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審決分類 |
審判 全部申し立て B41M 審判 全部申し立て B41M 審判 全部申し立て B41M |
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管理番号 | 1028423 |
異議申立番号 | 異議1998-76068 |
総通号数 | 16 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案決定公報 |
発行日 | 2001-04-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1998-12-04 |
確定日 | 2000-02-09 |
異議申立件数 | 2 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 実用新案登録第2573732号「凹凸表現に優れる装飾用シート」の請求項1ないし2に係る実用新案に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 実用新案登録第2573732号の請求項1ないし2に係る実用新案登録を維持する。 |
理由 |
I.手続きの経緯 本件実用新案登録第2573732号の請求項1及び2に係る考案は、平成4年3月19日に出願され、平成10年3月20日にその実用新案登録の設定登録がされ、その後、アキレス株式会社及び渡辺義之より実用新案登録異議申立がなされ、取消通知がなされ、その指定期間内である平成11年5月7日付けで訂正請求がなされ、訂正拒絶理由が通知され、その指定期間内である平成11年12月1日付けで手続補正書が提出された。 II.訂正の適否についての判断 1.訂正請求に対する補正の適否 当審で通知した訂正拒絶理由の趣旨は、訂正された実用新案登録請求の範囲の「油性インク」との記載は、考案の詳細な説明の記載と一致していないことを趣旨とするものであり、これに対して当該箇所を「塩化ビニル樹脂系インク」と補正するものであり、訂正明細書に記載された範囲内の訂正であるから、訂正明細書の要旨を変更するものではない。 2.訂正の内容 A.実用新案登録請求の範囲における、 【請求項1】の、「シート本体上面にスクリーン印刷により発泡又は非発泡の凹凸模様を設けてなる装飾用シートにおいて」を、「シート本体上面に塩化ビニル樹脂系インクをスクリーン印刷により印刷し発泡又は非発泡の凹凸模様を設けてなる装飾用シートにおいて」と訂正する。 B.同【請求項2】の、「シート本体上面にスクリーン印刷により発泡又は非発泡の凹凸模様を設けてなる装飾用シートにおいて」を、「シート本体上面に塩化ビニル樹脂系インクをスクリーン印刷により印刷し発泡又は非発泡の凹凸模様を設けてなる装飾用シートにおいて」と訂正する。 C.明細書中の考案の詳細な説明における 段落【0001】の、「本考案は、装飾用シート、詳しくはスクリーン印刷によって表面に発泡体又は非発泡体による凹凸模様を設けた凹凸表現に優れる装飾用シートに関する。」を「本考案は、装飾シート、詳しくは塩化ビニル樹脂系インクをスクリーン印刷によって表面に発泡体又は非発泡体による凹凸模様を設けた凹凸表現に優れる装飾用シートに関する。」と訂正する。 D.同段落【0006】の「上記目的を達成するために本考案がなした技術的手段は、シート本体上面にスクリーン印刷により発泡又は非発泡の凹凸模様を設けてなる装飾用シートにおいて、」を「上記目的を達成するために本考案がなした技術的手段は、シート本体上面に塩化ビニル樹脂系インクをスクリーン印刷により印刷し発泡又は非発泡の凹凸模様を設けてなる装飾用シートにおいて、」と訂正する。 E.同段落【0018】の「ここで、具体的実施(濡れ指数を種々の数値に調整した場合の印刷結果)の一例を表に示す。尚、表1は、軟質PVCに界面活性剤を練り込んだシート本体aを用いたものであり、また表2(a)は、紙1a等の上面にPP等のフィルムをラミネートした後コロナ処理を行った表面層2を設けたシート本体aを用いたもので、(b)は紙1a等の上面に塩化ビニル樹脂層1bを設けた裏打層1の表面に、PVC.