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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効とする。(申立て全部成立) A61G
管理番号 1039463
審判番号 無効2000-35505  
総通号数 19 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2001-07-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2000-09-21 
確定日 2001-05-14 
事件の表示 上記当事者間の登録第2033050号実用新案「ベッドにおける床部等の起動部の組み付け構造」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 実用新案登録第2033050号の請求項1?3に係る考案についての実用新案登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 〔1〕手続の経緯
本件実用新案登録第2033050号(以下「本件」という。)及び本件無効審判事件に係る手続の経緯の概要は、以下のとおりである。
(1)本件の実用新案登録出願:平成3年8月7日(実願平3-70176号)
(2)出願公告:平成5年12月8日(実公平5-46747号)
(3)実用新案権の設定登録:平成6年9月21日
(4)本件無効審判請求:平成12年9月21日付け
(5)答弁書:平成13年2月16日付け
(6)上申書(利害関係を証明する書面):平成13年2月28日付け
(7)口頭審理:平成13年3月2日

〔2〕当事者の主張
1.請求人は、「実用新案登録第2033050号は、これを無効とする、審判費用は被請求人の負担とする。」(請求の趣旨)との審決を求め、その理由として、「本件登録実用新案は、甲第1号証若しくは甲第2号証のものと同一又は甲第1号証から甲第7号証に記載された考案に基づいて、当業者が極めて容易に考案することが出来たものであるから、実用新案法第3条第1項3号の規定又は同法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであ(る。)」(審判請求書中理由の要点)旨主張し、証拠方法として甲第1?7号証を提出した。
(証拠方法)
甲第1号証:実願昭51-80453号(実開昭53-10号)のマイクロフィルム
甲第4号証:実願昭47-18627号(実開昭48-95054号)のマイクロフィルム
甲第5号証:実願昭58-13546号(実開昭59-137409号)のマイクロフィルム
甲第6号証:実願昭54-156979号(実開昭56-75309号)のマイクロフィルム
甲第7号証:実願昭50-12969号(実開昭51-96148号)のマイクロフィルム
なお、請求人は、平成13年3月2日期日の口頭審理において、請求の理由中実用新案法第3条第1項第3号に係る理由及び甲第3号証を取り下げる旨陳述した。

2.一方、被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする。」(答弁の趣旨)との審決を求め、その理由として、「本件登録実用新案に係る考案は、甲第1号証又は甲第2号証のものと同一ではなく、また甲第1?7号証に記載された考案に基づいて、当業者が極めて容易に考案することができたものでもない。従って本件考案は実用新案法第3条第1項第3号の規定又は同法第3条第2項の規定に該当せず、登録されるべきが相当である。」旨主張した。

〔3〕本件実用新案登録に係る考案
本件実用新案登録に係る考案は、明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1?3に記載された次のとおりのものであると認める。
「【請求項1】床部等の位置を調節するための機構を備えたベッドにおいて、前記機構の起動部に、細径部を形成した係止ピンを取り付けると共に、この係止ピンの細径部に弾性的に係止する弾性係止部材とで、前記起動部をベッド本体枠や床部等に組み付ける構成としたことを特徴とするベッドにおける床部等の起動部の組み付け構造。
【請求項2】請求項1記載の弾性係止部材は、一部を切り欠いたリング形状のものであり、細径部の径に比較して小なる内径を有し、弾性変形を許容する狭窄部を有するものであることを特徴とするベッドにおける床部等の起動部の組み付け構造。
【請求項3】請求項1記載の弾性係止部材は、一部を切り欠いたリング形状のものであり、細径部の径に比較して大なる内径を有し、弾性変形を許容する屈曲部を有し、前記切り欠いた箇所に切り欠いた箇所を連結させるための係止手段を設けたものであることを特徴とするベッドにおける床部等の起動部の組み付け構造。」

