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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認めない。無効とする(申立て全部成立) A23L
管理番号 1041555
審判番号 審判1997-12666  
総通号数 20 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2001-08-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 1997-07-25 
確定日 2000-12-11 
事件の表示 上記当事者間の登録第1599195号「海苔乾燥装置」の実用新案登録無効審判事件についてされた平成10年9月18日付け審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の判決(平成10(行ケ)年第350号 平成12年3月29日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。   
結論 登録第1599195号実用新案の登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1.手続の経緯
(1)本件登録第1599195号実用新案は、昭和57年9月28日に出願され、昭和60年6月11日に設定登録された。
(2)請求人 西部産業株式会社は、平成9年7月25日に無効審判を請求した。そして、当該無効審判において、甲第1号証及び甲第2号証を提出し、本件考案は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により、実用新案登録を受けることができないと主張した。
(3)当審は、平成10年5月18日に「本件登録は、実用新案法第5条の規定に違反してなされたものである」旨の登録無効理由を通知した。
(4)被請求人 山田 庄一は、平成10年6月5日に訂正請求書を提出して訂正を請求した。
(5)上記請求人は、平成10年6月25日付け弁駁書において、上記訂正請求は認められないと主張し、前記主張事実を立証するために新たに甲第3号証を提出した。
(6)当審は、平成10年9月18日に「訂正を認める。本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をした。
(7)上記請求人は、平成10年11月11日に審決取消訴訟を提起した。
(8)東京高等裁判所において、審決取消しの判決(平成10(行ケ)年第350号 平成12年3月29日判決言渡)があった。
(9)当審は、上記判決を受けて、平成12年6月13日付けで訂正拒絶理由を通知した。
(10)上記被請求人は、平成12年8月16日付け手続補正書により、上記訂正請求書を補正した。

2.訂正の適否についての判断
2-1 訂正請求に対する補正の適否について
訂正請求の趣旨は、登録第1599195号実用新案の明細書を、訂正請求書に添付の明細書のとおりに訂正する、との決定を求めるにあり、その訂正の要旨については、平成12年8月16日付け手続補正書が提出されているので、まず訂正請求の補正の適否について検討する。
上記補正の内容は、以下のとおりである。
(a)平成10年6月5日付け訂正明細書(以下、訂正明細書という。)の実用新案登録請求の範囲に記載の「上側移行部と下側移行部とでは、」の後に、「上側移行部から下側移行部を経て」を挿入する。
(b)訂正明細書の実用新案登録請求の範囲に記載の「迂回路7」を「迂回部7」に訂正する。
(c)訂正明細書の実用新案登録請求の範囲に記載の「上記正面開口部チェンホイール6迂回部7との間に」の後に、「各迂回部とは別体に設けた」を挿入する。
(d)訂正明細書の考案の詳細な説明の「上側移行部と下側移行部とでは、」(訂正明細書1頁17行)の後に「上側移行部から下側移行部を経て」を挿入する。
(e)訂正明細書の考案の詳細な説明の「海苔簀枠上下反転下降誘導装置8」(同1頁21行)の前に「各迂回部とは別体に設けた」を挿入する。
(f)訂正明細書の考案の詳細な説明の「上記チェン3,3aの下側移行部」(同2頁21行)の前に「しかも、同チェン3,3aのそれぞれは、海苔簀枠20を、上側移行部と下側移行部とでは、上側移行部から下側移行部を経てその姿勢が上下方向反転した状態で移送するように構成し、」を挿入する。
(g)訂正明細書の考案の詳細な説明の「海苔簀枠上下反転下降誘導装置8」(同2頁24行)の前に「各迂回部とは別体に設けた」を挿入する。
そこで検討すると、上記(a)及び(c)?(g)の補正により、訂正明細書の実用新案登録請求の範囲及び考案の詳細な説明に上記訂正事項を追加することは、訂正請求に係る訂正を求める範囲を実質的に拡大変更することになるから、上記手続補正書による補正は、本件訂正請求書の要旨を変更するものである。
したがって、上記手続補正書による補正は、採用しない。

