である平成12年8月1日に訂正請求がなされたものである。 【2】訂正の適否 1.訂正事項 A.【請求項1】の記載を「インバータ、コンバータ等の電力変換回路を構成するスイッチング素子に取り付けられるスナバ回路において、スナバコンデンサおよびベース取付部を有する大容量のスナバダイオードを、同一ケース内に収納して樹脂モールドにより固定し、熱伝導率の良い放熱板の一端をスナバダイオード側のケース内側面に配設し、他端をスナバダイオードのベース取付部全面に当接するように固着したことを特徴とするダイオード内蔵形スナバ回路。」と訂正する。 B.【請求項2】の記載を、「インバータ、コンバータ等の電力変換回路を構成するスイッチング素子に取り付けられるスナバ回路において、スナバコンデンサおよびベース取付部を有する大容量のスナバダイオードを、同一ケース内に収納して樹脂モールドにより固定し、熱伝導率の良い放熱板の一端を前記ケースの外側面に配設し、他端をスナバダイオードのベース取付部全面に当接するように固着したことを特徴とするダイオード内蔵形スナバ回路。」と訂正する。 C.【課題を解決するための手段】の記載(段落【0007】を参照。)を、「本考案は、(1)インバータ、コンバータ等の電力変換回路を構成するスイッチング素子に取り付けられるスナバ回路において、スナバコンデンサおよひベース取付部を有する大容量のスナバダイオードを、同一ケース内に収納して樹脂モールドにより固定し、熱伝導率の良い放熱板の一端をスナバタイオード側のケース内側面に配設し、他端をスナバダイオードのベース取付部全面に当接するように固着したことを特徴とし、(2)インバータ、コンバータ等の電力変換回路を構成するスイッチング素子に取り付けられるスナバ回路において、スナバコンデンサおよびベース取付部を有する大容量のスナバダイオードを、同一ケース内に収納して樹脂モールドにより固定し、 熱伝導率の良い放熱板の一端を前記ケースの外側面に配設し、他端をスナバダイオードのベース取付部全面に当接するように固着したことを特徴としている。」と訂正する。 D.【作用】の記載(段落【0008】乃至【0010】を参照。)を、「請求項1,2において、スナバコンデンサとスナバダイオード間の配線が短くなってサージ抑制効果が期待できる。 請求項1において、ダイオードから発生する熱をダイオードのベース取付部全面から放熱板を介してダイオード側のケース内側面より放熱できるので、スナバコンデンサの温度上昇が抑えられる。 請求項2において、放熱板の一端をケース外側面に配設しているので、ケース内部の温度上昇が極めて少なくなり、スナバコンデンサへの影響がなくなる。」 と訂正する。 E.【考案の効果】の記載(段落【0016】乃至【0019】を参照。)を、「以上のように本考案によれば、スナバコンデンサおよひベ一ス取付部を有する大容量のスナバダイオードを同一ケース内に収納して樹脂モールドにより固定し、スナバダイオードのベース取付部全面に当接するように取り付けた放熱板によってスナバダイオードの熱を逃がすように構成したので、次のような優れた効果か得られる。 (1)スナバコンデンサと大容量のスナバダイオード間の配線を短くできるので、サージ抑制効果が大きい。 (2)大容量のスナバダイオードから発生する熱を放熱板を介してダイオード側のケース側面より放熱又はケース外側面側に放熱することができるので、スナバコンデンサの温度上昇を抑えることができる。また、ケース内部の温度上昇が極めて少なくなり、スナバコンデンサへの影響がなくなる。 (3)大容量のスイッチング素子として適用することができる。」と訂正する。 2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 (1)訂正Aについて 訂正Aは、請求項1における「スナバダイオード」を「ベース取付部を有する大容量のスナバダイオード」とすると共に、「他端をスナバダイオードの取付部分に固着した」を「他端をスナバダイオードのベース取付部全面に当接するように固着した」とするものである。 そこで、この訂正Aについて検討すると、訂正Aはスナバダイオードを限定すると共に、放熱板の他端とスナバダイオードとの固着状態を限定するものであり、実用新案登録請求の範囲の減縮に相当するものである。 