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審決分類 審判 全部無効 4項(134条6項)独立特許用件 訂正を認めない。無効とする(申立て全部成立) F04B
審判 全部無効 1項3号刊行物記載 訂正を認めない。無効とする(申立て全部成立) F04B
管理番号 1039440
審判番号 審判1997-19989  
総通号数 19 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2001-07-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 1997-11-20 
確定日 2001-01-04 
事件の表示 上記当事者間の登録第2118598号実用新案「空気圧縮装置及び油水分離装置」の登録無効審判事件について、併合のうえ、次の通り審決する。   
結論 登録第2118598号実用新案の明細書の請求項第1項ないし第2項に記載された考案についての登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1.手続の経緯
本件登録第2118598号実用新案は、平成2年2月17日に実用新案登録出願され、平成4年8月11日に出願公告(実公平4-33430号)され、平成8年5月20日に実用新案権の設定の登録がなされ、その後、請求項1及び2について平成9年審判第16464号(請求人:ドムニク ハンター リミテッド)及び平成9年審判第19989号(請求人:オリオン機械株式会社)の登録の無効の審判が請求され、前記平成9年審判第19989号における答弁書提出期間内の平成10年4月20日付けで明細書について訂正の請求がなされ、これに対して訂正拒絶理由が通知され、平成10年10月26日付けで前記訂正請求について手続補正がなされ、これに対して平成10年12月7日付けで訂正拒絶理由の通知がなされ、その指定期間内に意見書が提出されたものである。
第2.請求人の主張
1.平成9年審判第16464号の請求人の主張
本件登録第2118598号実用新案の請求項1、2に係る考案は、本件実用新案登録出願前に頒布された刊行物である甲第1、2号証にそれぞれ記載された考案であるから、実用新案法第3条第1項第3号に規定する考案に該当し、また、甲第1号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定に違反して実用新案登録を受けたものであるので、その登録は無効とされるべきものである旨主張し、次の甲第1?5号証を提出している。

Oel-Wasser-Trennung fur groβe Luftverdichte rstationen)」

separation from oil-contaminated compressed air condensate)」
▲3▼甲第3号証…「GO GREEN-REDUCE POLLUTI0N」
▲4▼甲第4号証…独文宣誓書(訳文付)
▲5▼甲第5号証…英文宣誓書(訳文付)
2.平成9年審判第19989号の請求人の主張
本件登録第2118598号実用新案の請求項1、2に係る考案は、本件実用新案登録出願前に頒布された刊行物である甲第1、2号証にそれぞれ記載された考案であるから、実用新案法第3条第1項第3号に規定する考案に該当し、また、甲第1、2号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定に違反して実用新案登録を受けたものであるので、その登録は無効とされるべきものである旨主張し、次の甲第1?3号証を提出している。
▲1▼甲第1号証…カタログ「Fkフクハラ/小形ドレンデストロイヤー」の写しを添付した、埼玉県浦和市北浦和1-4-7角田一之がオリオン機械株式会社代表取締役太田哲郎に宛てた平成9年9月19日付け書面
▲2▼甲第2号証…特公昭63-39799号公報
▲3▼甲第3号証…横浜市瀬谷区阿久和西1-15-5株式会社フクハラ代表取締役福原廣が長野県須坂市大字幸高246番地オリオン機械株式会社代表取締役太田哲郎に宛てた平成9年5月13日付け通知書
▲4▼証人1…角田一之
住所 埼玉県浦和市北浦和1-4-7
▲5▼証人2…福原 廣
住所 横浜市瀬谷区亜久和町3882番地の34
第3.被請求人の主張
1.平成9年審判第16464号の請求人の主張に対して、被請求人は、概略、以下の主張を行う。
