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審決分類 審判    B65B
管理番号 1032412
審判番号 無効2000-40005  
総通号数 17 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2001-05-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2000-01-31 
確定日 2000-11-09 
事件の表示 上記当事者間の登録第3041821号実用新案「粘性液体充填装置」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は請求人の負担とする。
理由 <1> 手続の経緯および本件考案
登録実用新案第3041821号は、平成9年2月14日に実用新案登録出願され、平成9年7月16日に設定登録がなされたものであって、その請求項1乃至3に係る考案は、出願当初の明細書および図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1乃至3に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】 高圧ガスを予め充填したスプレイ容器に、粘性液体を充填するための充填装置であって、
前記スプレイ容器のノズル部材を取り外した状態で、前記スプレイ容器の鍔部分に係合させて、前記スプレイ容器を前記充填装置のロック部材と連結して保持しうる円筒部材と、
前記円筒部材の内部に収容するのに適した全体的な大きさを有し、前記スプレイ容器のノズル部材を取り外して露出したオリフィス管の上に嵌合しうる管部と、その上方に連接したシリンダ部と、更にその上方に連接し上から流し込まれる前記粘性液体を保持するのに適した収容部とよりなるライナと、
前記シリンダ部に挿入されてピストン運動しうるピストン棒と、
前記ピストン棒に対してピストン運動を与えることにより、前記オリフィス管を介して、少なくとも前記シリンダ中に存在する粘性液体をスプレイ容器へ圧入するのに適したハンドル作動機構部と、
を含む粘性液体充填装置。
【請求項2】 前記ピストン棒が、その下端に穿設された孔部と、前記孔部からピストン棒の長さ方向に伸びて前記ライナの収容部に連通しうる流通路とを備え、前記孔部にチェック機能を果たすボールを挿入することにより前記シリンダ部内におけるピストン棒の復帰運動時に前記収容部からピストン棒の下方に至る塗料流通路を与えるようにしたことを特徴とする請求項1記載の粘性液体充填装置。
【請求項3】 前記ハンドル作動機構部を、セクタギア等を含む歯車兼てこ機構と、前記セクタギアに歯合して回動しうる回転動力源とを含む機構と置換してなることを特徴とする請求項1または2記載の粘性液体充填装置。」

その後、有限会社メイコウより実用新案登録無効審判の請求がなされ、平成12年2月14日に答弁書が提出されるとともに訂正がなされたものである。そして、該訂正により、請求項1および請求項3が削除された。
当審は、上記答弁書を請求人に送付して意見を求めたが、請求人からは何の応答もなかった。

<2> 請求人の主張
請求人は、本件請求項2に係る考案について、該考案は甲第3号証乃至甲第7号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第37条第1項第2号に該当し、該考案に係る実用新案登録は無効にされるべきものである旨主張している。

