• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て成立) B07C
管理番号 1041575
判定請求番号 判定2000-60125  
総通号数 20 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案判定公報 
発行日 2001-08-31 
種別 判定 
判定請求日 2000-09-08 
確定日 2001-06-25 
事件の表示 上記当事者間の登録第2548320号の判定請求事件について、次のとおり判定する。   
結論 (イ)号図面及びその説明書に示す「生花の下葉取装置」は、登録第2548320号実用新案の技術的範囲に属しない。
理由 1.請求の趣旨
イ号図面及びその説明書に示す「生花の下葉取装置」(以下、「イ号物件」という。)は、登録第2548320号実用新案の技術的範囲に属しない。

2.本件考案
本件実用新案登録第2548320号の請求項1に係る考案(以下、「本件考案という。」)は、明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであり、分説すると以下の構成要件を備えるものである。

A:処理対象の生花の根元部と予定間隔をおいて、かつこれとほぼ直交するように配置される回転軸と、
B:前記回転軸に結着された少なくとも1本の弾性ヒモとを具備し、
C:前記弾性ヒモの長さは前記予定間隔よりも長く設定され、前記回転軸は前記弾性ヒモが前記根元部の位置でその基端部に向けて回転する方向に駆動され、
D:回転している弾性ヒモが前記生花の根元部の葉を衝撃して叩き落とすことを特徴とする
E:生花の下葉取装置。

3.イ号物件
請求人が提出した判定請求中のイ号物件の説明、同請求書に添付した「イ号図面並びに説明書」、検甲第1号証、平成13年2月28日付けの回答書からみて、イ号物件は、次の構成要件を備えるものと認められる。

(a):処理対象の生花の根元部と予定間隔をおいて、かつこれとほぼ直交するように配置される回転軸と、
(b):葉落し部材はバンドー化学株式会社製のウレタンゴムから成り、長手方向には伸縮せず、その直径は3ミリ、回転軸からの突出長は約4.5cmであり、それ自身で自立するが、全体的にわん曲しており、葉落し部材は回転軸に形成された挿通孔にまっすぐストレートに挿入され、挿通孔の両側部に抜け止めのためのストッパーを装着し、
(c):前記葉落し部材の長さは前記予定間隔よりも長く設定され、前記回転軸は前記葉落し部材が前記根元部の位置でその基端部に向けて回転する方向に駆動され、
(d):回転している葉落し部材が前記生花の根元部の葉を落とす、
(e):生花の下葉取装置。

4.当審の判断
本件考案とイ号物件の構成要件を対比すると、イ号物件の構成要件(a)、(c)、(e)は、それぞれ、本件考案の構成要件A、C、Eを充足する。

しかし、イ号物件の構成要件(b)、(d)がそれぞれ本件考案の構成要件B、Dを充足するか否かについては、請求人と被請求人との間で争いがあるので、以下、検討する。

(4-1)構成要件Bの「弾性ヒモ」の充足性について
被請求人が提出した乙第1号証の1に「ひも string[力]→弦」と、乙第1号証の2に「弦 string[力]長さが直径の何倍も大きく、剛性を持たない物体」と、乙第2号証に「弦 chord,string ・・・工学では、ひも、ロープ、くさりのように十分に曲がりやすく、軸方向に張力の働く非常に細い棒をさす.」と、乙第3号証に「ひも【紐】<名>(マル1)糸より太く、綱やなわより細い、長い線状の繊維製品や紙・革など。物をしばったり、つないだりするもの。・・・ゴム-(紐)」と、それぞれ記載されているが、いずれにも「弾性ヒモ」については記載されていない。わずかに、乙第3号証に「ゴム紐」成る記載があるが、この記載をもって直ちに「弾性ヒモ」が一般的な用語であるということはできない。
また、被請求人が提出した乙第10号証に「elastic massive cord」と、乙第12ないし15号証に「弾性紐」と、乙第16号証に「弾性ひも」と、それぞれ記載されているが、これら乙号証は、本件出願前に頒布された刊行物ではなく、さらに、乙第17号証は本件出願前に頒布された刊行物ではあるが、「ELASTIC CORD」と記載されているだけで、直接「弾性ヒモ」について記載されているわけではない。
そして、従来公報を参照してみると、弾性紐が長手方向に伸縮するものが認められる(実願昭63-104095号(実開平2-25326号)のマイクロフィルム、実願昭61-142898号(実開昭63-48770号)のマイクロフィルム)、実願昭62-190962号(実開平1-95153号)のマイクロフィルム)等参照)。

