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審決分類 審判    A47J
管理番号 1032394
審判番号 無効2000-40001  
総通号数 17 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2001-05-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-12-28 
確定日 2000-10-23 
事件の表示 上記当事者間の登録第3034237号実用新案「鍋」についての実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 登録第3034237号実用新案の明細書の請求項3に係る考案についての登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1.手続の経緯
(1)本件登録第3034237号実用新案の請求項1に係る考案乃至請求項5に係る考案は、平成8年7月31日に出願され、平成8年11月20日にその考案について登録実用新案の設定登録がされたものである。
(2)これに対し、請求人明道株式会社より、本件登録実用新案の請求項1に係る考案(以下、「本件の請求項1に係る考案」という。)乃至請求項3に係る考案(以下、「本件の請求項3に係る考案」という。)の登録実用新案について無効審判の請求がなされた。
(3)その後、本件の請求項1及び請求項2を削除する訂正がなされた。
2.本件考案
本件の請求項3に係る考案は、実用新案登録請求の範囲の請求項3に記載された事項によって特定される以下のとおりのものである。
「【請求項3】前記蓋体の最大厚さが前記鍋本体の最大厚さよりも大きいことを特徴とする請求項2記載の鍋。」
そして、請求項1及び請求項2には、以下のように記載されている。
「【請求項1】底面部と前記底面部から連続する側壁部と前記側壁部の上縁に形成された開口部とを有し前記側壁部の上部外周に取手を有する鍋本体と、前記鍋本体の開口部に嵌合する蓋体とからなる鍋において、前記蓋体が平坦な頂面部と前記頂面部の外周に形成された側部とからなり、前記側部に取手を有するとともに蓋体の頂面部に摘みを有しないことを特徴とする鍋。
【請求項2】前記蓋体の頂面部の内面側に凹凸を有することを特徴とする請求項1記載の鍋。」
3.請求人の主張
請求人は、本件の請求項3に係る考案は、甲第2号証の1?8、甲第3号証の1?3、甲第4号証の1?4及び甲第6号証の1?4に記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものであり、本件の請求項3に係る考案についての登録実用新案は無効とされるべきものである旨主張し、証拠方法として下記の甲第2号証の1?8、甲第3号証の1?3、甲第4号証の1?4、甲第5号証の1?4及び甲第6号証の1?4を提出している。
甲第2号証の1?8:「シャディ’95総合板(販促版付)」(シャディ(株)、1955年発行)抜粋
甲第3号証の1?3:「ムックス・ゆう」(住宅新報社出版局、昭和51年12月10日発行)抜粋
甲第4号証の1?4:「とーげい ギフトカタログVol.6 B COLLECTION 有効期間1994.-1995.6」((協)日本陶芸チェーン発行)抜粋
甲第5号証の1?4:「'94Golden Gift ORIGINAL CATALOG No.19」((株)シンワ(平松)発行)抜粋
甲第6号証:「1994 GIFT CATALOGUE No.69」(アピデ(株)企画(塚本)発行)抜粋
4.被請求人の主張
一方、被請求人は、本件審判の請求は成り立たないとし、その理由として、
