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審決分類 審判 全部申し立て   A47K
審判 全部申し立て   A47K
管理番号 1028425
異議申立番号 異議1999-74386  
総通号数 16 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2001-04-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-11-25 
確定日 2000-11-29 
異議申立件数
事件の表示 登録第2595420号「シャッター式浴槽蓋」の請求項1ないし3に係る実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 登録第2595420号の請求項1に係る実用新案登録を取り消す。 同請求項2ないし3に係る実用新案登録を維持する。
理由 (一)手続きの経緯
本件実用新案登録に係る出願は、平成5年6月30日の出願であって、平成11年3月19日に実用新案権の設定登録がなされ、その後、田中英博、永大化工株式会社、芳賀茂雄、浦田英清、中谷修、吉田みどりより異議申立がなされ、取消理由が通知され、その指定期間内に何らの応答もなかったものである。
(二)本件考案
本件実用新案登録の請求項1ないし3に係る考案は、登録明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1ないし3に記載された次のとおりのものである。
【請求項1】硬質合成樹脂製の細長中空棒状体と、この細長中空棒状体同士を連結する軟質合成樹脂製の連結用帯状片とを同時押出成形してなるシャッター式の浴槽蓋において、前記細長中空棒状体は硬質ポリプロピレン樹脂によって製せられ、且つ前記連結用帯状片はポリプロピレン樹脂に改質剤を添加して軟質化した軟質ポリプロピレン樹脂によって製せられ、両者を同時押出成形の際に熱溶着にて連結してなることを特徴とするシャッター式浴槽蓋。
【請求項2】改質剤が水素添加のスチレン・ブタジエン・ラバーであり、当該水素添加のスチレン・ブタジエン・ラバーをポリプロピレン樹脂100重量%に対し、150重量%?300重量%添加してなる請求項1記載のシャッター式浴槽蓋。
【請求項3】ポリプロピレン樹脂100重量%に対し、水素添加のスチレン・ブタジエン・ラバーを150重量%?300重量%添加して軟質化させたすべり止め帯状片を、硬質ポリプロピレン樹脂製の細長中空棒状体の下面長手方向に沿って熱溶着または接着してなる請求項1記載のシャッター式浴槽蓋。
(三)異議申立の理由の概要
(1)異議申立人田中英博は、証拠方法として甲第1?5号証を提出し、請求項1に係る考案の実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものであり、また、実用新案法第5条第4項に規定する要件を満たしていないから、取り消されるべきものであるという主張している。
(2)異議申立人永大化工株式会社は、証拠方法として甲第1?6号証を提出し、請求項1に係る考案の実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものであり、また、実用新案法第5条第5項に規定する要件を満たしていないから、取り消されるべきものであるという主張している。
(3)異議申立人芳賀茂雄は、証拠方法として甲第1?5号証を提出し、請求項1に係る考案の実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものであり、また、実用新案法第5条第5項に規定する要件を満たしていないから、取り消されるべきものであるという主張している。
(4)異議申立人浦田英清は、証拠方法として甲第1?5号証を提出し、請求項1に係る考案の実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものであり、また、実用新案法第5条第5項に規定する要件を満たしていないから、取り消されるべきものであるという主張している。
(5)異議申立人中谷修は、証拠方法として甲第1?4号証を提出し、請求項1?3に係る考案の実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものであり、取り消されるべきものであるという主張している。