<3> 甲各号証刊行物の記載
甲第3号証の特公昭51-23727号公報には次の事項が記載されている。
(a)「シリンダーの作動部分を構成するライナー45の円筒部分49の内面内で密に作動嵌合する様な寸法にされたピストン60は、溜め46から材料を罐10内に圧入するために利用される。第3図と、第4図に示した実施例において、ピストンはその全長に亘り均一な直径の棒から成り、棒の下端は61に示す様にライナーの円錐形勾配の部分51に一致する形をなしている。棒の上方部はバヨネル拘止63によって溜め42の上端に取外しできる様に固定されたシリンダーヘッド62内を案内される。」(第4頁右欄第31?41行、なお、第3、4、9図参照)
(b)「それ自体適正なスプレーにするためには粘性の強過ぎるペイント又は同様物のための、排出弁を具備するエーロゾル容器において、その内部に予じめペイント又は同様物をスプレーにして放出するために望ましい量の溶剤と推進剤を封入し、事後、使用者が使用目的に応じて選択せるペイント又は同様物を前記排出弁を通じて容器内に注入し得るものとしたエーロゾル容器の充填方法」(第7頁左欄第6行?右欄第4行;特許請求の範囲)
甲第4号証の特公昭42-17711号公報には次の事項が記載されている。
(c)「此の発明は、エーロゾルの形で配剤できるペンキ、ラッカ、又は他の物質等の配剤できる製品が缶の内容物を排出するために使用される液化された推進ガスを既に収容しているエーロゾル缶内に噴射出来る改良された装置に係る。」(第1頁左欄第27?31行)
(d)「頂板15はまたシリンダ機構30を支持し、シリンダ機構30はシリンダヘッド31とピストン32を持ち、ピストン32はヘッド31と組合って滑動出来又ピン33に依ってハンドル23に連結されている。夫故ピストンはハンドル23の操作に依ってシリンダ内を往復出来る。」(第2頁左欄第25?31行、なお、第1図参照)
(e)「拘止ブッシュ53は半径フランジ部分58がキャップ72と係合する位置に達した后、滑りスリーブ54は解放さればね55のばね力により下方に動かされ遂に載頭錐面70はボール64を通しボールは第3図で最も良く判るように円筒部分60に依って夫等の外方位置に拘止される。今やボール64は外方位置に係合固定されるから、ボールは確実にC字形部分75に係合し、かくして缶11をシリンダ機構30に拘止できる。」(第3頁左欄第7?15行、なお、第2、3図参照)
(f)「第2図に示す様に、プラスチックライナ40はなるべくため部分81を持つことが望まれ、その下方部は図示の如くシリンダ機構30のため部分43の高さの上方にのび夫故ライナはシリンダヘッド31に依り上方移動しない様に保持される。ライナは又連結部分82を備え之は内方にのびる環状突出部83を備え之はO-リングの様に作用し弁11aの外面と封鎖嵌合をする。
連結部分82とため81間には、シリンダ部分90があり、之は円筒部分44内の円筒孔内に密に嵌合し、ピストン32が中で作動できるようになっている。シリンダ部分90の上端には円錐形部分94と95とがあり、これらはシリンダ部分とため部分81を連結するものである。封鎖リング87と88とがシリンダ部分90の頂部に一体に形成されピストン32と有効な流体封鎖を作る。シリンダ部分90の底部には載頭円錐部99があり之はシリンダ部分90と連結部分82を連結するものである。封鎖リング87と88とを設ける以外はライナ自体は前記従来のライナと実質上同じ構造である。」(第3頁左欄第23?43行、なお、第2、3図参照)
甲第5号証の小野高麻呂著、「新ポンプ入門」、増補四訂版、株式会社ビジネス社、昭和52年年7月1日、P.28-29には図3・17の説明図とともに次の事項が記載されている。
(g)「(1)ピストンポンプ
最も古く発明されたポンプらしいポンプで、シリンダー内部のピストンを往復させる方式のポンプである。中学校で習ったことと思うが、その構造を次に説明しよう。
(1) まず、呼水をすると下部弁は閉って、シリンダー内に水が充満する。
(2) ハンドルを上げるとピストンは下がるが、このときピストン弁が開き、下部弁は閉ったままだから、シリンダー内の水はピストンの上部に移る。
(3) ハンドルを下げると、ピストンはピストン弁を閉じて上がってくるので、ピストン上部の水は吐水口から流れ出る。このとき下部弁は開いて、給水管の空気を吸い上げる。
(4) この動作を繰り返すと、給水管内の空気がなくなり、だんだんに井戸の水が給水管を上がってきて、遂にはピストン内に入ってくることになる。」(第28頁第24行?第29頁第2行)
甲第6号証の特公昭63-52234号公報には次の事項が記載されている。
(h)「シリンダ1の部分1bは第2入口管即ち入口25と出口26を備え、そしてピストン27を収容している。このピストン27はこれと一体形成されたピストンロッド28を有する。ピストン27は口29を備え、この口29には、ピストンの前側と後側との間の副流体の流通を制御する逆止弁30が設けられている。」(第4頁右欄第5?11行、なお、第1図参照)
(i)「操作において、充填サイクルの開始時にポンプは第1図に示されるような位置にあり、ここでシャトル弁33は下方位置にある。この状態から、ピストン27が上方へ動いてシリンダ1内の副流体の液圧を下げ、これによって逆止弁30が開かれる。ピストン27の上側に掛けられている圧力がその作動を助勢する。」(第4頁右欄第42行?第5頁左欄第4行、なお、第1、2図参照)
(j)「間もなくピストン27は下降し始め、従って逆止弁30が閉じられる。これによって2つのピストン9と27との間に副流体が閉込められるので、そこに液圧が生じ、この液圧がピストン27の運動をピストン9に伝達する。」(第5頁左欄第31?35行、なお、第3、4図参照)
甲第7号証の工業教育研究会編、「図解機械用語辞典」、第3版、日刊工業新聞社、1993年11月30日、P.315には「セクタ歯車」についての説明事項が記載されている。

