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審決分類 審判 一部申し立て   G02B
管理番号 1028402
異議申立番号 異議1999-74060  
総通号数 16 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2001-04-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-10-26 
確定日 2000-11-09 
異議申立件数
事件の表示 登録第2594291号「表示装置用バックライトユニット」の請求項2に係る実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 登録第2594291号の請求項2に係る実用新案登録を取り消す。
理由 (1)手続の経緯
登録第2594291号に係る考案についての出願は、平成4年12月29日(優先権主張平成4年9月30日)に実用新案登録出願され、平成11年2月26日にその考案について実用新案の設定登録がなされ、その後、その実用新案登録について、異議申立人中川徹より実用新案登録異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされその指定期間内である平成12年4月21日に訂正請求がなされた後、訂正拒絶理由が通知されたが、実用新案権者からは何らの応答もないものである。
(2)訂正の適否についての判断
ア.訂正明細書の請求項2に係る考案
平成12年4月21日付けで提出された訂正明細書の請求項2に係る考案は、その実用新案登録請求の範囲の請求項2に記載された次のとおりのものと認める。
「導光板の緑部に配置された放電管の光を放電管の周囲に設けた反射フィルムにより導光板に導き、更に導光板から前面に向けて出射するように構成された表示装置用バックライトにおいて、上記反射フィルムの反射面に誘電率がlkHzにて2-4の光透過性絶縁樹脂層を厚み5-100μmの範囲内でもって被覆し、この光透過性絶縁樹脂層を介して放電管に対し距離を均一に保つように接触せしめたことを特徴とする表示装置用バックライト。」
イ.引用刊行物
当審が訂正拒絶理由通知において示した刊行物1:実願昭62-92647号(実開昭63-200871号)のマイクロフィルムには次の事項が記載されている
「第1図は本考案における液晶表示装置用バックライト反射装置の一実施例を示す断面図である。この図面において、符号1は反射板本体で、板厚が0.1 -0.3mm程度の鉄又はアルミニウム等の電磁シールド性を有する金属板を例えば図示の様な凹型に成形して形成されている。この反射板本休1の内面(凹面)には、ポリエステル,ポリエチレンあるいはポリプロピレン等に酸化チタン等の粉末を配合させて着色し、光反射性を備えた厚さ0.05-0.1mm程度の絶縁性のフィルムを熱圧着等により被覆して光反射層2が形成されている。更に、この光反射層2の上層には、厚さ0.05-0.1mm程度の透明な絶縁性フィルムを熱圧着等により被覆して絶縁層3が形成されている。このようにして、反射板本体1の内面に光反射層2を形成し、更にこの光反射層2の上には、絶縁層3を形成してバックライト反射装置4が構成されている。」(第5頁第20行?第6頁第18行)
「本実施例によるバックライト反射装置(第1図)と、従来例で述べた被覆を行なわない単に金属板だけのバックライト反射装置とで、それぞれにバックライト装置を構成し、白色光源の高周波電流の漏洩試験を行い比較した結果を第2図及び第3図で説明する。第2図はバックライト反射装置4と白色光源5との間隔Lを示す断面図、第3図は前記間隔Lと白色光源5の高周波電流の漏洩率を示したグラフである。本実施例のバックライト反射装置4では白色光源5に接触させても漏洩はない(図の実線部分を参照)。しかし、絶縁層3を持たない単に金属板のみで形成されている従来のバックライト反射装置の場合には、バックライト反射装置4と白色光源5の間隔Lが1.5mm以下では間隔Lに反比例して漏洩率が増加する(図の点線部分を参照)。以上の試験結果から、本実施例のバックライト反射装置が高周波電流の漏洩を防止できることが分る。尚、この試験ではバックライト反射装置4として、電気亜鉛メッキ鋼板を凹型に成形した反射板本体1の内面(光源側)に白色に着色したポリエステルフィルムを被覆した光反射層2を形成し、更にこの光反射層2に透明のポリエステルフィルムを被覆した絶縁層3を形成。光源としては、周波数40KHZ,電流3mA,供給電力0.7Wを供給した白色光源5を使用して試験を行なった。第4図は、本考案の他の実施例を示す断面図である。本実施例は電磁シールド性を有する金属板を凹製に成形した反射板本体1の内面にメッキ等により光反射特性を具備した鏡面6を形成し,更に鏡面6上にポリエステル,ポリエチレン又はポリプロピレン等の透明な絶縁フィルムを熱圧着等により被覆して絶縁層3を形成させたものである。そして、この実施例は前記一実施例と同様の作用効果を有する。尚、本考案においてはバックライト反射装置を凹型で形成したが、本考察はこれに限定されるものではない。」(第7頁第8行?第9頁第7行)
