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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効としない H05K
管理番号 1039480
審判番号 無効2000-35007  
総通号数 19 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2001-07-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2000-01-12 
確定日 2001-05-17 
事件の表示 上記当事者間の登録第1889055号実用新案「テ-ピング部品の供給装置」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1.手続の経緯・本件考案
本件登録第1889055号実用新案(以下、「本件考案」という。)についての出願は、昭和59年9月12日に出願され、平成3年3月15日に出願公告(実公平3-10709号)がされた後、平成4年2月25日にその考案について登録の設定登録がされたもので、その考案の要旨は、明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲第1項に記載された次のとおりのものにあると認める。
「1.多数の電子部品をテープに配列したテーピング部品を電子部品自動組付機の組付位置に向けて順次に送入する複数個の供給ユニットを有するテーピング部品供給装置において、前記組付位置の後方に横長に延設した供給台上にテーピング部品を幅広に供給する第1の供給ユニットと、テーピング部品を幅狭に供給する第2の供給ユニットとを前記供給台上に予め位置決めピンで定めた取付位置幅毎に並列して取付可能にし、このとき前記第1の供給ユニットの取付位置幅が前記第2の供給ユニットの取付位置幅の整数倍又は整数比に形成されていることを特徴とするテーピングの部品供給装置。」

2.請求人の主張
これに対して、請求人は、本件考案は本件考案についての出願前に頒布された刊行物である、後述する甲第1号証、又は甲第1号証及び甲第2号に記載された考案に基いて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、したがって、本件考案の実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してされたと主張して、証拠方法として、甲第1号証(米国特許第4,438,559号明細書)、甲第2号証(チップ・プレーサー MPS100TC 技術仕様書、日本ユーエスエム株式会社)、甲第3号証(特開昭57-15694号公報)、甲第4号証(特開昭57-33141号公報)、甲第4号証の2(特公昭59-7611号公報)、甲第5号証(特開昭57-34400号公報)及び甲第6号証(特開昭57-39599号公報)を提出している。

3.被請求人の主張
一方、被請求人は、(1)本件考案は、甲第1号証に記載された考案に基いて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものではないし、(2)また、甲第2号証は、本件考案についての出願前に頒布された刊行物であるとはいえないし、(3)更に、仮に甲第2号証が本件考案についての出願前に頒布された刊行物であるとしても、本件考案は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された考案に基いて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものではない旨の主張をしている。

