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審決分類 審判 全部申し立て   A61M
管理番号 1036073
異議申立番号 異議1999-72713  
総通号数 18 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2001-06-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-07-12 
確定日 2001-03-08 
異議申立件数
事件の表示 登録第2588871号「既充填滅菌プラスチック注射器」の実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 登録第2588871号の実用新案登録を取り消す。
理由 1.本件実用新案登録第2588871号に係る出願は、昭和61年12月25日(優先権主張1985年12月20日及び1986年12月8日、米国)に出願された特許出願の一部を平成7年12月25日に新たな出願として分割出願し、この分割出願を平成10年3月19日に実用新案登録出願に変更したものである。
そして、平成10年11月6日に本件実用新案登録の設定登録がなされ、その後、日本ゼオン株式会社、岩田茂子、高橋敏夫、ブラッコ ソチエタ ペル アツィオニ、エーザイ株式会社、株式会社大協精工、石田康昌及び福本伸夫より、それぞれ、実用新案登録異議の申立てがなされ、取消理由が通知され、その指定期間内である平成12年8月1日に、意見書の提出がなされたものである。

2.上記取消理由は、「臨床検査」第22巻第8号(1978年8月15日発行)「検広33」の頁(実用新案登録異議申立人岩田茂子が提示した甲第1号証)、「臨床検査 機器・試薬」第3巻第4号(1980年10月株式会社ラボ・サービス発行)第368-371頁(実用新案登録異議申立人岩田茂子の提示した甲第2号証)、寺尾求馬他2名共訳「無菌製剤 その調製と臨床適用」(昭和54年4月1日広川書店発行)224-228頁(実用新案登録異議申立人岩田茂子の提示した甲第3号証)、米国特許第3902491号明細書(実用新案登録異議申立人エーザイ株式会社の提示した甲第1号証)、Pharm.Ind.40,6(1978)第665-671頁(実用新案登録異議申立人株式会社大協精工の提示した甲第1号証)を引用し、以下のa?cの理由により、本件実用新案登録を取り消すべきというものである。
a.本件登録実用新案は、本件実用新案登録出願前に国内において公然実施をされた考案であるから実用新案法第3条第1項第2号の考案に該当し、本件実用新案登録は、同法第3条第1項の規定に違反してされたものである。
b.本件登録実用新案は、本件実用新案登録出願前に米国において頒布された米国特許第3902491号明細書に記載された考案であるから実用新案法第3条第1項第3号の考案に該当し、本件実用新案登録は、同法第3条第1項の規定に違反してされたものである。
c.本件登録実用新案は、本件実用新案登録出願前に国内において頒布されたPharm.Ind.40,6(1978)第665-671頁に記載された考案に基づいて、その出願前にその考案の属する技術の分野における通常の知識を有する者が、容易に考案をすることができたものと認められるから、本件実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してされたものである。

3.本件登録実用新案は、願書に添付された明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲に記載された次のとおりのものである。
「プラスチック容器(22)、該容器の封止された開放端(28)、及び該容器(22)上で封止されたノズル(24)、異物、その他の汚染物質および発熱性物質は除去されている容器(22)内をしゅう動自在なピストン(30)から成る、充填済み滅菌プラスチック注射器(20)であって、該容器(22)には所望量の注射用に適した液状物質が充填されており、該液状物質は、該ピストン(30)によって該容器(22)内に封止されており、中に内容物を含有する該注射器は、液状物質を充填し、該注射器内に該物質を封止した後に最終工程でオートクレーブ処理により滅菌されたものである、注射器。」