i)甲第1、2号証に記載されたものは、ドレントラップ→ドレン送り装置→油水分離装置の順にドレンが流れるものである。
ii)甲第1、2号証に示される密閉槽は本件登録考案のように密閉槽に圧力のあるドレンが流入してから減圧される構成とは異なるものである。
iii)甲第1、2号証に記載されたものは、a.ベコマートでドレン液体を分離する。b.このドレンはフル自動のドレン送り装置によって圧力をかけて油水分離装置へ送られる。c.減圧室で減圧される。d.減圧されたドレンが油水分離槽へ流入する。e.油水分離。f.清水の排出 の順に、ドレンが流れるものである。
iv)甲第1号証、甲第2号証には甲第3号証を併せて考察しても本件登録考案の主要な構成である「ドレントラップの出口と、油水分離装置のドレン入口と、を連結したこと、」「内部にドレンを油と水に分離する手段を備えた密閉槽に排気口を有する油水分離装置」が記載されていないし、又、これを示唆する記載がない。
v)従って、本件登録考案と甲第1号証、甲第2号証に記載の考案は同一でない。
また、本件登録考案は「内部にドレンを油と水に分離する手段を備えた密閉槽に排気口」を有することにより、油水分離槽中へドレン及び空気が仮に噴出しても、周囲の床上を汚すことがない格別顕著な効果を奏するものであるから、当業者といえども甲第1号証、甲第2号証に記載された考案に基づいてきわめて容易に考案をすることができたものではない。
2.平成9年審判第19989号の請求人の主張に対して、被請求人は、概略、以下の主張を行う。
i)甲第1号証のカタログに示されたP18形分離槽のフタに設けられてある穴は大きな穴であって大気に対して開放されている。従ってP18形分離槽は開放槽である。P18形分離槽が解放槽であることは甲第1号証の裏面の「仕様」の欄の「最高使用圧力」の項に「P18形分離槽は大気に開放されています。」との記載より明白である。
ii)甲第1号証の第2頁右上の図において、「▲1▼▲2▼▲3▼」下の矢印で示すP18形分離槽のフタの穴の径は約40mmと大きな穴である。
甲第1号証には「排気口」は開示されていない。
iii)甲第2号証に示される油処理槽8は図面に示すように図示圧力計を備え且つ安全弁17を有して圧力容器をなしており、安全弁17が常時は動作しないことは、甲第2号証の第2頁第4欄第35行目から第3頁第5欄第25行目の記載から明らかである。即ち、ドレントラップから排出されるドレンと、このドレンに同伴する圧縮空気は油処理槽8と油吸着槽19を結合している管20をとおり、油処理槽8から油吸着槽19へ交互に送られ、常態において上記圧縮空気は間欠的に油処理槽8から管20、油吸着槽19をとおり大気に開放される。なお甲第2号証には管20をとおり大気に開放されるとあるが管20は油吸着槽19を下流側として結合されているのであるから圧縮空気室12の圧縮空気は油吸着槽19を通じて大気に開放されるのである。甲第2号証に記載のとおり、甲第2号証の安全弁17は油処理槽8の圧力容器としての安全性確保のために設けられており、排気口ではない。
iv)甲第1号証、甲第2号証には本件登録考案の主要な構成である「内部にドレンを油と水に分離する手段を備えた密閉槽に排気口を有する」ことが記載されていないし、又、これを示唆する記載がない。
v)本件登録考案と甲第1号証、甲第2号証に記載の考案は同一でない。また本件登録考案は「内部にドレンを油と水に分離する手段を備えた密閉槽に排気口」を有することにより、油水分離槽中へドレン及び空気が仮に噴出しても、周囲の床上を汚すことがない格別顕著な効果を奏するものであるから、当業者といえども甲第1号証、甲第2号証に記載された考案に基づいてきわめて容易に考案をすることができたものでもない。
第4.訂正請求
1.平成10年4月20日付け訂正請求書により求めた訂正の内容は、願書に添付した明細書を訂正請求書に添付した全文訂正明細書のとおり訂正するものであるが、要旨は次のとおりものと認める。
▲1▼明細書における「実用新案登録請求の範囲」の請求項1を下記のとおりに訂正する。
『1.ドレントラップを備えたエアータンク付の給油式空気圧縮装置において、ドレントラップの出口と、内部にドレンを油と水に分離する手段を備えた密閉槽に排気口を有する油水分離装置のドレン入口と、を連結したことを特徴とする空気圧縮装置。』
▲2▼明細書における「実用新案登録請求の範囲」の請求項2を削除する。
▲3▼明細書第4頁第14行目から第5頁第2行目(公告公報第2頁第3欄第13行目から第21行目)に記載した「本考案の第1の考案はドレントラップを備えたエアータンク付の給油式空気圧縮装置において、ドレントラップの出口と油水分離装置のドレン入口を連結したことを特徴とする空気圧縮装置である。
