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審決分類 審判 全部申し立て   H05B
管理番号 1036075
異議申立番号 異議2000-74115  
総通号数 18 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2001-06-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-11-08 
確定日 2001-03-31 
異議申立件数
事件の表示 登録第2604395号「高周波誘導加熱コイル」の請求項1に係る実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 登録第2604395号の請求項1に係る実用新案登録を維持する。
理由 1.本件考案
実用新案登録第2604395号(平成4年10月1日出願、平成12年3月3日設定登録。)の請求項1に係る考案(以下、「本件考案」という。)は、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
高周波発生装置に接続され、パイプを所定回数巻回してその外周を絶縁性及び耐熱性のコーティング部材で内面と外面間が気密性を有する如く被覆すると共に、その求心方向に向けて嵌合部が一体的に配設されたコイル本体と、該コイル本体の嵌合部に赤外線導入管が着脱可能に配設され、高周波誘導電流による加熱で被加熱材から発せられ前記赤外線導入管から導入された赤外線を、集光レンズを介して集光すると共に、光フィバーケーブルを有する光移送部を介して光量検出部に移送し、この検出部で出力される電気信号によって被加熱材の温度を測定する温度測定装置と、を備えたことを特徴とする高周波誘導加熱コイル。

2.申立ての理由の概要
実用新案登録異議申立人 高周波熱錬株式会社 は、証拠方法として、
甲第1号証 実公平4-559号公報
甲第2号証 実公昭59-41593号公報
甲第3号証 特開平4-242095号公報
甲第4号証 電気書院編集部編「わかる光ファイバ応用技術」
昭和58年1月10日、電気書院発行、220?224頁
清水正信「光ファイバ放射温度計 システム構成と使い方」
を提出し、本件考案は、甲第1号証乃至甲第4号証に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであるから、本件考案についての実用新案登録は、取り消すべきである旨主張している。

3.甲各号証に記載された事項
3-1.甲第1号証に記載された事項
甲第1号証には、「金属ビレットを移送しながら加熱コイルの電磁誘導作用で誘導加熱するビレットヒータ」(第1頁第1欄13?15行)について、実施例の要部縦断面図を示す図面とともに記載されており、特に、
「図はこの考案の実施例を示すもので、円筒状耐火ライニング1の外周に誘導加熱コイル2が巻装され、この加熱コイル2は外周部が筒状ケース3で固定支持されている。・・・。前記加熱コイル2は導体が中空の方形断面で中空部に冷却水を通して冷却するようになつており、導体の外周は電気絶縁物で絶縁されている。この加熱コイル2は一部の導体間に小さなすきまが設けられ、このすきまからライニング1を貫通して筒状スリーブ6が挿通固定されている。このスリーブ6は光電式検温装置7のファイバースコープ8を挿入するためのもので、・・・非磁性金属または絶縁物で形成されている。前記検温装置7はファイバースコープ8,発光装置9,検出装置10および制御装置11等からなり、ビレット5の表面温度を非接触で連続的に検出できるようになつている。前記スリーブ6はファイバースコープ8とのすきまを通してライニング1内に不活性ガスを送り込むことができるようになっている。
前記実施例によればライニング1内に不活性ガスを送り込むことによりビレット5の酸化およびこれに伴うスケールの発生を防止できる」(第1頁第2欄18行?第2頁第3欄18行)ことが記載されている。

3-2.甲第2号証に記載された事項
甲第2号証には、「ビレットヒータ用誘導加熱コイルのコイルライニング材として用いる耐火チユーブの改良」(第1頁第1欄21?23行)について図面と共に記載されており、特に、第1図の例について
「加熱コイル1の導体にワニス処理をしたガラステープ2を螺旋状に巻付けておき、外周に断熱用セラミツクペーパ4を、当該断熱用セラミツクペーパ4の外周に耐熱電気絶縁用マイカシート3を巻装した筒状の耐火チユーブ5を上記ガラステープ2が巻付けられている加熱コイル1の内周に嵌装する。」(第1頁第1欄37行?同頁第2欄6行)こと、第2図の実施例について
「加熱コイル1にワニス処理を施したガラステープ2を螺旋状に巻付けることは従来と同様である」(第1頁第2欄31,32行)こと、及び
「このように形成された耐火チユーブの外周に断熱用セラミツクペーパ4,当該断熱用セラミツクペーパ4の外周に耐熱電気絶縁用マイカシート3を巻装した後、それを、上述した、ワニス処理されたガラステープ2の巻付けられている加熱コイル1の内周に嵌装する」(第2頁第3欄7?12行)ことが記載されている。