また、「ベース取付部を有する大容量のスナバダイオード」については、訂正前の明細書の段落【0005】及び【0006】の記載並びに図1及び2の記載に基づくものであり、「他端をスナバダイオードのベース取付部全面に当接するように固着した」については、訂正前の明細書の段落【0011】の記載並びに図1及び図2の記載に基づくものであるといえ、訂正Aは訂正前の明細書に記載された事項に基づくものである。 さらに、訂正明細書の請求項1に係る考案においても、訂正前の明細書の請求項1に係る考案が解決しようとする、訂正前の明細書における段落【0004】乃至【0006】に記載の技術的課題と同じ技術的課題を解決するものであり、訂正前の明細書の請求項1に係る考案と訂正明細書の請求項1に係る考案とは技術思想が異なるものとはいえないのであるから、訂正Aは実用新案登録請求の範囲を実質上変更するものではない。また、訂正Aは実用新案登録請求の範囲を実質的に拡張するものでもない。 (2)訂正Bについて 訂正Bは、訂正Aと同様に、請求項2における「スナバダイオード」を「ベース取付部を有する大容量のスナバダイオード」とすると共に、「他端をスナバダイオードの取付部分に固着した」を「他端をスナバダイオードのベース取付部全面に当接するように固着した」とするものである。 そして、この訂正Bは、訂正Aについての検討と同じく、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的とし、訂正前の明細書に記載された事項に基づくものであり、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)訂正C、D及びEについて、 訂正C、D及びEは、前記実用新案登録請求の範囲の訂正に合わせて考案の詳細な説明の対応箇所を訂正するものであり、明りょうでない記載の釈明に相当するものである。 そして、訂正A及びBと同じく、訂正C、D及びEは訂正前の明細書に記載された事項に基づくものであり、また、実用新案登録請求の範囲を実質上拡張又は変更するものではない。 3.むすび 以上のとおりであるから、前記訂正(訂正A乃至E)は、特許法等の一部を改正する法律(平成11年法律第41号。以下「平成11年法」という。)附則第15条の規定による改正後の特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号。以下「平成6年改正法」という。)附則第9条第2項の規定により準用され、同附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第1項ただし書き、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 【3】実用新案登録異議の申立てについての判断 1.本件考案 本件請求項1及び2に係る考案は、訂正された明細書及び図面の記載からみて、実用新案登録請求の範囲の請求項1及び2に記載された次の事項によって特定されるとおりのものである。 【請求項1】 インバータ、コンバータ等の電力変換回路を構成するスイッチング素子に取り付けられるスナバ回路において、スナバコンデンサおよびベース取付部を有する大容量のスナバダイオードを、同一ケース内に収納して樹脂モールドにより固定し、熱伝導率の良い放熱板の一端をスナバダイオード側のケース内側面に配設し、他端をスナバダイオードのベース取付部全面に当接するように固着したことを特徴とするダイオード内蔵形スナバ回路。 【請求項2】 インバータ、コンバータ等の電力変換回路を構成するスイッチング素子に取り付けられるスナバ回路において、スナバコンデンサおよびベース取付部を有する大容量のスナバダイオードを、同一ケース内に収納して樹脂モールドにより固定し、熱伝導率の良い放熱板の一端を前記ケースの外側面に配設し、他端をスナバダイオードのベース取付部全面に当接するように固着したことを特徴とするダイオード内蔵形スナバ回路。 2.引用刊行物 当審が通知した取消理由に引用した実願昭63-152951号(実開平2-73722号)のマイクロフィルム(以下、「引用例」という。)には、「本考案はパワースイッチング素子に組込まれるスナバ回路用ダイオード内蔵コンデンサに関するものである。」(1頁13行乃至15行)、「しかしながら、近年パワー金属酸化物半導体電界効果トランジスタを始めとして高速化が著しく、金属酸化物半導体電界効果トランジスタがモジュール化され、さらに動作周波数の高速化、大電流化製品が開発されてきた。 