• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判    C03C
審判    C03C
管理番号 1041558
審判番号 無効2000-40030  
総通号数 20 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2001-08-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 2000-12-07 
確定日 2001-06-14 
事件の表示 上記当事者間の実用新案登録第3036478号「アタッチメント付き複層ガラス」の登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 I.手続の経緯
実用新案登録第3036478号(請求項の数7)は、特許法第41条に基づく優先権を主張して平成8年3月21日(優先日、平成7年3月20日)に出願した特願平8-91883号の一部を特許法第44条第1項の規定に基づいて平成8年4月8日に特願平8-111262号として分割出願し、さらに、これを実用新案法第10条第1項の規定に基づいて平成8年4月15日に実願平8-3998号として実用新案登録出願に変更したものであって、平成9年2月5日に実用新案権の設定の登録がされたものである。
そして、平成12年12月7日に伊藤忠ウインドウズ株式会社から、請求項1に係る実用新案登録を無効にすることについて審判の請求がなされた。

II.本件審判の請求に係る登録実用新案
本件審判の請求に係る登録実用新案、すなわち請求項1に係る登録実用新案(以下、「本件考案」という。)は、願書に添付した明細書の実用新案登録請求の範囲に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】
複層ガラスの各辺を各別に挟持する断面略コ字形を呈する硬質保持部材と、前記ガラスと硬質保持部材との間に介在される内側軟質部および装着対象部材である枠材と複層ガラスとの間に介在される外側軟質部を有する軟質材とを備えて、複層ガラスの各辺を各別に挟持させて囲枠状に形成されるアタッチメントを備えてなるアタッチメント付き複層ガラスにおいて、前記アタッチメントは、隣り合う硬質保持部材相互の突合せ端面が位置する部位に接着テープ材を貼着して連結部を形成したことを特徴とするアタッチメント付き複層ガラス。」

III.当事者の主張
1.請求人の主張の概要
請求人は、以下の理由(1)及び(2)をもって、本件考案についての実用新案登録は無効にされるべきであると主張している。

理由(1):
本件考案は、以下の(イ)、(ロ)及び/又は(ハ)に記載した理由により、明細書に記載の課題を解決することができず、所期の効果を得ることができないから、実用新案法第3条の考案ということができない。したがって、本件考案についての実用新案登録は実用新案法第3条の規定に違反してされたものである。

(イ)隣り合う硬質保持部材15、15相互の突合せ端面13、13が位置する部位に接着テープ材23を貼着して形成した連結部21は、外部軟質部19の外側面19bの下端より凹部が形成されている部分までと同様、枠31の中に組み込まれ、直接的に連結部を水密にする効果がない。

(ロ)外側軟質部19は枠材31に抑えられて複層ガラスGの外面部と水密に接合されるが、互いに隣接する2つの外側軟質端面19a、19aは水密に接合されていない。アタッチメント特に外気に触れる表出部は、経時変化で劣化収縮し、突合せ端面13、13間特に表出部の外側軟質端面19a、19aはより一層水密に接合されなくなる。したがって、隣り合う硬質保持部材15、15の相互突合せ端面13、13が位置する部位に接着テープ23を貼着して連結部21を形成しても、表出部である外側軟質端面19a、19aの水密性を保つことが出来ず複層ガラスの品質性能の低下を防止することが出来ない。

(ハ)本件考案の実施の形態では、接着テープとして、金属箔片の他に、合成樹脂シート材などを用いると記載されている。接着テープの合成樹脂シート材などとしては、仮止め、或いは固定のためのテープとして本件考案の出願前に周知であるビニールテープ、紙テープなどがある。これ等の仮止め、固定用テープは、基材、糊材とも引っ張り強度が小さく、伸張性が大きいので、隣り合う硬質保持部材15、15の突合せ端面13、13が位置する部位に貼付しても、アタッチメントが経年変化で劣化収縮すると、テープが伸張し、又は破断するので、突合せ端面13、13には隙間が生じ、また、外側軟質端面19aはより以上に劣化収縮するので、外側軟質端面19a、19aにも隙間が生じるから、水密性を保つことが出来ない。

理由(2):
本件考案は、その出願前に日本国内において頒布された甲第1号証(特開昭7-71170号公報)に記載された考案及び周知、慣用の技術に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものである。したがって、本件考案についての実用新案登録は実用新案法第3条の規定に違反してされたものである。

2.被請求人の主張の概要
これに対して、被請求人は、本件考案は実用新案法第3条に規定する考案の要件を充分に具備するものであり、また甲第1号証に記載の考案及び周知、慣用の手法に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものではなく、本件考案についての実用新案登録は実用新案法第3条の規定に違反してされたものではない旨主張している。