4.そこで、実用新案登録異議の申立てについて判断する。
(1)取消理由に引用された米国特許第3902491号明細書(1975年9月2日発行、以下、「引用例」という。)には、その要約の欄に「注射液の貯蔵と保存のために使用される注射器は、出口端と入口端を有する中空の円筒体を含む。破り得る部材は、出口端において設定される。フランジは入口端において設定される。封止部材(封止膜)は、耐液性の膜が望ましく、入口端を封止するためにフランジに固定される。ロッドは、ピストンに連結される。ピストンは、位置を変えることができ、円筒体に関してそれの内側に入り、封止部材(封止膜)を破り、それの出口端の方へ動く。結果として、そのロッドの影響下で、中空の円筒体の中に貯蔵され保存された注射液は、そのピストンによって出口端を通って排出させられる。」と記載され、「医療、特にX線撮影において、滅菌操作を必要とする長時間に渡る造影剤の大量注射がしばしば必要とされる。これらの操作は多くの時間と労力を要する。その時間と労力を軽減する為に、すぐに使用可能な注射器、即ち、滅菌状態で販売され貯蔵されている注射器の適用が知られている。これらの注射器は、一般的にプラスチック製であり、使用後に廃棄される。」(第1欄11-20行目参照)、「この発明の目的は、滅菌された注射液が充填されている注射器を提供することである。この発明のもう一つの目的は、必要な時に使い易いように滅菌された注射液を貯蔵し保存している注射器を供給することである。この発明の更なる目的は、少なくとも部分的に廃棄可能であり相対的に単純な構造である注射器を供給することである。」(第1欄26-32行目参照)、「その注射器は、出口端と入口端のある中空の円筒を有する。その出口端には破り得る部材が取り付けられている。入口端にはフランジ又は同等物が設けられている。封止部材は、入口端を封止する為に、フランジ又は同等物に固定される。ロッドが提供され、それはピストンに接続される。ピストンは円筒に関し、その内部に入り、封止部材(封止膜)を破り、出口端の方へ移動することができる。ロッドの作用によるピストンの移動で、中空円筒中に貯蔵或いは保管されている注射液は出口端を通って排出させられる。本発明の注射器は、望ましくは、破り得る封止した乳首の形の封止部材(封止膜)を出口端に有している。」(第1欄26-32行目参照)、「本発明の望ましい具現化としての注射器は、注射器と同様に、注射液に対して抵抗性のあるプラスチック製、例えばポリプロピレン製、であるピストンを含んでいる。」(第1欄63-66行目参照)、「図4は、図1と図2に示される具現化のもう一つの別形の注射器の軸上断面図である。」(第2欄28-30行目参照)、「ノズル2の中心には、封止された耐液性のチップを有するチューブ状の薄くて破り得る部材が取り付けられていて、ノズル2に針等を連結する前に切り離す。」(第2欄44-48行目参照)、「本発明の注射器の主な用途の一つがX線検査の間の造影剤注射である。その場合には、その注射器は、所望の流速にピストンの前進を機械的に制御する適当な自動注射器と組み合わせて使用される。」(第3欄9-15行目参照)、「図4に示されるさらにもう一つの別形において、封止部材(封止膜)12は、封止部材(封止膜)10の代わりに用いられ(図4)、ピストン5の一部分になっている。即ち、液体と接触しない弾性体のピストン5は、封止膜12を構成するプラスチック薄片で覆われており、そのプラスチック薄片はピストン5に密着している。」(第4欄21-27行目参照)及び「注射器を使用する際には、ピストンロッド9をピストン5に入れて押し込む為に、フランジ13は、ピストン5に密着している封止部材(封止膜)12の部分から離れる。その封止部材(封止膜)12を形成しているプラスチック薄片は、ピストン5の摺動中において、ピストン5と中空の円筒体1の間の耐液性を確保するように、十分に薄くて弾力性がある。」(第4欄31-38行目参照)と記載されていることから、前記引用例には、「ポリプロピレン製の中空の円筒体1、フランジ3が形成され封止膜12により封止された開放端、封止された耐液性の封止部材を有するチューブ状の薄くて破り得る部材が取り付けられたノズル2、中空の円筒体1内を摺動する前記封止膜12により覆われているピストン5からなる滅菌状態で販売される充填済みプラスチック注射器であって、中空の円筒体1には、注射液が貯蔵され、封止膜12によって中空の円筒体内1に封止されている注射器。」の考案が記載されている。

(2)本件登録実用新案と、前記引用例に記載された考案とを対比すると、前記引用例に記載された考案の「ポリプロピレン製の中空の円筒体1」、「フランジ3が形成され封止膜12により封止された開放端」、及び「封止された耐液性の封止部材を有するチューブ状の薄くて破り得る部材が取り付けられたノズル2」は、それぞれ本件実用新案登録の「プラスチック容器」、「封止された開放端」及び「封止されたノズル」に相当し、前記引用例に記載された考案は、滅菌状態で販売されることから、注射液が貯蔵される中空の円筒体及びピストンは、当然に、異物、その他の汚染物質及び発熱性物質が除去されているものと認められるから、本件登録実用新案と、前記引用例に記載された考案とは、「プラスチック容器、該容器の封止された開放端、及び該容器上で封止されたノズル、異物、その他の汚染物質および発熱性物質は除去されている容器内をしゅう動自在なピストンから成る、充填済み滅菌プラスチック注射器であって、該容器には所望量の注射用に適した液状物質が充填されている、注射器。」である点で一致し、本件登録実用新案が「該液状物質は、容器内をしゅう動自在なピストンによって該容器内に封止されて」いるものであるのに対し、前記引用例に記載された考案においては、「ピストンを覆う封止膜12によって注射液が中空の円筒体内に封止されている」点(以下、「相違点1」という。)、及び、本件登録実用新案が「中に内容物を含有する該注射器は、液状物質を充填し、該注射器内に該物質を封止した後に最終工程でオートクレーブ処理により滅菌されたものである」のに対し、前記引用例に記載された考案は、最終工程での滅菌処理について記載がない点(以下、「相違点2」という。)で相違する。