アクリルエマルジョンからなる処理剤をコーティングし乾燥させた表面層2を設けたシート本体aを用いたものであり、上記夫々のシート本体aの上面a′(表面層2)上に乳化重合PVC系のインクをロータリースクリーン印刷した結果である。」を、 「ここで、具体的実施(濡れ指数を種々の数値に調整した場合の印刷結果)の一例を表に示す。尚、表1は、軟質PVC組成物(ゼオン103EP-8・重合度850のPVC樹脂100重量部、DOP・可塑剤50重量部、Ba-Zn安定剤3重量部)に界面活性剤(エレクトロストリッパーEA・花王石鹸の陽イオン系帯電防止剤)を表1に示すPHR練り込んでロール混練し、厚み0.3mmのシートとしたシート本体aを用いたものであり、また、表2(a)は、紙1a等の上面に厚み0.5mmのPPフィルムをラミネートした後、表2(a)に示す条件のコロナ処理を行ったシート本体aを用いたもので、 表2(b)は紙1a等の上面に塩化ビニル樹脂層1bを設けた裏打層1の表面に、表2(b)に示すハニー化成(株)製の表面処理剤をグラビアプリント印刷機において、100メッシュロールにて1回又は2回コーティング(表面処理)し乾燥させた表面層2を設けたシート本体aを用いたものであり、上記夫々のシート本体aの上面a′(表面層2)上に乳化重合PVC系のインクをロータリースクリーン印刷した結果である。」と訂正する。 F.同段落【0019】の を 「 と訂正する。 G. 同段落【0020】の 」 を 」 と訂正する。 3.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張、変更 上記訂正A.及びB.は、登録請求の範囲では「スクリーン印刷」と記載されていたものを、「塩化ビニル樹脂系インクをスクリーン印刷により印刷し」と訂正し、特定の印刷インクによる印刷に限定するものであるから、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的とするものであって、また、実用新案登録明細書に記載の範囲内のものであり、かつ実質上実用新案登録請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 上記訂正C.?D.は、実用新案登録請求の範囲の減縮に伴う記載上の不整合部分を訂正するものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、実用新案登録明細書の記載の範囲内のものであり、かつ、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 上記訂正E.?G.は、本件装飾シートの濡れ指数を調整する方法が具体的には記載されていなかったのを具体的にする訂正であって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、実用新案登録明細書に記載した事項の範囲内のものであり、実質上登録請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 4.独立実用新案登録要件の判断 (1)訂正後の考案 訂正明細書の請求項1及び2に係る考案は、訂正明細書の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】 シート本体上面に塩化ビニル樹脂系インクをスクリーン印刷により印刷し発泡又は非発泡の凹凸模様を設けてなる装飾用シートにおいて、表面の濡れ指数を34?70dyn/cmに調整して上記シート本体が構成されていることを特徴とする凹凸表現に優れる装飾用シート。 【請求項2】 シート本体上面に塩化ビニル樹脂系インクをスクリーン印刷により印刷し発泡又は非発泡の凹凸模様を設けてなる装飾用シートにおいて、所望な裏打層の上面に、濡れ指数が34?70dyn/cmに調整された表面層を設けて上記シート本体が構成されていることを特徴とする凹凸表現に優れる装飾用シート。」 (2)取消理由の趣旨 当審が通知した取消理由の趣旨は、本件明細書は次に挙げる点で、平成6年改正実用新案法付則第9条第2項で準用する特許法第113条第4及び5項の規定に規定している特許法第36条に規定する要件を満足していないという記載不備があり登録を受けることができない、というにある。 