ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 全部申し立て A61N |
---|---|
管理番号 | 1039519 |
異議申立番号 | 異議1999-74750 |
総通号数 | 19 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案決定公報 |
発行日 | 2001-07-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1999-12-14 |
確定日 | 2001-05-02 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第2596507号「低周波治療器」の請求項1ないし5に係る実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第2596507号の請求項1ないし5に係る実用新案登録を取り消す。 |
理由 |
(1)手続の経緯 実用新案登録第2596507号に係る考案は、平成7年12月22日に実用新案登録出願(実願平7-13601号、原出願日:平成5年8月18日、実願平5-48937号の分割出願)され、平成11年4月9日に設定登録され、その後、申立人坂本聡より全請求項に係る考案について実用新案登録異議の申立がなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成12年12月8日に訂正請求がなされた後、訂正拒絶理由が通知されたものである。 (2)訂正の適否についての判断 ア.訂正明細書の請求項1に係る考案 訂正明細書の請求項1に係る考案は、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。 【請求項1】可撓性のシートと、該シートに積層され導電性を有し低周波電流を流すための電極と、該電極が設けられた範囲内に配置された低周波電流を出力する本体からの低周波電流を前記電極に流すための電極ピンと、前記電極に積層され導電性と粘着性を有する粘着パッドとから構成され、前記シートは横長形状で長手方向の略中央に外周より内側にくびれ部を形成したことを特徴とする低周波治療器。 イ.刊行物記載の考案 訂正明細書の請求項1に係る考案に対して、平成12年12月18日付けで通知した訂正拒絶理由通知に引用された、次の刊行物には、それぞれ下記の事項が記載されている。 刊行物1:実願平3-100812号(実開平5-48955号)のCD-ROM 刊行物2:実願平1-17342号(実開平2-109646号)のマイクロフィルム 上記刊行物1には、以下の事項が図面とともに記載されている。 「【0001】 【産業上の利用分野】 本考案は、人体を流れる生体電流と同じ性質の低周波電流を皮膚を通して体内に与え、神経に刺激を与えて筋肉の運動を活発化することにより、血行を促進してこりや痛み、麻痺、疲れなどの症状を緩和するプラスター形状(皮膚一体貼着型)の低周波治療器に関するものである。」(明細書段落番号【0001】) 「【0042】 〔シート電極〕 シート電極2は、図4、図9、図11、及び図12に示すように、シート本体20と、同シート本体20の裏面に形成した左右一対の電極部21,22 と同シート本体20の表面の左側中央部に取付けた電池ケース18と、同電池ケース18に着脱自在に収容した電池Dとから構成している。 【0043】 そして、シート本体20は、図3に示すように、上記したように本体ケース4と電池ケース18とにより形成される偏平矩形状の治療器ケース19の左右幅と略同一幅で、かつ同治療器ケース19の前後幅の略三倍の幅を有する矩形状に形成している。 【0044】 かかるシート本体20は、可撓性で絶縁性の素材、例えば、ポリウレタン、塩化ビニル、ポリエステル、又はポリエステルとポリ塩化ビニルとの張り合わせの素材により成形することができる。 【0045】 左右一対の電極部21,22 は、図4に示すように、シート本体20の裏面の前後側部に、それぞれ前後方向に一定の間隔wを開けると共に、周面に一定の幅tを開けて、薄肉矩形膜状に形成しており、同電極部21,22 は、例えば、カーボン又は銀等を、混入又は導電性インクでパターンを印刷することにより成形することができる。 【0046】 かかる電極部21,22 は、図11に示すように、それぞれ前記入力端子16,17 に接続して、各電極部21,22 に治療器本体1の出力回路11より出力された出力パルスが出力端子14,15 より入力端子16,17 を通して入力されるようにしている。」(明細書段落番号【0042】?【0046】) 「【0051】 〔粘着パッド〕 粘着パッド3は、図2、図4、図11、及び図12に示すように、上記した電極部21,22 と略同一形状の薄肉板状に形成して、上面を各電極部21,22 に着脱自在に張設し、下面を人体皮膚に貼付け可能とし、しかも、各電極部21,22 より出力される出力パルスを人体に伝達可能としている。」(明細書段落番号【0051】) また、第3図、第4図、第27図、第28図には、シート本体が横長形状である構成、及び治療器ケースとシート本体とをシート中央部で固定した構成が示されている。 