(6)異議申立人吉田みどりは、証拠方法として甲第1?4号証を提出し、請求項1?3に係る考案の実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものであり、取り消されるべきものであるという主張している。
(四)取消理由の概要
当審が通知した取消理由の概要は、次のとおりのものである。
1.引用文献
実公昭59-34391号公報(以下、「引用例1」という。)には、例えば、次のような記載がある。
(1)「複数の硬質合成樹脂製中空棒状体2,3が、軟質合成樹脂製の折曲自在な帯状部4,8を介して並列状に連結されて所要の大きさに形成された風呂蓋において、」公報第1頁左欄。
(2)「中空棒状体2,3と帯状部4,および一方の中空棒状部3と接続用帯状部7は、押出し成形段階で一体成形されたものであるが、要すれば溶着して一体化してもよい。」公報第2頁左欄。
前記(1)及び(2)の記載事項と図面の記載からみて、引用例1には、硬質合成樹脂製中空棒状体と、この硬質合成樹脂製中空棒状体同士を折曲自在に連結する軟質合成樹脂製の接続用帯状部とを、同時押出成形の際に熱溶着して一体化してなる風呂蓋が記載されている。
また、「ポリファイル」1992年8月号、1992年8月1日、株式会社大成社出版部発行、第67頁?第69頁の「水素添加SBR(HSBR)ダイナロンの開発」の項(以下、「引用例2」という。)には、例えば、次のような記載がある。
(3)「2.DYNARON HSBR 2.1特徴と基本物性
今回上市したHSBR、DYNARON1000シリーズは1320Pおよび1910Pであり表1にはその基本物性を示した。HSBR、DYNARON1320Pは、ポリプロピレン(以下PP)との相溶性に優れるため、PPの改質剤として使用される。特に、ブロックコポリマータイプPPに少量添加することで、衝撃白化、折り曲げ白化、タッピング白化、突き出し白化などのストレス白化が著しく改良される。また、PPに多量添加することで、弾性率が大幅に低下するため、PPの軟質化効果が期待できる。」第67頁。
(4)「2.4用途例
HSBR、DYNARON1320Pの応用例として、ファイルバインダー用PPの折曲げ白化や打ち抜き白化の改質剤用途がある。」第68頁。
(5)「3.DYNARONアロイ(Hシリーズ)3.1 特徴と基本物性
DYNARONアロイ(Hシリーズ)はDYNARONがPP中に超微分散したブレンド形態をとるため柔軟性、透明性あるいは耐熱変形性などに優れた物性バランスを示す。」第68頁。
(6)「3.2用途の可能性
DYNARONアロイ(Hシリーズ)は上記の特徴の他に・オイル・可塑剤を含まない・熱安定性に優れる・射出成形、Tダイ・インフレーション成形、カレンダー成形など一般のプラスチック加工法で容易に成形が可能などの特徴を有しているため、PVC代替材料としての期待が大きい。現在その可能性を見極めるため主にフィルム、シート、チューブ材について医療器具、食品容器、文具・日用品、自動車内装材など広い分野での用途開発を進めているところである。」第68頁。
前記(3)?(6)の記載事項からみて、引用例2には、ポリプロピレンに改質剤として水素添加のHSBRを多量に添加することでポリプロピレンの弾性率を大幅に低下させ、ポリプロピレンを軟質化し、軟質化されたポリプロピレンは柔軟性、耐熱変形性に優れ、Tダイ・インフレーション成形が容易であり、日用品等の用途に使用されることが記載されている。
また、実公昭60-6308号公報(以下、「周知例1」という。)には、例えば、次のような記載がある。
(7)「1…1は、熱可塑性樹脂によって成形せられた単位扁平中空体であって、相互に若干の空隙部dを隔有して並列配置して、以て任意の風呂蓋形状を形成するものとする。」公報第1頁右欄。
(8)「前記単位扁平中空体1を形成する熱可塑性合成樹脂の種類については限定はないが、風呂蓋の材質として要求せられる前述の耐熱性、耐久性及び保形性等の諸点より鑑みて、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエチレン等が適当である。」公報第1頁右欄。