4.甲第1号証ないし甲第6号証の記載事項の概要
4-1.甲第1号証(米国特許第4,438,559号明細書)
本件考案についての出願前に頒布された刊行物である甲第1号証には、図3、図9?13、図31?33と共に、次の事項が記載されている。
(1)「本発明は、一般的には、リード線を持たないチップの形態をとる電子部品をプリント回路基板又は他の同様の半加工製品に自動的に取り付ける技術に関する。」(第1欄第7行?第10行、翻訳文第1頁第4行?第5行)
(2)「そこで、本発明の第一の目的は、形状や大きさの異なる様々な種類のリードレス部品を簡単に取り扱うことにより、それらの部品を1つの半加工製品上に混合して取り付けるための方法及び装置を提供することである。」(第1欄第40行?第44行、翻訳文第1頁下から第6行?第4行)
(3)「リード線を持たない様々に異なる種類の電子部品を収納し、供給する電子部品保持テープを対応する数だけ収納する複数の等間隔に配置されたテープカートリッジを含む供給装置」(第2欄第50行?第54行、翻訳文第3頁第12行?第15行)
(4)「リードワイヤを持たない電子部品C(以下、「チップ」という)は供給装置2により供給され、搬送装置4によりローディング装置6へ搬送され、位置決め装置8により既に位置決めされているプリント回路基板の上にローディング装置6により取り付けられる。
供給装置は図3及び図31に示すような多数のカートリッジ9を備えている。各々のカートリッジ9は、互いに平行な2枚の側板10及び11(側板11については図7を参照)が複数個の結合材で互いに結合されたものであって、支持台12上に配設された位置決めブロック14及び16と、本発明の装置の本体フレーム18に固定された当て板20に一部分が埋め込まれている位置決めピン22とにより位置決めされ、カートリッジ9は蝶ナット24により位置決めブロック16に固定されている。」(第4欄第52行?第68行、翻訳文第6頁第3行?第12行)
(5)「これら摺動体172は、本体フレーム18に固定されたブラケット182により上下方向に摺動可能に保持されており、摺動体の下端部に横長の可動刃保持体174が固定されている。多数のカートリッジ9に対応して配設された可動刃保持体174は、多数の可動刃184を保持する。図31及び図32に斜視図で示す各可動刃184は可動刃保持体174に上下方向に摺動可能、且つ回転不能に取り付けられ、スプリング186及び188によって下方へ付勢されて、常時、止め輪190が可動刃保持体174に形成された溝192の上向きの壁面194に当接するような状態で保持される。」(第6欄第64行?第7欄第8行、翻訳文第9頁第4行?第11行)
(6)「同様に図31及び図32に斜視図で示す固定刃196は、スプロケットホィール45によって送られたテープ25の先端部が搬送装置4のパレット198の把持爪200に把持されている間に下降させられる可動刃184と協働して、テープ25(正確には、テープ25から上テープ38が剥がされたもの)を切断するために、図3に示す当て板20に固定されている。」(第7欄第9行?第16行、翻訳文第9頁第12行?第16行)
(7)「図10及び図11に示すように、パレット198は本体部206と、これにボルト締めされた把持部208とから成る。把持部208の一側縁に沿って、多数の収容溝210が多数のカートリッジ9の部品供給部分(ガイド溝44)の間隔と等しい間隔で設けられている。各収容溝210は上記側縁に対し垂直に延出し、テープ25の幅よりわずかに広い幅を有し、その両側部には、図12、図13、図32及び図33に拡大して示すように、一対の押え爪212が設けられている。押え爪212はばね鋼製であって、自信の弾性によって先端部が収容溝210に向かう方向に付勢されているが、先端が斜めに曲げ起こされて、ガイド部214を形成しているため、前述のテープ送り装置41によって送られたテープ25の先端が収容溝210に進入するのを妨げることはない。収容溝210に進入した後、切断装置163によって切断されたテープ25の先端部を、1個のチップCを収容する単位テープ216(図33)という。切断された単位テープ216は、押え爪212と収容溝210とからなる把持爪200によって正確に位置決めさせた状態で把持され、パレット198の移動に伴って搬送される。把持爪200は、2つのパレット198が端面で互いに当接されたときに、1つのパレットと別のパレットとの接合部でも、パレットの配列間隔が維持されるように、各パレット上に配設されている。」(第7欄第24行?第51行、翻訳文第9頁第21行?第10頁第7行)
上記記載事項(1)、(2)、(4)と図3、31の記載とからみて、甲第1号証には、次の発明が記載されていると認められる。
「多数の電子部品をテープに配列したテーピング部品を電子部品自動組付機の組付位置に向けて順次に送入する複数個のカートリッジ9を有するテーピング部品供給装置において、前記組付位置の後方に横長に延設した支持台12上にカートリッジ9を前記支持台12上に予め位置決めブロック14及び16で定めた取付位置幅毎に並列して取付可能にしたテーピングの部品供給装置」
4-2.甲第2号証(チップ・プレーサー MPS100TC 技術仕様書、日本ユーエスエム株式会社)
本件考案についての出願前に頒布された刊行物であるか否かについて争いのある甲第2号証には、次の事項が記載されている。
(1)「部品キャリッジは1台で、8mmテープフィーダー、12mmテープフィーダー、振動フィーダー等を最大60チャンネル自由に組合せ取付けることができる。」(第2頁第7行?第9行)
(2)「1枠に8mmテープでは20種、12mmテープでは10種、振動フィーダーでは4基まで取付く、但し振動フィーダーはキャリッジ当り6基までである。」(第8頁右下5行)
4-3.甲第3号証ないし甲第6号証
甲第1号証である米国特許第4,438,559号明細書は、日本国特許出願を基礎とした優先権主張を伴って出願された米国特許出願に係るものであり、甲第3号証ないし甲第6号証は、当該日本国特許出願に係る公開公報又は公告公報であり、甲第1号証(米国特許第4,438,559号明細書)と同様な事項が記載されている。

