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審決分類 審判    B65D
管理番号 1036048
審判番号 無効2000-40017  
総通号数 18 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2001-06-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2000-08-16 
確定日 2001-04-04 
事件の表示 上記当事者間の登録第3045904号実用新案「包装シート」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 実用新案登録第3045904号の請求項1ないし3に係る考案についての実用新案登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 【1】手続の経緯および本件考案
本件実用新案登録第3045904号の請求項1乃至3に係る考案は、平成9年8月1日に実用新案登録出願され、平成9年11月26日に設定登録され、当審において平成12年9月14日付けで被請求人に対して審判請求書副本を送付したところ、その指定期間内に答弁がなされなかったものである。そして、本件の請求項1乃至3に係る考案(以下、「本件考案1,2,3」という。)は、明細書及び図面の記載から見て、その実用新案登録請求の範囲の請求項1乃至3に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。
「【請求項1】 帯状に形成され、長手方向に一定間隔で切込線(5,5…)を有する、おにぎり等の食品を覆うことが可能なシート(2) と、該シート(2) の切込線(5,5…)を夫々覆うべくシート(2) の一表面に接離可能な保護シート(3,3…) とから構成される包装シート本体(1) がロール状に巻回されてなることを特徴とするロール状の包装シート。
【請求項2】 前記切込線(5,5…)が夫々シート(2) の長手方向に設けられてなる請求項1記載の包装シート。
【請求項3】 前記シート(2) 及び保護シート(3,3…)がシート(2) の長手方向に切り裂き可能な方向性を有する請求項1記載の包装シート。」

【2】請求人の主張及び提出した証拠方法
(1)請求人の主張
請求人の主張は、概略次のとおりのものである。
本件実用新案登録の請求の範囲の請求項1乃至3に係る考案は、甲第1号証乃至甲第4号証に記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであって実用新案法第3条第2項の規定により登録を受けることができないものであり、これらの考案は同法第37条第1項第2号の規定により無効とすべきである。

(2)請求人の提出した証拠方法
請求人は上記主張を立証するために次の証拠を提出している。
甲第1号証;特開昭62-251305号公報
甲第2号証;実願平2-99562号(実開平4-60086号)のマイクロフィルム
甲第3号証;実願昭53-143218号(実開昭55-58615号)のマイクロフィルム
甲第4号証;実願昭60-166127号(実開昭62-76168号)のマイクロフィルム

甲第1号証は、食品の包装フィルムに関し、下記の事項が図面とともに記載されている。
「1.(a)横の縁の中間において熱可塑性フィルムに切込みをつけ、(b)一端に非粘着性の部分をもった圧感性のラベルで該切込みを覆い、(c)製品の周りにフィルムをつくって筒状物にし、(d)生じたフィルムを長手方向に密封し、(e)生じたフィルムを横方向に密封し、(f)横方向の密封部の所で生じたフィルムを切断し製品を含んだ包装品をつくる工程から成ることを特徴とする製品を含んだ容易に開口し得る包装品を製造する方法。」(特許請求の範囲)、「熱可塑性フィルム10が模式的に示されている。このフィルムは一般にロールの形12で貯蔵されて」(第3頁左上欄3?4行)、「フィルムはその長手方向に沿って間隔を置いて切込み14が備えられている。」(第3頁左上欄18?19行)、「好ましくは切込み14はフィルム10の横方向の縁の中間において、横方向の縁に対し直線状に平行に走り、各包装単位毎に少なくとも1個の切込みが存在するように間隔を置いて配置されるようにつけられることが好ましい。」(第3頁右上欄4?8行)、及び、「各切込み14の上に、好ましくは製品を包装材に挿入する前に、圧感性のラベル16を取り付ける。」(第3頁左下欄9?11行)。
甲第2号証は、米飯加工食品収納用包装体に収納された米飯加工食品(握り飯等)の取出し構造に関し、下記の事項が図面とともに記載されている。
「1.米飯加工食品を収納するための包装体であって、該包装体1の所望の箇所に開封用の切目2を刻設し、且つ該切目2部上に開封片3を設けて、該開封片3を引張ることによって刻設した前記切目2より包装体1を開封し、収納された米飯加工食品4を取出し可能に構成してなることを特徴とする米飯加工食品収納用包装体に収納された米飯加工食品の取出し構造。2.請求項1記載の米飯加工食品収納用包装体に収納された米飯加工食品の取出し構造に於いて、前記開封片3がラベルからなることを特徴とする米飯加工食品収納用包装体に収納された米飯加工食品の取出し構造。」(実用新案登録請求の範囲)。
甲第3号証は、包装具に関し、下記の事項が図面とともに記載されている。
包装具がロール状に巻かれて連続して形成された構成が第1図に記載されていて、「すし、おにぎり、ハンバーグ、ドーナツ等、手に握って、又指でつまんで食する食品を食する際に、手の汚れを防ぐべく、あるいは、食品が汚れぬように、食品を包んで、あるいは手にはめて使用する包装具に関する」(第1頁9?13行)。
甲第4号証は、プラスチックフィルム製の包装袋に関し、下記の事項が図面とともに記載されている。
「所定方向に裂け易い特性を有するプラスチックフィルムからなる包装袋において、プラスチックフィルムに切り込みを入れて同フィルムを裂け易い方向に開口する舌片を形成し、同舌片及び切り込みの上にシールを貼付したことを特徴とするプラスチックフィルム製の包装袋。」(実用新案登録請求の範囲)、「本考案のプラスチックフィルム製の包装袋は、例えばサンドイッチやおにぎりなどの食品を包装するのに適するものであり、開封用のミシン目を入れておかなくとも手軽に開封できるようにしたものである。」(第1頁13?17行)、及び「第1図のプラスチックフィルムは横方向に裂け易い特性のものである。本考案ではこのフィルムにコの字状の切り込み3を入れて舌片4を形成してある。この場合切り込み線3a,3bをプラスチックフィルム1の裂け易い方向に入れてある。切り込み3はV字状とかU字状でもよい。」(第4頁2?7行)。

