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審決分類 審判 判定 同一 属する(申立て成立) F16L
管理番号 1039525
判定請求番号 判定2000-60173  
総通号数 19 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案判定公報 
発行日 2001-07-27 
種別 判定 
判定請求日 2000-12-25 
確定日 2001-05-10 
事件の表示 上記当事者間の登録第1986318号の判定請求事件について、次のとおり判定する。   
結論 (イ)号図面及びその説明書に示す「樹脂製管継手」は、登録第1986318号実用新案の技術的範囲に属する。
理由 1.請求の趣旨
本件判定の請求の趣旨は、イ号図面およびその説明書に示す「樹脂製管継手」(以下、「イ号物件」という。)は、実用新案登録第1986318号の技術的範囲に属する、との判定を求めるものである。

2.本件登録実用新案
本件登録実用新案は、明細書および図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「A:外周に膨出部が形成され、管材の一端部から突出する状態に管材の一 端部内に圧入して管材の一端部を拡径させる流体の移動を妨げないイン ナリングと、
B:前記インナリングを圧入した管材の挿し込み部を挿入するための筒状 の受口を一端部に形成した継手本体と、
C:前記管材の一端部から突出させたインナリングの内端シ-ル部を前記 受口の奥部に当接させるために受口の奥部に該受口の軸線と交差状に形 成した一次シール部と、
D:前記インナリングを圧入した管材の外周の管端側へ縮径する外周シー ル面を前記受口の入口に当接させるために受ロの入口に受□の軸線と交 差状に形成した二次シール部と、
E:前記継手本体の一端部に螺合し、その継手本体の一端部への螺進によ りインナリングを管材の外側から押圧して前記インナリングの内端シー ル部と前記受口の一次シール部ならびに前記管材の外周シール面と前記 受口の二次シール部に密封力を与える押輪と、
F:を具備したことを特徴とする樹脂製管継手。」
〔なお、符号A?Fは便宜上付した。〕

3.イ号物件
被請求人は答弁書において、「イ号図面およびその説明書に示すイ号物件を製造販売していない。」と主張し、実際に製造販売しているものとしてロ号物件を提示している。
しかしながら、請求人が提示したイ号図面およびその説明書の記載からその構成の把握が可能であり、かつ被請求人も前記主張をしながらも、請求人が提示したイ号に基づいて実質的な答弁をしているので、請求人が提出した「イ号図面およびその説明書」に示すものをイ号と特定する。
イ号図面およびその説明書の記載によれば、イ号物件の構成は以下のとおりのものである。
「樹脂製管継手であって、合成樹脂製のインナリング10と、合成樹脂製の継手本体20と、合成樹脂製の押輪30とを備え、
a:インナリング10は、
その軸線に沿って継手本体20の貫通孔21と連通するための貫通孔11を有し、インナリング10の軸線方向一端部側には継手本体20の受口22に嵌合できる外径の嵌合部12が形成され、この嵌合部12の後方に管材40の圧入部13が嵌合部12に連続して形成されており、このインナリング10の貫通孔11の内径は管材40の内径及び継手本体20の貫通孔21の内径とほぼ同一径に形成されていて流体の移動を妨げないようにしており、嵌合部12の軸線方向端面には環状凹部14を形成し、該環状凹部14の内外壁を構成する内側環状突出壁15及び外側環状突出壁16を有する。外側環状突出壁16の内周には受口22の軸線と斜めに交わる勾配のテーパ面16aが形成されており、環状凹部14の内底面14aは受口22の軸線と直角に交わる面上に存在するよう形成されており、外側環状突出壁16の外周には、軸線方向に並列させた3条の環状突起部17が形成されており、インナリング10の圧入部13の軸線方向他端部の外周には、断面山形でテーパ面18a、18bを有する膨出部18が形成されており、このインナリング10は、管材40の一端部から上記嵌合部12が突出する状態で管材40の一端部内に上記膨出部18を圧入して管材40を拡径させるスリーブ状をなすものであり、
b:継手本体20には、
その軸線に沿って貫通孔21が形成され、貫通孔21の軸線方向一端部に貫通孔21の内径より大径の筒状の受□22が形成され、その受口22の入口には受□22の奥部側から軸方向外方に向けて漸次拡開するテーパ面23が形成され、このテーパ面23の奥端に連続して貫通孔21と同心の円筒面24が形成されており、この円筒面24の奥端部には環状突部25が形成され、環状突部25の外周と円筒面24の奥部との間に環状溝26が形成されており、環状突部25の外周には受口22の軸線と斜めに交わる勾配のテーパ面25aが形成されており、環状突部25の先端面25bは受口22の軸線と直角に交わる面上に存するよう形成されており、継手本体20の外周には端面27aを有する拡径部27が形成され、受口22の外周には雄ねじ部28が形成されており、
c:押輪30は、
軸線方向の管材挿入部31と、継手本体20の雄ねじ部28に螺合する雌ねじ部32と、インナリング10の膨出部18が圧入されて拡径した管材40の外周面を押圧する管材押圧部33とを有する。」
〔なお、符号a?cは便宜上付した。〕
そして、インナリング10を圧入した管材40の挿し込み部を継手本体20の受□22に挿入し、押輪30の雌ねじ部32を継手本体20の雄ねじ部28に螺合して押輪30を締め付けると、押輪30はインナリング10を押圧し、インナリング10の環状凹部14が継手本体20の環状突部25に嵌合し、環状突部25の内外周面にインナリング10の内側環状突出壁15及び外側環状突出壁16がそれぞれ当接するとともに環状突部25の突出端面25bに環状凹部14の内底面14aが当接する。また、環状突起部17を有する外側環状突出壁16の外周も円筒面24に圧接する。さらに、インナリング10の膨出部のテーパ面18bで拡径された管材40の外周面41も継手本体20の入口のテーパ面23に圧接する。

