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審決分類 審判 全部申し立て   B01D
管理番号 1041568
異議申立番号 異議2000-73622  
総通号数 20 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2001-08-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-09-18 
確定日 2001-05-25 
異議申立件数
事件の表示 登録第2603508号「中空糸膜カ-トリッジフィルタ-」の請求項1に係る実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 登録第2603508号の請求項1に係る実用新案登録を取り消す。
理由 1.手続きの経緯
本件実用新案登録第2603508号考案は、平成4年3月18日に実用新案登録出願され、平成12年1月7日にその実用新案登録の設定登録がなされたものである。
これに対して、その後実用新案登録異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内の平成13年1月22日付けで実用新案登録異議意見書が提出されたものである。
2.本件考案
本件請求項1に係る考案(以下、「本件考案」という)は、実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】筒体(1)に収納された中空糸膜(2)束の開口端部が、前記筒体(1)の端部側壁面に接着部材(3)にて固定された濾過用カートリッジフィルターにおいて、前記筒体(1)端部側壁の接着面に両側対称傾斜面または両側対称突形状とした蟻溝(5a)または蟻ほぞ(5b)をカートリッジフィルターの筒軸方向と直交する方向に環状に周設し、接着部材(3)と筒体(1)が蟻継(5)により固着封止されて成る中空糸膜カートリッジフィルター。」
3.取消理由の概要
当審が通知した平成12年11月10日付け取消理由の概要は、本件考案は、引用例1に記載された考案であるか、引用例1及び引用例2に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、本件考案に係る実用新案登録は、実用新案法第3条第1項第3号又は同条第2項の規定に違反してなされたものであるというものである。
4.引用例の記載内容
引用例1:実願昭59-104128号(実開昭61-19404号、手続補正書を含む)のマイクロフィルム
(a)「この考案は水処理技術の一種である逆浸透、限外濾過などの膜分離に用いる中空繊維を備えたモジュール構造体に関し、詳しくはモジュール構造体における中空繊維の固定構造の改良に関する。」(第1頁19行乃至第2頁第2行)
(b)「円筒状容器内に、中空繊維束が、容器内の一方端部又は両端部に形成された接着剤からなる封止部で固定され、被処理液を透過処理するモジュール構造体において、封止部が形成される部位における容器の内壁面に内部から端部に連続して延びる1以上からなる外部へ開放する凹部を設け、この凹部により中空繊維束の容器への固定を確実にするとともに接着時における気泡を容器外に放出しうるよう構成したことを特徴とするモジュール構造体。」(第1頁実用新案登録請求の範囲の項)
(c)「また、各凹部(7)の断面が正台形状をなしているため、封止部(6)が圧力履歴、温度変化などの外部応力を受けて、その半径方向に収縮する収縮応力が作用しても封止部(6)と各凹部(7)の内側壁とは互いに押しつけ合う分力が生じ、それら両者が剥離するのを防止できる。さらに、この場合、凹部(7)内で硬化した接着剤はケーシング(2)内に抜けでることがないため、中空繊維束(5)の固定力を向上させることができる。」(第5頁第19行乃至第6頁第7行)
(d)「第3図(a)(b)(c)は他の実施例を示すもので、各ケーシング(2a、2b、2c)の内壁面にらせん状に凹部(7a、7b、7c)を設け、・・・同図(b)は1本の台形凹部(アリ溝)を螺旋状に形成したものである。」(第7頁第20行乃至第8頁第7行)
(e)「しかも両方の側壁を容器の内壁面と鋭角をなす傾斜面で形成したアリ溝状・・・に形成させているため中空繊維束を従来以上に確実に容器内に固定することができる。」(第9頁第1行乃至第5行)
引用例2:特開昭53-102878号公報
(a)「本発明は限外濾過、逆浸透等の膜分離の用に供する中空繊維を内蔵する構造体に関するものである。」(第1頁右欄第14行乃至第16行)
(b)「接着材料で中空繊維相互が固められた接着部を、中空繊維の長さ方向の少くとも1箇所に有し、かつ中空繊維の少くとも1端が該接着材料によっては閉塞されずに開口している中空繊維束と、少くとも1つの入口または出口を有する外筒とからなる中空繊維を内蔵する構造体で、外筒がその内面に連続または不連続の1個以上の凹部を有し、該凹部に、中空繊維束の接着部と1体となっている接着材料が嵌込まれていることを特徴とする構造体。」(第1頁左欄特許請求の範囲の項)