本件の請求項3に係る考案に関し、甲第2号証の1?8、甲第3号証の1?3、甲第4号証の1?4及び甲第6号証の1?4のいずれにも、蓋体の最大厚さと鍋本体の最大厚さとの関係について何ら開示がなく、蓋体の最大厚さが鍋本体の最大厚さよりも大きい事項についても何ら開示がなく、また示唆するものがない。そして、本件の請求項3に係る考案は、上記甲各号証に記載のない「前記蓋体の最大厚さが前記鍋本体の最大厚さよりも大きいことを特徴とする」という事項を具備することにより、「前記蓋体の最大厚さが前記鍋本体の厚さよりも大きいものであるので、蓋体における単位面積当たりの蓄熱量が大きくなるため肉や魚が早く焼け、かつ焦げにくくなっている。」という作用効果を奏するものであるから、本件の請求項3に係る考案は、上記甲各号証に記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとすることができない。
旨主張する。
5.甲各号証に記載の事項
5-1 甲第2号証の1?8
(1)本件の出願前に頒布された刊行物である上記甲第2号証の1?8の第432頁(甲第2号証の3,5、6)には、万能調理鍋(商品番号432ー17、商品番号432-25、商品番号432-33)が写真掲載されている。そして、上記万能調理鍋は、その掲載された写真からみて、底面部と底面部から連続する側壁部と側壁部の上縁に形成された開口部とを有し側壁部の上部外周に取手を有する鍋本体と、鍋本体の開口部に嵌合する蓋体とからなる鍋において、蓋体が平坦な頂面部と頂面部の外周に形成された側部とからなり、側部に取手を有するとともに蓋体の頂面部に摘みを有しない構成とされていることが窺える。
また、その説明中の記載及び掲載された写真からみて、蓋を「焼く」、「炒める」ことに使用することが窺える。
(2)甲第2号証の1?8の第433頁(甲第2号証の3、4、5)の上段に「重厚アルミキャスト(鋳物)鍋 かしこい利用法」、その下方に「味わい鍋」と表記され、「煮る、ゆでる、揚げる、蒸す、炒める、焼く」、「極厚5mmのキャスト製、蓄熱にすぐれています。」と記載され、(イ)商品番号433-21(深型鍋22cm)、(ロ)同4333-30(特深鍋22cm)、(ハ)同433-48(角型鍋24cm)が写真掲載され、また、その特長として「重い蓋で圧力効果・調理時間が短縮。」と記載されている。そして、上記(イ)、(ロ)、(ハ)の鍋は、その掲載された写真からみて、底面部と底面部から連続する側壁部と側壁部の上縁に形成された開口部とを有し側壁部の上部外周に取手を有する鍋本体と、鍋本体の開口部に嵌合する蓋体とからなる鍋において、蓋体が頂面部と頂面部の外周に形成された側部とからなり、側部に取手を有するとともに蓋体の頂面部に摘みを有しない構成とされていることが窺える。
(3)また、上記商品番号(ハ)433ー48(角型鍋24cm)の鍋は、その掲載された写真からみて、蓋体の頂面部の内側に凹凸部が複数形成されていることが窺える。そして商品の説明に、「揚げる、煮るetc.蓋には筋目が入って焼き目がきれいにつきます」と記載されている。
5-2 甲第3号証の1?3
本件の出願前に頒布された刊行物である上記甲第3号証の1?3の第44頁(甲第3号証の2)には、「特殊な鍋」のタイトルのもと、「3 リンゴとさつまいもの重ね煮」の説明中、「圧力鍋と比較的よく似ている無水鍋ですが、むしろ圧力鍋よりも普及している思われます。ふたが厚手にできているため、フライパンがわりにすることも可能です。」と記載され、その無水鍋の写真が掲載されている。そして、上記無水鍋は、その掲載された写真からみて、底面部と底面部から連続する側壁部と側壁部の上縁に形成された開口部とを有し側壁部の上部外周に取手を有する鍋本体と、鍋本体の開口部に嵌合する蓋体とからなる鍋において、蓋体が平坦な頂面部と頂面部の外周に形成された側部とからなり、側部に取手を有するとともに蓋体の頂面部に摘みを有しない構成とされていることが窺える。
5-3 甲第4号証の1?4
本件の出願前に頒布された刊行物である上記甲第4号証の1?4中の甲第4号証の3の上段には、「HOKUA」商品番号「H6-174-04」として、キッチン万能鍋25cmが写真掲載されている。この万能鍋は、その掲載された写真からみて、底面部と底面部から連続する側壁部と側壁部の上縁に形成された開口部とを有し側壁部の上部外周に取手を有する鍋本体と、鍋本体の開口部に嵌合する蓋体とからなる鍋において、蓋体が平坦な頂面部と頂面部の外周に形成された側部とからなり、側部に取手を有するとともに蓋体の頂面部に摘みを有しない構成とされていることが窺える。
