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審決分類 審判 全部申し立て   F16L
審判 全部申し立て   F16L
管理番号 1041569
異議申立番号 異議2000-74679  
総通号数 20 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2001-08-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-12-26 
確定日 2001-07-02 
異議申立件数
事件の表示 登録第2605222号「さや管ユニット」の請求項1に係る実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 登録第2605222号の請求項1に係る実用新案登録を維持する。
理由 1.手続の経緯
本件実用新案登録第2605222号は、平成3年12月10日に実用新案登録出願した実願平3-109037号の一部を平成9年10月20日に新たな実用新案登録出願とし、平成12年4月21日に設定の登録がなされ、その後、岩橋礎より実用新案登録異議の申立てがなされたものである。

2.実用新案登録異議の申立ての概要
実用新案登録異議申立人は、下記の甲第1?7号証を提出し、本件実用新案登録の請求項1に係る考案は、概略、下記の理由1及び2により実用新案登録を受けることができないものであるから、本件実用新案登録は取り消すべきものであると主張している。

甲第1号証:実願平3-109037号(実開平5-49865号)のCD-ROM
甲第2号証:特開平5-311704号公報
甲第3号証:特開平7-4565号公報
甲第4号証:実願平1-153208号(実開平3-91596号)のマイクロフィルム
甲第5号証:実願昭56-17747号(実開昭57-131694号)のマイクロフィルム
甲第6号証:実願昭58-157037号(実開昭60-64383号)のマイクロフィルム
甲第7号証:登録意匠第710304号公報

理由1:本件実用新案登録は、分割の要件を満たしていない出願について登録されたものであるので、出願日の遡及は認められず、現実の分割出願の日をもって登録要件が判断されるべきである。だとすれば、本件請求項1に係る考案は、甲第1号証に記載された考案に基づき、甲第2号証又はさらに甲第3号証の記載を参酌して当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるので、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものである。
理由2:本件実用新案登録が、分割の要件を満たしている出願について登録されたとしても、本件の請求項1に係る考案は、甲第4,5及び6号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるので、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものである。