一方、本件考案の「弾性ヒモ」について本件登録明細書及び図面を記載されている関連事項を列挙してみるとつぎのとおりである。
(1)「従来の合成樹脂製ブラシや軟質樹脂棒群を有する平行移動型または回転ブラシを・・・のみならず、腰の強い軟質樹脂棒群の先端で、根元部の同じ部位が繰り返し叩かれるので、茎に叩き傷や擦り傷ができ易く、極端な場合は根元部が潰れて千切れる恐れすらある。」(本件登録公報3欄29?36行)、
(2)「屈曲自在の弾性ヒモ」(本件登録公報3欄49行)、
(3)「回転軸に結着されている弾性ヒモは、自由回転状態ではほぼ直線状をなしているが、生花の葉や葉柄に衝突して自由回転が妨げられると、当該葉柄や葉の部分を衝撃的に強く叩くと同時に、慣性力によって、それよりも先端の部分が、葉や葉柄との衝突点からさらに回転方向へ曲がり込んでこれに巻き付くように屈曲変形し、これによって葉や葉柄はこれとほぼ直交する力で確実に叩き落とされる。上下の弾性ヒモの先端同士が回転中に互いに衝突しても、ヒモは衝撃を吸収しながら円滑にすれ違うので回転には何ら支障を生じない。弾性ヒモは表面が軟らかく折曲自在なので、生花の茎に傷つけることなく、根元部の全周の下葉を完全に叩き落とす。」(本件登録公報4欄12?23行)、
(4)「上下の回転軸29、30は互いに対抗しないように複数個の孔36が第3図、又は第4図のように穿孔されている。それらの孔36に直径2?4粍程度のウレタンゴムヒモ、アメゴムヒモ等の表面が軟かく折曲自在の弾性ヒモ37を通して両端を揃えた後、ビニール製結束バンドで回転軸29,30に弾性ヒモ37を結着する。第3図のように弾性ヒモ37を結着すると、回転軸29,30を回転したとき、弾性ヒモ37はそれ自体の遠心力によって一文字状のプロペラのように回転する。」(本件登録公報5欄11?19行)、
(5)「一方、第4図のように2つの孔36に通して回転軸の表と裏に弾性ヒモ37を結着すると共に上下にも結着して4本の弾性ヒモにすると、十文字状の形状を保って回転する。」(本件登録公報5欄20?23行)、
(6)第3,4図には、弾性ヒモの回転停止状態では、回転軸29(30)の上方に結着した弾性ヒモの根元部が小さい曲率半径でほぼ360゜湾曲し、該弾性ヒモの先端が、自重により下方に垂れ下がっていることが記載されている。

本件考案の「弾性ヒモ」を検討する。「ヒモ」とは、社会通念上、「物を束ねまたは結びつなぐ太い糸。又細い布・革など」(広辞苑参照)をいい、物を束ねたり、結んだりすることのできるものであれば足り、それが、弾性又は可撓性を有するか否かは問わない(例えば、ゴム紐は弾性を有し、繊維ヒモは弾性を有しない)。本件考案の「弾性ヒモ」は、普通一般の「ヒモ」に「弾性」という性質を付したものということができ、「弾性」とは、「力を加えれば変形し、また、力を加えるのを止めれば原形に復帰する」性質であるから、「弾性ヒモ」は、力を加えれば変形し、また、力を加えるのを止めれば原形に復帰する性質を有する、物を束ねたり、結んだりすることのできるものである。
また、弾性ヒモは、従来公報の記載によれば、長手方向に伸縮するものと認められる。
さらに、本件登録明細書及び図面を参酌すると、「弾性ヒモ」は、「屈曲自在」(上記(2))、「屈曲変形」、「表面が軟らかく折曲自在」「自由回転状体ではほぼ直線状をなしている」、「上下の弾性ヒモの先端同士が回転中に互いに衝突しても、ヒモは衝撃を吸収しながら円滑にすれ違う」(上記(3))、「直径2?4粍程度のウレタンゴムヒモ、アメゴムヒモ等の表面が軟らかく折曲自在」、「弾性ヒモ37はそれ自体の遠心力によって一文字状のプロペラのように回転する」(上記(4))、「十文字状の形状を保って回転する。」(上記(5))、「弾性ヒモの回転停止状態では、回転軸29の上方に結着した弾性ヒモの先端が、自重により下方に垂れ下がっていること」(上記(6))等の記載、及び、従来例として「腰の強い軟質樹脂棒群」(上記(1))の記載から、本件考案の「弾性ヒモ」は腰の弱いものであることが示唆されていることから、「弾性ヒモ」は、弾性を有する(長手方向に力を加えれば変形(伸長)し、また、力を加えるのを止めれば原形に復帰する)ものではあるが、回転停止状態では、回転軸の上方に設けられた弾性ヒモの先端が自重により下方に垂れ下がり、回転するとほぼ直線状、一文字状、十文字状になる程度の柔軟性を有し、物を束ねたり、結んだりすることのできるものであるということができる。

