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審決分類 審判 判定 同一 属する(申立て成立) E04G
管理番号 1036094
判定請求番号 判定2000-60119  
総通号数 18 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案判定公報 
発行日 2001-06-29 
種別 判定 
判定請求日 2000-08-25 
確定日 2001-04-12 
事件の表示 上記当事者間の登録第2150563号の判定請求事件について、次のとおり判定する。   
結論 (イ)号図面及びその説明書に示す「コンクリ-ト埋設物の固定用バ-材」は、登録第2150563号実用新案の技術的範囲に属する。
理由 第1 請求の趣旨

イ号図面及びその説明書に示す『4mmバーBOX(埋込み用四角アウトレットボックス(4mmバー対応型))』に取付ける『4mmバー埋込用』(以下、「イ号物件」という。)は、実用新案登録第2150563号考案(以下、「本件考案」という。)の技術的範囲に属する、との判定を求めるものである。

第2 本件考案

本件考案は、明細書の記載及び図面からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「コンクリート埋設物をコンクリート型枠内面に押圧して固定するため、手による折り曲げが可能でかつ折り曲げられた状態で埋設物を型枠内面に押圧できる突張強度を有し、埋設物に取付けられると共に型枠内に配筋された鉄筋にバインド線などの線材で結束固定されるバー材であって、前記線材を係止する周溝が外面に形成されてなることを特徴とするコンクリート埋設物の固定用バー材。」
本件考案を分説すると次のとおりである。
A コンクリート埋設物をコンクリート型枠内面に押圧して固定するため、手による折り曲げが可能でかつ折り曲げられた状態で埋設物を型枠内面に押圧できる突張強度を有し、埋設物に取付けられると共に型枠内に配筋された鉄筋にバインド線などの線材で結束固定されるバー材であって、
B 前記線材を係止する周溝が外面に形成されてなる
C ことを特徴とするコンクリート埋設物の固定用バー材。
(以下、本件考案の構成要件AないしCという。)

第3 イ号物件

判定請求書に添付されたイ号図面のうち、図1は、平成13年2月20日付け手続補正書により補正され、被請求人が、平成12年11月6日付け答弁書で「被請求人の販売している『4mmバー埋込用』(以下、イ号物件という。)は、請求人の提出した甲第1号証-2(C)の写真に示される通りのもので・・・別紙1に示す通りである。」と主張した別紙1記載と同様になった。
請求人は、イ号物件を、判定請求書第4頁第5?19行において、下記の構成要素に分説している。
イ号図面に示す『4mmバーBOX』に取付けられる『4mmバー埋込用』は、イ号図面説明書(イ号物件説明書)に示すように、
(a)コンクリート型枠内面に押圧された状態で固定される『4mmバーBOX』を、コンクリート型枠内面に押圧して固定するため、手による折り曲げが可能で、かつ、折り曲げられた状態で埋設物を型枠内面に押圧できる突張強度を有し、埋設物に取付けられると共に型枠内に配筋された鉄筋にバインド線などの線材で結束固定される『4mmバー埋込用』を有していること。
(b)前記バインド線などの線材を係止するその外周面に形成した周方向に延びた溝は、前記『4mmバー埋込用』の外周面の長さ方向に所定のピッチで複数連続して対向する位置に2列形成され、しかも、その外周面の長さ方向に形成した2列の周方向に延びた溝は、前記『4mmバー埋込用』の外周面の周方向からみれば、周方向に略1/4周の溝を2箇所に螺旋状に形成されていること。
(c)『4mmバー埋込用』は『4mmバーBOX』に取付けられるものであること。
との構成(a)ないし(c)を有している。
(以下、イ号物件の構成要件(a)ないし(c)という。)