その結果、スイッチング素子に発生するサージ電圧を防止するスナバ回路として従来の単独部品組み合わせでは、低インダクタンス要求に対処し得ない状況となってきている。」(2頁8行乃至16行)、「コンデンサ素子とダイオードを同一ケースに収納し、該コンデンサ素子とダイオードをリード線で相互に接続し、かつコンデンサ素子とダイオードに外部へ引き出す端子をそれぞれ直結するので、低インダクタンス化がはかれる。」(5頁10行乃至14行)及び「第1図は本考案のダイオード内蔵コンデンサの正断面図で、5は第1図に示すように放熱巻構造のコンデンサ素子、6はダイオード(例えばファーストリカバリーダイオード)、 ・・・(中略)・・・ 11は放熱性の良好なシリコンゴムなどの放熱シート、 ・・・(中略)・・・ L形の端子9Aと圧着端子付リード線10Aを両端メタリコン部4にそれぞれ接続し、低インダクタンス化したコンデンサ素子5と、側面放熱部に放熱シート11を介してL形の端子9Bをビス12で取付けて熱抵抗を低減したダイオード6を樹脂ケース8に収納し、上記ダイオード6のリード線7Aをコンデンサ素子5のメタリコン部4に直結して低インダクタンス化し、ダイオード6のリード線7BをL形の端子9Bに接続して低インダクタンス化し、コンデンサ素子5およびダイオード6を収納した樹脂ケース8に樹脂13を充填して熱硬化させてダイオード内蔵コンデンサを製作した。」(6頁18行乃至8頁1行)との記載並びに第1図及び第5図の記載がされており、これらの記載によれば、引用例1には「電力変換回路を構成するスイッチング素子に取り付けられるスナバ回路において、コンデンサ素子5およびダイオード6を、同一ケース内に収納して樹脂13を充填して熱硬化し、放熱性の良好な放熱シート11の一端をコンデンサ素子5とダイオード6との間に配設し、他端をダイオード6の放熱部に固着したダイオード内蔵形スナバ回路。」が開示されているものと認められる。 3.対比・判断 [本件請求項1に係る考案について] 本件請求項1に係る考案と引用例に記載のものとを対比すると、引用例に記載のものにおける「コンデンサ素子5」、「ダイオード6」、「樹脂13を充填して熱硬化」及び「放熱性の良好な放熱シート11」は、それぞれ本件請求項1に係る考案の「スナバコンデンサ」、「スナバダイオード」、「樹脂モールドにより固定」及び「熱伝導率のよい放熱板」に相当するものといえるから、両者は、「インバータ、コンバータ等の電力変換回路を構成するスイッチング素子に取り付けられるスナバ回路において、スナバコンデンサおよびスナバダイオードを、同一ケース内に収納して樹脂モールドにより固定し、熱伝導率の良い放熱板の他端をスナバダイオードに固着したダイオード内蔵形スナバ回路。」である点で一致し、次の点で相違するものと認められる。 (a)放熱板の一端を、本件請求項1に係る考案ではスナバダイオード側のケース内側面に配設しているのに対して、引用例に記載のものではスナバコンデンサとスナバダイオードとの間に配設している点。 (b)本件請求項1に係る考案ではスナバダイオードがベース取付部を有する大容量のものであり、該スナバダイオードのベース取付部全面に放熱板の他端を当接するように固着しているのに対して、引用例に記載のものではスナバダイオードが大容量のものであるかは不明であり、スナバダイオードの放熱部に放熱板の他端を固着している点。 そこで、前記相違点について検討する。 (相違点aについて) ケースに収納された発熱性の回路素子に固着された放熱板の一端を該発熱性の回路素子側のケース内側面に配設することは周知(必要であれば、実願昭55-22319号(実開昭56-126892号)のマイクロフィルム、実願平2-93214号(実開平4-51192号)のマイクロフィルム、実願昭58-101号(実開昭59-107192号)のマイクロフィルム及び実願昭57-50141号(実開昭58-153496号)のマイクロフィルムを参照。)である。 よって、引用例に記載のものにおいて、放熱板の一端をスナバダイオード側のケース内側面に配設することは、当業者がきわめて容易に想到し得たことと認められる。 (相違点bについて) ベース取付部を有する大容量のダイオードは周知(必要であれば、「1973年版最新ダイオード規格表」,CQ出版株式会社,昭和48年5月1日発行,p.53,120,163,272,291,317及び特開昭62-238657号公報を参照。)