2-2 訂正明細書に係る考案
訂正明細書に係る考案の要旨は、平成10年6月5日付け訂正請求書の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲第1項に記載された次のとおりのものである。
「乾燥室1の正面開口部2から奥部に亘って正面開口部および奥部に設けたチエンホイール6,6aを循環する間歇回動無端チエン3,3aを複数段に設け、同チエン3,3aにそれぞれ海苔簀枠支持杆4を設け、しかも、同チエン3,3aのそれぞれは、海苔簀枠20を、上側移行部と下側移行部とでは、その姿勢が上下方向反転した状態で移送するように構成し、上記チエン3,3aの下側移行部に沿って海苔簀枠落下防止装置5,5aを設け、かつ上段側上記チエン3の上記正面開口部チエンホイール6迂回路7から下段側上記チエン3aの上記正面開口部チエンホイール6迂回路7との間に海苔簀枠上下反転下降誘導装置8を設けてなる海苔乾燥装置。」(以下、訂正後考案という。)

2-3 引用刊行物
訂正拒絶理由通知に引用した刊行物1(特開昭57ー26570号公報)には、乾燥室1の正面開口部2から奥部に亘って正面開口部2および奥部に設けたチエンホイール(スプロケット3、3’、4、4’が相当)を循環する間歇回動無端チエン5、5’を複数段に設け、同チエンにそれぞれ海苔簀枠支持杆6を設け、しかも、同チエンのそれぞれは、海苔簀枠を、上側移行部と下側移行部とでは、その姿勢が上下方向反転した状態で移送するように構成し、上記チエンの下側移行部に沿って海苔簀枠落下防止装置9、9’を設け、かつ上段側上記チエンの上記正面開口部チエンホイール迂回路から下段側上記チエンの上記正面開口部チエンホイール迂回路との間に海苔簀枠下降誘導装置14を設けてなる海苔乾燥装置が記載されているものと認める。
同じく引用した刊行物2〔実願昭53ー148863号(実開昭55ー65994号)のマイクロフイルム〕には、乾燥室c´内に海苔簀ホルダー2を移送するチエンコンベヤ24、25、26を複数段設け、これらチエンコンベヤ24、25、26の間に海苔簀ホルダー2を反転させて移す反転用チエンコンベヤ42を設け、該反転用チエンコンベヤ42により、上段側チエンコンベヤの下側移行部から下段側チエンコンベヤの下側移行部に海苔簀ホルダーを反転して移すように構成した海苔乾燥装置が記載されているものと認める。

2-4 対比・判断
訂正後考案と刊行物1に記載の考案を対比すると、訂正後考案は、上段側チエンの正面開口部チエンホイール迂回路から下段側チエンの正面開口部チエンホイール迂回路との間に海苔簀枠上下反転下降誘導装置を設けているのに対して、刊行物1の考案では、上段側チエンの正面開口部チエンホイール迂回路から下段側チエンの正面開口部チエンホイール迂回路との間に海苔簀枠下降誘導装置を設けている点で、両者は相違し、その余の点で両者は一致する。
上記相違点について検討する。
訂正後考案においては、海苔簀枠上下反転下降誘導装置に対して、間歇回動無端チエンを移送してきた海苔簀枠を受け渡し、また、受け取る形態について何ら特定されていないことは明らかである。
これに対して、刊行物2には、上段側チエンから下段側チエンに海苔簀枠(ホルダー)を反転させて移すという機能を有する海苔簀枠上下反転下降誘導装置 が記載されており、該装置が具体的には下段コンベヤの迂回部と一体に設けられた構成を開示すると解しても、刊行物2の考案から、海苔簀枠を上下反転させて下降に誘導するという技術思想を抽出すること自体が容易であることは明らかであり、また、刊行物2の明細書に基づいて具体的に検討しても、海苔簀枠を受け取った海苔簀枠反転装置が、これを上下反転させた後、例えば下段側チエンの迂回部に下降誘導させることに、技術的な困難性はないものと認められる。
したがって、刊行物1に記載の「海苔簀枠下降誘導装置」に代えて、刊行物2の考案が開示する、海苔簀枠を上下反転させて移す機能を有する「海苔簀枠上下反転下降誘導装置」という技術手段を用いることは、当業者においてきわめて容易になし得ることである。
そして、訂正後考案は、格別の効果を奏するものではない。