第4 当事者の主張

本件考案の構成要件Bと、イ号物件の構成要件(b)との関係についての、請求人及び被請求人の主張は、以下のとおりである。
1.請求人の主張
イ号図面の『4mmバーBOX』に取付けられる『4mmバー埋込用』は、甲第3号証及び甲第4号証に示すように、コンクリート型枠内に配筋された鉄筋にバインド線などの線材を巻き付けて固着するように、『4mmバー埋込用』の外周面の長さ方向に所定のピッチで複数連続して対向する位置に2列形成した周方向に延びた溝は、前記『4mmバー埋込用』の外周面の周方向からみれば、周方向に略1/4周の溝を対向する2箇所に設け、当該略1/4周の溝を螺旋状に形成されている。これは、前記『4mmバー埋込用』の図1の側面図に描かれているように、当該溝は周方向の溝、即ち、周溝であることは明確である。故に、『4mmバー埋込用』の外周面の周方向に延びた溝が形成されている。 しかも、その外周面の周方向に延びた溝は、『4mmバー埋込用』の外周面に所定のピッチで複数連続して外周面の対向する位置に2列形成され、しかも、その2列の外周面に形成した周方向に所定のピッチで複数連続して延びた溝は、『4mmバー埋込用』の外周面の周囲に間歇的であっても、その外周面に対して螺旋状に形成されていることから、バインド線などを巻き付けて係止するための4mmバーの外周面に形成された周方向の溝である。 してみれば、イ号図面の『4mmバーBOX』に取付けられる『4mmバー埋込用』には、コンクリート型枠内に配筋された鉄筋にバインド線などの線材を巻き付けて係止する間歇的な周溝が外面に形成されていることに相当する。 殊に、甲第2号証の『4mmバー埋込用』を掲載した第39頁の図面をみても、4mmバーの周面に、その全周に及ぶ溝が複数形成されていること、及び甲第3号証の『4mmバー埋込用』を掲載した第7頁の写真には、「ニチドウの4mmバー埋込用550は下図のように溝が切ってあるので滑ることはありません。」との記載があり、構成及び作用効果的にも相違するものではない。 したがって、イ号図面の構成(b)の「前記バインド線などの線材を係止するその外周面に形成した周方向に延びた溝は、前記『4mmバー埋込用』の外周面の長さ方向に所定の複数連続して対向する位置に2列形成され、しかも、その外周面の長さ方向に形成した2列の周方向に延びた溝は、前記『4mmバー埋込用』の外周面の周方向からみれば、周方向に略1/4周の溝を2箇所に螺旋状に形成されていること。」は、本件登録実用新案の構成要件(B)の「前記線材を係止する周溝が外面に形成されていること。」に相当し、両者間に技術的な相違点がない。(請求書第5頁第24行から第6頁第25行参照)
2.被請求人の主張
本件登録実用新案の「周溝」としては、その明細書の考案の詳細な説明の【0009】に、「本考案においては、バー材の外面に周溝を設けることが要件であるが、この周溝は、上記した螺旋状のものに限定されず、多数の環状溝を所定ピッチで設けても良い。また、この周溝は、必ずしも全周に設ける必要はなく、プレス成形によって周方向に断続している溝を所定のピッチで設けてもよい。」と記載されている。 そして、この「周溝」の効果としては、考案の詳細な説明の【0012】に、「バー材の外面の周溝によって、鉄筋に対する滑り抵抗が大きくなるため、鉄筋に対してもバー材がすべりにくくなって、鉄筋に対する埋設物の固定作業が簡単になると共に、コンクリートの打設圧によっても、埋設物の位置ずれがなくなって、正規の位置に埋設物を確実に埋設できる。」と記載されている。 この記載内容からすると、本件登録実用新案における「周溝」は、バー材の外周の周方向一部に形成する切り欠き状の溝であればよいというものではなく、バー材の外面の周方向全体もしくは断続的でもバー材の外面の全周にわたる周方向の溝にして、線材を係止する機能のほかに、この周溝がバー材と鉄筋との接触面間に常に確実に存在するようにし、もって鉄筋に対する滑り抵抗を大きくし、鉄筋に対しバー材の滑りを防止するものであると解される。(平成12年11月6日付け答弁書第3頁第15行?第4頁第3行参照)
イ号物件に切欠溝を設けたのは、そもそも固くて手による折曲げが困難な4mmバーを、上記のように甲第2号証第12頁及び第39頁の「4mmバー(埋込用)取付法の2」に示すように折り曲げるとき、また甲第3号証第6頁に示すように4mmバーの端部を鉄筋のまわりに巻き付けるときに曲げ易くすることを第1の目的として設けたものであり(甲第3号証第8頁)、甲第3号証第6頁に記載するようにバー材の端部を鉄筋のまわりに巻き付けるときに結束バインド線を使用する場合は該結束バインド線の滑りをなくすることができることは派生的なものである。イ号物件に設けた切欠溝は、前記第1の目的を達成するために、上記(2)で記載したように、4mmバーの外周面の対向する位置にバー長さ方向に対して直角方向に延びる切欠溝を約3.5mmピッチで螺旋方向に並べて二列形成し、一つ一つの切欠溝は、バーの長さ方向に対して直角方向に真っ直ぐな弦、すなわち略1/4の円弧の両端を結ぶ線分を描く切り欠き状に設けたものであり、つまり4mmバーの外面の周方向には、4mmバーを折り曲げ易くするために一部切り欠き状の溝を形成しているに過ぎず、このような切欠溝においては、4mmバーの端部を鉄筋に結合したときに常に必ず4mmバーの端部と鉄筋との接触面間に切欠溝が存在するとは限られず、存在しない場合もあり、この場合は本件登録実用新案の上記のような作用効果、すなわちバー材の鉄筋に対する滑り抵抗を大きくして鉄筋に対しバー材の滑りを防止するという作用効果を奏するものではない。したがって、イ号物件に設けた切欠溝は本件登録実用新案における「周溝」に相当するものではない。(平成12年11月6日付け答弁書第4頁第8?29行参照)