(9)「2は、前述の如くして風呂蓋形状を形成する単位扁平中空体1…1の複数に被覆・融着して、以て、単位扁平中空体1…1の複数個の組合せを一体化することにより、第2図、第3図に示す如き1個の風呂蓋3を形成する熱可塑性合成樹脂シート又は不織布であって、表面21にすべり止めの粗面を形成するものとする。該熱可塑性合成樹脂シート2に材質については限定はないが、風呂蓋の材質として要求される耐熱性、耐久性及び保形性等の外に融着性を考慮して、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリカーボネート及びポリエチレン等が適当であり、更にこの熱可塑性合成樹脂シート2と前述の単位扁平中空体1の材質を同一にすれば、融着性を更に良好ならしめる所以となる。」公報第1頁右欄?第2頁左欄。
前記(7)?(9)の記載事項と図面の記載からみて、周知例1には、ポリプロピレン製の単位扁平中空体を複数個を若干の空隙をあけて並列配置し、前記複数のポリプロピレン製の単位扁平中空体を加熱融着性を考慮してポリプロピレン製のシートで加熱融着して一体化した風呂蓋が記載されている。
同じく、特開昭64-25819公報(以下、「周知例2」という。)には、例えば、次のような記載がある。
(10)「(従来技術)従来のプラスチック製浴槽蓋は、材料がポリプロピレンであるために摩擦抵抗が少なく」公報第1頁左欄。
同じく、実公昭62-550号公報(以下、「周知例3」という。)には、例えば、次のような記載がある。
(11)「シャッター式浴槽蓋を構成する中空部材はポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル当の熱可塑性合成樹脂を用いて成形されている」公報第1頁左欄。
2.対比
本件請求項1考案と引用例1記載の考案を対比する。
引用例1記載の考案における、「硬質合成樹脂製中空棒状体」、「軟質合成樹脂製の接続用帯状部」及び「風呂蓋」は、本件請求項1考案における、「硬質合成樹脂製の細長中空棒状体」、「軟質合成樹脂製の連結用帯状片」及び「シャッター式浴槽蓋」にそれぞれ対応するものであるから、本件請求項1考案と引用例1記載の考案は、次の一致点において両者の構成は一致し、次の相違点において両者の構成は相違する。
一致点:硬質合成樹脂製の細長中空棒状体と、この細長中空棒状体同士を連結する軟質合成樹脂製の連結用帯条片とを同時押出成形してなるシャッター式の浴槽蓋において、両者を同時押出成形の際に熱溶着して連結してなるシャッター式浴槽蓋。
相違点:本件請求項1考案においては、細長中空棒状体は硬質ポリプロピレン樹脂によって製せられ、且つ前記連結用帯状片はポリプロピレン樹脂に改質剤を添加して軟質化した軟質ポリプロピレン樹脂によって製せられるのに対して、引用例1記載の考案においては、硬質合成樹脂と軟質合成樹脂の材料の限定がない点。
3.判断
前記相違点について検討する。
引用例2には、ポリプロピレンに水素添加のスチレン・ブタジエン・ラバーを改質材として多量添加したものが、柔軟性、耐熱変形性に優れ、押出成形が容易であること、ファイルファインダ等の折り曲げ部に用いることは記載されており、この軟質化したポリプロピレンは、同じポリプロピレン系である硬質ポリプロピレンとの熱溶着性がよいことは明らかであり、その特徴・物性は、シャッター式浴槽蓋の軟質合成樹脂製の連結用帯状片の材料として要求されるものである。
また、浴槽蓋の材料をポリプロピレンとすることは、周知例1?3に示すように従来周知の事項である。
そうしてみると、引用例1記載の考案の硬質合成樹脂製中空棒状体の材料を前記周知事項を考慮して硬質ポリプロピレン製とし、軟質合成樹脂製の連結用帯状片の材料として引用例2記載の考案のものを適用して、前記相違点にあげた本件請求項1考案の構成のようにすることは、当業者がきわめて容易になしえる程度のものである。
4.むすび
以上のとおりであるから、本件請求項1に係る考案の実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものであり、取り消されるべきものである。 (四)異議申立人中谷修及び吉田みどりの異議申立についての判断
前記当審が通知した取消理由に対して、権利者からはその指定期間内に何らの応答もなく、そして、前記取消理由は妥当なものと認められるから、請求項1に係る考案の実用新案登録は、前記取消理由通知に記載された理由により取り消されるべきものであると認める。
請求項2及び3に係る考案に対しては、異議申立人中谷修及び吉田みどりが異議申立をしているので、その異議申立について検討する。