IV.当審の判断
請求人が主張する理由及び証拠について検討する。

1.上記理由(1)について
請求人は、本件考案は明細書に記載の課題を解決することができず、所期の効果を得ることができない旨主張しているので、まず、願書に添付した明細書に記載された本件考案が解決しようとする課題と本件考案の効果について検討すると、願書に添付された明細書及び図面の記載からみて、当該課題及び効果は、次のとおりのものと認める。
本件考案が解決しようとする課題:
「枠材に対する介装材として機能するアタッチメントを複層ガラスに取り付けた際に、コーナー部を形成する突合せ端面相互を含む部位を不離一体化することで、経年変化に伴う収縮を抑止して複層ガラスの品質性能の低下を防止できるアタッチメント付き複層ガラスを提供すること」(明細書の段落【0008】参照)
本件考案の効果:
「作業現場において容易に複層ガラスを枠材に装着することができ、しかもこの作業中における複層ガラスのアタッチメントからの抜けを防止でき、作業効率の向上を達成できる。さらに、経年変化に伴う収縮作用が働いても、コーナー部を形成する突合せ端面相互間に空隙が生ずるのを確実に阻止することができるので、長期にわたり高水密性を保持させながら複層ガラスの性能劣化を効果的に防止することができる。」(明細書の段落【0029】参照)
次に、請求人が、本件考案は課題の解決ができず所期の効果を得ることができない根拠として主張している上記理由(イ)ないし(ハ)について検討する。
(1)理由(イ)について
請求人は、接着テープ材23を貼着して形成した連結部21は、外側軟質部19の外側面19bの下端より凹部(当該凹部については、明細書に対応する記載がないが、明細書及び図面並びに請求人の主張の文脈を参酌すると、枠材31が備える係止部32に対し外側軟質部19が係合する部位と解される。)が形成されている部分までと同様、枠31の中に組み込まれ、直接的に連結部を水密にする効果がないと主張している。
しかしながら、本件考案に係るアタッチメント付き複層ガラスは、そもそも枠材の中に装着されるものであり、明細書に記載の課題も、枠材の中に装着されて使用される状況においてコーナー部を形成する突合せ端面相互の間において経年変化に伴う収縮によって隙間が生じるのを抑止して複層ガラスの品質性能の低下を防止することにあると解されるから、接着テープ材23を貼着して形成した連結部21が枠材の中に組み込まれ、直接的に連結部を水密にする効果がないことをもって、本件考案が明細書記載の課題を解決できず、所要の効果を得ることができないとすることはできない。

(2)理由(ロ)について
請求人は、互いに隣接する2つの外側軟質端面19a、19aは水密に接合されていないから、隣り合う硬質保持部材15、15の相互突合せ端面13、13が位置する部位に接着テープ23を貼着して連結部21を形成しても、表出部である外側軟質端面19a、19aの水密性を保つことが出来ず複層ガラスの品質性能の低下を防止することが出来ないと主張している。
請求人が指摘しているように、本件考案は、必ずしも外側軟質端面19a、19aを水密に保つように接着テープ材23を貼着するものではないが、隣り合う硬質保持部材相互の突合せ端面が位置する部位を接着テープ材で不離一体に貼着して連結部を形成しており、これにより、硬質保持部材の経年変化に伴う収縮作用が働いても、硬質保持部材の突合せ端面相互間に空隙が生ずるのを確実に阻止できるので、硬質保持部材の突合せ端面相互間の水密性が保持され、硬質保持部材の突合せ端面相互間に空隙が生ずることに起因する複層ガラスの性能低下が防止できるものと認められる。
したがって、本件理由(ロ)をもって、本件考案が明細書記載の課題を解決できず、所要の効果を得ることができないとすることはできない。

(3)理由(ハ)について
本件理由における請求人の主張の要点は、本件考案で使用される接着テープ材には、仮止め、或いは固定のためのテープとして周知であるビニールテープ、紙テープなどが含まれることを前提として、これらテープは、アタッチメントが経年変化で劣化収縮すると、伸張し、又は破断するので、突合せ端面13、13には隙間が生じ、水密性を保つことができないというものである。
本件考案で使用される接着テープ材について検討するに、本件考案において隣り合う硬質保持部材相互の突合せ端面が位置する部位に接着テープ材を貼着して連結部を形成するのは、複層ガラスを枠材に装着する作業中における複層ガラスのアタッチメントからの抜けを防止して作業効率の向上を達成するためだけではなく、経年変化に伴う収縮作用が働いても、コーナー部を形成する突合せ端面相互間に空隙が生ずるのを確実に阻止し、長期にわたり高水密性を保持させながら複層ガラスの性能劣化を効果的に防止するためである。したがって、本件考案は、硬質保持部材の経年変化に伴う収縮作用が働いても、当該硬質保持部材の硬質保持部材の突合せ端面相互間に空隙が生ずるのを防げるような強度で、隣り合う硬質保持部材相互の突合せ端面が位置する部位を不離一体に貼着して連結部を形成できる接着テープ材を選択して使用するものであって、請求人が言及している仮止めに用いられる接着テープ材であって接着強度等の性能が本件考案の課題解決に適さない接着テープ材を使用するものではないと解釈すべきである。
したがって、本件理由(ハ)をもって、本件考案が明細書記載の課題を解決できず、所要の効果を得ることができないとすることはできない。

