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審決分類 審判 補正却下不服   A47B
審判 補正却下不服   A47B
管理番号 1039470
審判番号 補正2000-50106  
総通号数 19 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2001-07-27 
種別 補正却下不服の審決 
審判請求日 2000-11-02 
確定日 2001-06-04 
事件の表示 平成 5年実用新案登録願第 60152号「保護パット」において、平成12年5月12日付けでした手続補正に対してされた補正の却下の決定に対する審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 原決定を取り消す。
理由 1.手続の経緯
本願は、平成5年11月9日の出願であって、平成12年5月12日付けで明細書を補正する手続補正がなされたところ、この補正は、平成12年8月29日付けで決定をもって却下された。

2.原決定の理由
前記補正の却下の決定の理由は次のとおりのものである。
「次の事項は、出願当初明細書に記載も示唆もされておらず、その記載から自明な事項とも認められない。
1.請求項1、【0006】、【0023】の記載『アルミニウムの切片を含む細かくした紙材からなる主材』
この点に関し、当初明細書では、主材として『細かくした紙材からなる主材』(請求項、【0006】等参照)、主材の種類としてアルミニウム切片は例示されていない(【0007】)、混入するアルミニウムとして『細片又は粉体状のアルミニウムを混入』(【0009】参照)と記載されている。補正後の記述では、(1)アルミニウムの形状は切片のまま、あるいは(2)主材である紙材の一種としてアルミニウム切片が含まれていると、2とおりに解釈できる内容となっているが、当初明細書にはその両方が記載されておらず、示唆もされていない。また、当初明細書では、主材と別建てで「混入するアルミニウム」と明記していることからも、アルミニウム細片や粉体状のアルミニウムが紙材の一種であると理解することはできない。
2.【0014】の記載『また、組成中に上記のように切断したアルミニウムの切片を混入すると、加熱の際の熱伝導を改善することができる。』
当初明細書には、実施例としてではなく、「熱可塑性樹脂を溶融したり、比較的高温で硬化する熱硬化性樹脂を使用する場合には、再片(当審注:細片の誤り。)又は粉体状のアルミニウムを混入すると、加熱の際の熱伝導を改善することができる」(【0009】参照)と記載されているのみであるから、このような補正後の特定の組合せの組成にたいして、混入することは、まさに、新たな実施例の追加にあたり、当初明細書の記載から想像できるものではない。
したがって、この補正は、明細書の要旨を変更するものと認められ、実用新案法第13条の規定によって準用する特許法第53条第1項の規定により、上記結論の通り決定する。」

3.当審の判断
3-1.補正後の明細書の請求項1、段落【0006】、同【0023】に記載されている「アルミニウムの切片を含む細かくした紙材からなる主材」について
(1)補正後の明細書の請求項1、段落【0006】、同【0023】に記載されている「アルミニウムの切片を含む細かくした紙材からなる主材」は、
a.アルミニウムの切片を、細かくした紙材として含んでいる主材と、
b.細かくした紙材からなり、さらにアルミニウムの切片も含んでいる主材、の二つの内容を意味していると考えられる。
(2)願書に最初に添付した明細書(以下、「出願当初明細書」という。)には、
「【課題を解決するための手段】
以上の目的を達成するための本考案の保護パットの構成は、細かくした紙材からなる主材と、合成樹脂からなる結合材との混合物を、対象物品又はその包装体の角部又は端部に適合する形状に形成した型内に入れて固化させた部材からなり、物品の角部又は端部を保護用に使用するものである。」(段落【0006】)、
「前記紙材は、板紙、上質紙、積層紙、アルミニウムフィルム、合成樹脂フィルムなどをラミネートした複合紙などであり、段ボール、印刷紙、紙管などの回収品を使用してもよい。紙材を細かくする手段には特に限定はなく、例えば各種クラッシャー、特に刃の着いたクラッシャー、グラインダーなど適宜の手段を用いることができる。また切断したり削ったりした際にでる切り屑を用いることもできる。細片の大きさは、積層紙など厚みのあるものと、通常の紙とで必ずしも同じ条件とはならないが、一般的には数mm?2cm角程度とすることが適当である。」(段落【0007】)、
「使用しうる前記合成樹脂には特に限定はないが、使用しうる熱可塑性樹脂として、……などのである。……また、使用しうる熱硬化性樹脂として、……などなどである。」(段落【0008】)、
「熱可塑性樹脂を溶融したり、比較的高温で硬化する熱硬化性樹脂を使用する場合には、細片又は粉体状のアルミニウムを混入すると、加熱の際の熱伝導を改善することができる。したがって、アルミ箔ラミネート紙の切落しや使用済み紙材を細片としたものも使用可能である。」(段落【0009】)、
「図6に示す実施例3の保護パット1の組成は、パット稜部7をカット(図7)した以外は実施例1の保護パット1と同様の構造としたものである。前記パット稜部7のカットは、射出成形時の充填材料の回りを改善するためであって、曲線状にカットしてもよい。
実施例3の保護パット1の組成は、紙/熱可塑性樹脂フィルム、紙/アルミ箔/熱可塑性樹脂フィルム、熱可塑性樹脂フィルム/紙/樹脂コート、熱可塑性樹脂コーティング紙、紙/アルミ箔などの複合紙で形成した紙器、切落し印刷用紙などの紙材をほぼ12mm角に切断したものに、主剤を硬化させるに必要とする量として30重量部のポリエチレン樹脂を結合剤として追加投入し、射出成形したものである。なお前記各材料中の熱可塑性樹脂組成は、限定したものを使用していない。」(段落【0018】)
との記載がある。
(3)以上の記載によれば、出願当初明細書には、紙材は、板紙、上質紙、積層紙の外、アルミニウムフィルムや合成樹脂フィルムをラミネートした複合紙などであり、細片又は粉体状のアルミニウムを混入すると、加熱の際の熱伝導を改善することができ、アルミ箔ラミネート紙の切落しや使用済み紙材を細片としたものも使用可能であることが記載されており、紙材として、板紙、上質紙、積層紙などを使用した場合には、細片又は粉体状のアルミニウムを混入すると、加熱の際の熱伝導を改善できること、また、紙材として、アルミニウムフィルムをラミネートした複合紙、即ち、アルミ箔ラミネート紙を使用した場合にも、加熱の際の熱伝導を改善できることが示唆されている。
そして、紙材として、アルミニウムフィルムをラミネートした複合紙、即ち、アルミ箔ラミネート紙を使用した場合には、紙材は細かく切断されて細片となり、このアルミニウムの細片つまり切片が、細かくした紙材として主材に含まれていると考えられる。
また、 紙材として、板紙、上質紙、積層紙などを使用した場合に、細片のアルミニウムを混入する際、主材にその一部として混入するのかどうかについては、前記段落【0009】の記載からは明らかではないが、例えば、細片のアルミニウムを、紙材からなる主材と合成樹脂からなる結合材に追加するかたちで混入するか、主材にその一部として混入するかで、混合物として格別の相違はないと考えられるから、出願当初明細書に、細片のアルミニウムを、主材にその一部として混入すること、が記載されていないということはできない。
そうすると、出願当初明細書には、前記a.及びb.の二つの内容が記載されているといえる。