【3】被請求人の主張
答弁なし

【4】当審の判断
本件考案1と甲第1号証記載の考案とを対比すると、
甲第1号証記載の「熱可塑性フィルム10」、「長手方向に沿って間隔を置いて備えられた切込み14」、「圧感性のラベル16」、はそれぞれ本件考案1の「帯状に形成され食品を覆うことが可能なシート2」、「長手方向に一定間隔で設けた切込線(5,5…)」、「シートの一表面に接離可能な保護シート(3,3…)」、に相当し、両者はともにロール状に巻回されてなる包装フィルムからなるシートであることで一致し、用途においてはナイフまたは他の鋭い器具を必要としないで新鮮な食品の包装品に適用して包装品の裂け目を開始させることが容易にできるようにする点で同様の目的を持つものであるから、本件考案1の用語を用いて表現すると、両者は「帯状に形成され、長手方向に一定間隔で切込線(5,5…)を有する、食品を覆うことが可能なシート(2) と、該シート(2) の切込線(5,5…)を夫々覆うべくシート(2) の一表面に接離可能な保護シート(3,3…) とから構成される包装シート本体(1) がロール状に巻回されてなることを特徴とするロール状の包装シート。」で一致し、
イ:本件考案1では、おにぎり等の食品と明記しているのに対して、甲第1号証の考案ではおにぎり等の食品であることを明記していない点、
ロ:本件考案1では、シート(2) の切込線(5,5…)を夫々覆うべくシート(2) の一表面に接離可能な保護シート(3,3…) であると明記しているのに対して、甲第1号証の考案ではその点を明記していない点、で相違する。
各相違点について検討する。
イの点について検討すると、甲第2号証には、米飯加工食品(おにぎり)収納用包装体に収納された米飯加工食品を瞬時に簡単に取り出し易くするために米飯加工食品包装体において、「包装体1の所望の箇所に開封用の切目2を刻設し、且つ該切目2上に開封片3を設けて、該開封片3を引張ることによって刻設した前記切目2より包装体1を開封し、収納された米飯加工食品4を取出し可能に」する技術的事項が記載されていて、本件考案1の出願前に当業者において公知であるから、この甲第2号証に記載された技術事項を甲第1号証に適用して上記相違点イを想到することに格別の困難性があるとは認められない。
ロの点について検討する。本件考案1に記載の「接離可能」の語句の意味について考察すると、その意味については考案の詳細な説明中に明白な記載がなく、どのような状態をさすのかが明確ではない。そして、本件考案の詳細な説明の段落【0016】中の「前記シート2と、保護シート3のシール部3 a,3 aを弱く熱シールすることによってシート2と保護シート3とが接離可能となっている」との記載から類推すれば、本件考案1の「接離可能」の語句の意味は「シート同士が接触してはいるが剥離することも可能な状態」であると解することが相当である。してみれば、甲第1号証に記載されている圧感性のラベルを切込みの上に貼着することはシート同士が接触してはいるが剥離することも可能な状態であると解されるから、本件考案1での保護シートを切込線を覆うように接離可能に設けることと同じであると理解される。よって、この甲第1号証記載の技術事項は、実質的にロの点を開示しているものと認められる。
また、甲第1号証記載の事項と甲第2号証記載の事項を組み合わせて本件考案1を想到することにも格別困難であるとも認められないから、本件考案1は甲第1?2号証記載の事項から当業者がきわめて容易に考案することができたものと認められる。
次に、本件考案の実用新案登録請求の範囲の請求項2及び3に係る考案(「本件考案2」及び「本件考案3」)について検討する。