であり、また、ダイオードのベース取付部全面に放熱体を当接するように固着することは周知(必要であれば、実願平1-152588号(実開平3-90450号)のマイクロフィルム、実願昭62-117338号(実開昭64-22051号)のマイクロフィルム、特開昭62-238657号公報、実願昭56-128899号(実開昭58-34743号)のマイクロフィルム及び実願昭62-117833号(実開昭64-22042号)のマイクロフィルムを参照。)である。 よって、大容量のスイッチング素子に合わせて、引用例に記載のものにおいて、スナバダイオードをベース取付部を有する大容量のものにし、該大容量のスナバダイオードのベース取付部全面に放熱板の他端を当接するように固着することは、当業者がきわめて容易に想到し得たことと認められる。 そして、本件請求項1に係る考案が奏する作用効果は、引用例に記載のもの及び周知の事項から当業者が予測し得る範囲のものといえる。 してみれば、本件請求項1に係る考案は、引用例に記載されたもの及び周知の事項に基づいて当業者がきわめて容易に考案することができたものである。 [本件請求項2に係る考案について] 本件請求項2に係る考案と引用例に記載のものとを対比すると、引用例に記載のものにおける「コンデンサ素子5」、「ダイオード6」、「樹脂13を充填して熱硬化」及び「放熱性の良好な放熱シート11」は、それぞれ本件請求項1に係る考案の「スナバコンデンサ」、「スナバダイオード」、「樹脂モールドにより固定」及び「熱伝導率のよい放熱板」に相当するものといえるから、両者は、「インバータ、コンバータ等の電力変換回路を構成するスイッチング素子に取り付けられるスナバ回路において、スナバコンデンサおよびスナバダイオードを、同一ケース内に収納して樹脂モールドにより固定し、熱伝導率の良い放熱板の他端をスナバダイオードに固着したダイオード内蔵形スナバ回路。」である点で一致し、次の点で相違するものと認められる。 (c)放熱板の一端を、本件請求項2に係る考案では前記ケースの外側面に配設しているのに対して、引用例に記載のものではスナバコンデンサとスナバダイオードとの間に配設している点。 (d)本件請求項2に係る考案ではスナバダイオードがベース取付部を有する大容量のものであり、該スナバダイオードのベース取付部全面に放熱板の他端を当接するように固着しているのに対して、引用例に記載のものではスナバダイオードが大容量のものであるかは不明であり、スナバダイオードの放熱部に放熱板の他端を固着している点。 そこで、前記相違点について検討する。 (相違点cについて) ケースに収納された発熱性の回路素子に固着された放熱板の一端をケースの外側面に配設することは周知(必要であれば、特開平4-170096号公報、実願昭55-22319号(実開昭56-126892号)のマイクロフィルム、特開平2-103913号公報及び実願平1-69136号(実開平3-8484号)のマイクロフィルムを参照。)である。 よって、引用例に記載のものにおいて、放熱板の一端を前記ケースの外側面に配設することは、当業者がきわめて容易に想到し得たことと認められる。 (相違点dについて) ベース取付部を有する大容量のダイオードは周知(必要であれば、「1973年版最新ダイオード規格表」,CQ出版株式会社,昭和48年5月1日発行,p.53,120,163,272,291,317及び特開昭62-238657号公報を参照。)であり、また、ダイオードのベース取付部全面に放熱体を当接するように固着することは周知(必要であれば、実願平1-152588号(実開平3-90450号)のマイクロフィルム、実願昭62-117338号(実開昭64-22051号)のマイクロフィルム、特開昭62-238657号公報、実願昭56-128899号(実開昭58-34743号)のマイクロフィルム及び実願昭62-117833号(実開昭64-22042号)のマイクロフィルムを参照。)である。 よって、大容量のスイッチング素子に合わせて、引用例に記載のものにおいて、スナバダイオードをベース取付部を有する大容量のものにし、該大容量のスナバダイオードのベース取付部全面に放熱板の他端を当接するように固着することは、当業者がきわめて容易に想到し得たことと認められる。 そして、本件請求項2に係る考案が奏する作用効果は、引用例に記載のもの及び周知の事項から当業者が予測し得る範囲のものといえる。 