〔4〕当審の判断
1.甲号各証
(1)請求人の提出した甲第1号証には、「ベッドの支持調節装置」に関して、第3図に「ベッドの支持調節装置の使用状態図」が、第4図に「ベッドの支持調節装置の全体図」が、第8図に「ベッドフレームへの取付金具部分の拡大図」が図示されるとともに、その説明が、明細書第4頁第9行目以下にされている。そして、甲第1号証の明細書第6頁第4?9行には、「一方のフレームの方への取付としては、レバー5 の一端に孔26をあけておき、取付プレート27に円周上へ溝28を持った軸29を固定しておき、孔26へ軸29を通し、スナップリング30で回転自在に取付けることができる。」と記載されており、第8図には、「ベッドの支持調節装置」のレバー5の一端に孔26をあけておき、ベッドフレームに固定される取付プレート27に細径部(溝28)を形成した軸29を取付けるとともに、孔26へ軸29を通し、この軸29の細径部にスナップリング30を係止して、取付プレート27にレバー5を取り付ける態様が図示されている。
これらからみて、甲第1号証には、床部の位置を調整する(ベッドの床面の少なくとも一部分の傾度を調整する)ための機構を備えたベッドにおいて、前記機構を、細径部を形成した係止ピンとこの係止ピンの細径部に係止する係止部材とで、ベッドに取り付けることが開示されているものと認められる。
(2)次に、甲第2号証には、「ランダルベッド」について、全体写真及び各部の拡大写真とその説明が記載され、また、各商品の価格が示されており、第13頁の「数々の新機構を取り入れたランダルベッド」の項には、「ランダルベッド」の全体写真と位置調節機構の起動部の要部写真が掲載されており、写真4のものは、位置調節機構の起動部が、係止ピンと、この係止ピンの孔に係止されるはずれ止めピン(ベータピンと認められる)とで、ベッド床部に組み付けられる形態のものであると認められる。
これらからみて、甲第2号証には、床部等の位置を調節するための機構を備えたベッドにおいて、位置調節機構の起動部が係止ピンとこの係止ピンの孔に係止されるベータピンとでベッド床部に組み付けられた構成(考案)が記載されているものと認められる。
(3)また、甲第4号証には「弾性座金」に関して、甲第5号証には「スナップ止め金」に関して、甲第6号証には「機械部品組立用外側スナップリング」に関して、甲第7号証には「動力農機等の係止装置」に関してそれぞれ記載されており、細径部を形成した係止ピンとこの係止ピンの細径部に弾性的に係止する弾性係止部材が各種示されているものと認められる。