5-4 甲第5号証の1?4
本件の出願前に頒布された刊行物である上記甲第5号証の1?4の第29頁(甲第5号証の2)には、申込番号294-71としてミラノパスタポットセットが写真掲載されている。そして、このミラノパスタポットセットは、底面部と底面部から連続する側壁部と側壁部の上縁に形成された開口部とを有し側壁部の上部外周に取手を有する鍋本体と、鍋本体の開口部に嵌合する蓋体とからなる鍋において、蓋体が頂面部と頂面部の外周に形成された側部とからなり、側部に取手を有するとともに蓋体の頂面部に摘みを有しない構成とされていることが窺える。
5-5 甲第6号証の1?4
本件の出願前に頒布された刊行物である上記甲第6号証の1?4の第264頁(甲第6号証の2)には、申込番号「1264-044」万能調理両手鍋(24cm)及び申込番号「1264-052」万能調理両手鍋(22cm)が写真掲載されている。そして、上記2種類の鍋は、掲載された写真からみて、底面部と底面部から連続する側壁部と側壁部の上縁に形成された開口部とを有し側壁部の上部外周に取手を有する鍋本体と、鍋本体の開口部に嵌合する蓋体とからなる鍋において、蓋体が頂面部と頂面部の外周に形成された側部とからなり、側部に取手を有するとともに蓋体の頂面部に摘みを有しない構成とされていること、蓋体は裏返しにして肉及びケーキ等を焼くこともできる構成であることが窺える。
6.対比
本件の請求項3は、請求項2を引用し、請求項2は、さらに請求項1を引用して記載されたものであるから、本件の請求項3に係る考案を特定する事項は、請求項1に係る考案を特定する事項及び同じく削除された請求項2に係る考案を特定する事項を含むものである。
ところで、上記請求項1に係る考案を特定する事項である「底面部と前記底面部から連続する側壁部と前記側壁部の上縁に形成された開口部とを有し前記側壁部の上部外周に取手を有する鍋本体と、前記鍋本体の開口部に嵌合する蓋体とからなる鍋において、前記蓋体が平坦な頂面部と前記頂面部の外周に形成された側部とからなり、前記側部に取手を有するとともに蓋体の頂面部に摘みを有しないことを特徴とする鍋」は、上記5-1(1)で指摘した甲第2号証の1?8、上記5-2で指摘した甲第3号証の1?3及び上記5-5で指摘した甲第6号証の1?4にも記載されているように従来周知であり、しかも、上記甲第2号証の1?8、甲第3号証の1?3及び甲第6号証の1?4に記載された鍋は、いずれも、その蓋体を焼きもの等に使用できるようになっている。
そこで、本件の請求項3に係る考案と上記従来周知の鍋に係る考案(以下、「従来周知の考案」という。)を対比すると、両者は、次の点で相違する。
イ.本件の請求項3に係る考案は、蓋体の頂面部の内面側に凹凸を有するのに対し、上記従来周知の考案は、そのようになっていない点。
ロ.本件の請求項3に係る考案は、蓋体の最大厚さが鍋本体の最大厚さよりも大きいのに対し、上記従来周知の考案は、その点が明らかでない点。
7.判断
上記相違点イ、ロについて検討する。
(1)相違点イについて
上記5-1(3)で指摘したように、甲第2号証の1?8の第433頁には、底面部と底面部から連続する側壁部と側壁部の上縁に形成された開口部とを有し側壁部の上部外周に取手を有する鍋本体と、鍋本体の開口部に嵌合する蓋体とからなる鍋において、蓋体が頂面部と頂面部の外周に形成された側部とからなり、側部に取手を有するとともに蓋体の頂面部に摘みを有しない構成とされた鍋に関し、蓋体を焼きものに使用する際、焼き目がきれいになるように蓋体の頂面部の内面側に凹凸を設けるようにした点が記載されている。
そして、上記従来周知の考案及び甲第2号証の1?8の第433頁に記載されたものは、底面部と底面部から連続する側壁部と側壁部の上縁に形成された開口部とを有し側壁部の上部外周に取手を有する鍋本体と、鍋本体の開口部に嵌合する蓋体とからなる鍋において、蓋体が頂面部と頂面部の外周に形成された側部とからなり、側部に取手を有するとともに蓋体の頂面部に摘みを有しない構成とし、蓋体を焼きものに使用できるようにした鍋の点で共通の技術分野に属するから、上記従来周知の考案の蓋体に甲第2号証の1?8の第433頁に記載された上記事項を適用して、上記相違点イであげた本件の請求項3に係る考案を特定する事項のようにすることは、当業者であればきわめて容易になし得ることである。