さらに、第9図及び第11図には、入力端子17が、低周波電流を出力する本体(1)からの低周波電流を電極(22)に流すため、電極と接触するように配置された構成が示されている。 上記刊行物2には、以下の事項が図面とともに記載されている。 「[産業上の利用分野] 本考案は低周波治療器、特に個人的な使用に供される家庭用の低周波治療器の導子に関する。」(明細書第1頁第13行?第15行) 「これらの図にあって1はシート状に形成された導子本体であり、この導子本体1は中央の両サイドに括れ部2・2を形成して、身体の患部における曲面に貼装された場合の適合性を図っている。 また、この導子本体1は括れ部2・2の個所に絶縁部3が設けられており、その絶縁部3の上面には括れ部2・2を横切る突条4が形成されている。この突条4で完全な電気遮断を図って左右には導電フィルム5・5が備えられ、その導電フィルム5・5の下面には各々粘着性導電部6・6が積層され、上面には保護材7・7が積層されており、この保護材7・7の表面には好みの絵柄やメッセージ等が印刷や刻付け等により表示される。」(明細書第4頁第2行?第15行) また、第1図、第2図には、導子本体が横長形状で、長手方向の略中央に外周より内側にくびれ部を形成した構成が示されている。 ウ.対比・判断 訂正明細書の請求項1に係る考案と上記刊行物1に記載された考案を比較すると、上記刊行物1に記載された「シート本体20」、「左右一対の電極部21,22」、「入力端子16,17」および「粘着パッド3」が、それぞれ、訂正明細書の請求項1に係る考案の「可撓性のシート」、「シートに積層され導電性を有し低周波電流を流すための電極」、「低周波電流を出力する本体からの低周波電流を電極に流すための電極ピン」および「電極に積層され導電性と粘着性を有する粘着パッド」に相当する。また、上記刊行物1には、シート本体が横長形状である構成が示されていることから、両者は 「可撓性のシートと、該シートに積層され導電性を有し低周波電流を流すための電極と、低周波電流を出力する本体からの低周波電流を前記電極に流すための電極ピンと、前記電極に積層され導電性と粘着性を有する粘着パッドとから構成され、前記シートは横長形状で形成したことを特徴とする低周波治療器。」である点で一致し、 一方、 (a)「電極ピン」に関して、訂正明細書の請求項1に係る考案では「電極が設けられた範囲内に配置」されているのに対し、刊行物1に記載された発明では、「電極」と接触はしているものの、「電極が設けられた範囲内に配置」されているかどうかは明確でない点、および、 (b)「シート」に関して、訂正明細書の請求項1に係る考案では「長手方向の略中央に外周より内側にくびれ部を形成」されたものであるのに対し、上記刊行物1に記載された発明では、「くびれ部」が設けられていない点で、それぞれ相違する。 相違点(a)については、刊行物1に「電極ピン」が「電極が設けられた範囲内に配置」された点は明確には記載されていないが、「電極ピン」と電極の取付構造の一方向からの断面図である本件図4と刊行物1の第11図の構造がほぼ同一であることから、刊行物1のものにおいて「電極ピン」を「電極が設けられた範囲内に配置」する程度のことは当業者であればきわめて容易に想到できたものと認められる。 相違点(b)については、上記刊行物2に、訂正明細書の請求項1に係る考案と同様に「低周波治療器」において、屈曲性をよくすることを目的として、「シート(「導子」が相当)は横長形状で長手方向の略中央に外周より内側にくびれ部を形成」されている点が記載されている。 そして、訂正明細書の請求項1に係る考案は、上記刊行物1に記載された考案に上記刊行物2に記載された考案を組み合わせたものに相当するが、組み合わせることにより格別の効果を奏するものとは認められない。 したがって、訂正明細書の請求項1に係る考案は、上記刊行物1および2に記載された考案に基づき、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものと認められる。 エ.むすび 以上のとおりであるから、訂正明細書の請求項1に係る考案は、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録出願の際独立して登録を受けることができないものである。 したがって、この訂正は特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第3項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。 (3)実用新案登録異議の申立てについての判断 ア.請求項1ないし5に係る考案 本件実用新案登録の請求項1ないし5に係る考案は、その実用新案登録請求の範囲の請求項1ないし5に記載された次のとおりのものである。 【請求項1】可撓性のシートと、該シートに積層され導電性を有し低周波電流を流すための電極と、該電極に積層され導電性と粘着性を有する粘着パッドとから構成され、前記シートは横長形状で長手方向の略中央に外周より内側にくびれ部を形成したことを特徴とする低周波治療器。 【請求項2】前記くびれ部は、前記シートの両側に形成したことを特徴とする請求項1記載の低周波治療器。 