してみれば、本件請求項2に係る考案は、引用例に記載されたもの及び周知の事項に基づいて当業者がきわめて容易に考案することができたものである。 4.むすび 以上のとおりであるから、本件請求項1及び2に係る考案は、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。 したがって、本件請求項1及び2に係る考案についての実用新案登録は拒絶の査定をしなければならない実用新案登録出願に対してされたものと認める。 よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第4項及び第7項並びに第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第3条第1項及び第2項の規定により、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【考案の名称】 ダイオード内蔵形スナバ回路 (57)【実用新案登録請求の範囲】 【請求項1】 インバータ、コンバータ等の電力変換回路を構成するスイッチング素子に取り付けられるスナバ回路において、スナバコンデンサおよびベース取付部を有する大容量のスナバダイオードを、同一ケース内に収納して樹脂モールドにより固定し、熱伝導率の良い放熱板の一端をスナバダイオード側のケース内側面に配設し、他端をスナバダイオードのベース取付部全面に当接するように固着したことを特徴とするダイオード内蔵形スナバ回路。 【請求項2】 インバータ、コンバータ等の電力変換回路を構成するスイッチング素子に取り付けられるスナバ回路において、スナバコンデンサおよびベース取付部を有する大容量のスナバダイオードを、同一ケース内に収納して樹脂モールドにより固定し、熱伝導率の良い放熱板の一端を前記ケースの外側面に配設し、他端をスナバダイオードのベース取付部全面に当接するように固着したことを特徴とするダイオード内蔵形スナバ回路。 【考案の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本考案は、CVCFやVVVF等の電力変換装置のインバータ部、コンバータ部に使用するスナバ回路に関する。 【0002】 【従来の技術】 パワートランジスタやIGBTを用いたインバータ、コンバータでは、主回路素子のスイッチング時にサージ電圧を発生する。このサージ電圧の抑制のために図3のようなスナバ回路が用いられていた。図3において1,2はトランジスタ、3,4は抵抗、5はスナバコンデンサ、6はスナバダイオード、L_(S)は配線インダクタンスを示している。 【0003】 【考案が解決しようとする課題】 従来のスナバ回路には次のような問題があった。 【0004】 (1)スナバコンデンサとスナバダイオードを別々に配置しているため、リード線の長さによる残留インダクタンス分によりe=L_(S)di/dtによる電圧が発生し、十分なサージ電圧の抑制効果が得られない。 【0005】 (2)小容量のものについてはスナバコンデンサとスナバダイオードをケースに入れ樹脂モールドしたものがある。このタイプはサージ電圧の抑制効果は良いがダイオードの損失によりコンデンサの温度が高くなるので大容量の素子には向かなかった。 【0006】 本考案は上記の点に鑑みてなされたものでその目的は、十分なサージ電圧抑制効果が得られるとともに大容量のスイッチング素子にも適用することができるダイオード内蔵形スナバ回路を提供することにある。 【0007】 【課題を解決するための手段】 本考案は、(1)インバータ、コンバータ等の電力変換回路を構成するスイッチング素子に取り付けられるスナバ回路において、スナバコンデンサおよびベース取付部を有する大容量のスナバダイオードを、同一ケース内に収納して樹脂モールドにより固定し、熱伝導率の良い放熱板の一端をスナバダイオード側のケース内側面に配設し、他端をスナバダイオードのベース取付部全面に当接するように固着したことを特徴とし、(2)インバータ、コンバータ等の電力変換回路を構成するスイッチング素子に取り付けられるスナバ回路において、スナバコンデンサおよびベース取付部を有する大容量のスナバダイオードを、同一ケース内に収納して樹脂モールドにより固定し、熱伝導率の良い放熱板の一端を前記ケースの外側面に配設し、他端をスナバダイオードのベース取付部全面に当接するように固着したことを特徴としている。 