a)印刷インクがシートを濡らしやすいか、濡らしにくいかは、印刷インクとシート本体との相互関係により決まるものであるにもかかわらず、実用新案登録請求の範囲において、シート本体の濡れ指数のみを特定しているので、実用新案登録請求の範囲の記載は本件考案の所期の目的を達成し得ないものを含むものである。 b)印刷インキが、油性インクなのか、水性インクなのか不明であるので、本件考案が容易に実施できる程度に記載されていない。 c)シート本体の濡れ指数を調整する方法が、当業者が容易に実施できる程度に記載されていない。 (3)当審の判断 a)について 実用新案登録請求の範囲の「印刷インク」は、発明の詳細な説明の項の記載に基づいて「塩化ビニル樹脂系インク」と訂正され、特定のインクとの関係においてシート本体の濡れ指数が特定されたのであるから上記取り消し理由は解消した。 b)について 「印刷インク」は、考案の詳細な説明の項の記載に基づいて「塩化ビニル樹脂系インク」と訂正され、本件考案は容易に実施できるものとなり、また「印刷インク」が具体的に特定されることになったので、油性又は水性の何れかであることを特定しなければならない理由はなくなった。 c)について 濡れ指数の調整については「シート本体aは、・・・・例えばPP、PVCフイルム等からなり、濡れ指数の調整はコロナ処理、又は処理剤中に界面活性剤を入れたり、樹脂等を組み合わせたりすることによって可能である。」(特許明細書段落【0011】)と示されており、またシート表面の濡れ指数を調整する具体的方法が訂正により加入されたので、上記取り消し理由は解消した。 よって、明細書の記載不備については、上記訂正によって解消したことにより、本件出願が特許出願の際独立して特許を受けることができないものとすることはできない。 (4)訂正の可否についての結論 よって、上記訂正請求は、平成6年実用新案法附則第9条で準用する特許法第120条の4第2項並びに同条第3項で準用する同法第126条第2項から4項の規定に適合するので当該訂正を認める。 III.実用新案登録異議申立についての判断 1.実用新案登録異議申立の理由の概要 実用新案登録異議申立人アキレス株式会社は、本件請求項1及び2に係る考案は、甲第1号証(特開昭61-296197号公報)に記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項に違反して登録されたものである、と主張し、 申立人渡辺義之は、本件考案の明細書の記載は、平成6年改正実用新案法付則第9条第2項で準用する特許法第113条第4及び5項に規定している特許法第36条に規定する要件を満足していないという記載不備があり登録を受けることができない、と主張する。 2.本件発明 本件訂正は適切に行われており、本件考案は訂正後の請求項1及び2に記載されたとおりのものである。 3.実用新案登録異議申立についての判断 (1)申立人アキレス株式会社の申し立てについて a)甲第1号証の記載 甲第1号証には、「原紙上に、原料100重量部に対して高分子エマルジョン系接着剤を主成分とする接着剤が、30?100重量部の比率で配合されている水性顔料塗料を塗被し、塗被量が30?50g/m^(2)の顔料塗被層を介して、発泡性合成樹脂ペースト塗料を用いて印刷模様を形成し、続いて加熱発泡させることを特徴とする壁紙の製造法。」(特許請求の範囲)及び、従来、「紙基材に塩化ビニル樹脂層を配設し、発泡性塩化ビニル樹脂ペースト塗料を用い印刷によって柄模様を形成し、続いて加熱発泡させるビニル壁紙が知られている。しかるに、この種のビニル壁紙は、塩化ビニル樹脂層上に柄模様を印刷するために発泡性塩化ビニル樹脂ペースト塗料が流れて柄くづれを起こし繊細な化粧模様を得ることができない欠点を有し」(第1頁右下欄第17行?第2頁左上欄第4行)ていたが、その従来の欠点を解消するために、「印刷模様を形成するのに、高分子エマルジョン系接着剤を主成分とする接着剤の配合比率の高い顔料塗被層を設け、印刷技術を利用して繊細な化粧模様を得ることに成功し、」(第2頁左上欄第14?17行)と記載されている。 