本考案の第2の考案は油水分離装置は密閉槽内にドレンを油と水とに分離する手段を備え、密閉槽に排気口を有することを特徴とする第1の考案記載の空気圧縮装置である。」を、
『本考案はドレントラップを備えたエアータンク付の給油式空気圧縮装置において、ドレントラップの出口と、内部にドレンを油と水に分離する手段を備えた密閉槽に排気口を有する油水分離装置のドレン入口と、を連結したことを特徴とする空気圧縮装置である。』に訂正する。
▲4▼明細書第9頁第18行目(公告公報第3頁第5欄第26行目)に記載した「本考案の第1の考案は」を『本考案は』に訂正する。
▲5▼明細書第10頁第6行目から第8行目(公告公報第3頁第6欄第5行目から第7行目)に記載した「可能となる。 本考案の第2の考案は第1の考案において油水分離装置」を『可能となるものにおいて、油水分離装置』に訂正する。
2.平成10年10月26日付け手続補正は、上記訂正請求書に添付した全文訂正明細書について、次の▲1▼、▲2▼の補正を行うものである。
▲1▼全文訂正明細書中の「実用新案登録請求の範囲」の請求項1の「1.ドレントラップを備えたエアータンク付の給油式空気圧縮装置において、ドレントラップの出口と、内部にドレンを油と水に分離する手段を備えた密閉槽に排気口を有する油水分離装置のドレン入口と、を連結したことを特徴とする空気圧縮装置。」を、
『1.ドレントラップを備えたエアータンク付の給油式空気圧縮装置において、ドレントラップの出口と、内部にドレンを油と水に分離する手段を備えた密閉槽に常時大気と連通している排気口を有する油水分離装置のドレン入口と、を連結し、ドレントラップの作動によりドレン及び空気が送られて密閉槽内で空気は減圧されてすべて排気口より大気中へ放出されることを特徴とする空気圧縮装置。』と補正する。
▲2▼全文訂正明細書の第2頁第19行から第22行に記載の「本考案はドレントラップを備えたエアータンク付の給油式空気圧縮装置において、ドレントラップの出口と、内部にドレンを油と水に分離する手段を備えた密閉槽に排気口を有する油水分離装置のドレン入口と、を連結したことを特徴とする空気圧縮装置である。」を、
『本考案はドレントラップを備えたエアータンク付の給油式空気圧縮装置において、ドレントラップの出口と、内部にドレンを油と水に分離する手段を備えた密閉槽に常時大気と連通している排気口を有する油水分離装置のドレン入口と、を連結し、ドレントラップの作動によりドレン及び空気が送られて密閉槽内で空気は減圧されてすべて排気口より大気中へ放出されることを特徴とする空気圧縮装置である。』と補正する。
第5.訂正拒絶理由通知
平成10年12月7日付け訂正拒絶理由通知は、手続補正による補正後の訂正請求に対して通知されたものであり、次の主旨の訂正拒絶の理由を含むものである。
訂正請求に係る考案は、特公昭63一39799号公報(平成9年審判第19989号の請求人が提出した甲第2号証)に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、特許法等の一部を改正する法律(平成5年法律第26号)附則第4条第1項の規定によりなお効力を有するとされた同法による改正前の実用新案法第3条第2項の規定により、出願の際独立して実用新案登録を受けることができないものである。
したがって、本件訂正請求は、同附則第4条第2項の規定により読み替えて適用する前記実用新案法第40条第5項の規定により準用する同法第39条第3項の規定に違反し、当該訂正は認められない。
第6.訂正拒絶理由通知に対する被請求人の反論
被請求人は、上記訂正拒絶理由通知に対し、意見書において、以下の旨反論する。
刊行物1:特公昭63一39799号公報(平成9年審判第19989号の請求人が提出した甲第2号証)には「槽内が仕切板により油浮上分離室と水貯槽室に区分されていると共に、それら油浮上分離室と水貯槽室の上部が圧縮空気室に形成されている密閉式油処理槽と、この油処理槽の水貯槽室に対して管を介して連なる油吸着槽と、この油吸着槽に連なる清澄水放流管を備え、エアコンプレッサのエアタンク、アフタークーラー、ドレンセパレータ、ドライヤー等の除湿装置の全部又は一部のドレン配管を、上記密閉式油処理槽の油浮上分離室に直接接続し除湿装置からの油分を含むドレンを、ドレンと共に排出される圧縮空気の圧力によって直接油処理槽及び油吸着槽に送り、ドレン内の油分を分離除去するようにしたことを特徴とするエアコンプレッサに於けるドレン油水分離装置」(刊行物1特許請求の範囲、図面参照)と記載されている。この記載のとおり、刊行物のドレン油水分離装置は密閉式油処理槽、油吸着槽及び清澄水放流管と、を有する。そして、「当該水貯槽室11と次段の油吸着槽19の間を連なる管20は配管されていて」(刊行物1第3欄第43行から第4欄第1行、図面参照)となっている。