<4> 対比・判断
ここで、本件の請求項2に係る考案(以下、「本件考案」という。)と上記甲第4号証刊行物に記載された考案(以下、「甲4考案」という。)とを対比する。
上記記載(c)より、甲4考案も、「高圧ガスを予め充填したスプレイ容器に、粘性液体を充填するための充填装置」に関する考案であることが認められる。また、甲4考案において、上記記載(d)の「ハンドル23」が本件考案の「ハンドル作動機構部」に相当し、上記記載(e)の「キャップ72」が本件考案の「スプレイ容器の鍔部分」に相当し、上記記載(e)の「拘止ブッシュ」「ボール64」等が本件考案の「ロック部材」に相当する。さらに、上記記載(f)の「プラスチックライナ40」「連結部分82」「シリンダ部分90」「ため部81」「ピストン32」が、それぞれ、本件考案の「ライナ」「管部」「シリンダ部」「収容部」「ピストン棒」に相当するから、両者は、
「高圧ガスを予め充填したスプレイ容器に、粘性液体を充填するための充填装置であって、
前記スプレイ容器のノズル部材を取り外した状態で、前記スプレイ容器の鍔部分に係合させて、前記スプレイ容器を前記充填装置のロック部材と連結して保持しうる円筒部材と、
前記円筒部材の内部に収容するのに適した全体的な大きさを有し、前記スプレイ容器のノズル部材を取り外して露出したオリフィス管の上に嵌合しうる管部と、その上方に連接したシリンダ部と、更にその上方に連接し上から流し込まれる前記粘性液体を保持するのに適した収容部とよりなるライナと、
前記シリンダ部に挿入されてピストン運動しうるピストン棒と、
前記ピストン棒に対してピストン運動を与えることにより、前記オリフィス管を介して、少なくとも前記シリンダ中に存在する粘性液体をスプレイ容器へ圧入するのに適したハンドル作動機構部と、
を含む粘性液体充填装置。」
である点で一致し、次の点で相違する。
(相違点)本件考案においては、「ピストン棒が、その下端に穿設された孔部と、前記孔部からピストン棒の長さ方向に伸びて前記ライナの収容部に連通しうる流通路とを備え、前記孔部にチェック機能を果たすボールを挿入することにより前記シリンダ部内におけるピストン棒の復帰運動時に前記収容部からピストン棒の下方に至る塗料流通路を与えるようにした」構成を有するのに対し、甲4考案においては、ピストンがそのような構成を備えていない点。
上記相違点について検討する。
甲第3号証刊行物には、記載(a)(b)から認められるように、本件考案の甲第4号証との一致点に係る構成は開示されているが、上記相違点に係る構成については、第1?9図を参酌しても記載も示唆もされているとはいえない。
甲第6号証刊行物には、第1?4図等を参酌すれば、上記(h)(i)(j)には、ピストン棒自体の構成にではないにしても、ピストン自体の一部が「その下端に穿設された孔部と、前記孔部からピストン棒の長さ方向に伸びて前記ライナの収容部に連通しうる流通路とを備え、前記孔部にチェック機能を果たすボールを挿入することにより前記シリンダ部内におけるピストン棒の復帰運動時に前記収容部からピストン棒の下方に至る流体流通路を与えるようにした」構成を有している点が記載されているものと認められ、ピストンが該構成を備える点は公知の技術と認める。
しかしながら、該公知技術が採用されているポンプにおいては、流体を押し出すためにピストンと押し出される流体の位置関係を変えることが、ポンプを機能させる上で欠くことができない事項であり、該公知技術はこの「流体を押し出すためにピストンと押し出される流体の位置関係を変える」ための必須の構成としてピストンに採用されているものである。これに対し、本件考案においては、シリンダ構造が内径の異なる「管部」「シリンダ部」「収容部」からなり、それぞれの内径が異なるが故に、ピストン下端が「シリンダ部」上端より上方に位置したときに「収容部」に溜められていた液体が「シリンダ部」に流れ込むことによりポンプとして機能させること、すなわち、ピストンと押し出される流体の位置関係を変えること、が可能なものであり、このようなシリンダ構造のものにおいては、上記甲第3,4号証に記載されているように、従来は弁や流路を備える構成ではなかったのである。そして、本件考案は、「ピストン棒を引き抜くときに無用な負荷を与えない」ことを目的として、ピストン棒に上記相違点で示した構成を採用したものであるから、該公知技術とは技術の前提を異にし、また、課題、目的も異なるものである。したがって、該公知技術を、上記甲4考案又は甲第3号証刊行物に記載された考案に適用して本件考案を構成することが、きわめて容易であるということはできない。
甲第5号証刊行物に記載された考案も、上記記載(g)等からも認められるように、弁や流路を必須の構成とするピストンポンプに係るものであり、甲第6号証に記載された考案と同様に本件考案の進歩性の判断に影響を及ぼすものではない。
また、甲第7号証は「セクタ歯車」に関するものであり、上記相違点と関係がなく、進歩性の判断に影響を与えない。

<5> むすび
以上のとおり、本件請求項2に係る考案は請求人の提出した甲第3乃至7号証刊行物に記載の考案から当業者がきわめて容易に考案をすることができたものということができないから、請求人の主張を採用できない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2000-08-17 
結審通知日 2000-08-29 
審決日 2000-09-18 
出願番号 実願平9-654 
審決分類 U 1 111・ 121- YA (B65B)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 佐藤 雪枝
特許庁審判官 鈴木 美知子
森林 克郎
登録日 1997-07-16 
登録番号 実用新案登録第3041821号(U3041821) 
考案の名称 粘性液体充填装置  
代理人 津国 肇  
代理人 玉田 修三  
代理人 篠田 文雄  
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