そして、実施例には、塩化ビニルペースト樹脂を含有する発泡性合成樹脂ペースト塗料を使用した壁紙の製造が記載されている。 b)当審の判断 (請求項1に係る考案について) 本件考案が、シート本体に対するインクの接触角を90°に近づけて、インクのエッジがシートに対してより垂直、かつシャープになるようにしたものであること(段落【0006】)及び「壁紙」が「装飾用シート」に相当することを考慮し、本件請求項1に係る考案と甲第1号証に記載の考案とを対比すると、シート本体上面に塩化ビニル系樹脂インクを印刷して発泡の凹凸模様を設けてなる装飾用シートにおいて、印刷インクが印刷面上で流れるのを防止することにより、シャープで鮮明な凹凸模様を確実に表現する点で両者は一致するものの、それを実現するための手段が、本件請求項1に係る考案は「シート本体の表面の濡れ指数を34?70dyn/cm」とするのに対して、甲第1号証の考案は「シート本体表面に、高分子エマルジョン系接着剤を主成分とする接着剤の配合比率の高い顔料塗被層を設ける」点で相違する。 そして、甲第1号証には、 「シート本体の表面の濡れ指数を34?70dyn/cm」とすることについては何ら記載されていないし、印刷インク又は塗料の印刷面での流れを防止でき、シャープで鮮明な凹凸模様が確実に表現できるようするために、「シート本体の表面の濡れ指数を34?70dyn/cm」という本件請求項1に係る考案の要件を採用することを教示するものもなく、これを当業者が用意に想到し得るものとはいえない。 したがって、本件請求項1に係る考案が、甲第1号証に記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案することができるものとすることはできない。 (請求項2に係る考案について) 本件考案が、シート本体に対するインクの接触角を90°に近づけて、インクのエッジがシートに対してより垂直、かつシャープになるようにしたものであること(段落【0006】)及び「壁紙」が「装飾用シート」に相当することを考慮し、本件請求項2に係る考案と甲第1号証に記載の考案とを対比すると、シート本体上面に塩化ビニル系樹脂インクを印刷して発泡の凹凸模様を設けてなる装飾用シートにおいて、印刷インクが印刷面上で流れるのを防止することにより、シャープで鮮明な凹凸模様を確実に表現する点で両者は一致するものの、(A)本件請求項2に係る考案が「裏打層の上面に表面層を設ける」のに対し、甲第1号証にはこの点について明記されていない点、(B)本件請求項2に係る考案が「シート本体の表面の濡れ指数を34?70dyn/cm」とするのに対して、甲第1号証の考案は「シート本体表面に、高分子エマルジョン系接着剤を主成分とする接着剤の配合比率の高い顔料塗被層を設ける」点、で相違する。 前記相違点(A)は、当業者が適宜なし得る技術事項にすぎない。 しかしながら、前記相違点(B)は、本件請求項1に係る考案と甲第1号証に記載の発明との相違点と同じものであるから、請求項1に係る考案と同様の理由により、本件請求項2に係る考案が甲第1号証に記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案することができたものとすることはできない。 (2)申立人渡辺義之の申し立てについて A)申立人渡辺義之の申し立ては、本件明細書は次に挙げる点で、平成6年改正実用新案法付則第9条第2項で準用する特許法第113条第4及び5項の規定に規定している特許法第36条に規定する要件に違反しているものであるから登録を受けることができない、というにある。 i)印刷インクがシートを濡らしやすいか、濡らしにくいかは、印刷インクとシート本体との相互関係により決まるものであるにもかかわらず、登録請求の範囲において、シート本体の濡れ指数のみを特定しているので、登録請求の範囲の記載は本件考案の所期の目的を達成し得ないものを含むものである。 ii)印刷インキが、油性インクなのか、水性インクなのか不明であるので、本件考案が容易に実施できる程度に記載されていない。 iii)シート本体の濡れ指数を調整する方法が、当業者が容易に実施できる程度に記載されていない。 iv)57dyn/cm以上の濡れ指数を判定する方法が当業者が容易に実施できる程度に具体的に記載されていない。 