上述より明らかなように、訂正拒絶理由通知の第3頁第22行から第23行に記載の「安全弁によって所定圧力に保持された圧縮空気Aは管20を介して大気に開放される。」との刊行物1の引用の部分は刊行物1に係る考案の作用を省記してあるものであって、上記圧縮空気Aは管20、油吸着槽19及び清澄水放流管を介して大気に開放されるものである。
今、仮に油吸着槽19を備えないで管20を介して大気に開放しておくと、空気のみならずドレンも排出されてしまうのである。即ち、管20は常時大気と連通している排気口に相当しないのである。
従って、訂正拒絶理由通知の第4頁第15行から第16行に記載の”管20”が「排気口」に相当するとのご認定は妥当性がないから、
「そして、本件訂正請求に係る考案と上記刊行物に記載されたものとを対比すると、上記刊行物に記載された考案の“油浮上分離室10”、“密閉式油処理槽8”、“管20”が、それぞれ訂正請求に係る考案の「ドレンを油と水に分離する手段」、「油水分離装置」、「排気口」に相当し、」(訂正拒絶理由通知第4頁第13行から第16行)は否認する。
従って、また、訂正拒絶理由通知第4頁第17行から第5頁第7行に記載の「両者は、ドレントラップ……程度のものである。」は否認する。
したがって、本件訂正請求に係る考案は、上記刊行物1に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものではなく、特許法等の一部を改正する法律(平成5年法律第26号)による改正前の実用新案法第3条第2項の規定に該当せず、実用新案登録を受けることができるものである。
以上のとおりであるから、本件訂正請求は、特許法等の一部を改正する法律(平成5年法律第26号)附則第4条第2項の規定により読み替えて適用する前記実用新案法第40条第5項の規定により準用する同法第39条第3項の規定に違反しないものである。
第7.訂正請求の適否についての当審の判断
1.訂正請求の要旨
上記平成10年4月20日付け訂正請求に対する平成10年10月26日付け手続補正は、訂正請求書に添付した明細書における実用新案登録請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、訂正請求書の要旨を変更するものではないから、本件訂正請求の要旨は、平成10年4月20日付け訂正請求書及び平成10年10月26日付け手続補正書の記載からみて、次の▲1▼?▲5▼のとおりのものと認める。
▲1▼願書に添付した明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1を、
「1.ドレントラップを備えたエアータンク付の給油式空気圧縮装置において、ドレントラップの出口と、内部にドレンを油と水に分離する手段を備えた密閉槽に常時大気と連通している排気口を有する油水分離装置のドレン入口と、を連結し、ドレントラップの作動によりドレン及び空気が送られて密閉槽内で空気は減圧されてすべて排気口より大気中へ放出されることを特徴とする空気圧縮装置。」と訂正する。
▲2▼願書に添付した明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項2を削除する。
▲3▼願書に添付した明細書第4頁第14行?第5頁第2行の「本考案の第1の考案はドレントラップを備えたエアータンク付の給油式空気圧縮装置において、ドレントラップの出口と油水分離装置のドレン入口を連結したことを特徴とする空気圧縮装置である。本考案の第2の考案は油水分離装置は密閉槽内にドレンを油と水とに分離する手段を備え、密閉槽に排気口を有することを特徴とする第1の考案記載の空気圧縮装置である。」(公告公報第2頁第3欄第13行目から第21行目参照)を、「本考案はドレントラップを備えたエアータンク付の給油式空気圧縮装置において、ドレントラップの出口と、内部にドレンを油と水に分離する手段を備えた密閉槽に常時大気と連通している排気口を有する油水分離装置のドレン入口と、を連結し、ドレントラップの作動によりドレン及び空気が送られて密閉槽内で空気は減圧されてすべて排気口より大気中へ放出されることを特徴とする空気圧縮装置である。」と訂正する。