4.対比・判断
そこで、本件登録実用新案とイ号物件とを対比検討する。
イ号物件の「インナリング10」、「継手本体20」、「押輪30」は、本件登録実用新案の「インナリング」、「継手本体」、「押輪」にそれぞれ対応するが、以下イ号物件の構成が本件登録実用新案の構成A?Fを充足するか否かについて検討する。
(1)構成Aについて
イ号物件のインナリング10は、外周に管材40を拡径させる膨出部18が形成され、管材40の一端部から突出する状態で嵌合部12が一端に形成されたスリーブ状をなしており、貫通孔11の内周は流体の移動を妨げない径に形成されている。
したがって、イ号物件の「インナリング10」は、本件登録実用新案の構成Aの要件を具備しており、本件登録実用新案の構成Aを充足する。
(2)構成Bについて
イ号物件の継手本体20において、貫通孔21の一端部に形成された筒状の受口22は、インナリング10が圧入された管材40の挿し込み部を挿入するためのものである。
したがって、イ号物件の「継手本体20」は、本件登録実用新案の構成Bの要件を具備しており、本件登録実用新案の構成Bを充足する。
(3)構成Cについて
イ号物件の継手本体20において、受□22の奥部には、管材40の一端部から突出させたインナリング10の環状凹部14を受□22の奥部に当接させるため該受口22の軸線と交差する先端面25bを有した環状突部25が形成されている。
したがって、イ号物件の「環状突部25」は、本件登録実用新案の構成Cの要件を具備しており、本件登録実用新案の構成Cを充足する。
(4)構成Dについて
イ号物件において、継手本体20の受口22には、インナリング10を圧入した管材40の外周の管端側に縮径する外周面41を受口22の入口に当接するため受口22の軸線と交差するテーパ面23が形成されている。。
したがって、イ号物件の「受口22のテーパ面23」は、本件登録実用新案の構成Dの要件を具備しており、本件登録実用新案の構成Dをを充足する。
(5)構成Eについて
イ号物件の押輪30は、内周に形成した雌ねじ部32が継手本体20の一端部の雄ねじ部28に螺合し、この押輪30の螺進によりインナリング10を管材40の外側から押圧して、インナーリング10の環状凹部14と受口22の環状突部25に密封力を与え、また、管材40の外周面41と受口22のテーパ面23にも密封力を与える構成になっている。
したがって、イ号物件の「押輪30」は、本件登録実用新案の構成Eの要件を具備しており、本件登録実用新案の構成Eをを充足する。
(6)構成Fについて
イ号物件は、インナリング10、継手本体20および押輪30が全て樹脂で形成されている樹脂製管継手であるから、本件登録実用新案の構成Fの要件を具備しており、本件登録実用新案の構成Fをを充足する。
そうすると、イ号物件は、本件登録実用新案の構成A?Fの要件全てを具備していることになるから、本件登録実用新案の技術的範囲に属するというべきである。
ところで、被請求人は答弁書3?6頁において、「イ号物件は、本件登録実用新案の構成Cの要件を具備しておらず、本件登録実用新案の構成Cを充足しない。そして、構成Cは本件登録実用新案の本質的部分であるから、イ号物件は、本件登録実用新案の技術的範囲に属しない。」と主張している。
そこで、 被請求人の主張について、以下検討する。
当該主張の概要は、イ号物件には本件登録実用新案の「一次シール部」に相当する構成がない、というものである。
イ号物件においては、インナリング10の環状凹部14が継手本体20の環状突部25に嵌合し、環状突部25の内外周面にインナリング10の内側環状突出壁15及び外側環状突出壁16がそれぞれ当接するとともに環状突部25の突出端面25bに環状凹部14の内底面14aが当接する。被請求人は、環状突部25と内側環状突出壁15および外側環状突出壁16とは当接することなく隙間が存在し、環状突部25の突出端面25bに環状凹部14の内底面14aが当接することなく隙間が存在する旨主張しているが、イ号図面を見ると、前記隙間は存在せず、環状突部25の突出端面25bに環状凹部14の内底面14aが当接しないとする方が理解し難いことである。押輪30の継手本体20への螺合により、インナリング10が押圧され、環状凹部14に環状突部25が嵌合するのであるから、先に外周のテーパ面25aがテーパ面16aに圧接されるとしても、これら部材が合成樹脂製であることを勘案すれば、環状突部25の先端面25bは環状凹部14の内底面14aに「当接」することになるものと認められる。
そうすると、環状突部25の先端面25bと環状凹部14の内底面14aの当接によってシール部が形成されると解され、このシール部は、本件登録実用新案における「一次シール部」に相当するものと認められる。
被請求人は、さらに、「当接」の文言が必ずしもシール機能を達成するものとはいえない旨主張するが、この種流体に使用する管継手において二部材が当接する場合、その当接がシール機能を有するものであることは自明のことである。
よって、イ号物件は、本件登録実用新案の構成Cの要件を具備しており、本件登録実用新案の構成Cを充足するから、被請求人の当該主張は採用できない。

5.むすび
以上のとおりであるから、イ号物件は、本件登録実用新案の技術的範囲に属するものと認められる。
よって、結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2001-04-23 
出願番号 実願平1-69378 
審決分類 U 1 2・ 1- YA (F16L)
最終処分 成立    
前審関与審査官 石川 昇治  
特許庁審判長 吉国 信雄
特許庁審判官 村本 佳史
鈴木 美知子
登録日 1993-10-08 
登録番号 実用新案登録第1986318号(U1986318) 
考案の名称 樹脂製管継手  
代理人 鈴江 孝一  
代理人 千葉 剛宏  
代理人 鈴江 正二  

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