B)当審の判断 上記i)、ii)、iii)は、取消理由で挙げたa)、b)、c)に相当するから、上述したように訂正によって不備は解消された。 上記iv)に関して、本件明細書には濡れ指数の測定がJIS-k6768による旨示されているところであるから、特に具体的な記載がなくてもJIS-k6768に準拠して測定できることは当業者が容易に予測できるところである。 したがって、本件明細書に不備は認められない。 IV.むすび 以上のとおりであるから、実用新案登録異議申立の理由及び証拠によっては、本件実用新案登録を取り消すことはできない。 また、他に本件実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【考案の名称】 凹凸表現に優れる装飾用シート (57)【実用新案登録請求の範囲】 【請求項1】 シート本体上面に塩化ビニル樹脂系インクをスクリーン印刷により印刷し発泡又は非発泡の凹凸模様を設けてなる装飾用シートにおいて、表面の濡れ指数を34?70dyn/cmに調整して上記シート本体が構成されていることを特徴とする凹凸表現に優れる装飾用シート。 【請求項2】 シート本体上面に塩化ビニル樹脂系インクをスクリーン印刷により印刷し発泡又は非発泡の凹凸模様を設けてなる装飾用シートにおいて、所望な裏打層の上面に、濡れ指数が34?70dyn/cmに調整された表面層を設けて上記シート本体が構成されていることを特徴とする凹凸表現に優れる装飾用シート。 【考案の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本考案は、装飾用シート、詳しくは塩化ビニル樹脂系インクをスクリーン印刷によって表面に発泡体又は非発泡体による凹凸模様を設けた凹凸表現に優れる装飾用シートに関する。 【0002】 【従来の技術】 従来、例えば建築物、家具、電気製品及び車両等の内面あるいは外面または内外両面を装飾するために用いられるこの種の装飾用シートとしては、図3に示すように、例えば紙等からなるシート本体(裏打層)100の表面に、直接発泡剤を含有するポリ塩化ビニル樹脂等よりなる発泡性インク等をスクリーン印刷により、所定パターンに印刷して発泡体等による所望肉厚の凹凸模様200を設けていたものである。 【0003】 【考案が解決しようとする課題】 しかし、上記従来技術にあっては、印刷面となるシート本体(紙)100の表面100′が平滑でないため、毛細管現象でシート本体100の表面100′にインク内の溶剤、可塑剤等が先に入り込み、それを追っかけてインクが後追いしてしまうという現象が起こりやすかった。また、紙の上に樹脂層がある場合はインクは必然的に樹脂層を濡らしやすく、インクが流れる傾向があった。 【0004】 従って図3のように凸部300は、へたった状態(なだらかなスロープ300a,300aを形成)となり突出高さが充分に得られなかったり、また時には隣接する凸部300300のエッジ300b,300b同士が接触し合ってしまうということがあったため、凹凸の段差が明確にならず、シャープで鮮明な凹凸模様を表現できづらいという不具合があった。これは、特に微細模様あるいは複雑模様等の凹凸を表現したい場合に起こる確率が高かった。 【0005】 本考案は、従来技術の有するこのような問題点に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、同一目付で充分な突出高さ及びシャープなエッジが得られ、シャープで鮮明な凹凸模様が確実に表現される凹凸表現に優れる装飾用シートを提供することである。 【0006】 【課題を解決するための手段】 上記目的を達成するために本考案がなした技術的手段は、シート本体上面に塩化ビニル樹脂系インクをスクリーン印刷により印刷し発泡又は非発泡の凹凸模様を設けてなる装飾用シートにおいて、濡れ指数を34?70dyn/cmに調整してシート本体を形成し、シート本体に対するインクの接触角を90°に近づけて、インクのエッジがシートに対してより垂直、かつシャープになるようにしたことである。 【0007】 また、所望な裏打層の上面に、濡れ指数が34?70dyn/cmに調整された表面層を設けてシート本体を構成したことである。 