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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04B
管理番号 1032419
審判番号 審判1999-2768  
総通号数 17 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2001-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-02-17 
確定日 2000-11-21 
事件の表示 平成 5年実用新案登録願第 5299号「鉄骨ツーバイ工法」拒絶査定に対する審判事件[平成 8年 4月16日出願公開、実開平 8- 651]について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 (一)手続きの経緯・本願考案
本願は平成5年1月4日の出願であって、本願の請求項1?5に係る考案は、出願当初の明細書の実用新案登録請求の範囲に記載された次のとおりのものである。
【請求項1】床の軸組に対して(1)[明細書の記載は丸数字の1であるが、以下丸数字は「(1)」のように記載する。]建物の床の軸組を軽量形鋼で木造と同じ組み方で造る事です。軽量鋼でないと、振動ドリルの鋼板ビス・コンプレッサーの針等が簡単に打てません。又、重量が重くなるので、簡単に持ち運びが出来ません。経費が高くつきます。床組み上の仕上げは従来と同じ事です。利点としては、間仕切基礎がいらなくなりましす。白蟻の被害がなくなります。腐食・錆に対しても木より強いです。不燃構造となります。
【請求項2】壁の軸組に対して(1)建物の壁の軸組を鉄骨でして木材を使いません。スレート等の壁材に対しては従来使われていますが、今回の申請は住宅等の壁に使用する事です。ピッチを約450mmぐらいに組み、(縦、横どちらでもよい。)木造軸組と動(同の誤字と思われる。)じように筋カイを圧縮側に入れて、間柱の間に切り込みます。そして仕上がりは合板等を釘等で取り付けて、仕上がりは従来とまったく同じ事をします。今回の申請では特に住宅・ビル等の壁で組む事を目的としています。軸組のプレハブ化です。
【請求項3】(1)従来の天井軸組に対して、鋼製下地材及び木造組で天井下地を作って有りますが、従来の鋼製下地は、部材が剰りにも薄いので(0.5-0.8mm)人が上に乗って仕事をする事が出来ません。木造の場合は、不燃になりません。費用的には安くできるので、強度がいるときにはこの方法が良いと思います。
【請求項4】屋根の軸組に対して(1)従来は母屋迄鉄骨で製作して、タル木・屋根板を、木造で製作してあります。この考案は、母屋を多く入れて、(従来ピッチは約800mm、今回請求はピッチ約450mm)タル木を使用しない事です。屋根板はコンバネ等の合板を使用します。仕上がりは瓦屋根にも使用できます。
【請求項5】請求項(1)(2)(3)(4)を組み合わせ、軸組をまったく木材を使用しない。仕上がりは従来の木造住宅とまったく同じ住宅あるいは事務所・ビル等を建築する事です。プレハブ化が飛躍的に向上します。この申請の建物が多く建てられると木材の消費が少なくなり、地球の環境に良い影響を与えます。近い将来、法律で木材の消費をおさえる事になると思います。
(二)引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された実公昭61-5463号公報(以下、「引用例1」という。)には、例えば、次のような記載がある。
(1)「本考案は、床又は屋根等の下地加工を簡易、迅速かつ正確に形成でき軽量鉄骨構造のプレハブ家屋においてとくに好適に採用しうるパネル取付装置に関する。」公報第1頁左欄。
(2)「第1?2図において、本考案のパネル取付装置1は、H字状につづり合わせた軽量形鋼材を用いた大引等の横架材Aに取付けられる固定金具3と、枠材4の両面に面材5を添設したパネル2,2とを具え、固定金具3は基板6の両側に透孔7を有する側板8,8を立設させかつ該側板8,8上端を外方へ水平に折曲げ上保持片9,9を形成するとともに、側板8,8間に垂直な補強リブ10を横設する。」公報第1頁右欄。
前記(1)及び(2)の記載事項と図面の記載からみて、引用例1には、床軸組において、H字状の軽量型鋼からなる大引等の横架材を一定間隔ごとに配置した床軸組が記載されている。
同じく、原査定の拒絶の理由に引用された特開昭49-97421号公報(以下、「引用例2」という。)には、例えば、次のような記載がある。
(3)「本発明は、0.6?2.2mmの薄金属板を曲成して夫々柱材(1)、胴差(2)等の構造材(A)を形成し、複数本の柱材(1)上に胴差(2)の下部凹所(3)を嵌着し、柱材(1)の外面部に肉厚の厚い合板(4)を釘着して成ることを特徴とする家屋に係るものであってその目的とするところは組立が容易で強度の強い家屋を提供するにある。」公報第1頁左欄。
