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審決分類 審判 一部無効 2項進歩性 無効としない E01F
管理番号 1032464
審判番号 審判1999-35613  
総通号数 17 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2001-05-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-10-29 
確定日 2001-01-05 
事件の表示 上記当事者間の登録第2149903号実用新案「縦型埋込柵柱」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第一 本件考案
本件登録第2149903号実用新案は、昭和63年5月27日に実用新案登録出願され、平成7年10月4日に実公平7-43147号公報として出願公告され、平成10年7月17日に設定登録がなされたものである。その請求項1に係る考案(以下、「本件考案」と言う。)は、明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】開口部A′を地表に表して垂直に埋設される外筒Aと、外筒Aに昇降自在に嵌装されたポールBとを備えた縦型埋込柵柱において、前記ポールBは、底部に垂直な枢着軸5を備え、この枢着軸5を介して、底部裏面に水平方向の回転を自在にした取付け部材6を抜脱不能に取り付け、この取付け部材6と前記外筒Aの内面との間に、ポールBの重力に見合った釣り合い定力を具えた定荷重ばねCを設けたことを特徴とす縦型埋込柵柱。」

第二 当事者の主張
一 請求人の主張
審判請求書の記載によれば、請求人は、甲第1号証を提出して、本件考案は、甲第1号証に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法3条2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであるとし、概略、以下の主張をしている。
すなわち、甲第1号証に記載されている定荷重昇降装置と本件考案を対比すると、甲第1号証に記載されたものにおいては、1縦型埋込柵柱ではない点、2「底部に垂直な枢着軸を備え、この枢着軸を介して、底部裏面に水平方向の回転を自在にした取付け部材を抜脱不能に取り付け」ていない点、3格別の作用効果を奏する「ポールの重力に見合った釣り合い定力を具えた定荷重ばねを設けた」点において相違すると主張している。しかし、上記におけるようなことはいずれも、甲第1号証に記載されている事項に基いて当業者がきわめて容易になし得た程度のことである。よって、本件考案の実用新案登録は、同法37条1項1号の規定により無効とすべきである。
甲第1号証:実公昭43-31789号公報

二 被請求人の主張
被請求人は、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求め、答弁書の記載によれば、概略、以下の反論をしている。
甲第1号証の考案は小型の家電製品の高さ調節のためのものであり、本件考案におけるような縦型埋込柵柱ではない。さらに、甲第1号証の考案では可動柱がブラケットに接続されていないのに対し、本件考案では枢着軸で抜脱不能に定荷重ばねの取付け部材とポールとを直接接続している。本件考案は、甲第1号証の考案からは予測できない効果を奏するものである。結局、本件登録実用新案は、甲第1号証に記載された考案に基いてきわめて容易になし得た考案ではないので、実用新案法3条2項の規定に該当するものではない。

第三 当審の検討
一 甲第1号証の記載事項
甲第1号証には、
1 「本考案は、扇風機、パーマネントドライヤ、マイクロホン、電灯スタンド等の如き角形、梯形、或いは丸形のスタンドの内部に角或は丸の柱を上下運動させて高さを調節するための昇降装置に係るものである。」(同公報1頁左欄16?20行)、

2 「之れをスタンドに組込む場合は第2図に示すように、スタンドの中へ挿入し、予め所定位置にあけられた左右対象の孔にネジ11を通し、固定板7のネジ孔9にねじ込んで固定する。可動柱12の下部はスタンド蓋13の中央孔と固定板7の中央孔を突抜け、ブラケット1の背部に乗せられる。このとき既に定荷重ばね4、4′は僅か引出された位置で固定板7に引掛けられているから、可動柱の全重量はこの定荷重ばね4、4′により完全にバランスされ、僅かな力を加えたけで図の様に押下げられる。」(同公報1頁右欄18?28行)、

3 「図中,1aはコの字形ブラケット、2a及び2a′は水平に並列してブラケットにとりつけられた軸、3a及び3a′はこの軸上に回転自在にとりつけた軸套、4a及び4a′はこの軸套に巻回された定荷重ばねを示す。定荷重ばねの端は鋲8aにより固定板7aにとりつけられる。これは第2図について説明したと全く同様にスタンド10内に設置され、その上に乗せられた可動柱にかゝる物体の重量をバランスする。」(同公報1頁右欄40行?2頁左欄8行)、

4 「物体を支持する可動柱はこの装置に固定されることなく乗せられるので、可動柱を自由に回転することができて、従来の如く可動柱を回転することによってばねを破損する虞れがなく、」(同公報2頁右欄2?5行)、

5 「上下に作動する可動柱を有するスタンドの昇降装置において、ブラケットに設けた軸に、定荷重ばねを巻回した軸套を回転自在に装着し、該定荷重ばねの端を固定板にとりつけて、該固定板をスタンド内に固定し、該可動柱を上記のブラケット上に乗せるようにした定荷重昇降装置。」(同公報2頁右欄9?14行、実用新案登録請求の範囲)、