【0008】 【作用】 上記技術的手段により、印刷面となるシート本体表面のインクの接触角が調整されるため、シート本体上に印刷されて設けられる凹凸模様の凸部は、へたることなく上記シート本体上から急激に立ち上げられることとなる。 【0009】 また、所望な裏打層の上面に濡れ指数が34?70dyn/cmに調整された表面層を設けてシート本体を形成した場合は、表面層上に印刷されて設けられる凹凸模様の凸部は、へたることなく上記表面層上から急激に立ち上げられることとなる。 【0010】 【実施例】 以下、本考案の一実施例を図に基づいて説明すると、図中Aは、本考案の凹凸表現に優れる装飾用シートを示し、該シートAはシート本体a上にスクリーン印刷により発泡又は非発泡の凹凸模様bを設けて構成されている。 【0011】 シート本体aは、濡れ指数を34?70dyn/cmに調整した、例えばPP、PVCフィルム等からなり、濡れ指数の調整はコロナ処理、又は処理剤中に界面活性剤を入れたり、樹脂等を組み合わせたりすることによって可能である。 尚、シート本体aの肉厚、材質等は何等限定されるものでなく、例えば建築物(例えば壁紙等)、家具(表面装飾材等)、あるいは車両(例えば内装材等)等の各対象物に応じて適宜変更可能である。 また、シート本体aの濡れ指数(dyn/cm)の判定は、従来一般に用いられている試薬(JIS-K6768)を使用して行い、また57dyn/cm以上については同様な趣旨に基づいて調整した試薬を使用して行った。 【0012】 凹凸模様bは、上記シート本体aの上面a′に、発泡剤を含有する発泡性樹脂からなる周知の発泡性インク、例えば所望な発泡剤を含有した乳化重合PVCからなるもの等を用いて、ロータリースクリーン印刷法により所定のパターン(凹凸模様)を印刷した後、所望温度で加熱して上記発泡性インクを発泡させて形成された発泡体よりなる凹部3…と凸部4…とで構成される。尚、図示せしめはしないが上記凹凸模様bは、非発泡性インク(上記乳化重合PVCからなのもの等)からなる非発泡体で構成されているものであってもよい。 【0013】 従って、上記のように構成された装飾用シートAは、表面濡れ性が調整されたシート本体aの上面a′に、発泡体で構成された凹凸模様bが同一目付でロータリースクリーン印刷されて設けられたため、凸部4…は、図1に示すようにシート本体a上から急激に立ち上げられ、かつへたらなかったため、エッジ4a…がとてもシャープで、そして凸部4全体の突出高さも充分に得られ、シャープで鮮明な凹凸模様bが確実に表現できた。 【0014】 次に図2(a)において、シート本体aが、紙、布、PVCフィルム等からなる所望な裏打層1の上面1′に、濡れ指数を34?70dyn/cmに調整した表面層2を設けて構成したものを示し、上記表面層2は、濡れ指数を34?70dyn/cmに調整した、例えば溶剤系のアクリル、ウレタン、ナイロン、塩素化PE、EVA、PVC等の処理剤からなるもの、あるいはアクリル、ウレタン、ナイロン、塩素化PE、EVA、PE、PP、PVC等のフィルムからなるもので、夫々上記裏打層1の上面1′にコーティングあるいはラミネートする。 【0015】 更に、上記処理剤中に艶調整剤、着色剤、装飾剤(雲母粉)等を含ませることによってデザイン性を向上せしめてもよい。 【0016】 また、濡れ指数の調整はコロナ処理、又は処理剤中に界面活性剤を入れたり、樹脂等を組み合わせたりすることによっても可能である。 【0017】 また図2(b)には、紙1a等の上面に塩化ビニル樹脂層1bを設けてなる裏打層1を用いた場合のシート本体aを示す。即ち、当該裏打層1の上面1′に上記同様濡れ指数が34?70dyn/cmに調整された表面層2を設けてシート本体aを形成し、そして該シート本体a上に凹部3…と凸部4…とで構成される凹凸模様bを設けたものであり、これは塩化ビニル樹脂層1b上に直接乳化重合PVCからなる樹脂等を用いてロータリースクリーン印刷法により所定のパターン(凹凸模様)を印刷すると、同種のため馴染み性が良く結果として凸部4がへたってしまうという不具合があるが、上記のように表面層2を設けることにより表面濡れ性が調整され上記不具合は解消される。