5.当審の判断
本件考案と甲第1号証に記載された考案とを対比すると、甲第1号証に記載された考案の「カートリッジ9」、「支持台12」は、それぞれ、本件考案の「供給ユニット」、「供給台」に相当し、また、甲第1号証に記載された考案の「位置決めブロック14及び16」は、カートリッジ9を支持台12上に予め定めた取付位置幅毎に並列して取り付けるためのものであるという点で、本件考案の、供給ユニットを供給台上に予め定めた取付位置幅毎に並列して取り付けるための「位置決めピン」に対応する位置決め部材といえるが、上記4.4-1.(3)で摘記したように、甲第1号証には、複数のカートリッジ9を等間隔に配置することしか記載されておらず、また、上記摘記事項4.4-1.(5)、(6)、(7)と図9?13、図31?33の記載からみて、可動刃184、固定刃196、収容溝210、押え爪212は、単一幅のものを等間隔に設けたことが明らかであり、甲第1号証に記載のものに、異なる幅のテープ25を収納した異なる幅のカートリッジ9を適用しようとした場合には、異なる幅のテープ25に対応するように、上記可動刃184、固定刃196、収容溝210、押え爪212を交換する必要があるが、甲第1号証に記載の構造においては、そのような交換は実用上困難であるといえるから、甲第1号証には、請求人が主張するような、幅の異なるカートリッジ9を混載して支持台12上に取り付けることは、記載も示唆もされていないというべきである。
よって、本件考案と甲第1号証に記載された考案とは、「多数の電子部品をテープに配列したテーピング部品を電子部品自動組付機の組付位置に向けて順次に送入する複数個の供給ユニットを有するテーピング部品供給装置において、前記組付位置の後方に横長に延設した供給台上に供給ユニットを前記供給台上に予め位置決め部材で定めた取付位置幅毎に並列して取付可能にしたテーピングの部品供給装置」である点で、一致しているが、甲第1号証には、本件考案の「テーピング部品を幅広に供給する第1の供給ユニットと、テーピング部品を幅狭に供給する第2の供給ユニットとを供給台上に予め位置決めピンで定めた取付位置幅毎に並列して取付可能にし、このとき前記第1の供給ユニットの取付位置幅が前記第2の供給ユニットの取付位置幅の整数倍又は整数比に形成されていること」(以下、「本件考案の構成要件A」という。)が記載されていない点で、両者は相違している。
また、甲第2号証は、本件考案についての出願前に頒布された刊行物であるか否かについて争いのあるところであるが、甲第2号証に記載の上記摘記事項4.4-2.(1)及び(2)並びに図面及び写真のみでは、請求人が主張するような、部品キャリッジの一つの枠内に幅の寸法が異なるテープフィーダーを混載することや、電子部品の種類や数量の変化に対応するための手段が明確に開示されているということができず、甲第2号証には、本件考案の構成要件Aが記載も示唆もされていないというべきである。
よって、甲第2号証が本件考案についての出願前に頒布された刊行物であるとしても、甲第1号証及び甲第2号証には、幅の異なる供給ユニットを混載することや、そのことを容易にするための具体的な手段は、記載も示唆もされておらず、しかも、上記のとおり、甲第1号証に記載の構造は、幅の異なるテープ25に対応させることが実用上困難なものであり、甲第1号証に記載のものは、幅の異なるカートリッジ9を混載して支持台12上に取り付けることを予定しているものではないから、本件考案の構成要件Aを、甲第1号証及び甲第2号証に記載された考案に基いて、当業者がきわめて容易に想到することができたとは、いうことができない。
更に、甲第3号証ないし甲第6号証には、本件考案に関連する事項としては、甲第1号証に記載された以上の事項は記載されていない。
そして、本件考案は、本件考案の構成要件Aを備えたことによって、明細書に記載された「位置決めピンの挿着位置の交換によって両供給ユニットの取付台数の増減を簡単に行い得るようにしたことから、プリント基板に対する電子部品の挿入条件、つまり電気的設計条件に変化があって挿入される電子部品の種類や数量が変化した場合にもそれに直ちに順応する機能上の幅広い融通性を発揮できる効果がある。更に一定広さの取付台で供給条件に合わせてA部品(アキシアルリード電子部品)供給ユニット及びR部品(ラジアルリード電子部品)供給ユニットを最大数取付け、所望の電子部品の挿入を効率よく遂行し得るようにしたものである。」という顕著な効果を奏するものである。
したがって、本件考案が、甲第1号証ないし甲第6号証に記載された考案に基いて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとすることはできない。

なお、請求人は、平成12年10月18日付け上申書において、本件登録無効審判と新たな登録無効審判(2000年審判第35488号)の審理の併合を希望する旨を主張しているが、両審判事件の審理を併合するべき必要性あるいは併合するべき特段の事情があるとは認められないので、当該審理の併合は行わない。

6.むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件考案の登録を無効とすることができない。
審判に関する費用については、実用新案法第41条の規定で準用する特許法第169条第2項の規定でさらに準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2000-11-28 
結審通知日 2000-12-08 
審決日 2000-12-19 
出願番号 実願昭59-137206 
審決分類 U 1 112・ 121- Y (H05K)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 矢田 歩橋本 虎之助  
特許庁審判長 神崎 潔
特許庁審判官 鈴木 久雄
粟津 憲一
登録日 1992-02-25 
登録番号 実用新案登録第1889055号(U1889055) 
考案の名称 テ-ピング部品の供給装置  
代理人 大塚 康徳  
代理人 丸山 幸雄  
代理人 高宗 寛暁  
代理人 大塚 康弘  

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