【0008】 【作用】 請求項1,2において、スナバコンデンサとスナバダイオード間の配線が短くなってサージ抑制効果が期待できる。 【0009】 請求項1において、ダイオードから発生する熱をダイオード側のケース内側面より放熱できるので、スナバコンデンサの温度上昇が抑えられる。 【0010】 請求項2において、放熱板の一端をケース外側面に配設しているので、ケース内部の温度上昇が極めて少なくなり、スナバコンデンサヘの影響がなくなる。 【0011】 【実施例】 以下、図面を参照しながら請求項1の考案の一実施例を説明する。図1においてスナバコンデンサ5およびスナバダイオード6をケース11内に収納し、それらをエポキシ樹脂等でモールドする。スナバダイオード6のベース取付部Xには、L字状に形成され、熱伝導性の良い材料(例えば銅)から成る放熱板12の一端が固着されている。この放熱板12の他端面はケース11のダイオード側の側板に面するように配設されている。 【0012】 上記の構成によれば、スナバコンデンサ5およびスナバダイオード6はケース11内で一体化され、配線長は短くて済む。このためサージ抑制効果は大きい。またスナバダイオード6から発生する熱は放熱板12を介してケース11のスナバダイオード6側の側面より放熱されるので、スナバコンデンサ5の温度上昇が抑制される。このため大容量のスイッチング素子用としても適用することができる。 【0013】 次に請求項2の考案の実施例を図2に示す。図2において図1と同一部分は同一符号をもって示している。図2において図1と異なる点は、L字状に形成された熱伝導性の良い材料(例えば銅)から成る放熱板22の一端を、スナバダイオード6のベース取付部Xに固着し、他端をケース11の外側に配設するように構成したことにあり、その他の部分は図1と同一に構成されている。 【0014】 上記の構成によれば、図1の場合と同様にスナバコンデンサ5およびスナバダイオード6はケース11内で一体化され、配線長は短くて済む。このためサージ抑制効果は大きい。またスナバダイオード6から発生する熱は、放熱板22を介してケース11の外側へ放熱されるので、ケース11内部の温度上昇は少なくなり、スナバコンデンサ5への影響はなくなる。このため大容量のスイッチング素子用としても適用することができる。 【0015】 尚前記放熱板12,22は銅に限らず他の熱伝導性の良い材料を用いても良い。また放熱板12,22の形状は、L字状に限らず放熱効果が得られる他の形状であっても良い。 【0016】 【考案の効果】 以上のように本考案によれば、スナバコンデンサおよびベース取付部を有する大容量のスナバダイオードを同一ケース内に収納して樹脂モールドにより固定し、スナバダイオードのベース取付部全面に当接するように取り付けた放熱板によってスナバダイオードの熱を逃がすように構成したので、次のような優れた効果が得られる。 【0017】 (1)スナバコンデンサと大容量スナバダイオード間の配線を短くできるので、サージ抑制効果が大きい。 【0018】 (2)大容量のスナバダイオードから発生する熱を放熱板を介してダイオード側のケース側面より放熱又はケース外側面側に放熱することができるので、スナバコンデンサの温度上昇を抑えることができる。また、ケース内部の温度上昇が極めて少なくなり、スナバコンデンサヘの影響がなくなる。 【0019】 (3)大容量のスイッチング素子用として適用することができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】 請求項1の考案の実施例を示し、(a)は本体の平面図、(b)は本体の正面図。 【図2】 請求項2の考案の実施例を示す本体の正面図。 【図3】 一般的なスナバ回路の一例を示す回路図。 【符号の説明】 5…スナバコンデンサ 6…スナバダイオード 11…ケース 12,22…放熱板 |
訂正の要旨 |