2-5 むすび
したがって、訂正後考案は、刊行物1及び2に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法第3条第2項の規定により、実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができないものである。
したがって、上記訂正は、平成5年法律第26号附則第4条第1項の規定によりなおその効力を有するとされ、同条第2項の規定により読み替えられる旧実用新案法第40条第5項の規定により準用する同法第39条第3項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。

3.本件考案に対する判断
3-1 本件考案
本件考案の要旨は、実用新案登録された明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録の範囲に記載された次のとおりのものである。
「乾燥室1の正面開口部2から奥部に亘って正面開口部および奥部に設けたチエンホイール6,6aを循環する間歇回動無端チエン3,3aを複数段に設け、同チエン3,3aにそれぞれ海苔簀枠支持杆4を設け、上記チエン3,3aの下側移行部に沿って海苔簀枠落下防止装置5,5aを設け、かつ上段側上記チエン3の上記正面開口部チエンホイール6迂回路7から下段側上記チエン3aの上記正面開口部チエンホイール6迂回部7との間に海苔簀枠上下反転下降誘導装置8を設けてなる海苔乾燥装置。」(以下、本件考案という。)

3-2 引用刊行物
請求人が提出した甲第3号証(上記刊行物1)には、上記「2-3 引用刊行物」の項において、刊行物1の記載事項として摘示したとおりのことが記載されている。
同じく甲第2号証(上記刊行物2)には、上記「2-3 引用刊行物」の項において、刊行物2の記載事項として摘示したとおりのことが記載されている。
3-3 対比・判断
本件考案と甲第3号証に記載の発明を対比すると、本件考案は、上段側チエンの正面開口部チエンホイール迂回路から下段側チエンの正面開口部チエンホイール迂回路との間に海苔簀枠上下反転下降誘導装置を設けているのに対して、甲第3号証の考案では、上段側チエンの正面開口部チエンホイール迂回路から下段側チエンの正面開口部チエンホイール迂回路との間に海苔簀枠下降誘導装置を設けている点で、両者は相違し、その余の点で両者は一致する。
上記相違点について検討するに、上記「2-4 対比・判断」の項で述べたとおりの理由で、甲第3号証に記載の「海苔簀枠下降誘導装置」に代えて、甲第2号証の考案が開示する、海苔簀枠を上下反転させて移す機能を有する「海苔簀枠上下反転下降誘導装置」という技術手段を用いることは、当業者においてきわめて容易になし得ることである。
そして、本件考案は、格別の効果を奏するものではない。

3-4 むすび
以上のとおりであるから、本件考案は、甲第2号証及び甲第3号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、本件登録実用新案は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第37条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 1998-08-06 
結審通知日 1998-10-16 
審決日 1998-09-18 
出願番号 実願昭57-148368 
審決分類 U 1 112・ 121- ZB (A23L)
最終処分 成立    
前審関与審査官 佐伯 裕子  
特許庁審判長 田中 久直
特許庁審判官 徳廣 正道
藤田 節
田村 明照
眞壽田 順啓
登録日 1985-06-11 
登録番号 実用新案登録第1599195号(U1599195) 
考案の名称 海苔乾燥装置  
代理人 前島 旭  
代理人 松尾 憲一郎  
代理人 佐藤 一雄  
代理人 永井 浩之  
代理人 神谷 巖  

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