3-2.補正後の明細書の段落【0014】の「また、組成中に上記のように切断したアルミニウムの切片を混入すると、加熱の際の熱伝導を改善することができる。」について
補正後の明細書の段落【0014】の記載は、次のとおりである。
「【実施例】以下添付の図面を参照して実施例により本考案を説明する。
図6に示す実施例の保護パット1は、1辺がほぼ100mm、厚さ5mmの板が3枚直角に突き合わされた形状のものであり、内側面2を、物品3(図2,3)の角部に当てるように取り付けるものである。また、前記したように、保護パット1は、物品3を段ボール箱などに入れ、この段ボール箱などの内外角部にとりつけることもできる。この保護パット1は、パット稜部7にカット(図7)を形成しているが、このパット稜部7のカットは射出成形時の充填材料の回りを改善するためであって、曲線状にカットしても良い。
この実施例の保護パット1の組成は、紙/熱可塑性樹脂フィルム、紙/アルミ箔/熱可塑性樹脂フィルム、熱可塑性樹脂フィルム/紙/樹脂コート、熱可塑性樹脂コーティング紙、紙/アルミ箔などの複合紙で形成した紙器、切落し印刷用紙などの紙材をほぼ12mm角に切断したものに、主材を硬化させるに必要とする量として30重量部のポリエチレン樹脂を結合剤として追加投入し、射出成形したせものである。なお、前記各材料中の熱可塑性樹脂組成は、限定したものを使用していない。また、組成中に上記のように切断したアルミニウムの切片を混入すると、加熱の際の熱伝導を改善することができる。」
この段落【0014】の「また、組成中に上記のように切断したアルミニウムの切片を混入すると、加熱の際の熱伝導を改善することができる。」における「上記のように切断したアルミニウムの切片」は、同段落に記載の、ほぼ12mm角に切断した、紙/アルミ箔/熱可塑性樹脂フィルム、紙/アルミ箔などの複合紙を指していると解され、「組成中に上記のように切断したアルミニウムの切片を混入すると」は、紙/アルミ箔/熱可塑性樹脂フィルム、紙/アルミ箔などの複合紙を紙材とし、紙材をほぼ12mm角に切断した場合を意味していると理解できる。そして、そのような場合に、加熱の際の熱伝導を改善することができることは、前記3-1.(3)で述べたように出願当初明細書に記載されている。

3-3.そうしてみると、原決定において指摘の事項は、いずれも出願当初明細書に記載された事項の範囲内のものであり、前記手続補正は、明細書の要旨を変更するものではない。

4.したがって、前記手続き補正を却下すべきものとした原決定は失当である。
よって、結論のとおり審決する。
審決日 2001-04-26 
出願番号 実願平5-60152 
審決分類 U 1 7・ 11- W (A47B)
U 1 7・ 2- W (A47B)
最終処分 成立    
前審関与審査官 山田 忠夫長谷部 善太郎見目 省二  
特許庁審判長 田中 弘満
特許庁審判官 鈴木 公子
伊波 猛
考案の名称 保護パット  
代理人 野口 賢照  
代理人 小川 信一  
代理人 斎下 和彦  

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