(4)「本発明は、0.6?2.2mmの薄金属板を曲成して夫々柱材(1)、胴差(2)等の構造材(A)を形成してあるので軽くてあつかい易く強度が強固であるのみならず各部材の材料を低減化できしかも各部材を同一材料にて形成でき、さらに厚みが0.6?2.2mmの薄金属板を曲成したものであるため合板等を構造材(A)に簡単に釘着できるものであり、複数本の柱材(1)上に胴差(2)の下部凹所(3)を嵌着するものであるから木材のようにほぞ加工を施すことなく柱材(1)と胴差(2)とを簡単に一体化組立できて壁骨組などを現場で簡単迅速に組立施工できるものであり、柱材(1)の外面部に肉厚の厚い合板(4)を釘着してあるので薄金属板を曲成した柱材(1)を用いても簡単に耐力壁を組立形成できるものであって構造的に強固な家屋を簡単迅速に形成できるという利点がある。」公報第2頁右上欄?第2頁左下欄。
前記(3)及び(4)の記載事項と図面の記載からみて、柱材、胴差等の構造材を組立てて構築される壁骨組において、柱材、胴差等の構造材を0.6?2.2mmの薄金属板を曲成して形成し、柱材の外面部に肉厚の厚い合板を釘着してなる壁骨組が記載されている。
同じく、原査定の拒絶の理由に引用された特開昭62-99538号公報(以下、「引用例3」という。)には、例えば、次のような記載がある。
(5)「柱と土台(または桁)に固着される中空の直角3角形状を有する金属材の曲り直し筋交い材を基準として、前記柱の端部と土台(または桁)を結合せしめると共に前記曲り直し筋交い材の斜辺を壁部の筋交いとしたことを特徴とする木造建築における曲り直し筋交い工法。」公報第1頁左欄。
前記(5)の記載事項と図面の記載からみて、引用例3には、建物の柱と柱の間に金属製筋交い材を配置した構成が記載されている。
同じく、原査定の拒絶の理由に引用された実願昭60-150795号(実開昭62-59212号)のマイクロフィルム(以下、「引用例4」という。)には、例えば、次のような記載がある。
(6)「第1図ないし第2図に本考案天井構造の実施例を示している。1は断面H型鋼、L型鋼等の軽量鉄骨で形成された梁またはトラスである。梁またはトラス1は複数本が所定の間隔で配設されている。2は溝型鋼で形成された野縁受けであり、該野縁受け2は吊り金具3を用いて梁またはトラス1の下部に吊下固定せられる。」明細書第4頁。
(7)「野縁16は両側面に凹溝16a、16aが形成された閉じた方形断面を有する鋼管からなる。」公報第6頁。
前記(6)及び(7)の記載事項と図面の記載からみて、引用例4には、断面H型鋼、L型鋼等の軽量鉄骨で形成された梁またはトラスを複数本所定の間隔で配設し、前記梁またはトラスの下部に吊り金具を用いて溝型鋼で形成された野縁受けを吊下固定し、前記野縁受けに天井板を支持する方形断面の鋼管からなる野縁を支持した天井構造が記載されている。
同じく、原査定の拒絶の理由に引用された実願昭60-75280号(実開昭61-189906号)のマイクロフィルム(以下、「引用例5」という。)には、例えば、次のような記載がある。
(8)「この考案は、主に軽量鉄骨材からなる切妻形式の小屋組に関する。」明細書第1頁。
(9)「以下、この考案を図示する一実施例によって説明すると、小屋組1はH形断面や角形断面等をなす軽量鉄骨材からなる小屋梁2,束柱3,母屋梁4,桁梁5,垂木梁6等から構成されている。小屋梁2は後述する桁梁5のうち左右両端の桁梁5,5(軒桁という)間に水平に架設されている。また、小屋梁2は桁梁5の長手方向に一定間隔おきに架設されている。束柱3は小屋梁2の上に小屋梁2の長手方向に一定間隔おきに建付けられ、かつ中央の束柱3が一番長く、左右両端方向の束柱3,3が徐々に短く形成されている。母屋梁4は前後束柱3,3の上端部間に架設され、かつ小屋梁2の長手方向に一定間隔おきに平行に架設されている。桁梁5は前後小屋梁2,2間に架設され、かつ小屋組1の間口の大きさに応じ必要本数が架設されている。桁梁5のうち左右両端の桁梁が軒桁である。垂木梁6,6は各小屋梁2の上に建付けられた束柱3,3の上端部間に斜めに架設され、合掌を構成している。このように構成された小屋組1において母屋梁4,4と垂木梁6,6によって区画された枠内には鉄筋等からなる勾配ブレース7が対角線状に架設されている。また、母屋梁4と桁梁5と束柱3,3とによって区画された枠内には鉄筋等からなる小屋裏ブレース8が架設されている。符号9はALC板等からなる屋根パネルである。」明細書第3頁?第4頁。
前記(8)及び(9)の記載事項と図面の記載からみて、引用例5には、小屋組を、H形断面や角形断面等をなす軽量鉄骨材からなる小屋梁,束柱,母屋梁,桁梁,垂木梁等から構成し、小屋組の上にALC板等からなる屋根パネルを設置する構成が記載されている。
(三)対比・判断
先ず、請求項1に係る考案と引用例1に記載の考案を対比する。
