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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01J
管理番号 1036001
審判番号 審判1999-2749  
総通号数 18 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2001-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-02-22 
確定日 2001-03-08 
事件の表示 平成 3年実用新案登録願第 72436号「X線管の電子放出体」拒絶査定に対する審判事件[平成 4年 8月25日出願公開、実開平 4- 98253]について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1.手続の経緯・本願考案
本願は、平成3年8月16日(パリ条約による優先権主張1990年8月20日、独国)の出願であって、その請求項1に係る考案(以下、「本願考案」という)は、平成10年3月13日付け及び平成11年3月23日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】全体的に電子放出材料を充填された成形体を有し、該成形体の陽極(3)に向いた面が表面全体に亘って電子を放出するために励起可能であり、
電子放出材料が、導電率の低減のためにLa-Pt化合物とセラミック粉末との混合物を含んでいることを特徴とするX線管の電子放出体。」
2.引用例記載の考案
これに対して、前置審査において平成11年8月19日付けで通知した拒絶の理由に引用した特開昭51-78695号公報(以下、「引用例1」という)には、
「電子放射性物質を含浸させた金属焼結体を電子放出源とする含浸形陰極を封有して成り、空間電荷制限領域で動作させることを特徴とするX線管。」(特許請求の範囲)、
「(11)は例えば、バリウムの酸化物のような電子放射性物質をタングステン焼結体に含浸させた電子放出源から成る含浸形陰極であって、端部にこれを支持する筒状体(12)内に収容されたヒーター(13)によって加熱されて傍熱形をなしている。(14)は陰極(11)の電子放出面からターゲット(15)に向けて放出される電子ビーム(16)を収束するための集束電極である。」(第2頁左上欄第14行?同頁右上欄第1行)、
「さらに陰極はその電子放出面をほぼ平面状とすることができるから、全区域において電子はターゲットに向けてほぼ同一方向にかつ均一に放出されることとなる。従ってターゲットの焦点における電子分布は第5図(b)に示すように全区域にわたり電子密度が均一となり、より高解像度のX線写真を得ることができる。」(第2頁右上欄第13?19行)と記載されている。
同じく米国特許第4752713号明細書(1988年)(以下、「引用例2」という)には、
「高い放出能力を有する電子管用熱電子陰極であって、支持体として働く耐熱性の金属体又はセラミック体と、電子の放出を促進する金属活性化物質とからなり、この活性化物質は周期律表のVIII族の金属及びReからなる金属の群から選ばれた少なくとも一種の金属と、Ba、Ca、La、Y、Gd、Ce、Th、Uからなる群から選ばれた元素との合金、金属間化合物又はこれらの混合物からなる。そして、活性化物質は支持体の表面全体を覆い、陰極の体積の少なくとも10%を越える。」(第5欄クレーム1参照)、
実施例Vとして「支持体は、酸化イットリウムで安定化された酸化ジルコニウム焼結体よりなる外径12mm、内径6mmの多孔質環状体で構成される。」(第4欄第10?14行参照)、
「本発明は、実施例に限定されるものではない。原則として、支持体は、空孔体積10?50%を有する耐熱性金属又はセラミックからなり、空孔は金属活性化物質で充填されている。好ましい支持体は、W、Mo、Ta、Nbの高融点金属またはそれらの合金からなる。これらは、延性があり、例えば、線状、帯状、シート状等望みの形状に成形できる利点を有する。さらに、例えば、Y_(2) O_(3) で安定化されたZrO_(2) のような、高融点のセラミックも用いることができる。周期律表のVIII属の金属及びReからなる群から選ばれた金属と、例えば3eV以下の低仕事関数を有する元素とからなる合金は、活性化物質として用いることができる。したがって、合金の一方の成分としては、ニッケル、プラチナが含まれ、他方の成分としては、Ba、Ca、La、Y、Gd、Ce、Th、U等が含まれる。BaPt_(5) 、BaPt_(2) 、LaPt_(5) 、LaPt_(3) 、LaPt_(2) を含むBa又はLaの白金化合物は、特に望ましいことが証明された。」(第4欄第36?58行参照)と記載されている。
3.対比・判断
本願考案と引用例1に記載された考案とを対比すると、引用例1記載の「X線管」、「含浸形陰極(11)」、「電子放射性物質」、「ターゲット(15)」は、それぞれ、本願考案の「X線管」、「電子放出体」、「電子放出材料」、「陽極」に相当する。また、引用例1記載の含浸形陰極は焼結体であるが、セラミック材料を焼結する際に成形を行うことは自明のことにすぎないから、引用例1の「焼結体」は「成形体」といいかえることができる。さらに、引用例1には「陰極はその電子放出面をほぼ平面状とすることができるから、全区域において電子はターゲットに向けてほぼ同一方向にかつ均一に放出されることとなる」と記載されており、このことは、本願考案の「陽極に向いた面が表面全体に亘って電子を放出するために励起可能である」ことと異ならず、また、陰極の全区域において電子が均一に放出されるということは引用例1記載のものも全体的に電子放出材料が充填されていることに他ならない。
したがって、両者は、全体的に電子放出材料を充填された成形体を有し、該成形体の陽極に向いた面が表面全体に亘って電子を放出するために励起可能であるX線管の電子放出体である点で一致し、次の相違点で相違している。
相違点:電子放出材料が、本願考案は、導電率の低減のためにLa-Pt化合物とセラミック粉末との混合物を含んでいるのに対して、引用例1記載の考案は、バリウムの酸化物が例示されるのみである点。
上記相違点について検討するに、引用例2に、特に望ましい活性化物質(本願考案の電子放出材料に相当する)としてLaPt_(5) 、LaPt_(3) 、LaPt_(2) を含むLa-Pt化合物が記載されており、また、セラミックを支持体に用いることも記載されている。さらに、セラミックを粉末から成形することは常套手段であり、また、セラミック(引用例2で例示されたY_(2) O_(3) で安定化されたZrO_(2) を含む)は通常非導電性であるからセラミックの量を増加すれば導電率が低下することも技術常識である。そして、引用例1記載の考案と引用例2記載の考案とは、熱電子陰極という点で同一技術分野に属するといえる。してみれば、上記相違点は、引用例1記載の発明に引用例2記載のLa-Pt化合物、セラミックを適用することにより当業者であればきわめて容易に想到し得る事項である。
そして、本願考案の効果も、当業者であれば予測することができる程度のものであって、格別なものとはいえない。
4.むすび
したがって、本願考案は、引用例1、2に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2000-09-14 
結審通知日 2000-09-29 
審決日 2000-10-11 
出願番号 実願平3-72436 
審決分類 U 1 8・ 121- Z (H01J)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 堀部 修平  
特許庁審判長 平井 良憲
特許庁審判官 杉野 裕幸
山川 雅也
考案の名称 X線管の電子放出体  
代理人 矢野 敏雄  
代理人 山崎 利臣  
代理人 ラインハルト・アインゼル  

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