尚、他の構成及び作用等は上記詳述した図2(a)に示す装飾用シートAと同様でありその説明は省略する。 また、裏打層1は二層に限定されるものではない。 【0018】 ここで、具体的実施(濡れ指数を種々の数値に調整した場合の印刷結果)の一例を表に示す。 尚、表1は、軟質PVC組成物(ゼオン103EP-8・重合度850のPVC樹脂100重量部、DOP・可塑剤50重量部、Ba-Zn安定剤3重量部)に界面活性剤(エレクトロストリッパーEA・花王石鹸の陽イオン系帯電防止剤)を表1に示すPHR練り込んでロール混練し、厚み0.3mmのシートとしたシート本体aを用いたものであり、 また、表2(a)は、紙1a等の上面に厚み0.5mmのPPフィルムをラミネートした後、表2(a)に示す条件のコロナ処理を行ったシート本体aを用いたもので、 表2(b)は紙1a等の上面に塩化ビニル樹脂層1bを設けた裏打層1の表面に、表2(b)に示すハニー化成(株)製の表面処理剤をグラビアプリント印刷機において、100メッシュロールにて1回又は2回コーティング(表面処理)し乾燥させた表面層2を設けたシート本体aを用いたものであり、上記夫々のシート本体aの上面a′(表面層2)上に乳化重合PVC系のインクをロータリースクリーン印刷した結果である。 【0019】 【表1】 【0020】 【表2】 【0021】 勿論上記実施例は一例を示したにすぎず、例えばPP+界面活性剤、PVC+コロナ処理であってもよく、またアクリル系あるいはウレタン系表面処理剤に界面活性剤を添加し、目付1?50g/m^(2)でコーティングした場合も表1と同様であり、更にオレフィン,アクリル,ウレタン,ポリエステル等のフィルムについても、界面活性剤添加で同様の処理ができ、界面活性を調整できる樹脂のブレンド、共重合でも構わない。 【0022】 【考案の効果】 本考案は、濡れ指数を34?70dyn/cmに調整して形成したシート本体上面に、スクリーン印刷により発泡または非発泡の凹凸模様を設けてなる装飾用シートとしたため、印刷面となるシート本体表面の濡れ性が調整され、上記シート本体上に印刷されて設けられる凹凸模様の凸部は、へたることなく上記シート本体上から急激に立ち上げられることとなる。従って、凸部は同一目付で充分な突出高さが得られると共に、シャープなエッジが得られることとなって凹凸段差が明確となるため、たとえ微細模様や複雑模様等の凹凸模様であってもシャープで鮮明な凹凸模様が確実に表現できることとなり、商品価値のすこぶる高い凹凸表現に優れる装飾用シートの提供が図れる。 【0023】 また、所望な裏打層の上面に濡れ指数が34?70dyn/cmに調整された表面層を設けてシート本体を形成した場合は、表面層上に印刷されて設けられる凹凸模様の凸部は、へたることなく上記表面層上から急激に立ち上げられることとなるため、上記同様凸部は同一目付で充分な突出高さが得られると共に、シャープなエッジが得られることとなって凹凸段差が明確となる。 【図面の簡単な説明】 【図1】 本考案装飾用シートの一実施例を示す縦断正面図。 【図2】 請求項2記載の装飾用シートの実施例を示す縦断正面図。 【図3】 従来例を示す縦断正面図。 【符号の説明】 A:凹凸表現に優れる装飾用シート a:シート本体 b:凹凸部 1:裏打層 2:表面層 4:凸部 4a:エッジ |
訂正の要旨 |
訂正の要旨 実用新案登録第2573732号の明細書を次のとおり訂正する。 A.実用新案登録請求の範囲における、 【請求項1】の、「シート本体上面にスクリーン印刷により発泡又は非発泡の凹凸模様を設けてなる装飾用シートにおいて」を、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的として「シート本体上面に塩化ビニル樹脂系インクをスクリーン印刷により印刷し発泡又は非発泡の凹凸模様を設けてなる装飾用シートにおいて」と訂正する。 B.同【請求項2】の、「シート本体上面にスクリーン印刷により発泡又は非発泡の凹凸模様を設けてなる装飾用シートにおいて」を、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的として「シート本体上面に塩化ビニル樹脂系インクをスクリーン印刷により印刷し発泡又は非発泡の凹凸模様を設けてなる装飾用シートにおいて」と訂正する。 