引用例1記載の考案における、「H字状の軽量型鋼からなる大引等の横架材を一定間隔ごとに配置した床軸組」は、請求項1に係る考案における、「床の軸組に対して建物の床の軸組を軽量形鋼で木造と同じ組み方で造る事」に対応するものであるから、請求項1に係る考案は、引用例1に記載された考案である。
次に、請求項2に係る考案と引用例2に記載の考案を対比する。
引用例2に記載の考案における、「柱材、胴差等の構造材を組立てて構築される壁骨組」は、請求項2に係る考案における、「建物の壁の軸組」に対応するものであり、引用例2に記載の考案における、「柱材の外面部に肉厚の厚い合板を釘着」は、請求項2に係る考案における、「仕上がりは合板等を釘等で取り付け」に対応するものであり、請求項2に係る発明と引用例2に記載の発明は、次の相違点1及び2において両者の構成は相違する。
相違点1:請求項2に係る考案においては、壁の軸組を鉄骨としたのに対して、引用例2に記載の考案においては、壁の軸組を薄金属板を曲成して形成したものとした点。
相違点2:請求項2に係る考案においては、軸組のピッチを450mmとし、筋カイを圧縮側に入れるようにしたのに対して、引用例2に記載の考案においては、軸組のピッチの限定及び筋カイをいれるという構成がない点。
相違点1について検討すると、建築用構造材として鉄骨は従来周知であり、引用例2に記載の壁の軸組の部材に代え、前記周知の事項を適用して前記相違点1にあげた請求項2に係る考案の構成のようにすることは当業者がきわめて容易になしえる程度のものである。
相違点2について検討すると、壁軸組の縦又は横部材のピッチは、建物に必要な強度に応じて適宜設定されるものであり、建築の壁の軸組において圧縮側に筋カイを配置することは引用例3に記載されているように周知の事項であり、引用例2に記載の考案に、前記周知事項を適用して、前記相違点2にあげた請求項2に係る考案のようにすることは当業者がきわめて容易になしえる程度のものである。
次に、請求項3に係る考案と引用例4に記載された考案を対比する。
引用例4に記載の考案における、「断面H型鋼等の軽量鉄骨で形成された梁またはトラスを複数本が所定の間隔で配設し、前記梁またはトラスの下部に吊り金具を用いて溝型鋼で形成された野縁受けを吊下固定し、前記野縁受けに天井板を支持する方形断面の鋼管からなる野縁を支持した天井構造」は、天井軸組を軽量鉄骨で形成するものであり、引用例4に記載の考案には、天井の軸組に人が乗ることができるかどうかの記載はないが、人が天井軸組上で作業する必要があるのであれば、その荷重に耐え得るように各部材の強度を設定することは当然のことであり、結局、請求項3に係る考案は、引用例4に記載された考案である。
続いて、請求項4に係る考案と引用例5に記載の考案を対比する。
引用例5に記載の考案における、「小屋組を、H形断面や角形断面等をなす軽量鉄骨材からなる小屋梁,束柱,母屋梁,桁梁,垂木梁等から構成し」は、母屋梁、垂木梁を含む屋根軸組を軽量鉄骨材で構成するということであり、引用例5に記載の考案における、「母屋梁」及び「垂木梁」は、請求項4に係る考案における、「母屋」及び「タル木」に対応するものであり、また、母屋の配置ピッチを密にしてタル木を省略するようなことは、当業者が必要に応じてきわめて容易になしえる程度のものであり、また、屋根板をコンバネ等の合板またはALC板にすることはいずれも周知の事項であり、屋根板の上に瓦屋根を葺くことも周知の事項であるから、引用例5に記載の考案から、前記周知事項を考慮して、請求項4に係る考案の構成のようにすることは当業者がきわめて容易になしえる程度のものである。
最後に、請求項5に係る考案について検討する。
請求項5に係る考案は、請求項1?4に係る考案を組み合わせて、軸組にまったく木材を使用しないで住宅あるいは事務所・ビルを建築するものであるが、前記請求項1?4に対する判断で示したように、本願各考案の床、壁、天井、屋根の軸組の構成は、引用例に記載された考案でもしくは引用例に記載の考案から当業者が容易になしえるものであるから、請求項5に係る考案は、引用例1?5に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案することができたものと認められる。
(四)むすび
以上のとおりであるから、請求項1及び3項に係る考案は、実用新案法第3条第1項第3号に該当し、請求項2,4及び5に係る考案は実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2000-09-06 
結審通知日 2000-09-19 
審決日 2000-10-02 
出願番号 実願平5-5299 
審決分類 U 1 8・ 121- Z (E04B)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 住田 秀弘  
特許庁審判長 片寄 武彦
特許庁審判官 小野 忠悦
鈴木 憲子
考案の名称 鉄骨ツーバイ工法  

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