訂正の要旨 1.実用新案登録第2597311号考案の明細書中【請求項1】の記載を、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的として、「インバータ、コンバータ等の電力変換回路を構成するスイッチング素子に取り付けられるスナバ回路において、スナバコンデンサおよびベース取付部を有する大容量のスナバダイオードを、同一ケース内に収納して樹脂モールドにより固定し、熱伝導率の良い放熱板の一端をスナバダイオード側のケース内側面に配設し、他端をスナバダイオードのベース取付部全面に当接するように固着したことを特徴とするダイオード内蔵形スナバ回路。」と訂正する。 2.実用新案登録第2597311号考案の明細書中【請求項2】の記載を、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的として、「インバータ、コンバータ等の電力変換回路を構成するスイッチング素子に取り付けられるスナバ回路において、スナバコンデンサおよびベース取付部を有する大容量のスナバダイオードを、同一ケース内に収納して樹脂モールドにより固定し、熱伝導率の良い放熱板の一端を前記ケースの外側面に配設し、他端をスナバダイオードのベース取付部全面に当接するように固着したことを特徴とするダイオード内蔵形スナバ回路。」と訂正する。 3.実用新案登録第2597311号考案の明細書中【課題を解決するための手段】の記載(段落【0007】を参照。)を、明りょうでない記載の釈明を目的として、「本考案は、(1)インバータ、コンバータ等の電力変換回路を構成するスイッチング素子に取り付けられるスナバ回路において、スナバコンデンサおよひベース取付部を有する大容量のスナバダイオードを、同一ケース内に収納して樹脂モールドにより固定し、熱伝導率の良い放熱板の一端をスナバタイオード側のケース内側面に配設し、他端をスナバダイオードのベース取付部全面に当接するように固着したことを特徴とし、(2)インバータ、コンバータ等の電力変換回路を構成するスイッチング素子に取り付けられるスナバ回路において、スナバコンデンサおよびベース取付部を有する大容量のスナバダイオードを、同一ケース内に収納して樹脂モールドにより固定し、熱伝導率の良い放熱板の一端を前記ケースの外側面に配設し、他端をスナバダイオードのベース取付部全面に当接するように固着したことを特徴としている。」と訂正する。 4.実用新案登録第2597311号考案の明細書中【作用】の記載(段落【0008】乃至【0010】を参照。)を、明りょうでない記載の釈明を目的として、「請求項1,2において、スナバコンデンサとスナバダイオード間の配線が短くなってサージ抑制効果が期待できる。 請求項1において、ダイオードから発生する熱をダイオードのベース取付部全面から放熱板を介してダイオード側のケース内側面より放熱できるので、スナバコンデンサの温度上昇が抑えられる。 請求項2において、放熱板の一端をケース外側面に配設しているので、ケース内部の温度上昇が極めて少なくなり、スナバコンデンサヘの影響がなくなる。」 と訂正する。 5.実用新案登録第2597311号考案の明細書中【考案の効果】の記載(段落【0016】乃至【0019】を参照。)を、明りょうでない記載の釈明を目的として、「以上のように本考案によれば、スナバコンデンサおよひベ一ス取付部を有する大容量のスナバダイオードを同一ケース内に収納して樹脂モールドにより固定し、スナバダイオードのベース取付部全面に当接するように取り付けた放熱板によってスナバダイオードの熱を逃がすように構成したので、次のような優れた効果か得られる。 (1)スナバコンデンサと大容量のスナバダイオード間の配線を短くできるので、サージ抑制効果が大きい。 (2)大容量のスナバダイオードから発生する熱を放熱板を介してダイオード側のケース側面より放熱又はケース外側面側に放熱することができるので、スナバコンデンサの温度上昇を抑えることができる。また、ケース内部の温度上昇が極めて少なくなり、スナバコンデンサヘの影響がなくなる。 (3)大容量のスイッチング素子として適用することができる。」と訂正する。 |
異議決定日 | 2000-09-11 |
出願番号 | 実願平5-1846 |
審決分類 |
U
1
651・
121-
ZA
(H02M)
|
最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 松澤 福三郎 |
特許庁審判長 |
祖父江 栄一 |
特許庁審判官 |
川端 修 槙原 進 |
登録日 | 1999-04-30 |
登録番号 | 実用新案登録第2597311号(U2597311) |
権利者 |
株式会社明電舎 東京都品川区大崎2丁目1番17号 |
考案の名称 | ダイオード内蔵形スナバ回路 |
代理人 | 西森 正博 |
代理人 | 志賀 富士弥 |
代理人 | 橋本 剛 |
代理人 | 志賀 富士弥 |
代理人 | 橋本 剛 |