6 第1?3図、
の記載があり、これら記載からみて、
「開口部を上方にして垂直に設けるスタンドと、スタンドに昇降自在に嵌装された可動柱とを備えた定荷重昇降装置において、可動柱は、底部裏面に水平方向の回転を自在にしたブラケットを取り付け、このブラケットとスタンドの内面との間に、可動柱の重力に見合った釣り合い定力を具えた定荷重はねを設けた定荷重昇降装置」
が記載されているものと認められる。

二 本件考案と甲第1号証に記載されたものとの対比、判断
1 対比
本件考案と甲第1号証に記載された考案とを対比すると、甲第1号証に記載された考案の「スタンド」、「可動柱」、「ブラケット」は、本件考案の「外筒」、「ポール」、「取付け部材」にそれぞれ相当し、両者は、
「開口部を上方にして垂直に設ける外筒と、外筒に昇降自在に嵌装されたポールとを備えた定荷重昇降装置において、ポールは、底部裏面に水平方向の回転を自在にした取付け部材を取り付け、この取付け部材と外筒の内面との間に、ポールの重力に見合った釣り合い定力を具えた定荷重はねを設けた定荷重昇降装置」
である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点1
本件考案は、「開口部を地表に表して垂直に埋設される外筒と、外筒に昇降自在に嵌装されたポールとを備えた縦型埋込柵柱」であるのに対し、甲第1号証には、開口部を上方にして垂直に設けるスタンド(外筒)と、スタンド(外筒)に昇降自在に嵌装された可動柱(ポール)とを備えた定荷重昇降装置の点は記載されているものの、本件考案におけるような、開口部を地表に表して垂直に埋設される外筒を有する縦型埋込柵柱に関するものではない点。
相違点2
本件考案は、「ポールは、底部に垂直な枢着軸を備え、この枢着軸を介して、底部裏面に水平方向の回転を自在にした取付け部材を抜脱不能に取り付け」ているのに対し、甲第1号証のものは、可動柱(ポール)の底部裏面に水平方向の回転を自在にしたブラケット(取付け部材)を取り付けるものの、本件考案におけるような、ポール(可動柱)の底部に垂直な枢着軸を備え、取付け部材(ブラケット)を抜脱不能に取り付けた構成を有していない点。

2 相違点に対する判断
(1) 相違点1について
本件考案の明細書中における従来例としての実開昭58-59821号公報とか、あるいは参考文献としての実公昭62-4566号公報等において、それぞれ「縦型埋込ポール」なり「地上へ出没自在の柱体」として記載されているものは、いずれも「開口部を地表に表して垂直に埋設される外筒と、外筒に昇降自在に嵌装されたポールとを備えた」構成を有するものであって、いわゆる「縦型埋込柵柱」は、この種の技術分野においては、広く知られた周知慣用の技術手段である。
一方、甲第1号証に記載されたものは、「扇風機、パーマネントドライヤ、マイクロホン、電灯スタンド等の如き角形、梯形、或いは丸形のスタンドの内部に角或は丸の柱を上下運動させて高さを調節するための昇降装置に係るもの」であり、定荷重の昇降装置の点において、本件考案とは機構的に近接した関係にある技術と認められる。
してみると、甲第1号証に記載されている定荷重昇降装置に関する技術事項を、上記周知慣用の技術手段である縦型埋込柵柱に適用し、本件考案におけるように構成するようなことは、特にその適用を阻害する要因もなく、当業者であれば格別の困難性を伴うことなく、きわめて容易になし得た程度のことである。