これらの記載事項によると刊行物1には以下の考案(以下「刊行物1に記載された考案」という。)が記載されているものと認められる。
「反射板本体1の内面に光反射層2を形成し、更にこの光反射層2の上には、絶縁層3を形成し、絶縁層3は厚さ0.05-0.1mm程度の透明なポリエステルフィルムである液晶表示装置用バックライト反射装置4と白色光源とからなる液晶表示装置用バックライト」
同じく引用された刊行物2:実願平3-6750号(実開平4-96715号)のマイクロフィルムには以下の事項が記載されている。
「【請求項1】光源と、入射端面を前記光源に近接配置した導光体と、前記導光体の表面に設けられた拡散板と、前記導光体の裏面に設けられた反射面とよりなる面光源装置において、前記光源の前記導光体と反対側の面を合成樹脂よりなるベースフィルムに高反射率の金属を蒸着し更にその表面に透明フィルムを設けた反射シートにて包んだことを特徴とする面光源装置」(実用新案登録請求の範囲)
「【0010】
図1は本考案の実施例の断面図で、1は光源、2は導光体、3は拡散板、4は反射面でこれらは従来の面光源装置と実質上同じである。5は蛍光管(光源1)が収納される凹部を有する管ホルダーで、図2に示すように反射シート6を蛍光管の導光体2に対し反対側の部分に接するように包みその両端を導光体2の入射端面付近の上下に接合したものを、前記の管ホルダー5の凹部内に挿入することにより、図1に示すような面光源装置を形成したものである。
【0011】
この実施例の面光源装置によれば、光源1よりの光は直接又は反射シート6により反射された後導光体2内へ入り、他端へ伝達されるうちに拡散板3を通って拡散光として射出される。ここで光源1より発し導光体2に対し反対側へ向かう光も反射シート6より反射されて入射するので明るい照明光が得られる。又図3に示すように反射シート6は合成樹脂のフィルムのベース6a上に鏡面6bを形成し更に合成樹脂の透明フィルム6cを設けたものであるので、耐候性が強い。」(段落10乃至11)
ウ.対比・判断
請求項2に係る考案と、刊行物1に記載された考案を対比すると、刊行物1に記載された考案の「液晶表示装置用バックライト反射装置」、「白色光源」はそれぞれ請求項2に係る考案の「反射フィルム」、「放電管」に相当するので、両者は、放電管及び放電管の周囲に設けた反射フィルムにより構成された表示装置用バックライトにおいて、反射フィルムの反射面に光透過性絶縁樹脂層を厚み5-100μmの範囲内でもって被覆し、この光透過性絶縁樹脂層を介して放電管に対し距離を均一に保つようにした点において一致するが以下の点で相違する。
a.前者が、「導光板の縁部に配置された放電管の光を放電管の外周に設けた反射フィルムにより導光板に導き、更に導光板から前面に向けて出射するように構成された表示装置用バックライトユニット」であるのに対して、後者はそのような表示装置用バックライトユニットではない点。
b.前者の光透過性絶縁樹脂層の誘電率がlkHzにて2-4であるのに対して後者の光透過性絶縁層の誘電率については記載がない点。
c.前者の反射フィルムの反射面は光透過性絶縁樹脂層を介して放電管に接触しているのに対して後者はそのような構成を有していない点。
上記相違点a.について検討すると「導光板の縁部に配置された放電管の光を放電管の外周に設けた反射フィルムにより導光板に導き、更に導光板から前面に向けて出射するように構成された表示装置用バックライトユニット」は刊行物2に記載されており公知のものである。そして、この表示装置用バックライトユニットも刊行物1記載の考案の表示装置用バックライトと同一の技術課題を有する構造のものであるので、刊行物1記載の考案の表示装置用バックライトを、「導光板の縁部に配置された放電管の光を放電管の外周に設けた反射フィルムにより導光板に導き、更に導光板から前面に向けて出射するように構成された表示装置用バックライトユニット」とすることに格別の困難性はない。
上記相違点b.について検討すると刊行物1に記載された考案の光透過性絶縁層に用いられるポリエチレンは誘電率が2.2?2.3(東京天文台編著,理科年表昭和61年(机上板),丸善株式会社,昭和60年11月,p580-581参照)であるので、刊行物1に記載された考案の光透過性絶縁層の誘電率はlkHzにて2-4のものである。したがって、上記相違点b.は格別の差異ではない。