1.異議申立人中谷修及び吉田みどりの提出した甲各号証の記載事項
引用例1:実公昭59-34391号公報(異議申立人中谷修が甲第1号証として提出)には、前記取消理由において、「引用例1」として示したとおりのものが記載されている。
引用例2:特開昭61-213145号公報(異議申立人中谷修が甲第2号証として提出)には、硬質プラスチック成形部材および軟質プラスチック成型部材からなる複合プラスチック成型品において、上記硬質プラスチックがポリプロピレン樹脂であり、上記軟質プラスチックが熱可塑性エラストマーであり、且つ上記両部材が一体的に融着していることを特徴とする複合プラスチック成形品が記載されている。
引用例3:「実用プラスチック用語辞典」大阪市立工業研究所プラスチック課編纂、1989年9月10日改訂第3版発行第86頁、第477頁(異議申立人中谷修が甲第3号証として提出)には、「エラストマー」、「熱可塑性」、「熱可塑性エラストマー」という用語の説明が記載されている。
引用例4:「ポリファイル」1992年8月号、1992年8月1日、株式会社大成社出版部発行、第67頁?第69頁の「水素添加SBR(HSBR)ダイナロンの開発」の項(異議申立人中谷修が甲第4号証として、異議申立人吉田みどりが甲第3号証として提出)には、前記取消理由において、「引用例2」として示したとおりのものが記載されている。
引用例5:特公平3-69525号公報(異議申立人吉田みどりが甲第1号証として提出)には、複数の硬質合成樹脂製の中空筒の下端両側相互を屈曲自在な軟質合成樹脂製の連結材によって連結したシャッター式風呂蓋が記載されている。
引用例6:実公昭60-6308号公報(異議申立人吉田みどりが甲第2号証として提出)には、前記取消理由通知において、「周知例1」として示したとおりのものが記載されている。
引用例7:特開昭52-121663号公報(異議申立人吉田みどりが甲第4号証として提出)には、ポリプロピレン製浴用プラスチック品に溶着一体化させた滑り止め具として、スチレン・ブタジエンブロック共重合体(熱可塑性ゴム)とポリプロピレン(熱可塑性樹脂)を混合した混合物を使用する構成が記載されている。
2.対比・判断
引用例1?7には、請求項2に係る考案の「改質剤が水素添加のスチレン・ブタジエン・ラバーであり、当該水素添加のスチレン・ブタジエン・ラバーをポリプロピレン樹脂100重量%に対し、150重量%?300重量%添加する」という構成、及び請求項3に係る考案の「ポリプロピレン樹脂100重量%に対し、水素添加のスチレン・ブタジエン・ラバーを150重量%?300重量%添加する」という構成についての直接の記載はなく、前記構成を示唆する記載もない。
そして、請求項2及び3に係る考案は、前記構成により明細書記載の作用効果を奏するものである。
したがって、請求項2及び3に係る考案は、引用例1?7に基づいて当業者がきわめて容易に考案することができたものとは認めることができない。
(五)むすび
以上のとおりであるから、請求項1に係る考案の実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものである、取り消されるべきものである。
また、異議申立人の主張する理由及び提出した証拠方法によっては、請求項2及び3に係る考案の実用新案登録を取り消すことはできない。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2000-10-05 
出願番号 実願平5-40549 
審決分類 U 1 651・ 121- ZC (A47K)
U 1 651・ 534- ZC (A47K)
最終処分 一部取消    
前審関与審査官 藤原 伸二  
特許庁審判長 片寄 武彦
特許庁審判官 鈴木 憲子
宮崎 恭
登録日 1999-03-19 
登録番号 実用新案登録第2595420号(U2595420) 
権利者 ジェイエスアール株式会社
東京都中央区築地2丁目11番24号 東プレ株式会社
東京都台東区台東1丁目31番10号 三井化学株式会社
東京都千代田区霞が関三丁目2番5号
考案の名称 シャッター式浴槽蓋  
代理人 大前 要  
代理人 清水 久義  
代理人 高田 健市  
代理人 吉田 吏規夫  
代理人 後藤 憲秋  

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