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審決分類 審判 全部申し立て   E04F
管理番号 1028387
異議申立番号 異議2000-70173  
総通号数 16 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2001-04-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-01-11 
確定日 2000-10-20 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 登録第2597753号「床タイル」の実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 訂正を認める。 登録第2597753号の実用新案登録を取り消す。
理由 I.手続きの経緯
本件実用新案登録第2597753号に係る考案は、平成4年10月12日に出願され、平成11年5月14日にその実用新案の設定登録がされ、その後、平成12年1月11日に須貝義久より実用新案登録異議の申立てがあり、平成12年6月13日(起案日)に取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成12年8月4日に実用新案登録異議意見書の提出と共に訂正請求がなされたものである。

II.訂正請求について
1.請求の趣旨及び訂正事項
訂正請求の趣旨は、実用新案登録第2597753号の明細書を請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを求めるものであり、そして、その訂正事項は、以下(イ)及び(ロ)のとおりのものである。
(イ)訂正事項a.
実用新案登録明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1の記載
「【請求項1】合成樹脂からなる非弾性床タイル裏面全面に0.05mm?0.75mmの深さのエンボスが付与されたことを特徴とする床タイル。」を
「【請求項1】合成樹脂からなる非弾性床タイル裏面全面に0.05mm?0.75mmの深さのエンボスが付与され、かつ表面がフラットであることを特徴とする床タイル。」と訂正する。
(ロ)訂正事項b.
実用新案登録明細書の段落番号【0003】の記載
「【0003】
【問題点を解決する手段】
本願は上記問題点を解決した床タイルで、合成樹脂からなる非弾性床タイル裏面全面に0.05mm?0.75mmの深さのエンボスが付与されたことを特徴とする床タイル、をその要旨とする。」を
「【0003】
【問題点を解決する手段】
本願は上記問題点を解決した床タイルで、合成樹脂からなる非弾性床タイル裏面全面に0.05mm?0.75mmの深さのエンボスが付与され、かつ表面がフラットであることを特徴とする床タイル、をその要旨とする。」と訂正する。
2.訂正の適否について
(1)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
(イ)訂正事項a.は、実用新案登録明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された床タイルを「表面がフラットであること」を具体的に限定して訂正するものであるから、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的とするものと認められ、訂正事項a.は、願書に添付した明細書の段落【0008】に「床タイル6のように表面に櫛目跡が露出しないで床タイル1の表面9、9’はフラットな面が得られ、」と記載され、「図2」に対応する図が記載されていたものであり、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、そして、実用新案登録請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
(ロ)訂正事項b.は、実用新案登録請求の範囲の請求項1の訂正に伴い、実用新案登録請求の範囲の記載と考案の詳細な説明の記載との整合を図るために訂正したもので、明りようでない記載の釈明を目的とし、また、訂正事項a.と同様、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実用新案登録請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