▲4▼願書に添付した明細書第9頁第18行の「本考案の第1の考案は」(公告公報第3頁第5欄第26行目参照)を、「本考案は」に訂正する。
▲5▼願書に添付した明細書第10頁第6?8行の「可能となる。本考案の第2の考案は第1の考案において油水分離装置」(公告公報第3頁第6欄第5行目から第7行目参照)を、「可能となるものにおいて、油水分離装置」に訂正する。
2.訂正の目的の適否、新規事項の存否
上記▲1▼、▲2▼の訂正は、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的とするものであり、上記▲3▼?▲5▼の訂正は、▲1▼、▲2▼の訂正に伴って実用新案登録請求の範囲と考案の詳細な説明の記載を整合させるものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。そして、上記▲1▼?▲5▼の各訂正は、願書に添付した明細書又は記載した事項の範囲内における訂正である。
3.独立登録要件について
(1)訂正明細書の請求項に係る考案の要旨
本件訂正明細書の請求項に係る考案(以下「訂正請求に係る考案」という。)は、前記手続補正書に添付した補正後の訂正明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲に記載された次のとおりのものと認める。
「1.ドレントラップを備えたエアータンク付の給油式空気圧縮装置において、ドレントラップの出口と、内部にドレンを油と水に分離する手段を備えた密閉槽に常時大気と連通している排気口を有する油水分離装置のドレン入口と、を連結し、ドレントラップの作動によりドレン及び空気が送られて密閉槽内で空気は減圧されてすべて排気口より大気中へ放出されることを特徴とする空気圧縮装置。」
(2)訂正拒絶理由の引用例
平成10年12月7日付け訂正拒絶理由で引用した刊行物特公昭63-39799号公報(以下「引用例」という。)には、
「槽内が仕切板により油浮上分離室と水貯槽室に区分されていると共に、それら油浮上分離室と水貯槽室の上部が圧縮空気室に形成されている密閉式油処理槽と、この油処理槽の水貯槽室に対して管を介して連らなる油吸着槽と、この油吸着槽に連らなる清澄水放流管を備え、エアコンプレッサのエアタンク、アフタ-ク-ラ-、ドレンセパレ-タ、ドライヤ-等の除湿装置の全部又は一部のドレン配管を、上記密閉式油処理槽の油浮上分離室に直接接続し除湿装置からの油分を含むドレンを、ドレンと共に排出される圧縮空気の圧力によって直接油処理槽及び油吸着槽に送り、ドレン内の油分を分離除去するようにしたことを特徴とするエアコンプレッサに於けるドレン油水分離装置。」(第1欄第2?16行)、「除湿装置から分離されるドレンと共に排出される同伴圧縮空気のエネルギ-を利用することにより、除湿装置から排出された油分を含むドレンをその圧縮空気圧により直接油水分離装置へ送り、動力ポンプ等動力を一切要することなくドレン内の油分を効果的に除去し、良好な清澄水を得ることのできるドレン油水分離装置を提供するにあり、」(第2欄第26行?第3欄第4行)、「このドレン内には、空気圧縮時、空気圧縮機2から同伴した潤滑油が混合し、油濁水を示している。」(第3欄第23行?同第25行)、「油浮上分離室10には、底から一定高さの所に浮上油排出弁15を有する浮上油排出管16が接続されていると共に、圧縮空気室12には、圧縮空気室12内の圧縮空気圧力が予め定めた所要の設定圧力以上になった場合に大気へ放出する為の安全弁17を有する圧縮空気排出管18が接続されている。」(第3欄第36行?同第42行)、「即ち、24,25,26,27は各々エアタンク3、アフタ-ク-ラ-5、ドレンセパレ-タ6、ドライヤ-7のドレン配管を示し、それら各々にドレンを圧縮空気と共に排出できるドレントラップ又は手動弁28,29,30,31が配され、上記の内ドレン配管24,25,26,27は管32,33によって一つに集合せしめられ、管33が油処理槽8の油浮上分離室10の底部に接続されているものである。この場合、条件によっては上記除湿装置のドレン配管の各々を油処理槽8の油浮上分離室10に接続してもよい。」(第4欄第22行?同第32行)、「エアタンク3、アフタ-ク-ラ-5、ドレンセパレ-タ6、ドライヤ-7等の除湿装置で生じたドレンは、ドレンラップ又は手動弁28,29,30,31により間欠的にドレン配管24,25,26,27を通じて圧縮空気と共に排出され、その排出されたドレン及び圧縮空気は管32,33を介して先ず油処理槽8の油浮上分離室10へ送液される。