上記相違点c.について検討すると、刊行物1には「本実施例のバックライト反射装置4では白色光源5に接触させても漏洩はない(図の実線部分を参照)。」(第7頁第17行乃至第19行)とあり、刊行物1に記載された考案において反射フィルムの反射面を光透過性絶縁樹脂層を介して放電管に接触させることを妨げるものはないので、刊行物1に記載された考案において反射フィルムの反射面を光透過性絶縁樹脂層を介して放電管に接触するようにすることに格別の困難性はない。
エ.むすび
以上のとおり、訂正明細書の請求項2に係る考案は、上記刊行物1に記載された考案及び公知技術に基づいて当業者が極めて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法第3条2項の規定により実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができないものであるから、この訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律116号)附則第9条第2項により準用される、特許法第120条の4第3項で準用する同126条4項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。
(3)実用新案登録異議申し立てについて
ア.本件考案
実用新案登録第2594291号の請求項2に係る考案(以下「本件考案」)は、その実用新案登録範囲の請求項2に記載された次のとおりのものと認める。
「導光板の縁部に配置された放電管の光を放電管の外周に設けた反射フィルムにより導光板に導き、更に導光板から前面に向けて出射するように構成された表示装置用バックライトユニットにおいて、上記反射フィルムの反射面を光透過性絶縁樹脂で被覆したことを特徴とする表示装置用バックライトユニット。」
イ.実用新案法第3条第2項違反について
当審が、平成12年2月3日に通知した取消理由において引用した刊行物1:実願平3-6750号(実開平4-96715号)のマイクロフィルムおよび刊行物2:実願昭62-92647号(実開昭63-200871号)のマイクロフィルムには上記(2)イ.のとおりの考案が記載されている。
本件考案と刊行物2に記載された考案を対比すると、刊行物2に記載された考案の「光源」は冷陰極管又は熱陰極管であり(明細書第2頁第10行乃至第11行)、請求項2に係る考案の「放電管」に相当するので、両者は放電管を有する表示装置用バックライトにおいて、放電管の外周に設けた反射層を光透過性絶縁樹脂で被覆した点において一致するが、前者が、「導光板の縁部に配置された放電管の光を放電管の外周に設けた反射フィルムにより導光板に導き、更に導光板から前面に向けて出射するように構成された表示装置用バックライトユニット」であるのに対して、後者はそのような表示装置用バックライトユニットではない点で相違している。
しかしながら、「導光板の縁部に配置された放電管の光を放電管の外周に設けた反射フィルムにより導光板に導き、更に導光板から前面に向けて出射するように構成された表示装置用バックライトユニット」は刊行物1に記載されており公知のものである。そして、この表示装置用バックライトユニットも刊行物2記載の考案の表示装置用バックライトと同一の技術課題を有する構造のものであるので、刊行物2記載の考案の表示装置用バックライトユニットを、「導光板の縁部に配置された放電管の光を放電管の外周に設けた反射フィルムにより導光板に導き、更に導光板から前面に向けて出射するように構成された表示装置用バックライトユニット」にすることに格別の困難性はない。
したがって、本件考案は上記刊行物1及び2記載の考案に基づいて当業者が極めて容易に考案をすることができたものである。よって、本件考案の実用新案登録は実用新案法第3条第2項に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
ウ.むすび
以上のとおりであるから、本件考案についての実用新案登録は拒絶の査定をしなければならない実用新案登録出願に対してなされたものであり、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第7項の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第3条第1項及び第2項の規定により、結論のとおり決定する。
異議決定日 2000-09-14 
出願番号 実願平4-93359 
審決分類 U 1 652・ 121- ZB (G02B)
最終処分 取消    
前審関与審査官 服部 秀男  
特許庁審判長 豊岡 静男
特許庁審判官 青山 待子
田部 元史
登録日 1999-02-26 
登録番号 実用新案登録第2594291号(U2594291) 
権利者 京セラ株式会社
京都府京都市伏見区竹田鳥羽殿町6番地
考案の名称 表示装置用バックライトユニット  

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