本件考案2は、実用新案登録請求の範囲の請求項2に記載された次のとおりのものである。「【請求項2】 前記切込線(5,5…)が夫々シート(2)の長手方向に設けられてなる請求項1記載の包装シート。」
本件考案2は、本件考案1の技術事項を引用するするとともに、さらにその切込線(5,5…)を、夫々シート(2)の長手方向(図1における、ロール状の包装シートの帯状に形成される矢印イの方向)に設けられてなると限定したものであるが、甲第1号証にはその第3頁左上欄18?19行に「フィルムはその長手方向に沿って間隔を置いて切込み14が備えられている。」と記載されており、長手方向は甲第1号証のFig.1記載のようにロールの形12の包装品フィルムの帯状に形成される長手方向の意味であって、本件考案2の長手方向に相当するものであると認められるから、本件考案2は甲第1号証 及び甲第2号証記載の事項から当業者がきわめて容易に考案することができたものと認められる。
本件考案3は、実用新案登録請求の範囲の請求項3に記載された次のとおりのものである。「【請求項3】 前記シート(2,2…)及び保護シート(3,3…)がシート(2)の長手方向に切り裂き可能な方向性を有する請求項1記載の包装シート。」
本件考案3は、本件考案1の技術事項を引用するするとともに、さらにそのシート(2,2…)及び保護シート(3,3…)がシート(2)の長手方向(図1における、ロール状の包装シートの帯状に形成される矢印イの方向)に切り裂き可能な方向性を有すると限定したものであるが、甲第4号証には例えばサンドイッチやおにぎりなどの食品を包装するのに適するプラスチックフィルム製の包装袋において、
「所定方向に裂け易い特性を有するプラスチックフィルムからなる包装袋において、プラスチックフィルムに切り込みを入れて同フィルムを裂け易い方向に開口する舌片を形成し、」(実用新案登録請求の範囲)、及び「第1図のプラスチックフィルムは横方向に裂け易い特性のものである。本考案ではこのフィルムにコの字状の切り込み3を入れて舌片4を形成してある。この場合切り込み線3a,3bをプラスチックフィルム1の裂け易い方向に入れてある。切り込み3はV字状とかU字状でもよい。」(第4頁2?7行)が記載されているから、これらの技術事項を甲第1号証の刊行物に適用し、本件考案3を想到することに格別の困難性があるとは認めがたいから、本件考案3は甲第1号証、甲第2号証及び甲第4号証記載の事項から当業者がきわめて容易に考案することができたものと認められる。
【5】むすび
したがって、本件の請求項1、請求項2及び請求項3にかかる考案は、甲第1号証、甲第2号証及び甲第4号証に記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案することができたものであり、実用新案法第3条第2項の規定により登録を受けることができないものであるから、本件実用新案登録は、同法第37条第1項2号により登録無効とすべきである。
審理終結日 2001-01-17 
結審通知日 2001-01-30 
審決日 2001-02-14 
出願番号 実願平9-6781 
審決分類 U 1 111・ 121- Z (B65D)
最終処分 成立    
特許庁審判長 村本 佳史
特許庁審判官 祖山 忠彦
市野 要助
登録日 1997-11-26 
登録番号 実用新案登録第3045904号(U3045904) 
考案の名称 包装シート  
代理人 橋本 清  
代理人 竹内 三郎  

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