3-3.甲第3号証に記載された事項
甲第3号証には、「マイクロ波高電界中における被加熱物の加熱温度を測定する装置」(第2頁第1欄18,19行)について、図面と共に記載されており、特に、
「【0010】この加熱器1内部には、被加熱物2の近傍に、・・・マイクロ波透過材質によって製作されたプローブ6が設置されている。このプローブ6は、図からわかるように、下部に筒部7形成すると共に、その筒部7の軸線と一致して該筒部7と連通する取付孔8を穿設したプローブ本体9と、被加熱物2から発せられる放射熱エネルギーを集光するレンズ10及びこの集光を加熱器1外に伝送するファイバーケーブル11を装着する固定具12と、その固定具12上端に取付くナット13とから構成され、固定具12とナット13の結合体が上記したローブ本体9の取付孔8に取付く。
【0011】加熱器1内にあるファイバーケーブル11は加熱器1の監視用窓5を通じて外部に取り出され、その端末で放射温度計本体14と接続され、放射温度計本体14で測定した温度は温度表示部15に表示される。
【0012】図示のプローブ6の場合、プローブ本体9の側部にガスパージフード16を形成している。このガスパージフード16は、加熱器1の上面に形成されている監視用窓5を通じ、外部のガスパージ源(図示するを省略)及び流量調節器17と連結されたガスパージ配管18と接続する一方、そのパージガスを上記した筒部7内に放出可能とするためのパージガス流路19を穿設している。パージガスはプローブ6の筒部7から被加熱物2の表面に向けて放出され、従って被加熱物2から放出した水蒸気や分解ガスを放出していても、パージガスで排除しながら上記した赤外線放射温度測定を行うことができる。」(第2頁第2欄16?43行)ことが記載されている。

3-4.甲第4号証に記載された事項
甲第4号証には、特に
「光ファイバ放射温度計は第1図に示すように、ヘッド部、光ファイバ、検出部の三つの部分から構成されている。ヘッド部は、測定対象からの放射エネルギーを光学系によって集光し光ファイバに入射させる役割をもつ。光ファイバでは、そのエネルギーを伝送させ、検出部に入射させる。検出部は光を電気出力に変換する検知器、・・・から構成されており、温度表示を行っている。」(第220頁左欄下から1行?同頁右欄10行)ことが、光ファイバ放射温度計の構成を示す第1図と共に記載されており、また、
「光ファイバ放射温度計の特徴は、まず光ファイバを用いることにより温度の遠隔測定が可能となることである。たとえば検出部を温度環境の良い、かつ電気雑音対策を施された制御室内に設置して、測定対象物のある現場には光学系、および光ファイバのみを設置すると、多点での温度の集中管理を行うことが可能であるし、従来の方式に比べると保守も制御室内で簡単に行える利点がある。また、電線による電気信号とは異なり伝送途中での電気雑音を受けることもない。」(第223頁左欄6?17行)こと、及び、
「温度計測の頻度の多い金属工業では、光ファイバコネクタなどをセラミックにすることにより電磁誘導を受けなくなるので、誘導加熱炉内の物体の温度を測定するのに用いられる。」(第223頁右欄5?9行)ことが記載されている。

4.対比、判断
3-1.に記載した事項からみて、甲第1号証には、
円筒状耐火ライニングの外周に、中空で外周が電気絶縁物で絶縁された導体からなる誘導加熱コイルが巻装され、この誘導加熱コイルは外周部が筒状ケースで固定支持されており、またこの誘導加熱コイルには一部の導体間にすきまが設けられ、このすきまから前記ライニング及び筒状ケースを貫通して筒状スリーブが挿通固定されているビレットヒータ本体と、前記筒状スリーブに挿入されるファイバースコープ,発光装置,検出装置および制御装置等からなり、ビレットの表面温度を非接触で連続的に検出する光電式検温装置を備えたビレットヒータ。
なる考案が記載されているといえる。
そこで、本件考案(前者)と甲第1号証に記載された考案(後者)とを対比すると、後者における「導体」、「ビレット」は、前者における「パイプ」、「被加熱材」に、各々、相当するものである。そして、後者における「光電式検温装置」は、被加熱材であるビレットの温度を測定するものである点において、前者における「温度測定装置」に相当するものであり、後者における「筒状スリーブ」は、被加熱材であるビレットの温度を測定する光電式検温装置の一部が配設されるものである点において、前者における「嵌合部」に相当するものである。そして、前者のビレットヒータも、誘導加熱コイルの電磁誘導作用で被加熱材であるビレットを加熱するものであることからみて、高周波発生装置に接続されたものであって、高周波誘導加熱コイルといえるものであり、よって、前者における「ビレットヒータ本体」は、後者における「コイル本体」に相当するといえるから、
両者は、
高周波発生装置に接続され、パイプを所定回数巻回すると共に、嵌合部が一体的に配設されたコイル本体と、該コイル本体の嵌合部にその一部が配設されて、高周波誘導電流により加熱された被加熱材の温度を非接触で測定する温度測定装置と、を備えた高周波誘導加熱コイル。
で一致するものの、
ア.前者は、コイル本体が、その外周、即ち、パイプを所定回数巻回したものの外周を絶縁性及び耐熱性のコーティング部材で内面と外面間が気密性を有する如く被覆したものであるのに対し、後者は、コイル本体が係る構造を有していない点、
イ.前者は、嵌合部がコイル本体の求心方向に向けて配設されるのに対し、後者は、かかる特定がない点、
ウ.前者は、温度測定装置が、コイル本体の嵌合部に赤外線導入管が着脱可能に配設され、被加熱材から発せられ前記赤外線導入管から導入された赤外線を、集光レンズを介して集光すると共に、光フィバーケーブルを有する光移送部を介して光量検出部に移送し、この検出部で出力される電気信号によって被加熱材の温度を測定するものであるのに対し、後者は、温度測定装置が、嵌合部に挿入されるファイバースコープ,発光装置,検出装置および制御装置等からなり、これらが、嵌合部に対して着脱可能に配設されたものであるか否か明らかでない点、
の3点で相違する。

