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審決分類 審判 判定 同一 属する(申立て成立) C02F
管理番号 1028430
判定請求番号 判定2000-60091  
総通号数 16 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案判定公報 
発行日 2001-04-27 
種別 判定 
判定請求日 2000-06-13 
確定日 2000-10-11 
事件の表示 上記当事者間の登録第2516556号の判定請求事件について、次のとおり判定する。   
結論 (イ)号図面及びその説明書に示す「スカム処理装置」は、登録第2516556号実用新案の技術的範囲に属する。
理由 1.請求の趣旨
本件判定請求の趣旨は、イ号物件(添付図面1乃至4に示される「スカム処理装置」)が登録実用新案第2516556号考案(以下、「本件考案」という)の技術的範囲に属する、との判定を求めるものである。
2.本件考案
本件考案は、実用新案登録明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定されるとおりのものであるところ、この考案を構成要件に分説すると次のとおりである。
「(イ)トラフは、その流入口が水面下にあるようにして池内に設置されているとともに、
(ロ)同トラフの流入ロ近くには、水面を境にして浮き沈みするような堰き止め部材が配置されているとともに、
(ハ)同堰き止め部材は、池内で循環駆動されるフライトに連動して上下されるように回転自在に支持された倣い部材とこの倣い部材と堰き止め部材との間に設けられ倣い部材の運動を堰き止め部材に伝達する伝達部材とにより、堰き止め状態と堰き止め解除状態とに作動するように構成されたスカム処理装置において、
(ニ)前記倣い部材は、沈澱池の左右側壁間に水平に横架された固定軸の長手方向一端外周に回転自在にした回転パイプの外周に突設され、
(ホ)前記伝達部材は、同回転パイプに接続されていることを特徴とする、
(ヘ)スカム処理装置」
3.本件考案の目的及び効果
本件考案の目的は、従来のスカム処理装置では「側壁間に1本通しの回転パイプを配してその両端で軸受支持することにより、倣い部材および伝達部材を連動自在に取り付けていたため、回転パイプが長過ぎてかなり撓み、軸受の損耗が激しく早期交換が必要であった。」(実用新案登録公報第3欄第11行乃至第15行)という課題があったため、この課題を解決して「回転パイプの支持系の耐久性の向上を図り、メンテナンス期間を長くできるとともに、施工の簡略化をも図ることができるようにする」(実用新案登録公報第3欄第19行乃至第22行)というものである。
また、本件考案の効果は、その解決手段として「倣い部材と伝達部材を取り付けた回転パイプが、そのまま池側壁に軸受支持されるのでなく、リジッドに横架された固定軸回りに回転自在に支持したので」(実用新案登録公報第6欄第21行乃至第24行)、「二重構造により撓みが抑えられた状態で回転運動を安定確実に伝達することができる。特に、回転パイプは、固定軸の撓みの少ない長手方向一側端回りに位置させてあるので、回転パイプと固定軸との間の摩耗が抑えられるとともに、第1図に示すように、回転パイプ12を長くすることで、更に摩耗を少なくすることができて、メンテナンス期間が長くなる。また、施工するに当たっても、これまでは、左右の側壁にそれぞれ軸受を固定設置して互いの軸心を合わせてのち回転パイプを横架するという面倒な作業が必要であったが、前記別軸方式にすると、そうした面倒は全くなくなった。」(本件実用新案公報第6欄第24行乃至第34行)というものである。
4.イ号物件
(1)イ号図面及びイ号図面に示された事項
判定請求書に添付されたイ号図面(図1乃至図4)は、次のとおりの、すなわち「イ号図面の図1は被請求人が実施を予定する矩形沈澱池にスカム処理装置を装備する構想を沈澱池を縦割りにして示す斜視図、図2は図3のII-II線に対応して同スカム処理装置の全体を示す縦断面図、図3は図2のIII-III線に対応して同スカム処理装置の全体を示す縦断側面図、図4は図3の要部についての作動状態を示す縦断側面図」である。
そして、図1乃至図4を総合すると、イ号図面には、「スカム処理装置」に係り、次の(i)乃至(ix)の事項が示されていると認められる。
(i)トラフは、流入口付近に堰き止め部材を有しその流入口が水面下に位置するように池に配置されている(図3参照)。
(ii)堰き止め部材は、水面を境に水面下と水面上に浮き沈みするように回転可能にトラフの流入口付近に配置され、回転パイプと伝達部材を介して倣い部材の運動が伝達されるように連結されている(図3参照)。
(iii)堰き止め部材は、伝達部材の運動によって水面を境に浮き沈みし、堰き止め状態と堰き止め解除状態を構成する機能を有する(図3参照)。
(iv)伝達部材は、回転パイプに接続されこの回転パイプの運動を堰き止め部材に伝達する機能を有する(図3参照)。
(v)池の左右側壁間に水平に横架された一対の固定軸が配置されている(図1参照)。
(vi)一対の固定軸には、その長手方向一端外周にそれぞれ回転自在に回転パイプが設けられている(図1参照)。