(3)上記相違点について判断する。
相違点1について;
前記引用例の「図4に示されるさらにもう一つの別形において、封止部材(封止膜)12は、封止部材(封止膜)10の代わりに用いられ(図4)、ピストン5の一部分になっている。即ち、液体と接触しない弾性体のピストン5は、封止膜12を構成するプラスチック薄片で覆われており、そのプラスチック薄片はピストン5に密着している。」(第4欄31-38行目参照)の記載からすると、前記引用例に記載された考案において、封止膜12はピストン5を覆い、ピストン5の移動に伴って一体として中空の円筒体内を移動するものであるから、封止膜12は、ピストンの一部分を構成する部材と認められる。そして、本件登録実用新案において、ピストンが単一物で構成されるとの限定もなく、また、単一物で構成されると解すべき理由もない。
さらに、前記刊行物の「注射器を使用する際には、ピストンロッド9をピストン5に入れて押し込む為に、フランジ13は、ピストン5に密着している封止部材(封止膜)12の部分から離れる。その封止部材(封止膜)12を形成しているプラスチック薄片は、ピストン5の摺動中において、ピストン5と中空の円筒体1の間の耐液性を確保するように、十分に薄くて弾力性がある。」(第4欄32-38行目参照)の記載からみると、前記引用例に記載された考案は、注射器を使用する際に、ピストンロッドに押し込まれて、中空の円筒体1内を摺動するものであり、一方、本件実用新案登録の願書に最初に添付された明細書の段落【0006】3-6行目の「バレル22の開放端28は、ゴムピストン30により塞がれて封止されており、ピストンはノズル24を経由して造影剤などの内容物34を絞り出すためのハンドル32により操作可能である。」との記載からみると、本件考案においても、ピストンは、注射器の使用に際し、ハンドル32に操作されることにより容器内をしゅう動するものである。
そうすると、前記引用例に記載された考案の「封止膜12で覆われたピストン5」は、本件登録実用新案の「容器内をしゅう動自在なピストン」に相当すると認められるので、相違点1は実質的な相違ではない。
相違点2について;
「組み立てられ、あらかじめ充填され、封止された注射器及びその内容物が充填後にオートクレープ処理滅菌されたものである」の記載は、考案の構成を製造方法で限定したものと認められるが、このような製造方法で限定したものが、物品の形状、構造、組合わせに関し、前記引用例に記載された考案と対比して、実質的に相違するところはない。
なお、実用新案権者は、平成12年8月1日付け実用新案登録異議意見書において、「最終工程でのオートクレープ滅菌処理工程は、他の既知類似物品との相違を明確化するために不可欠の要素である。言いかえれば、最終工程滅菌処理はプロセス的特徴ではあるが、高度滅菌という品質・特性・それに基づく物品としての構成上の相違を区別しうるものであるから、構成上の要件として理解されるべきである。」(第29頁16-20行目)と主張するが、本件登録実用新案が、「組み立てられ、あらかじめ充填され、封止された注射器及びその内容物が充填後にオートクレープ処理滅菌されたものである」との製造プロセスの限定によって、引用例に記載された考案のものと比べ、高い滅菌度が達成されたものであるとしても、その滅菌度の相違は、注射器の形状、構造、組合わせの相違にはあたらない。そして、他に、前記製造プロセスの限定によって、物品としての構成上の相違が生ずるものとは認められない。

5.したがって、本件登録実用新案は、本件登録実用新案に係る出願前に米国内で頒布された前記引用例に記載されているから、実用新案法第3条第1項第1号の考案に該当し、本件実用新案登録は、同項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2000-10-12 
出願番号 実願平10-1622 
審決分類 U 1 651・ 113- Z (A61M)
最終処分 取消  
前審関与審査官 藤井 彰川端 修  
特許庁審判長 小林 武
特許庁審判官 船越 巧子
大槻 清寿
登録日 1998-11-06 
登録番号 実用新案登録第2588871号(U2588871) 
権利者 マリンクロッド・インコーポレイテッド
アメリカ合衆国、63134 ミズーリ州、セントルイス、マクドネル ブールバード675、ピー・オー・ボックス 5840
考案の名称 既充填滅菌プラスチック注射器  
代理人 辻 邦夫  
代理人 志水 浩  
代理人 谷口 光夫  
代理人 中嶋 正二  
代理人 内田 明  
代理人 石田 敬  
代理人 鶴田 準一  
代理人 樋口 外治  
代理人 西山 雅也  
代理人 萩原 亮一  
代理人 福本 積  
代理人 辻 良子  
代理人 安西 篤夫  
代理人 青山 葆  
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