以上のとおりであるから、本件考案が実用新案法第3条に規定する考案ではないとすることはできない。

2.上記理由(2)について
(1)甲第1号証(特開昭7-71170号公報)の記載事項
甲第1号証には、次の記載がある。
(1-1)「複層ガラスの周縁部を包囲できるチャンネル状の補強材と、該補強材の複層ガラスに相対する内側面に設けた内部軟質材と、サッシと係合する外側面に設けた外部軟質材とからなるアタッチメントを周縁部に被着したアタッチメント付き複層ガラス。」(特許請求の範囲【請求項1】)
(1-2)「これらの補強材は、複層ガラスに適用された状態において断面コ字状を有し、複層ガラスの周縁部を包囲する。」(第2頁第2欄10?11行)
(1-3)「コ字状の断面を有する補強材5の内側面には、例えば塩化ビニール樹脂製の内部軟質材4が、その長手方向に連続して設けられている。この内部軟質材の主たる機能は、補強材5がガラスに直接当らないようにすることにあり、通常はチャンネル状補強材5のガラスと相対する内側面に、所定の間隔で長手方向に凸状片として形成すればよい。」(第2頁第2欄35?41行)
(1-4)「一方、補強材5の外側面には同材質の外部軟質材3が一体的に固着されている。この場合、外部軟質材3の形態は特に限定されないが、このアタッチメント付き複層ガラスを框あるいはサッシに嵌着したとき、水密性が十分に得られるようにする必要がある。」(第2頁第2欄43?47行)

(2)対比及び判断
本件考案と甲第1号証に記載された考案(以下、「引用考案」という。)を対比すると、両考案は、「複層ガラスの各辺を各別に挟持する断面略コ字形を呈する硬質保持部材と、前記ガラスと硬質保持部材との間に介在される内側軟質部および装着対象部材である枠材と複層ガラスとの間に介在される外側軟質部を有する軟質材とを備えて、複層ガラスの各辺を各別に挟持させて囲枠状に形成されるアタッチメントを備えてなるアタッチメント付き複層ガラス」である点で一致し、本件考案のアタッチメントでは、隣り合う硬質保持部材相互の突合せ端面が位置する部位に接着テープ材を貼着して連結部を形成しているのに対して、引用考案のアタッチメントでは、接着テープ材が貼着されていない点で相違している。
この相違点に関する請求人の主張の要点は、「接着テープ材としてビニールテープや紙テープなどを用いたときは、水密性を保つためというより、仮止めのために用いたと言わざるをえず、そして、仮止めという手法は、例えば、製函業者が手作業で函を作る場合、2つの函材の側面の直交する個所にテープを糊付けして仮止めし、その後表装紙を貼るなどで周知、慣用の手法であるから、サッシなどの枠材のガラス溝に嵌め込む際にアタッチメントが複層ガラスから外れないように、引用考案のアタッチメント付き複層ガラスにおいて、隣り合う硬質保持部材相互の突合せ端面が位置する部位にビニールテープや紙テープなどの接着テープを貼着して仮止めすることは、当業者であればきわめて容易に想到することができる事項である」というものである。
この請求人の主張について検討する。
本件考案において使用される接着テープ材については、上述のとおり(IV.1.(3)参照)、請求人が言及している仮止めに用いられる接着テープ材であって接着強度等の性能が本件考案の課題解決に適さない接着テープ材を使用するものではないと解釈すべきであるから、本件考案は、仮止めのための接着テープ貼着という周知、慣用の技術を単に適用したものとすることはできない。また、本件考案の技術思想は、経年変化に伴う収縮作用によってアタッチメントの隣り合う硬質保持部材の突合せ端面相互間に空隙が生じるのを防止することを目的として、隣り合う硬質保持部材相互の突合せ端面が位置する部位に接着テープ材を貼着して連結部を形成することであるのに対し、他方、製函業者が手作業で函を作る場合に行う接着テープによる仮止めという周知、慣用の技術は、接着テープが貼着される対象部材の経年変化に伴う収縮作用によって当該部材の突合せ端面相互間に空隙が生ずるのを防止することを目的とするものではないから、当該周知、慣用の技術が本件考案の技術思想を示唆するものと認めることはできない。
したがって、本件考案は、引用考案のアタッチメント付き複層ガラスにおいて、隣り合う硬質保持部材相互の突合せ端面が位置する部位にビニールテープや紙テープなどの接着テープを貼着して仮止めしたものではないし、また、甲第1号証に記載された考案及び周知、慣用の技術に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとすることもできない。

2.むすび
以上のとおりであるから、請求人が主張する理由及び証拠によっては、本件考案の実用新案登録を無効にすることはできない。
審判に関する費用については、実用新案法第41条の規定で準用する特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2001-03-26 
結審通知日 2001-03-28 
審決日 2001-04-26 
出願番号 実願平8-3998 
審決分類 U 1 121・ 121- Y (C03C)
U 1 121・ 1- Y (C03C)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 守屋 敏道
特許庁審判官 野田 直人
西村 和美
登録日 1997-02-05 
登録番号 実用新案登録第3036478号(U3036478) 
考案の名称 アタッチメント付き複層ガラス  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社   サービスに関しての問い合わせ