(2)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第2項の規定により準用され、同附則第10条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第2項、同条第3項で準用する第126条第2?4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

III.実用新案登録異議申立てについて
1.訂正後の本件請求項1に係る考案
訂正後の本件実用新案登録第2597753号の請求項1に係る考案(以下、「訂正後の本件請求項1に係る考案」という。)は、訂正明細書の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】合成樹脂からなる非弾性床タイル裏面全面に0.05mm?0.75mmの深さのエンボスが付与され、かつ表面がフラットであることを特徴とする床タイル 。」
2.取消理由の概要
取消理由通知は、実用新案登録異議申立人須貝義久より提出された甲第1号証[実願昭52-12039号(実開昭53-106914号)のマイクロフィルム]を刊行物1として引用し、訂正前の本件請求項1に係る考案は、刊行物1記載の考案及び周知・慣用の事項に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法第3条第2項の規定により、訂正前の本件請求項1に係る考案の実用新案登録は、取り消されるべきものであるとしている。
3.刊行物1記載の考案
刊行物1には、
「軟質合成樹脂シートの下面全体に凹凸が規則正しく形成せられている床材。」(明細書第1頁実用新案登録請求の範囲)、
「この考案は、……建築物等に使用せられる床材に関する。」(明細書第1頁第8?9行)、
「第3図および第4図は、この考案の実施例を示すもので、床材(18)は軟質合成樹脂シートの下面全体に横断面逆T形の凸部(19)が並列状に形成せられ、凸部(19)の相互の間に凹部(20)が形成せられている。多数の凸部(19)は合成樹脂シートを押出成形するさいに所定の金型を用いることにより簡単に得ることができる。凸部(19)の高さは0.5?1.0mm……が適当である。」(明細書第3頁第10行?第4頁第3行及び第3、4図)、
「多数の凸部(19)が、接着剤(9) の層内にアンカー状に埋入せられるため、被接着面の材質如何にかゝわらず、床材(18)の接合は強固であり剥離するおそれが全くない。」(明細書第4頁第6?9行及び第5図)、
「第6図はこの考案の他の実施例を示すもので、床材(28)は軟質合成樹脂シートの下面全体に方形の凸部(29)が縦横に規則正しく形成せられたものであり、」(明細書第4頁第14行?第5頁第1行及び第6図)及び
「この考案による床材では、下面に多数の凹部があるため、接着時必然的に凹部内側には接着剤の詰まっていない隙間が生じており、こゝに上記揮発ガスが逃げうるので、床材に膨れの発生する懸念がない。」(明細書第6頁第6?10行)と記載され、
以上の明細書及び図面の記載からみて、刊行物1には、
「軟質合成樹脂シートの下面全体に0.5mm?1.0mmの深さの凹部が形成されたことを特徴とする床材。」という考案が記載されていると認められる。
4.対比・判断
訂正後の本件請求項1に係る考案と刊行物1記載の考案とを比較すると、
刊行物1記載の考案の「下面全体」、「凹部」及び「形成され」は、訂正後の本件請求項1に係る考案の「裏面全面」、「エンボス」及び「付与され」に相当しているから、
訂正後の本件請求項1に係る考案と刊行物1記載の考案とは、
「合成樹脂からなる床仕上げ材の裏面全体にエンボスが付与されたことを特徴とする床仕上げ材」の点で一致しているが、
以下の点で相違していると認められる。
(1)訂正後の本件請求項1に係る考案は、非弾性床タイルであるのに対して、刊行物1記載の考案は、軟質合成樹脂シートからなる床材である点。
(2)エンボスの深さが、訂正後の本件請求項1に係る考案は、0.05mm?0.75mmに付与されているのに対して、刊行物1記載の考案は、0.5mm?1.0mmである点。
(3)訂正後の本件請求項1に係る考案は、表面がフラットであるのに対して、刊行物1には、床材の表面がフラットであると直接記載されてはいない点。
しかし、上記相違点を検討すると、
相違点(1)について
非弾性床タイルについては、本件明細書の段落【0004】に、『ここで「非弾性床タイル」とは合成樹脂等からなる硬質、もしくは半硬質の床用タイル(を)いい』と定義しているから、訂正後の本件請求項1に係る考案の非弾性床タイルは、係る材質のものであると認めざるを得ない。