3.当審の判断
(1)理由1について
異議申立人の主張は、本件実用新案登録は、分割の要件を満たしていない出願について登録されたものであるので、出願日の遡及は認められず、現実の分割出願の日をもって登録要件が判断されるべきであるとするものであるところ、本件は、特許法等の一部を改正する法律(平成5年法律第26号)により改正された実用新案法(以下、「新実用新案法」という。)施行前の実用新案法の下で出願された実用新案登録出願の一部を、新実用新案法施行後に新たな実用新案登録出願として出願したものであるので、異議申立人が主張するように分割出願の要件を満たしていない出願であって、出願日の遡及が認められないものであれば、新実用新案法の下での出願ということになり、異議申立の制度は適用されないことになる。
すなわち、本件の場合、分割が不適法であり、出願日の遡及が認められないという異議申立人の主張する理由は、本件実用新案登録を取り消す理由とはなり得ないものである。
したがって、理由1については審理をする意味がなく、却下をすべきものであるので、ここで審理はしない。
(2)理由2について
(i)本件考案
本件実用新案登録第2605222号の請求項1に係る考案(以下、「本件考案」という。)は、登録された実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】 ユニット化された配管と消音テープとさや管とよりなるものであって、上記配管と上記消音テープ及び上記さや管は屈曲自在であり、上記配管の外周には上記消音テープが環状に巻付けてカバーしてあり、上記消音テープでカバーしてある上記配管は上記さや管に予め挿入してユニット化してあり、上記配管のみは上記さや管の両端部からこの配管相互の接続とこの配管に保温・ずれ防止用キャップを被せるのに必要な長さだけ突出していることを特徴とするさや管ユニット。」
(ii)証拠の記載事項
甲第4号証には、図面とともに以下の事項が開示されている。
a.「給液管の表面に消音材を被覆し、これをさや管内に通管せしめてウオーターハンマー音の減少を図るように工夫した給液配管材」(実用新案登録請求の範囲)
b.「第1図に本考案に係る配管材を示す。符号の1は樹脂製のフレキ状さや管、2はこのさや管1内に通管された樹脂製の給液管にして、この表面には第1、2図に示すように通管に支障がない程度に発泡ポリエチレンテープから成る消音材3が被覆されている。」(第3頁第19行?第4頁第4行)
c.「第3図は施工例を示し、圧送側4にヘッダー5を置き、このヘッダー5と各端末6間に先ずさや管1を施工し、この後で内装工事を行い、次にさや管1内に給液管2を通管し、ヘッダー5と端末6に夫々を接続した状態である。」(第4頁第5?9行)
d.消音材3が給液管2の外周に環状に巻付けられて給液管をカバーしている(第1図)、
e.消音材3でカバーしてある給液管2がさや管1に挿入される(第1、2図)
f.給液配管材(給液管、消音材及びさや管からなる)がヘッダー5と端末6に屈曲して接続されている(第3図)
甲第5号証には、図面とともに以下の事項が開示されている。
g.「2本の管体を左右に沿って並べて内包し断面が8字状形をした筒体部を有し、この筒体部の長手方向に沿って上下に出来た溝部の少なくとも一方に線材および管体等を横たえ、かつこれら線材および管体等を抱き込み保持する弾性片を前記筒体部と一体に成形したことを特徴とする配管用断熱体。」(実用新案登録請求の範囲)
h.「従来の配管用断熱体を第1図、第2図により説明する。…中略…冷媒を室内ユニット1に通す細管4と、室内ユニット1の蒸発器で蒸発した冷媒を通す太管5がそれぞれ断熱材6,7により包まれ、そして室内ユニット1から室外ユニットの運転を制御する信号を送る操作用線材8との合計3本を束にしてその外周を化粧テープ9を巻きつけて仕上げていた。」(第1頁第16行?第2頁第11行)
i.「セパレート形空気調和機の据付作業時には、細管4及び太管5を一体と成した断熱材10を室内ユニット1及び室外ユニット2に取付けたのち、操作用線材8及びドレンホース13を各々断熱材10の溝部14,15に挿入するだけで据付作業が完了する。」(第4頁第1?6行)
甲第6号証には、図面とともに以下の事項が開示されている。
j.「燃料等を移送するパイプの外側に、合成樹脂製の保護管を嵌装し、同保護管の両端部とこれに隣接する上記パイプとに亘って熱収縮性チューブを嵌着し、同チューブを加熱収縮させることによって上記保護管とパイプとを密封的に連結するように構成したことを特徴とする燃料等のパイプ装置。」(実用新案登録請求の範囲)
k.保護管12両端部と該両端部から突出する燃料パイプ10に亘って保護管12を被せる(第1図)
甲第7号証には、「断熱二連被覆管の端末キャップ」に係る意匠の図面が記載され、「本物品は、ゴム・プラスチック等からなり、例えばクーラー用配管或いは暖房用給湯管として用いられる断熱二連被覆管の端末を密封して当該端末より断熱被覆管の断熱層内へ水分が入るのを防止するのに用いられる。」との説明とともに、使用状態を示す参考図には、2本の導管とこれを被覆する断熱二連被覆管の端部とに亘って端末キャップが被着されている態様が示されている。
(iii)対比・判断
本件考案と甲第4号証に記載された考案とを対比する。
甲第4号証に記載された「給液管2」及び「発泡ポリエチレンテープから成る消音材3」は、それぞれ本件考案の「配管」及び「消音テープ」に相当し、甲第4号証に記載された給液管2及びさや管1は何れも樹脂製のものが実施例として示され、第3図に示される施工例を参照すれば、発泡ポリエチレンテープから成る消音材とともに屈曲自在なものが開示されていることになり、第1図によれば、発泡ポリエチレンテープから成る消音材3は給液管2の外周に環状に巻き付けられ、給液管をカバーしているものと認められる。