油浮上分離室10へ送られると、油濁水のドレンは、その比重差により下部に水Wが、その上部に油Fが分離されて油浮上分離室10内に溜り、水Wは水貯槽室11内へも流入する。且つ、同伴圧縮空気Aは圧縮空気室12に導かれる。圧縮空気12には安全弁17が配されているので、設定圧力以上の圧力は該弁の作動により放出され、圧縮空気室には所定の圧力に保持される。且つ、ここで、水Wの液面高さが、管20の水貯槽室11内に於ける管端21以下である場合には、安全弁によって所定圧力に保持された圧縮空気Aは管20を介して大気に開放される。そして、次第に水Wが水貯槽室11内に溜り、管端21の高さを越えると、圧縮空気室12内に圧縮空気が閉じ込められるので、その圧縮空気の圧力により水Wが管端21から管20内へ押出され、且つその圧力で油吸着槽19内の油吸着材22の間を通り、その過程で水中に混入せる油粒子が油吸着材22によって吸着され、油粒子の除去された清澄水が管23を介して外部の放水系へ放水されるものである。そして、管33よりの油濁水のドレン流入量に比して、管端21から圧縮空気圧によって排出されるドレンの流出量が大となり、水貯槽室11内の水の量が次第に減少し、管端21以下になった場合には、その時点で管端21からのドレンの排出は停まり、圧縮空気室12内の圧縮空気が大気に開放され、以後ドレンの排出各にこれらの動作が繰り返される。」(第4欄第35行?第5欄第25行)等の記載があるものと認める。
そして、特に、上記「水Wの液面高さが、管20の水貯槽室11内に於ける管端21以下である場合には、安全弁によって所定圧力に保持された圧縮空気Aは管20を介して大気に開放される。」、「水貯槽室11内の水の量が次第に減少し、管端21以下になった場合には、その時点で管端21からのドレンの排出は停まり、圧縮空気室12内の圧縮空気が大気に開放され、」、「水Wが水貯槽室11内に溜り、管端21の高さを越えると、圧縮空気室12内に圧縮空気が閉じ込められる」との記載に注目すると、引用例に記載されたものは、水Wの液面高さが管20の管端21以下の状態で、管20に油吸着槽19及び清澄水放流管23が接続されていても、圧縮空気室12の空気Aは、管20、油吸着槽19及び清澄水放流管23を通じて大気に開放されていることは、明らかである。
また、特に、上記「水Wが水貯槽室11内に溜り、管端21の高さを越えると、圧縮空気室12内に圧縮空気が閉じ込められるので、その圧縮空気の圧力により水Wが管端21から管20内へ押出され、且つその圧力で油吸着槽19内の油吸着材22の間を通り、その過程で水中に混入せる油粒子が油吸着材22によって吸着され、油粒子の除去された清澄水が管23を介して外部の放水系へ放水される」との記載に注目すると、引用例に記載されたものは、水貯槽室11内の管端21の高さを越える水Wを水貯槽室11外へ排出する手段として、管20に油吸着槽19及び清澄水放流管23を設け、圧縮空気室12が形成されていることは、明らかである。
したがって、上記引用例には、
“ドレントラップ28を備えたエアタンク3付の給油式空気圧縮装置において、ドレントラップ28の出口と、内部にドレンを油と水に分離する油浮上分離室10、水貯槽室11、圧縮空気室12を備えた密閉式油処理槽8のドレン入口とを連結し、水貯槽室11内の水Wの液面が管端21の高さ以下のとき前記圧縮空気室12内の空気Aを大気に開放する管20を備え、ドレントラップ28の作動によりドレン及び空気が送られ密閉式油処理槽8内で空気は減圧され、水貯槽室11内の水Wの液面が管端21の高さ以下のとき、空気は管20より油吸着槽19を通って大気中へ放出され、水貯槽室11内の水Wの液面が管端21の高さを越えると、水Wを、前記圧縮空気室12内の圧力によって、前記管20より油吸着槽19及び清澄水放流管23を通して、その過程で水中に混入せる油粒子を油吸着材22によって吸着させて、清澄水を外部へ排出して、水貯槽室11内の水Wの液面を管端21の高さ以下に低下させ、空気Aが管20より油吸着槽19を通って大気中へ放出される空気圧縮装置、”
が記載されているものと認められる。
(3)対比・判断
本件訂正請求に係る考案と上記引用例に記載されたものとを対比すると、
上記引用例に記載されたものにおいて、管20は、前述のように圧縮空気室12内の空気Aを大気に開放する機能と管端21の高さを越える水を排出する機能を兼ねるものであり、また、上記引用例に記載されたものの“油浮上分離室10”、“密閉式油処理槽8”が、それぞれ訂正請求に係る考案の「ドレンを油と水に分離する手段」、「油水分離装置」に相当するから、