しかし、本件の出願前、合成樹脂製床仕上げ材として、半硬質床タイルは、周知・慣用のものであり[例えば、実用新案登録異議申立人が参考資料3として提出した「JISA5705 ビニル床タイル」(昭和60年11月1日改正)日本規格協会発行、鶴田明他3名著「建築各部構造」(昭和55年10月15日)コロナ社 p.170-175を参照されたい。]、相違点(1)において、刊行物1記載の考案のものに代えて訂正後の本件請求項1に係る考案のように、非弾性床タイル、すなわち半硬質の床タイルとすることは、当業者であれば、きわめて容易に想到し得ることにすぎない。
そして、訂正後の本件請求項1に係る考案の相違点(1)のようにしたことにより、作用効果上、格別な差異も認められない。
相違点(2)について
訂正後の本件請求項1に係る考案と刊行物1記載の考案とは、数値範囲の上限値及び下限値が相違するも、両者は0.5mm?0.75mmの数値範囲は重複しており、接着力の向上、表面への膨れ、櫛目跡の露出がない等の作用・効果において格別の差異が生ずるものとも認められないから、臨界的意義がなく、相違点(2)において、訂正後の本件請求項1に係る考案のエンボスの深さの数値範囲は、実施に際して、当業者がきわめて容易に変更できる範囲のものにすぎない。
相違点(3)について
刊行物1には、上記III.の3.の「刊行物1記載の考案」で摘示したように、その明細書第6頁第6?10行に、「この考案による床材では、下面に多数の凹部があるため、接着時必然的に凹部内側には接着剤の詰まっていない隙間が生じており、こゝに上記揮発ガスが逃げうるので、床材に膨れの発生する懸念がない。」と記載されており、刊行物1記載の考案においても、結果として、訂正後の本件請求項1に係る考案と同様に、接着剤の塗布による非平滑部分(膨れ)が発生することなく、表面がフラットであると認められるから、相違点(3)においては、訂正後の本件請求項1に係る考案と刊行物1記載の考案とは、実質上の差異が認められない。
以上を総合判断すれば、訂正後の本件請求項1に係る考案は、刊行物1記載の考案及び上記周知・慣用のものに基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。
5.むすび
以上のとおり、訂正後の本件請求項1に係る考案は、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。
したがって、訂正後の本件請求項1に係る考案の実用新案登録は、拒絶の査定をしなければならない実用新案登録出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第7項の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第3条第1項及び第2項の規定により、結論のとおり決定する。
発明の名称 (54)【考案の名称】
床タイル
(57)【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】合成樹脂からなる非弾性床タイル裏面全面に0.05mm?0.75mmの深さのエンボスが付与され、かつ表面がフラットであることを特徴とする床タイル。
【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本願考案は施工性の優れた床タイルに関する。
【0002】
【従来技術と問題点】従来のタイルは裏面が平滑なので接着力が弱くて剥離しやすく、また床下地とタイル間に塗布する接着剤の櫛目がタイル表面に出やすい等の欠点があった。
【0003】
【問題点を解決する手段】
本願は上記問題点を解決した床タイルで、合成樹脂からなる非弾性床タイル裏面全面に0.05mm?0.75mmの深さのエンボスが付与され、かつ表面がフラットであることを特徴とする床タイル、をその要旨とする。
【0004】
以下図面に基づいて本願考案を説明する。「図1」は本願考案の断面図であり、1はPVC等の合成樹脂シートからなる厚さ1?5mmの非弾性床タイル本体であり、この非弾性床タイル裏面(下地接着面)全面にはエンボスが付与されている。ここで「非弾性床タイル」とは、合成樹脂等からなる硬質、もしくは半硬質の床用タイルいい、以下同様の意味で「床タイル」もしくは「タイル」と記す。
【0005】
エンボス4はタイル先端側凸部2と凹部3との連続形成により得られその深さtは0.05?0.75mmが好適である。タイル本体裏面に上記エンボス4を全面形成することにより、本願考案床タイル5が得られる。
【0006】
「図2」はタイルの比較施工状態の断面図で床下地G上に櫛刷毛で接着剤7を塗布し、裏面フラットな(エンボスのない)タイル6を施工した。経時とともにタイル表面には櫛目跡8の非平滑部分が発生した。また床下地との接着部分が少な目なので、接着強度も弱かった。