第5 対比・判断

1.争いのない点について
本件考案とイ号物件を対比すると、本件考案の「コンクリート埋設物」及び「固定用バー材」は、イ号物件の「『4mmバーBOX』」及び「『4mmバー埋込用』」に相当し、イ号物件は、本件考案の構成要件Bを除く他の構成を充足している。
また、本件考案の構成要件Bと、イ号物件の構成要件(b)において、本件考案の「周溝」と、イ号物件の「溝(切欠溝)」は、「バーの外周面の対向する位置にバー長さ方向に対して直角方向に延び、螺旋方向に並べて二列形成された切欠溝」であることは、双方が認めているから、イ号図面に示したイ号物件の構成は、「コンクリート埋設物である『4mmバーBOX』をコンクリート型枠内面に押圧して固定するため、手による折り曲げが可能でかつ折り曲げられた状態で埋設物を型枠内面に押圧できる突張強度を有し、埋設物に取付けられると共に型枠内に配筋された鉄筋に固定されるバー材である『4mmバー埋込用』であって、その外周面の対向する位置にバーの長さ方向に対して直角方向に延びる切欠溝が螺旋方向に二列形成されてなる、コンクリート埋設物の固定用バー材」と認められる。
2.争点について
イ号物件の構成要件(b)の「切欠溝」は、「バーの外周面の対向する位置にバー長さ方向に対して直角方向に延び、螺旋方向に並べて二列形成された切欠溝」であり、バーの外周面に「切欠溝」を形成すれば、周方向一部に形成する切り欠き状の溝であっても、バインド線などの線材を滑り難くし、係止する機能を有するものと解される。
一方、本件考案の構成要件Bの「周溝」は、その明細書の考案の詳細な説明の【0009】に、「本考案においては、バー材の外面に周溝を設けることが要件であるが、この周溝は、上記した螺旋状のものに限定されず、多数の環状溝を所定ピッチで設けても良い。また、この周溝は、必ずしも全周に設ける必要はなく、プレス成形によって周方向に断続している溝を所定のピッチで設けてもよい。」と記載されているように、必ずしも全周に設ける必要はなく、プレス成形によって周方向に断続している溝を所定のピッチで設けてもよいものである。
してみると、イ号物件の構成要件(b)は、本件考案の構成要件Bを充足する。
なお、付言すると、被請求人が主張している、本件考案の「周溝」の効果として、考案の詳細な説明の【0012】に記載されている「鉄筋に対してもバー材がすべりにくくなって」いる点は、むしろ副次的効果であるし、かつ、被請求人も認めているように、イ号物件の「切欠溝」も、常に必ずではないにしても同様な作用効果を奏するものである。

第6 むすび

以上のとおりであるから、イ号物件は、本件考案の構成要件AないしCの全てを充足しており、本件考案の技術的範囲に属する。
よって、結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2001-03-28 
出願番号 実願平3-104733 
審決分類 U 1 2・ 1- YA (E04G)
最終処分 成立    
前審関与審査官 新井 夕起子  
特許庁審判長 佐田 洋一郎
特許庁審判官 宮崎 恭
鈴木 憲子
登録日 1999-06-25 
登録番号 実用新案登録第2150563号(U2150563) 
考案の名称 コンクリ-ト埋設物の固定用バ-材  
代理人 鈴江 孝一  
代理人 鈴江 正二  
代理人 樋口 武尚  

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