両者は、
ドレントラップを備えたエアータンク付の給油式空気圧縮装置において、ドレントラップの出口と、内部にドレンを油と水に分離する手段を備えた密閉槽に空気を大気中へ放出する排気口を有する油水分離装置のドレン入口と、を連結し、ドレントラップの作動によりドレン及び空気が送られて密閉槽内で空気は減圧されて排気口より大気中へ放出される空気圧縮装置、
である点において一致し、
▲1▼本件訂正請求に係る考案は、排気口が「常時大気と連通している」ものであり、ドレントラップの作動によりドレン及び空気が送られて密閉槽内で空気は減圧されて「すべて」排気口より大気中へ放出されるのに対して、引用例に記載されたものは、排気口が「常時大気と連通している」ものでなく、空気が「すべて」大気中へ放出されるものでない点で相違する。
そこで、この▲1▼の相違点について検討する。
上記引用例に記載されたものは、水貯槽室11内の管端21を越える水Wを圧縮空気室12内の圧力を利用して自動的に管20、油吸着槽19及び清澄水放流管23を通して外部へ排出する手段として、水貯槽室11上部に圧縮空気室12を形成し、ここに圧縮空気を貯えるために排気口が「常時大気と連通している」ものとしない構成を採用したものであることは、「管端21の高さを越えると、圧縮空気室12内に圧縮空気が閉じ込められるので、その圧縮空気の圧力により水Wが管端21から管20内へ押出され、且つその圧力で油吸着槽19内の油吸着材22の間を通り、その過程で水中に混入せる油粒子が油吸着材22によって吸着され、油粒子の除去された清澄水が管23を介して外部の放水系へ放水されるものである。」等の明細書の記載から、明らかなことである。
したがって、水貯槽室内の水を外部へ排出する手段を有しない空気圧縮装置として、排気口が「常時大気と連通している」構成とすることは、当業者がきわめて容易に想到し得ることであり、排気口が「常時大気と連通している」構成とすることによって、ドレントラップの作動によりドレン及び空気が送られて密閉槽内で空気は減圧されて「すべて」排気口より大気中へ放出されるから、上記相違点における本件訂正請求に係る考案の構成は、引用例に記載されたものに基づいて当業者がきわめて容易に想到し得たものとするのが相当である。
そして、本件訂正請求に係る考案の作用効果は、上記引用例に記載されたものから予測し得る程度のものである。
なお、被請求人は、引用例に記載されたものについて、「仮に油吸着槽19を備えないで管20を介して大気に開放しておくと、空気のみならすドレンも排出されてしまうのである。即ち、管20は常時大気と連通している排気口に相当しない。」旨主張する。しかしながら、この主張は水貯槽室11内の水Wの液面の高さが管20の管端21を越える場合の主張と認められるが、本件訂正請求に係る考案においても、油水分離装置内のドレンの液面の高さが排気口を越える場合には、排気口を通じて、空気のみならずドレンも排出されるものと認められ、本件訂正請求に係る考案も所定水位以下で排気口は常時大気と連通するものであるから、被請求人の上記主張は採用できない。
したがって、本件訂正請求に係る考案は、上記引用例に記載されたものに基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、特許法等の一部を改正する法律(平成5年法律第26号)による改正前の実用新案法第3条第2項の規定により、出願の際独立して実用新案登録を受けることができないものである。
(4)むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成5年法律第26号)附則第4条第2項の規定により読み替えて適用する同法による改正前の実用新案法第40条第5項の規定により準用する同法第39条第3項の規定に違反するものであるから、当該訂正は認めることはできない。
第8.本件考案の要旨
「第7.訂正請求の適否についての当審の判断」において述べたとおり、本件訂正請求は認めることができないから、本件登録第2118598号実用新案の請求項1及び2に係る考案は、願書に添付した明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲に記載された次のとおりのものと認める。
「1.ドレントラップを備えたエアータンク付の給油式空気圧縮装置において、ドレントラップの出口と油水分離装置のドレン入口を連結したことを特徴とする空気圧縮装置。