そして本件考案でいう「予め挿入してユニット化してあり」の意味するところは、明細書に「この考案は、工場においてさや管と消音テープを巻いた配管とを組合わせて、全体がユニット化されているさや管ユニットに関する。」(【0001】【考案の属する技術分野】)と記載されているように、配管を建造物等に施工する前にさや管に挿入して組合わせて一体として取り扱うものと解される。
したがって、本件考案と甲第4号証に記載された考案とは、「配管と消音テープとさや管とよりなり、上記配管と上記消音テープ及び上記さや管は屈曲自在であり、上記配管の外周には上記消音テープが環状に巻付けてカバーしてあり、上記消音テープでカバーしてある上記配管は上記さや管に挿入して」いる構成において一致しているが、下記の点で相違しているものと認める。
相違点1.本件考案において消音テープでカバーしてある配管はさや管に予め挿入してユニット化してあるのに対し、甲第4号証に記載された考案においては、先ずさや管を施工し、内装工事後にさや管内に給液管を通管する(開示事項c)とされているように、予めユニット化するものではない点。
相違点2.本件考案において、配管のみがさや管の両端部からこの配管相互の接続とこの配管に保温・ずれ防止用キャップを被せるのに必要な長さだけ突出しているのに対し、甲第4号証に記載された考案はそのような構成を備えていない点。 この点について、甲第4号証の第1、2図には消音材3でカバーされた給液管2がさや管1から突出して描かれているが、上記相違点1に挙げたように甲第4号証に記載された考案は、ユニット化された配管ではなく、先ずヘッダーと端末間に施工されたさや管に、内装工事後に給液管を通管する(開示事項c)というように、さや管の両端部はヘッダーと端末にそれぞれ接続されていることになり、その後に通管された給液管が突出することはないものが例示されていることから、該第1、2図は、さや管の中に位置する消音材3及び給液管2を説明するためにさや管1の一部を切除した形で示しているものと解され、上記の本件考案の構成を示唆するものではない。
そこで先ず、上記の相違点1について検討する。
甲第5号証に記載された配管用断熱体は、弾性片を一体的に備えた筒体部に管体を内包するものであり、該筒体部と管体とは予め組合わされることはあり得るが、本件考案の消音テープやさや管に相当するものを有しておらず、したがってそれらを配管と組合わせてユニット化するということを示唆するものは何もない。
甲第6号証に記載されたパイプ装置もパイプの外側に保護管を嵌装するもので、該パイプと保護管とは予め組合わされていることもあり得るが、やはり、本件考案の消音テープやさや管に相当するものは有していないので、それらと配管(パイプ)とのユニット化を示唆するものではない。
甲第7号証に記載された導管も、予め断熱被覆管と組合わせられるものと認められるが、甲第7号証にも本件考案の消音テープやさや管に相当するものは記載されておらず、それらと導管とをユニット化することを示唆するものはない。
すなわち、甲第5乃至7号証の何れにも本件考案の上記相違点1に係る構成である「消音テープでカバーしてある配管はさや管に予め挿入してユニット化してあり」という構成は、記載も示唆もされていない。
次に相違点2について検討すると、本件考案の上記相違点2に係る構成は、上記の相違点1に係る構成「消音テープでカバーしてある配管はさや管に予め挿入してユニット化してあり」という構成を前提としており、該構成について何ら開示されていない甲第5乃至7号証の記載からは、上記相違点2に係る構成も示唆され得ない。
そして、本件考案は、上記相違点1及び2に係る構成を具備することによって、明細書に記載されているように、「配管工事に際して、さや管と配管と消音テープとがユニット化されているので設備配管工事の能率を高めることができ」るとともに、「配管のみは、上記さや管の両端部からこの配管相互の接続とこの配管にキャップを被せるのに必要な長さだけ突出しているので、このユニットの両端部をそれぞれの配管に接続することが容易であり、キャップを被せると配管の端部の保温とこの配管がさや管の位置からずれることが防止できる」という甲第4乃至7号証の記載からは予測し得ない効果を奏するものと認められる。
したがって、本件考案は、甲第4乃至7号証に記載された考案から当業者がきわめて容易に考案をすることができたものということはできない。

4.むすび
以上のとおりであるから、異議申立人の主張する理由及び証拠によっては本件実用新案登録を取り消すことはできない。
また、他に本件実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。
よって、上記のとおり決定する。
異議決定日 2001-06-14 
出願番号 実願平9-9744 
審決分類 U 1 651・ 121- Y (F16L)
U 1 651・ 05- Y (F16L)
最終処分 維持    
前審関与審査官 宮崎 恭渡邊 豊英  
特許庁審判長 佐藤 雪枝
特許庁審判官 門前 浩一
鈴木 美知子
登録日 2000-04-21 
登録番号 実用新案登録第2605222号(U2605222) 
権利者 株式会社長谷工コーポレーション
東京都港区芝2丁目32番1号
考案の名称 さや管ユニット  

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