【請求項3】前記電極は、前記シートにカーボンが印刷されていることを特徴とする請求項1、または2記載の低周波治療器。 【請求項4】前記粘着パッドは、前記くびれ部を結ぶ直線上を除く部分に積層されることを特徴とする請求項2記載の低周波治療器。 【請求項5】前記電極に低周波電流を出力する本体を、前記くびれ部を結ぶ直線上に設け、前記本体とシートとをくびれ部の略中央で固定したことを特徴とする請求項2記載の低周波治療器。 イ.刊行物記載の考案 刊行物1:実願平3-100812号(実開平5-48955号)のCD-ROM 刊行物2:実願平1-17342号(実開平2-109646号)のマイクロフィルム 当審が通知した取消理由に引用された上記刊行物は、同じく当審が訂正拒絶理由に引用したと同一の刊行物であり、該刊行物、上記「(2)訂正の適否についての判断、イ.刊行物記載の考案」において示したとおりの事項が記載されている。 ウ.請求項1に係る考案について 請求項1に係る考案は、上記訂正明細書の請求項1にかかる考案を包含するものである。 したがって、訂正明細書の請求項1にかかる考案が、上記「(2)訂正の適否についての判断、ウ.対比・判断」で述べたとおり、上記刊行物1および2に記載された考案に基づき当業者がきわめて容易に考案をすることができたものと認められる以上、本件実用新案登録請求の範囲の請求項1に係る考案も同様に、上記刊行物1および2に記載された考案に基づき、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。 エ.請求項2に係る考案について 請求項2に係る考案は、請求項1に係る考案の「くびれ部」をさらに「シートの両側に形成」したものに限定したものであるが、この点は上記刊行物2に記載されている。 したがって、請求項2に係る考案は、請求項1に係る考案と同様に、上記刊行物1および2に記載された考案に基づき、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。 オ.請求項3に係る考案について 請求項3に係る考案は、請求項1または2に係る考案の「電極」をさらに「シートにカーボンが印刷」したものに限定したものであるが、この点は、上記刊行物1に記載されている。 したがって、請求項3に係る考案は、請求項1に係る考案と同様に、上記刊行物1および2に記載された考案に基づき、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。 カ.請求項4に係る考案について 請求項4に係る考案は、請求項2に係る考案の「粘着パッド」をさらに「くびれ部を結ぶ直線上を除く部分に積層」したものに限定したものであるが、請求項4に記載された考案の「くびれ部を結ぶ直線上の部分」は、上記刊行物1及び2に記載された考案の「シートの中央部」に相当し、上記刊行物1及び2には、「粘着パッド」を「シートの中央部を除く部分に積層」した点が記載されている。 したがって、請求項4に係る考案は、請求項2に係る考案と同様に、上記刊行物1および2に記載された考案に基づき、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。 キ.請求項5に係る考案について 請求項5に係る考案は、請求項2に係る考案を、「電極に低周波電流を出力する本体を、前記くびれ部を結ぶ直線上に設け、前記本体とシートとをくびれ部の略中央で固定」したものに限定したものであるが、請求項5に記載された考案の「くびれ部を結ぶ直線上」及び「くびれ部の略中央」は、上記刊行物1に記載された考案の「シートの中央部」に相当し、上記刊行物1には、「電極に低周波電流を出力する本体(「治療器ケース19」が相当)を、シート中央部に設け、前記本体とシートとをシート中央部で固定」した点が記載されている。 したがって、請求項5に係る考案は、請求項2に係る考案と同様に、上記刊行物1および2に記載された考案に基づき、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。 (4)むすび 以上のとおり、請求項1ないし5に係る考案の登録は、実用新案法第3条第2項の規定により、拒絶の査定をしなければならない実用新案登録出願に対してされたものである。 よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第7項の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第3条第2項の規定により、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2001-03-14 |
出願番号 | 実願平7-13601 |
審決分類 |
U
1
651・
121-
ZB
(A61N)
|
最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 稲積 義登 |
特許庁審判長 |
田中 秀夫 |
特許庁審判官 |
熊倉 強 藤本 信男 |
登録日 | 1999-04-09 |
登録番号 | 実用新案登録第2596507号(U2596507) |
権利者 |
三洋電機株式会社 大阪府守口市京阪本通2丁目5番5号 |
考案の名称 | 低周波治療器 |