【0007】
一方本願考案タイルを施工した場合にはエンボス4にほぼ接着剤の櫛目7が一致し、この結果接着剤と床タイル裏面が密着し、接着力が向上する。
【0008】
このようにエンボス空隙に接着剤層が納まるので、床タイル6のように表面に櫛目跡が露出しないで床タイル1の表面9、9’はフラットな面が得られ、美観上好ましい。
【0009】
本願考案において床タイルは単層よりなり、その裏面全面に0.05mm?0.75mmの深さのエンボスが付与されても良く、また表面化粧層と樹脂裏打ち層が積層されて裏打ち層に0.05mm?0.75mmの深さのエンボスが付与されても良い。
【0010】
【実施例】
下記配合のPVC組成物をカレンダーロールを通すことにより2mm厚のシートとし、次いで得られたシート裏面にエンボスロールで250μmの深さのエンボスを付与した。このエンボスを付与したシートをコンベアベルトで打ち抜き装置に導いて本願考案の床タイルを得た。単位は重量%である。
【0011】
配合例
PVC 15%
可塑剤 9%
炭酸カルシウム 74%
顔料 1%
安定剤 1%
【0012】
得られた床タイル用シートは打ち抜きに際してコンベアベルト上を滑らず、正確に裁断でき、好適な生産性が得られた。上記得られた床タイルは接着力は2.0kg/cm^(2)で、施工後は歩行中に剥離しなかった。
【0013】
また施工後経口とともに接着剤の櫛目が床タイル表面に露出することもなく、施工中にタイルが滑ってタイルの目地がずれたり、接着剤が付着してタイル表面が汚れることもなかった。
【0014】
【比較例】
実施例と同じシートを裏面にエンボスを付与することなく実施例と同様打ち抜いてタイルを得た。製造中は上記シートはコンベアベルト上を滑るため打ち抜き精度が低下し、またタイル接着強度は1.7kg/cm^(2)と低く歩行中に剥離しやすかった。
【0015】
▲1▼床タイル裏面全面にエンボスを付与し、エンボスの凹部に接着剤を入り込ませることで床タイル裏面と接着剤の接触面積を大きくすることにより、接着力が向上した。
【0016】
▲2▼下地に塗布した接着剤の櫛目跡がタイル表面にあらわれなかった。
【0017】
▲3▼施工に際し下地に接着剤を塗布してタイルを置敷いた時、エンボスのためにタイルが滑りにくく、タイルがズレてタイル列が崩れたり、タイルが汚れたりすることが防止された。
【0018】
▲4▼エンボス部分の材料が節約され、コストダウンになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本願考案床タイル断面図
【図2】 本願床タイルと従来の床タイルの施工状態の断面図
【符号の説明】
1・・・床タイル本体、4・・・エンボス、5・・・本願考案床タイル、7・・・接着剤
訂正の要旨 訂正の要旨は、以下のとおりである。
1.実用新案登録請求の範囲の減縮を目的として、
実用新案登録明細書の実用新案登録請求の範囲の【請求項1】の記載
「【請求項1】合成樹脂からなる非弾性床タイル裏面全面に0.05mm?0.75mmの深さのエンボスが付与されたことを特徴とする床タイル。」を
「【請求項1】合成樹脂からなる非弾性床タイル裏面全面に0.05mm?0.75mmの深さのエンボスが付与され、かつ表面がフラットであることを特徴とする床タイル。」と訂正する。
2.実用新案登録明細書の実用新案登録請求の範囲の【請求項1】の訂正に伴い、その請求項1の記載と整合させ、明りょうでない記載の釈明を目的として、
実用新案登録明細書の段落番号【0003】の記載
「【0003】
【問題点を解決する手段】
本願は上記問題点を解決した床タイルで、合成樹脂からなる非弾性床タイル裏面全面に0.05mm?0.75mmの深さのエンボスが付与されたことを特徴とする床タイル、をその要旨とする。」を
「【0003】
【問題点を解決する手段】
本願は上記問題点を解決した床タイルで、合成樹脂からなる非弾性床タイル裏面全面に0.05mm?0.75mmの深さのエンボスが付与され、かつ表面がフラットであることを特徴とする床タイル、をその要旨とする。」と訂正する。
異議決定日 2000-08-28 
出願番号 実願平4-77506 
審決分類 U 1 651・ 121- ZA (E04F)
最終処分 取消    
前審関与審査官 七字 ひろみ  
特許庁審判長 樋口 靖志
特許庁審判官 鈴木 憲子
宮崎 恭
登録日 1999-05-14 
登録番号 実用新案登録第2597753号(U2597753) 
権利者 東リ株式会社
兵庫県伊丹市東有岡5丁目125番地
考案の名称 床タイル  

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