(2)相違点ロについて
上記甲各号証には、被請求人が主張するように、蓋体の最大厚さを鍋本体の最大厚さよりも大きくする点について、明記するところはない。
しかしながら、底面部と底面部から連続する側壁部と側壁部の上縁に形成された開口部とを有し側壁部の上部外周に取手を有する鍋本体と、鍋本体の開口部に嵌合する蓋体とからなる鍋において、蓋体が頂面部と頂面部の外周に形成された側部とからなり、側部に取手を有するとともに蓋体の頂面部に摘みを有しない構成とし、蓋体を焼きもの等に使用できるようにした鍋に関して、甲第2号証の1?8の第433頁には、上記5-1で指摘したように、「極厚5mmのキャスト製、蓄熱にすぐれています。」、「重い蓋で圧力効果・調理時間が短縮」と記載され、また、甲第3号証1?3の第44頁には、上記5-2で指摘したように、「ふたが厚手にできているため、フライパンがわりにすることも可能です。」と記載されており、焼きもの等に使用できるようにした蓋体の厚さを厚くして蓄熱量を大きくすることは、従来周知の事項といえる。
そして、蓋体の厚さと鍋本体の厚さをどのように設定するかは、鍋の重量、容量、用途等を考慮して、当業者が適宜選択し得る設計上の事項といえること、また、上記従来周知の考案並びに甲第2号証の1?8の第433頁に記載されたもの及び甲第3号証1?3の第44頁に記載されたものは、底面部と底面部から連続する側壁部と側壁部の上縁に形成された開口部とを有し側壁部の上部外周に取手を有する鍋本体と、鍋本体の開口部に嵌合する蓋体とからなる鍋において、蓋体が頂面部と頂面部の外周に形成された側部とからなり、側部に取手を有するとともに蓋体の頂面部に摘みを有しない構成とし、蓋体を焼きものに使用できるようにした鍋の点で共通の技術分野に属するから、上記従来周知の考案の鍋の蓋体を上記甲第2号証の1?8の第433頁及び甲第3号証1?3の第44頁に記載されたように蓄熱量を大きくするため厚くし、その際、鍋本体を蓋体の厚さが鍋本体の厚さより大きくなるようなものとして、上記相違点ロであげた本件の請求項3に係る考案を特定する事項のようにすることは、当業者であればきわめて容易になし得ることである。
(3)本件の請求項3に係る考案の効果
本件の請求項3に係る考案の効果も、上記甲第2号証の1?8、甲第3号証の1?3及び甲第6号証の1?4に記載された事項から予測できる程度のものであって、格別のものではない。
8.むすび
以上のとおりであるから、本件の請求項3に係る考案は、上記甲第2号証の1?8、甲第3号証の1?3及び甲第6号証の1?4に記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、本件の請求項3に係る係る考案についての登録実用新案は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してされたものであり、同法37条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、実用新案法第41条の規定で準用する特許法第169条第2項の規定でさらに準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2000-08-09 
結審通知日 2000-08-18 
審決日 2000-08-29 
出願番号 実願平8-7536 
審決分類 U 1 121・ 121- ZA (A47J)
最終処分 成立    
特許庁審判長 大槻 清寿
特許庁審判官 岡田 和加子
滝本 静雄
登録日 1996-11-20 
登録番号 実用新案登録第3034237号(U3034237) 
考案の名称 鍋  
代理人 庄司 建治  

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