2.油水分離装置は密閉槽内にドレンを油と水に分離する手段を備え、密閉槽に排気口を有することを特徴とする請求項1記載の空気圧縮装置。」
第9.引用例
平成9年審判第19989号の請求人が甲第2号証として提出した刊行物特公昭63-39799号公報(前記訂正拒絶理由に引用した刊行物、以下同様に「引用例」という。)には、前記のとおり、
“ドレントラップ28を備えたエアタンク3付の給油式空気圧縮装置において、ドレントラップ28の出口と、内部にドレンを油と水に分離する油浮上分離室10、水貯槽室11、圧縮空気室12を備えた密閉式油処理槽8のドレン入口とを連結し、水貯槽室11内の水Wの液面が管端21の高さ以下のとき前記圧縮空気室12内の空気Aを大気に開放する管20を備え、ドレントラップ28の作動によりドレン及び空気が送られ密閉式油処理槽8内で空気は減圧され、水貯槽室11内の水Wの液面が管端21の高さ以下のとき、空気は管20より油吸着槽19を通って大気中へ放出され、水貯槽室11内の水Wの液面が管端21の高さを越えると、水Wを、前記圧縮空気室12内の圧力によって、前記管20より油吸着槽19及び清澄水放流管23を通して、その過程で水中に混入せる油粒子を油吸着材22によって吸着させて、清澄水を外部へ排出して、水貯槽室11内の水Wの液面を管端21の高さ以下に低下させ、空気Aが管20より油吸着槽19を通って大気中へ放出される空気圧縮装置、”
が記載されているものと認める。
第10.対比・判断
1.請求項1に係る考案について
引用例に記載されたものの密閉式油処理槽8は、内部に油浮上分離室10を備えるものであるから、請求項1に係る考案の「油水分離装置」に相当し、
請求項1に係る考案と上記引用例に記載されたものとは、ドレントラップを備えたエアータンク付の給油式空気圧縮装置において、ドレントラップの出口と油水分離装置のドレン入口を連結した空気圧縮装置、
である点において一致し、上記引用例に記載されたものは、請求項1に係る考案の構成を悉く備えるものである。
したがって、請求項1に係る考案は、引用例に記載されたものと同一の考案である。
2.請求項2に係る考案について
引用例に記載されたものの密閉式油処理槽8は、内部に油浮上分離室10を備えるものであるからドレンを油と水に分離する手段を備え、本件請求項2に係る考案の「油水分離装置」に相当するものと認められ、また、引用例に記載されたものの“管20”は、圧縮空気室12内の空気を大気に開放する機能と管端21の高さを越える水を排出する機能を兼ねるものであるから、圧縮空気室12内の空気を大気に開放する機能に着目して、本件請求項2に係る考案の「排気口」に相当するとすることができるので、請求項2に係る考案と上記引用例に記載されたものとは、
油水分離装置は密閉槽内にドレンを油と水に分離する手段を備え、密閉槽に排気口を有する点で一致し、更に、前記請求項1に係る考案は引用例に記載されたものと同一の考案であるから、結局、上記引用例に記載されたものは、請求項2に係る考案の構成を悉く備えるものである。
したがって、請求項2に係る考案は、引用例に記載されたものと同一の考案である。
第9.むすび
以上のとおりであるから、本件請求項1、2に係る考案は、上記引用例に記載されたものと同一であるから、本件請求項1、2に係る考案の実用新案登録は、特許法等の一部を改正する法律(平成5年法律第26号)による改正前の実用新案法第3条の規定に違反してされたものであるから、同実用新案法第37条第1項第1号に該当し、無効とされるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 1999-03-12 
結審通知日 1999-04-02 
審決日 1999-04-07 
出願番号 実願平2-15063 
審決分類 U 1 112・ 113- ZB (F04B)
U 1 112・ 856- ZB (F04B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 橋本 武石橋 和夫  
特許庁審判長 蓑輪 安夫
特許庁審判官 久保田 健
清田 榮章
登録日 1996-05-20 
登録番号 実用登録第2118598号(U2118598) 
考案の名称 空気圧縮装置及び油水分離装置  
代理人 新井 一郎  
代理人 押本 泰彦  
代理人 稲木 次之  
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