(c)「接着部を外筒に強く固定するためには外筒の長さ方向に直角に帯状に設けられた溝、特に外筒内面の全周にわたって帯状に設けられた溝であることが望ましい。凹部の深さも固定強力に関係しており特に0.5mm以上の深さであることが良い。凹部が外筒の長さ方向と直角に外筒内面を1周するように帯状に設けられた溝であり、・・・良好な固定強力が得られるので非常に有効なものである。」(第3頁上段左欄第7行乃至第19行)
5.当審の判断
(1)理由1:引用例1を主引例とした場合
引用例1には、「膜分離に用いる中空繊維を備えたモジュール構造体」に関し、「円筒状容器内に、中空繊維束が、容器内の一方端部又は両端部に形成された接着剤からなる封止部で固定され、被処理液を透過処理するモジュール構造体において、封止部が形成される部位における容器の内壁面に内部から端部に連続して延びる1以上からなる外部へ開放する凹部を設け、この凹部により中空繊維束の容器への固定を確実にするとともに接着時における気泡を容器外に放出しうるよう構成したことを特徴とするモジュール構造体。」(上記(b)参照)が記載されている。
また、引用例1の上記(d)及び(e)の記載や第3図(b)には、「アリ溝を螺旋状に形成」した具体例が開示されているから、この具体例に照らせば、引用例1には、「円筒状容器内に、中空繊維束が、容器内の一方端部又は両端部に形成された接着剤からなる封止部で固定され、被処理液を透過処理するモジュール構造体において、封止部が形成される部位における容器の内壁面に内部から端部に連続して延びる1本の外部へ開放する螺旋状のアリ溝(凹部)を設け、このアリ溝により中空繊維束の容器への固定を確実にするとともに接着時における気泡を容器外に放出しうるよう構成したことを特徴とするモジュール構造体。」の考案(以下、「引用例1考案」という)が記載されていると云える。
そこで、本件考案と引用例1考案とを対比すると、引用例1考案の「モジュール構造体」及び「アリ溝」は、本件考案の「中空糸膜カートリッジフィルター」及び「両側対称傾斜面とした蟻溝(5a)」にそれぞれ相当すると云えるから、両者は、「筒体(1)に収納された中空糸膜(2)束の開口端部が、前記筒体(1)の端部側壁面に接着部材(3)にて固定された濾過用カートリッジフィルターにおいて、前記筒体(1)端部側壁の接着面に両側対称傾斜面とした蟻溝(5a)を設け、接着部材(3)と筒体(1)が蟻継(5)により固着封止されて成る中空糸膜カートリッジフィルター。」の点で一致し、次の点で相違していると云える。
相違点:本件考案は、蟻溝が「カートリッジフィルターの筒軸方向と直交する方向に環状に周設」されているのに対し、引用例1考案は、蟻溝が「螺旋状」であってその「端部が外部へ開放する」ように設けられている点
次に、この相違点について検討する。
「中空糸膜カートリッジフィルター」において、中空糸膜を筒体に確実に固着する目的でその凹部の溝を「筒軸方向と直交する方向に環状に周設」することが引用例2によって既に公知であれば、その溝の形状が異なるものの、確実な固着という目的の限りでは同じである引用例2の上記教示に従えば引用例1発明の「螺旋状」の「蟻溝」を「環状に周設」する程度のことは当業者がきわめて容易に想到することができたと云うべきである。
したがって、本件考案は、上記引用例1及び引用例2に記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであると云える。
なお、実用新案登録権者は、特許異議意見書において、本件考案は「蟻溝をカートリッジフィルターの筒軸方向と直交する方向に環状に周設し」た点に新規性進歩性があると主張している。
そこで、蟻溝を「筒軸方向と直交する方向に環状に周設」した点と引用例1発明の「螺旋状」の点について検討するに、引用例1発明の「螺旋状」の技術的な理由については、その一端部を外部に開放して接着時における気泡をその内部から満遍なく放出させるために「螺旋状」としているのであるから、「確実な固着」という目的に加えさらに「接着時における気泡の放出」という目的をも併せ達成することをねらいとすることは明らかである。
これに対し、本件考案は、「確実な固着」だけを目的とするものであり、この目的の限りでは、引用例2にもみられる如く「直交する方向に環状に周設」するのがむしろ通常の手段であると云えるから、このような本件考案に対しては上述したとおりであり、また、引用例2の技術を引用例1発明に適用する際に引用例1発明の「螺旋状」がこの適用を阻害する要因となるとは云えないし他に阻害要因も見当たらないから、実用新案登録権者の上記主張は採用することができない。
(2)理由2:引用例2を主引例とした場合