そこでまず、相違点ア.について検討すると、
甲第2号証には、上記3-2.で記載したとおりの事項が記載されており、「ガラステープ2が巻付けられている加熱コイル1」(第1頁第2欄4,5行)、「ワニス処理されたガラステープ2の巻付けられている加熱コイル1」(第2頁第3欄10?12行)なる記載はあるが、これらは、具体的には「加熱コイル1の導体にワニス処理をしたガラステープ2を螺旋状に巻付け」(第1頁第1欄37行?第1頁段2欄1行)ること、即ち、加熱コイル1を構成する導体そのものにワニス処理をしたガラステープ2を螺旋状に巻付けることを意味するものと解される。
よって、甲第2号証には、加熱コイル、即ち、パイプを所定回数巻回したものの外周を絶縁性及び耐熱性のコーティング部材で内面と外面間が気密性を有する如く被覆することが記載されているとは、到底認められない。
さらに、甲第3号証及び甲第4号証の記載を検討しても、上記3-3.、3-4.で記載したとおり、パイプを所定回数巻回したものの外周を絶縁性及び耐熱性のコーティング部材で内面と外面間が気密性を有する如く被覆することについて、何ら記載も示唆もない。
よって、甲第2号証乃至甲第4号証の記載を検討しても、相違点ア.に係る本件考案の構成を当業者がきわめて容易に想到し得たとは認められない。
次に、相違点イ.について検討すると、
甲第1号証に記載された考案においても、嵌合部はコイル本体内の被加熱材の温度を測定する温度測定器の一部が配設されるものであるから、甲第1号証に記載された考案において、コイル本体の求心方向に向けて嵌合部を設けるようにすることは、当業者がきわめて容易に想到し得たことである。
最後に、相違点ウ.について検討すると、
甲第3号証には、上記3-3.で記載したとおり、被加熱物の加熱温度を測定する加熱温度測定装置が記載されている。そして、この装置は、被加熱物から発せられ筒部から導入された放射熱エネルギーを集光するレンズと、この集光を加熱器外の放射温度計本体に伝送するファイバーケーブルを備えて、赤外線放射温度測定を行うものであって、その「筒部」は本件考案における「赤外線導入管」に相当するものである。
しかし、甲第3号証に記載された装置は加熱器に固定されたものであり、甲第3号証を検討しても、甲第1号証に記載された考案において、コイル本体の嵌合部に赤外線導入管を着脱可能に配設することを示唆する記載はない。
さらに、甲第4号証を検討しても、上記3-4.で記載したとおり、光ファイバ放射温度計について、その構造及びその特徴や応用について記載されているものの、甲第1号証に記載された考案において、嵌合部に赤外線導入管を着脱可能に配設することを示唆する記載はない。
また、甲第2号証は、上記3-2.で記載したとおり、加熱温度測定装置について何ら記載のないものである。
してみると、甲第2号証乃至甲第4号証の記載を検討しても、甲第1号証に記載された考案において、加熱温度測定装置を相違点ウ.に係る本件考案の構成のごとくすることは当業者にとってきわめて容易に為し得たこととすることはできない。
そして、本件考案は、相違点ア.に係る構成を備えたことにより、コイル本体の厚さを薄くすることができ、加熱コイルの小型化が図れるという格別な効果を奏するものであり、また相違点ウ.に係る構成を備えたことにより、温度測定装置を各種形状のコイル本体に着脱できて、被加熱材に応じた加熱コイルの交換や加熱コイル自体の移動等を容易に行うことができるという格別な効果を奏するものである。
よって、本件考案は、甲第1号証乃至甲第4号証に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとすることはできない。

5.むすび
以上のとおりであるから、実用新案登録異議申立ての理由及び証拠によっては、本件考案についての実用新案登録を取り消すことはできない。
また、他に本件考案についての実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件考案についての実用新案登録は拒絶の査定をしなければならない実用新案登録出願に対してされたものと認めない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第7項の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第3条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
異議決定日 2001-03-12 
出願番号 実願平4-74436 
審決分類 U 1 651・ 121- Y (H05B)
最終処分 維持    
前審関与審査官 大橋 康史丸山 英行  
特許庁審判長 大槻 清寿
特許庁審判官 岡田 和加子
櫻井 康平
登録日 2000-03-03 
登録番号 実用新案登録第2604395号(U2604395) 
権利者 株式会社ミヤデン
静岡県磐田市匂坂中1600?9 さぎさか工業団地
考案の名称 高周波誘導加熱コイル  
代理人 宮川 宏一  
代理人 長門 侃二  

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