2.対比・判断
(1)まず、本件請求項1に係る考案と甲第2号証に記載された考案とを対比すると、両者は、床部等の位置を調節するための機構を備えたベッドにおいて、前記機構の起動部に、係止ピンを取り付けると共に、この係止ピンに係止する係止部材とで、起動部をベッド本体枠や床部等に組み付ける構成である点、で一致するものと認められる。
一方、以下の点で、両者は相違するものと認められる。
(相違点)
起動部の組み付け構造に関して、本件考案が細径部を形成した係止ピンとこの係止ピンの細径部に弾性的に係止する弾性係止部材とで起動部を組み付けたものであるのに対して、甲第2号証の考案では孔を設けた係止ピンと該係止ピンの孔に挿入されるベータピンとで起動部を組み付けている点。
(2)そこで、相違点について検討する。
床部の位置を調節する(ベッドの床面の少なくとも一部分の傾度を調節する)ための機構を備えたベッドにおいて、前記機構を細径部を形成した係止ピンとこの係止ピンの細径部に係止する係止部材とでベッドに取り付けるようにすることは、前示した甲第1号証に開示されているように、本件実用新案登録の出願前にすでに公知のことにすぎない。
そして、細径部を形成した係止ピンとこの係止ピンの細径部に弾性的に係止する弾性係止部材とによる取付機構は、甲第4?7号証にもみられるように本件実用新案登録の出願前周知のものにすぎない。
そうすると、相違点は、甲第1号証によって本件実用新案登録の出願前公知の事項及び甲第4?7号証などによって出願前周知の事項に基づいて、当業者にはきわめて容易になし得ることというべきである。
(3)なお、被請求人は、工具を必要としないで組み付けられる点を本件考案の効果として強調するが、甲第7号証にもみられるように、工具を必要としないで手で組み付けられる弾性係止部材は、各種用途の係止部材として本件実用新案登録の出願前周知のものであり、ベッド本体等に工具を必要としないで組み付けられるという効果は、当業者にはきわめて容易に予測し得る程度のことにすぎない。
また、被請求人は、平成13年3月2日期日の口頭審理において、「i)細径部を形成した係止ピンと、この係止ピンの細径部に弾性的に係止する弾性係止部材とで、ベッド本体等に起動部を組み付ける場合、この起動部の先端部とハンドル側の両側で、同じ構造で取り付けることはできない。すなわち、先端部の構造を、そのままハンドル側で適用できるものではない。 ii)そこで本件考案では、前記ハンドル側で係止ピン等を取り付ける場合、細径部を形成した係止ピンを起動部端部の外側に突出させて構成している。このことは、「組み付ける」の一実施例として記載されている。」旨陳述しているが、本件の明細書の実用新案登録請求の範囲には、弾性係止部材を設ける位置や取付部の具体的構造については記載がないので、本件考案が、請求人の主張する構成のものであるとすることはできない。
なお、甲第1号証の第3図のものも、細径部を形成した係止ピン(軸29)が部材(取付プレート27)に植設されているものであり、本件の図1のように第1係止ピン5 を起動部1 に突出させて構成することも、かかる公知の事項に基づいて当業者にはきわめて容易になし得ることにすぎない。
(4)次に、請求項2に係る考案は、請求項1に係る考案において、弾性係止部材を、一部を切り欠いたリング形状のものであって係止ピンの細径部の径に比較して小なる内径を有し弾性変形を許容する狭窄部を有するものとしたものであり、その実施例として図4が示されている。
そこで、この点について検討すると、甲第4号証にも、弾性座金1 に弾性力をもって締め付けるための切欠部1d(本件考案の「狭窄部」に相当するものと認められる)を設けた構成が記載されているように(明細書第2頁第3?4行、第3図ほか)、本件の出願前周知の手段にすぎず、その効果も当業者がきわめて容易に予測し得ることにすぎない。
(5)請求項3に係る考案は、請求項1に係る考案において、弾性係止部材は、一部を切り欠いたリング形状のものであって係止ピンの細径部の径に比較して大なる内径を有し弾性変形を許容する屈曲部を有し切り欠いた箇所に切り欠いた箇所を連結させるための係止手段を設けたものであり、その実施例として図6及び図7が示されている。
そこで、この点について検討する。
甲第6号証(明細書第3頁第11?22行、第1?3図)には、フック付きラチェット3 と段付きラチェット4 を有する係止手段が開示されており、このものは、本件請求項3に係る考案の特徴点である「一部を切り欠いたリング形状のものであって係止ピン(取付部品9)の細径部の径に比較して大なる内径を有し、切り欠いた箇所に切り欠いた箇所を連結させるための係止手段」に実質的に相当するものと認められる。また、甲第5号証のスナップ止め金(第2図)には、茎片4 が設けられており、これが同じく「弾性変形を許容する屈曲部」に実質的に相当するものと認められる。
そうすると、本件請求項3に係る考案の特徴点は、本件出願前公知の弾性係止部材の構成を寄せ集めたにすぎないものであり、その点は当業者がきわめて容易になし得る設計的事項というべきである。その効果も当業者がきわめて容易に予測し得ることにすぎない。
〔5〕むすび
以上のとおりであるから、本件請求項1乃至請求項3に係る考案は、いずれも甲第1、2、4?7号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであって、実用新案法第3条第2項の規定に違反してされたものであるから、それらの実用新案登録は、同法第37条第1項第2号の規定により無効とすべきものである。
また、審判に関する費用については、実用新案法第41条の規定で準用する特許法第169条第2項の規定でさらに準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審決日 2001-04-03 
出願番号 実願平3-70176 
審決分類 U 1 112・ 121- Z (A61G)
最終処分 成立    
前審関与審査官 川端 修山中 真  
特許庁審判長 青山 紘一
特許庁審判官 熊倉 強
藤本 信男
登録日 1994-09-21 
登録番号 実用新案登録第2033050号(U2033050) 
考案の名称 ベッドにおける床部等の起動部の組み付け構造  
代理人 三觜 晃司  
代理人 伊藤 哲夫  

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