引用例2には、「中空繊維を内蔵する構造体」に関し、「接着材料で中空繊維相互が固められた接着部を、中空繊維の長さ方向の少くとも1箇所に有し、かつ中空繊維の少くとも1端が該接着材料によっては閉塞されずに開口している中空繊維束と、少くとも1つの入口または出口を有する外筒とからなる中空繊維を内蔵する構造体で、外筒がその内面に連続または不連続の1個以上の凹部を有し、該凹部に、中空繊維束の接着部と1体となっている接着材料が嵌込まれていることを特徴とする構造体」(上記(b)参照)が記載されている。
また、引用例2の上記(c)の記載には、上記構造体の「凹部」について、「外筒の長さ方向に直角に帯状に設けられた溝、特に外筒内面の全周にわたって帯状に設けられた溝であることが望ましい。・・・凹部が外筒の長さ方向と直角に外筒内面を1周するように帯状に設けられた溝であり」と記載されているから、「筒軸方向と直交する方向に環状に周設」されていることが明らかである。
そうすると、引用例2には、その第1図をも参照すると、「接着材料で中空繊維相互が固められた接着部を、中空繊維の長さ方向の少くとも1箇所に有し、かつ中空繊維の少くとも1端が該接着材料によっては閉塞されずに開口している中空繊維束と、少くとも1つの入口または出口を有する外筒とからなる中空繊維を内蔵する構造体で、外筒がその内面に連続の1個以上の筒軸方向と直交する方向に環状に周設された凹部の溝を有し、該凹部の溝に、中空繊維束の接着部と1体となっている接着材料が嵌込まれていることを特徴とする構造体」の考案(以下、「引用例2考案」という)が記載されていると云える。
そこで、本件考案と引用例2考案とを対比すると、引用例2考案の「構造体」は、明らかに本件考案の「筒体(1)に収納された中空糸膜(2)束の開口端部が、前記筒体(1)の端部側壁面に接着部材(3)にて固定された中空糸膜カートリッジフィルター」に相当するし、引用例2考案の凹部の溝における固着も「固着封止」と云えるから、両者は、「筒体(1)に収納された中空糸膜(2)束の開口端部が、前記筒体(1)の端部側壁面に接着部材(3)にて固定された濾過用カートリッジフィルターにおいて、前記筒体(1)端部側壁の接着面に凹部の溝をカートリッジフィルターの筒軸方向と直交する方向に環状に周設し、接着部材(3)と筒体(1)が該溝により固着封止されて成る中空糸膜カートリッジフィルター。」で一致し、次の点で相違していると云える。
相違点:本件考案では、「両側対称傾斜面とした蟻溝(5a)」が周設され接着部材と筒体がこの蟻溝で蟻継により固着封止されているのに対し、引用例2発明では、凹部の溝が周設され接着部材と筒体がこの溝で固着封止されている点
次に、この相違点について検討する。
上記引用例1の上記(e)には、凹部の溝を「蟻溝」とすれば「中空繊維束を従来以上に確実に容器内に固定することができる」と明示されているから、引用例2発明の「凹部の溝」をその確実な固着を目的として上記「蟻溝」にする程度のことは当業者であればきわめて容易に想到することができたと云うべきである。
そして、この「蟻溝」を採用すれば、この蟻溝での「固着」が「蟻継」であることも当然の帰結であるから、「蟻継」の点は「蟻溝」に伴う付随的な構成でありこの点での実質的な差異はない。
したがって、本件考案は、上記引用例2を主引例とした場合でも引用例2及び引用例1記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであると云える。
なお、本件考案は、その実用新案登録請求の範囲の「両側対称傾斜面または両側対称突形状とした蟻溝(5a)または蟻ほぞ(5b)」という記載の限りでは、「蟻溝」と「蟻ほぞ」とは択一的な構成であるから、本件考案に対するこれまでの当審の判断では「蟻溝」について言及してきたが、「蟻ほぞ」についても、その形状が蟻溝の「凹」に対して「凸」の関係にあることは自明の事項であるから、「蟻溝」の固着の効果が知られていればこれを「蟻ほぞ」とする程度のことは当業者がきわめて容易に思い付く設計的な事項であると云える。
したがって、「蟻ほぞ」についても「蟻溝」と同様その進歩性を認めることができない。
6.むすび
以上のとおり、本件請求項1に係る考案の実用新案登録は、拒絶の査定をしなければならない実用新案登録出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第7項の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第3条第2項の規定により、上記のとおり決定する。
異議決定日 2001-04-09 
出願番号 実願平4-23143 
審決分類 U 1 651・ 121- Z (B01D)
最終処分 取消  
前審関与審査官 杉江 渉  
特許庁審判長 沼沢 幸雄
特許庁審判官 野田 直人
山田 充
登録日 2000-01-07 
登録番号 実用新案登録第2603508号(U2603508) 
権利者 東洋濾紙株式会社
東京都中央区日本橋本町3丁目2番13号
考案の名称 中空糸膜カ-トリッジフィルタ-  
代理人 福田 尚夫  
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