(vii)この回転パイプは、その外周で一対のリンク部材とそれぞれ連結されている(図1乃至図3参照)。
(viii)倣い部材は、この一対のリンク部材と回転自在に連結されている(図1及び図3参照)。
(ix)この倣い部材は、池内で循環駆動されるフライトの下回り時にフライトの上部に取り付けられたローラーが当たることで図4の左方に移動しつつ上下に昇降可能な部材である(図1、図3及び図4参照)。
(2)イ号物件の構成
イ号図面から摘示される上記(1)に示す(i)乃至(ix)の事項からみて、イ号図面に示される「イ号物件」は、本件の実用新案登録請求の範囲の記載に即して分説すると、次のとおりの構成を具備するものと認められる。
(a)トラフは、その流入口が水面下にあるようにして池内に設置され、
(b)トラフの流入口近くには、水面を境にして浮き沈みするような堰き止め部材が配置され、
(c)池内で循環駆動されるフライトに連動して上下されるように回転自在に支持された倣い部材と、この倣い部材と堰き止め部材との間に設けられ倣い部材の運動を堰き止め部材に伝達する伝達部材とが設けられ、
(d)前記堰き止め部材は、前記倣い部材と前記伝達部材とにより、堰き止め状態と堰き止め解除状態とに作動するように構成され、
(e)前記倣い部材は、沈澱池の左右側壁間に水平に横架された一対の固定軸の長手方向一端外周に回転自在にそれぞれ設けられた回転パイプの外周にリンク部材を介して設けられ、
(f)前記伝達部材は、前記回転パイプに接続されていることを特徴とする、
(g)スカム処理装置。
5.対比・判断
(1)イ号物件の各構成要件が本件考案の各構成要件を充足するか否かについて
本件考案とイ号物件とを対比すると、両者は、「スカム処理装置」に係る点で共通しているから、イ号物件の(g)は本件考案の構成要件(ヘ)を充足する。
また、イ号物件の構成要件(a)、(b)及び(f)は、その文言からも明らかなとおり、本件考案の構成要件(イ)、(ロ)及び(ホ)をそれぞれ充足し、イ号物件の構成要件(c)と(d)を併せた構成要件も同様に本件考案の構成要件(ハ)を充足する。
次に、本件考案の構成要件(ニ)とイ号物件の構成要件(e)とを対比するに、本件考案の「倣い部材」については、構成要件(ハ)に記載のとおり、「池内で循環駆動されるフライトに連動して上下されるように回転自在に支持された倣い部材」であって、しかも「堰き止め部材を堰き止め状態と堰き止め解除状態とに作動させるような機能を有するもの」であれば、その形状・構造に限定されないと認められ、しかも、上述したとおり、イ号物件の「倣い部材」もこのような作動をするものであるから、両者は、「倣い部材」の点で差異はないと云える。
また、倣い部材が「突設され」については、構成要件(ハ)及び(ニ)をみる限り、明確に特定されていないから、この「突設され」について本件明細書及び図面の記載を参酌して検討すると、本件明細書には、「この倣い部材10は、・・・回転パイプ12の一端に取り付けられている。」(第4欄第6行乃至第9行)と記載されている以外に具体的な記載はないものの、第1図及び第2図には、倣い部材が回転パイプ12に直接的に取り付けられているか間接的にかは定かではないが、回転パイプから一定の長さだけ突き出て設けられた「倣い部材」が図示されているから、この限りでは、本件考案の「倣い部材」は「回転パイプ12の外周に突設され」ていると解することができる。
これに対し、イ号物件の「倣い部材」(イ号図面で称されている部材)は、イ号図面からも明らかな如く、回転パイプの外周にリンク部材を介して設けられたものであり、「倣い部材」がこのように設定されている場合には、回転パイプから一定の長さだけ突き出て「突設され」たと云うことができない。
してみると、本件考案の構成要件(ニ)とイ号物件の構成要件(e)とは、「沈澱池の左右側壁間に水平に横架された固定軸を設け、この固定軸の長手方向一端外周に回転自在に回転パイプを設け、この回転パイプの外周に倣い部材を設ける」という上位概念では一致するが、イ号物件の構成は、「倣い部材が一対の固定軸にそれぞれ設けられた一対の回転パイプの外周にリンク部材を介して設けられ」ており、「倣い部材を回転パイプの外周に突設させる」構成と異なっていると云える。
したがって、イ号物件の構成要件(e)は、本件考案の構成要件(ニ)を充足しないと云える。
(2)本件考案の構成要件(ニ)に係る上記相違部分が均等であるか否かについて
(均等の要件)
均等の判断は、最高裁平成6年(オ)第1083号判決(平成10年2月24日判決言渡)で判示された以下の5つの要件をすべて満たした場合に均等と判断するとされている。
(A)特許請求の範囲に記載された構成中のイ号と異なる部分が発明の本質的な部分ではない。
(B)前記異なる部分をイ号のものと置き換えても特許発明の目的を達成することができ、同一の作用効果を奏する。
(C)前記異なる部分をイ号のものと置き換えることが、イ号の実施の時点において当業者が容易に想到することができたものである。
(D) イ号が特許発明の出願時における公知技術と同一又は当業者が公知技術から出願時に容易に推考できたものではない。
(E) イ号が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外される等の特段の事情がない。
(均等の判断)