(2) 相違点2について
本件考案の明細書によると、従来の技術として、上記甲第1号証が記載されており、そして考案が解決しようとする課題として、以下の記載がある。
「この種の柵柱は、外筒から引き上げたポールをー方に所定角度回転させて、外筒の内面に鉤型に形成した掛止溝に、ポールの下部外周面に突設したピンを嵌合させて起立状態を保持するようにしたものが一般的である。そのために、柱体を回転自在に保持する前記定荷重昇降装置を採用することが考えられるが、該装置は、柱体を支える定荷重ばねの一端を取り付けたブラケットと、定荷重ばねの他端を取り付けた環状の固定体とを組み合わせて一つのユニットに構成し、外筒の内面に固定体をねじ止めして、該ユニットを外筒内に取り付け、上から環状の固定体を挿通して外筒内に嵌合させた柱体の底部裏面を、定荷重ばねの伸縮と共に昇降する上記ブラケットの上面に乗せることにより、柱体と定荷重ばねとの共回りを防止して板ばね製の定荷重ばねにねじれを生じさせないようにしていた。しかしながらこの昇降装置は、柱体を下降させるときは,直ちにブラケットが押し下げられることから定荷重ばねの伸縮が生ずるが、柱体を上昇させる場合には、柱体の下部裏面とブラケットの上面とが離間して、定荷重ばねは直ちには機能しないおそれがあり、特に重量の嵩む縦型埋込柵柱のポールには初動力の軽減を期しがたいので採用し難いという欠点がある。以上のことから、起立操作時、収納操作時の労力を軽減するとともに、該操作時のポールの回転に定荷重ばねの共回りを生じさせないようにすることが望まれており、かつ、特に重量のあるポールの起立操作時の初動労力の軽減を図るようにした縦型埋込柵柱を提供することが、解決すべき課題となっていた。」(本件考案に関する公告公報2頁3欄19?47行)
これらの記載によると、本件考案は、上記甲第1号証のものが有する問題点を解決するためになされたものであり、その構成として、特に、「ポールは、底部に垂直な枢着軸を備え、この枢着軸を介して、底部裏面に水平方向の回転を自在にした取付け部材を抜脱不能に取り付け」るとの構成、すなわち上記相違点2に関する構成を採用したものであることが認められる。
甲第1号証に記載されているものは、可動柱(ポール)の底部裏面に水平方向の回転を自在にしたブラケット(取付け部材)を取り付けるものの、本件考案におけるような、ポール(可動柱)の底部に垂直な枢着軸を備え、取付け部材(ブラケット)を抜脱不能に取り付けた構成を有していないものであり、上記相違点2に関する点については記載がなく、示唆すらもされていない。
そして、本件考案は上記相違点2におけるような構成を有することにより、明細書に記載の「本考案縦型埋込柵柱は、ポールを引き上げようとする時、および下降させようとする時、何れの場合も定荷重ばねが有する釣り合い定力が、互いに抜脱不能に連結された取付け部材ならびに枢着軸を介して直ちにポールに作用するので、重量のあるポールの昇降操作が軽くできる。また、定荷重ばねを取り付けた取付け部材が、ポールの底部に垂設した枢着軸を介して、該ポールの裏面に水平方向の回転を自在にし連結されているので、起立操作時、収納操作時のポールの回転に追従する定荷重ばねの共回りは防止されている。本考案は以上のようにして前記の課題を解決したものである。」(同公報2頁4欄9?21行)、さらに「枢着軸で、抜脱不能に定荷重ばねの取付け部材とポールを直接接続している本考案によれば,特に径の太い大型のポールを備えた縦型埋込柵柱において、重量の嵩むポールの引き上げ操作の際の定荷重ばねの起動が該操作とともに確実に生ずるので、きわめて有利である等の実用的効果がある。」(同公報3頁6欄9?14行)という作用、効果を奏するものである。

(3) まとめ
以上によると、本件考案は、甲第1号証に記載されたもの及び上記周知慣用の技術手段に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるとすることはできない。

三 請求人の主張に対して
相違点2について、請求人は、審判請求書において、「しかしながら、定荷重ばねが巻収方向への力を具有するものであれば、可動柱(ポール)には常に上方への力がかかっているのであって、可動柱(ポール)の上昇に当たっては、瞬時に定荷重ばねが反応して可動柱(ポール)を押し上げることから、『柱体の下部裏面とブラケットの上面とが離間して、定荷重ばねは直ちには機能しないおそれがあり、特に重量の嵩む縦型埋込柵柱のポールには初動力の軽減を期しがたい』との不都合の生じる余地は全くない。従って、本件考案の採用した『可動柱とブラケットを枢着軸で回転自在に、且つ、抜脱不能に取り付けた』との構成は、巻収方向への力を具有する定荷重ばねを使用した昇降装置では全く不要な構成であり、しかも、この構成は、甲第1号証の第2図、第3図に記載ある『可動柱とブラケット』を軸体で回転自在に、且つ、抜脱不能に取り付けたにすぎないのであり、斯る構成は当業者がきわめて容易に想到し得る程度の技術である。」(同請求書6頁5?19行)と主張している。
しかしながら、「(2) 相違点2について」において検討したように、本件考案は、上記甲第1号証のものが有する問題点を解決するためになされたものであり、その構成として、特に、「ポールは、底部に垂直な枢着軸を備え、この枢着軸を介して、底部裏面に水平方向の回転を自在にした取付け部材を抜脱不能に取り付け」るとの構成、すなわち上記相違点2に関する構成を採用したことが認められるものである。特に、請求人は、「巻収方向への力を具有する定荷重ばねを使用した昇降装置では全く不要な構成であり」との点を強調しているが、この種の縦型埋込柵柱において、「可動柱とブラケットを抜脱不能に取り付けていない場合、定荷重ばねの巻収力の程度や、可動柱の上昇速度によっては、可動柱の上昇に定荷重ばねが即座に追いつかない」(被請求人答弁書5頁18?20行)ことが技術上の問題点として認められること、さらに請求人の「不要な構成」との主張は実用新案登録請求の範囲の請求項の記載を離れたものであることを考慮すると、適切でない。
結局、請求人の主張は、採用することはできない。

第四 むすび
以上のとおりであるから、請求人が主張する理由及び提出した証拠方法によっては、本件考案の実用新案登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2000-10-20 
結審通知日 2000-11-06 
審決日 2000-11-17 
出願番号 実願昭63-70669 
審決分類 U 1 122・ 121- Y (E01F)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 赤木 啓二  
特許庁審判長 幸長 保次郎
特許庁審判官 宮崎 恭
鈴木 公子
登録日 1998-07-17 
登録番号 実用新案登録第2149903号(U2149903) 
考案の名称 縦型埋込柵柱  
代理人 辻本 一義  
代理人 阿部 幸孝  
代理人 阿部 幸孝  

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