C.明細書中の考案の詳細な説明における 段落【0001】の、「本考案は、装飾用シート、詳しくはスクリーン印刷によって表面に発泡体又は非発泡体による凹凸模様を設けた凹凸表現に優れる装飾用シートに関する。」を実用新案登録請求の範囲の減縮にともなう不明りょうな記載の釈明を目的として「本考案は、装飾シート、詳しくは塩化ビニル樹脂系インクをスクリーン印刷によって表面に発泡体又は非発泡体による凹凸模様を設けた凹凸表現に優れる装飾用シートに関する」と訂正する。 D.同段落【0006】の「上記目的を達成するために本考案がなした技術的手段は、シート本体上面にスクリーン印刷により発泡又は非発泡の凹凸模様を設けてなる装飾用シートにおいて」を、実用新案登録請求の範囲の減縮にともなう不明りょうな記載の釈明を目的として「上記目的を達成するために本考案がなした技術的手段は、シート本体上面に塩化ビニル樹脂系インクをスクリーン印刷により印刷し発泡又は非発泡の凹凸模様を設けてなる装飾用シートにおいて、」と訂正する。 E.同段落【0018】の「ここで、具体的実施(濡れ指数を種々の数値に調整した場合の印刷結果)の一例を表に示す。尚、表1は、軟質PVCに界面活性剤を練り込んだシート本体aを用いたものであり、また表2(a)は、紙1a等の上面にPP等のフィルムをラミネートした後コロナ処理を行った表面層2を設けたシート本体aを用いたもので、(b)は紙1a等の上面に塩化ビニル樹脂層1bを設けた裏打ち層1の表面に、PVC.アクリルエマルジョンからなる処理剤をコーティングし乾燥させた表面層2を設けたシート本体aを用いたものであり、上記夫々のシート本体aの上面a′(表面層2)上に乳化重合PVC系のインクをロータリースクリーン印刷した結果である。」を、明りょうでない記載の釈明を目的として「ここで、具体的実施(濡れ指数を種々の数値に調整した場合の印刷結果)の一例を表に示す。尚、表1は、軟質PVC組成物(ゼオン103EP-8・重合度850のPVC樹脂100重量部、DOP・可塑剤50重量部、Ba-Zn安定剤3重量部)に界面活性剤(エレクトロストリッパーEA・花王石鹸の陽イオン系帯電防止剤)を表1に示すPHR練り込んでロール混練し、厚み0.3mmのシートとしたシート本体aを用いたものであり、また、表2(a)は、紙1a等の上面に厚み0.5mmのPPフィルムをラミネートした後、表2(a)に示す条件のコロナ処理を行ったシート本体aを用いたもので、 表2(b)は紙1a等の上面に塩化ビニル樹脂層1bを設けた裏打層1の表面に、表2(b)に示すハニー化成(株)製の表面処理剤をグラビアプリント印刷機において、100メッシュロールにて1回又は2回コーティング(表面処理)し乾燥させた表面層2を設けたシート本体aを用いたものであり、上記夫々のシート本体aの上面a′(表面層2)上に乳化重合PVC系のインクをロータリースクリーン印刷した結果である。」と訂正する。 F.同段落【0019】の を明りょうでない記載の釈明を目的として、 と訂正する。 G.同段落【0020】の を明りょうでない記載の釈明を目的として、 と訂正する。 |
異議決定日 | 2000-01-13 |
出願番号 | 実願平4-14899 |
審決分類 |
U
1
651・
121-
YA
(B41M)
U 1 651・ 531- YA (B41M) U 1 651・ 534- YA (B41M) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 畑井 順一 |
特許庁審判長 |
酒井 進 |
特許庁審判官 |
鐘尾 みや子 植野 浩志 |
登録日 | 1998-03-20 |
登録番号 | 実用登録第2573732号(U2573732) |
権利者 |
オカモト株式会社 東京都文京区本郷3丁目27番12号 |
考案の名称 | 凹凸表現に優れる装飾用シート |
代理人 | 細井 貞行 |
代理人 | 早川 政名 |
代理人 | 石渡 英房 |
代理人 | 長南 満輝男 |
代理人 | 長南 満輝男 |
代理人 | 細井 貞行 |
代理人 | 石渡 英房 |
代理人 | 早川 政名 |