本件考案の構成要件(ニ)に係る上記相違部分について、均等の要件である上記(A)乃至(E)について次に検討する。
(A)の要件について
本件考案の本質的な部分は、上記「3.本件考案の目的及び効果」に照らせば、回転パイプの支持系の耐久性の向上を図る等のために「前記倣い部材が沈澱池の左右側壁間に水平に横架された固定軸の長手方向一端外周に回転自在にした回転パイプに設けられる」点であり、本件考案の構成要件(ニ)の中の「倣い部材が回転パイプに突設される」点については、本件明細書の【従来の技術】の記載に徴すれば、従来のスカム処理装置でも一本通しに配設された回転パイプの外周には「倣い部材が突設され」ていたと認められるから、このような従来技術と本件考案の目的や効果を併せ勘案すれば、本件考案の「倣い部材が回転パイプに突設される」部分は、本質的な部分ではないと云うのが相当である。
(B)の要件について
本件考案の目的は、「回転パイプの支持系の耐久性の向上」にあるところ、本件考案の「倣い部材が回転パイプの外周に突設される部分」を、イ号物件の如く「倣い部材が一対の固定軸に設けられた回転パイプの外周にリンク部材を介して設けられる」ものに置換した場合でも、本件考案と同様の「回転パイプの支持系の耐久性の向上」という目的を達成することができ、また「二重構造により撓みが抑えられた状態で回転運動を安定確実に伝達することができる。」及び「更に摩耗を少なくすることができて、メンテナンス期間が長くなる。」等本件明細書に記載された作用効果と同一の作用効果を奏すると認められる。
(C)の要件について
本件考案において、「倣い部材が回転パイプの外周に突設される部分」の技術的な意味は、本件明細書及び図面の記載に徴すれば、フライトの直線運動を堰止め部材に伝達するために、「倣い部材」とフライトとの衝突を確実にするためとこの衝突によってフライトに蹴り上げられた「倣い部材」を回転自在とする(この回転によって回転パイプが回転されるようにする)ためであると認められるから、換言すれば、本件考案の「倣い部材が回転パイプの外周に突設される部分」は、倣い部材とフライトとが衝突してフライトの直線運動を「倣い部材」の回転運動に変換させるための機構を有する部分と云うことができる。
これに対し、イ号物件は、「倣い部材が一対の固定軸にそれぞれ設けられた回転パイプの外周にリンク部材を介して設けられる」ものであり、このように倣い部材が回転パイプに設けられた場合でも、その機能は、本件考案と同様、倣い部材とフライトとの衝突を確実にしてフライトの直線運動を「倣い部材」の回転運動に変換させるためのものであることに変わりはなく、したがって、本件考案とイ号物件との構成上の主な相違点は、イ号物件の倣い部材がリンク機構を介して回転パイプに設けられている点であり、その余の点の「一対の固定軸」については、このリンク機構の採用に付随した設計的事項というべき程度のものであると云える。
そこで、このリンク機構について検討すると、請求人が提出した甲第3号証(丹羽重光著「新版機構学」丸善(株)、昭和42年4月15日発行、第253頁乃至255頁)にもみられる如く、直線運動を回転運動に変換させる運動機構として「リンク機構」は周知・慣用手段であるから、一対の固定軸を設けてこのような「リンク機構」を採用する程度のこと、すなわち本件考案の「倣い部材が回転パイプの外周に突設される部分」を、イ号物件の「倣い部材が一対の固定軸にそれぞれ設けられた回転パイプの外周にリンク部材を介して設けられる部分」と置き換える程度のことは、当業者がきわめて容易に想到することができたと云うべきである。
(D)の要件について
イ号物件は、その構成要件として、「沈澱池の左右側壁間に水平に横架された一対の固定軸のそれぞれの長手方向一端外周に回転自在にした回転パイプ」を有するところ、スカム処理装置において、その倣い部材と伝達部材とを支持するための上記回転パイプ等からなる構成要件に関する先行技術文献は存在しない。
してみると、イ号物件は、実用新案登録考案の出願時における公知技術と同一又は当業者が公知技術から出願時にきわめて容易に推考できたものとすることはできない。
(E)の要件について
本件考案に係る出願手続中の書類をみても、イ号物件を本件実用新案登録請求の範囲から意識的に除外する等の特段の事情があったとは認められない。
以上のとおり、上記相違部分に関する均等の要件(A)乃至(E)はすべて満たされているから、イ号物件は、本件考案と均等なものと云うべきであり、他にこの判断を左右する特段の事情も見当たらない。

6.むすび
したがって、イ号物件は、本件登録実用新案に係る考案の技術的範囲に属するとするのが相当である。
よって、結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2000-09-21 
出願番号 実願平2-62905 
審決分類 U 1 2・ 1- YA (C02F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 斉藤 信人  
特許庁審判長 沼沢 幸雄
特許庁審判官 野田 直人
山田 充
登録日 1996-08-20 
登録番号 実用新案登録第2516556号(U2516556) 
考案の名称 スカム処理装置  
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