被請求人は、「実施例に示したウレタンゴムヒモは、・・・長尺のヒモが小径のスプールに巻かれた状態で出荷されるので、巻き癖がついており、所望の長さ(10?17センチ程度)に切断して回転軸に結着したときでも、この巻き癖が直らず、外見上前記第3、4図のようになるので(検甲第1号証参照)、本件考案の考案者、出願人が(不用意に)、見たままの弾性ヒモの状態を図に描いたに過ぎないものである。」(平成12年12月8日付け答弁書5頁8ないし13行)と主張する。
しかし、本件実用新案登録公報の第3図及び第4図は、弾性ヒモの回転軸側根元部が小さな曲率半径で上方から下方に向かってわん曲しており、その後はまっすぐ下方に延びていることから、巻き癖のように、弾性ヒモ全体がわん曲するものとは明らかに異なる。そして、明細書及び図面は実用新案権主張の根拠となるものであるから、不用意に記載することは許されない。

上記のことを前提に、本件考案の「弾性ヒモ」とイ号物件の「葉落し部材」とを対比すると、イ号物件の「葉落し部材」は、バンドー化学株式会社製のウレタンゴムから成り、検甲第1号証によれば、長手方向に伸縮しないものであり、その直径は3ミリ、回転軸からの突出長は約4.5cmであり、わん曲はしているが、これは素材メーカーがスプールに卷回して出荷したことによる巻きぐせであり、本件考案の「弾性ヒモ」のように、自重によりわん曲しているものではない(請求書7頁(イ)参照)から、イ号物件の「葉落し部材」は、本件考案の「弾性ヒモ」を充足しない。

(4-2)構成要件Bの「結着」の充足性について
まず、イ号物件の「葉落し部材」の回転軸の取付けについて検討すると、被請求人は、「請求人が現在までに製造販売された「生花の選別装置」に装備された葉落し装置におけるおける、弾性ヒモの回転軸への取付けは、被請求人の知る限りでは、イ号図2(葉落し部材が回転軸に形成された挿通孔にまっすぐストレートに挿入され、挿通孔の両側部に抜け止めのためのストッパーを装着する)のようにはされておらず、本件公報の第3、4図(葉落し部材が回転軸に形成された挿通孔に挿入され2つ折りにされ結束バンドで固定されている)に示したようにされている。」(平成12年12月8日付答弁書2頁20ないし23行)と主張しているので、当審は平成13年1月29日付けでこの点について審尋し請求人に確認したところ、請求人は、平成13年2月28日付けで「イ号装置の葉落し部材の取付けは、イ号図2に示すとおりです。」との回答を得たので、上記「3.イ号物件」のとおり、「葉落し部材は回転軸に形成された挿通孔にまっすぐストレートに挿入され、挿通孔の両側部に抜け止めのためのストッパーを装着し」と認定した。

被請求人は、「本件考案の「結着」は、(本件登録公報の)第3、4図の結着例に限定されるのではなく、適当な手段で、弾性ヒモを個々に回転軸に取付けることを意味すると解すべきであるから、イ号装置の弾性ヒモの回転軸への取付けは、本件考案の「結着」の概念に含まれるべきである」(平成12年12月8日付け答弁書7頁7ないし10行)と主張している。

そこで、本件考案の構成要件Bの「結着」について検討すると、「けっ-ちゃく【決着・結着】(古くはケツジャク)きまりのつくこと。落着。「事件が-する」「-をつける」」(広辞苑)、「【結着】けっちゃく 名・サ変 ものごとに結末をつけること。区切り。[例]-をつける[表記]「決着」とも。」(角川最新漢和辞典)等とあり、「回転軸に結着された・・・弾性ヒモ」の正確な意味は必ずしも明確ではないが、請求人の提出した甲第8号証によれば、「【結着・結著】ケッチャク (マル1)結びつける。(マル2)[国]決着。(マルイ)きまりがつくこと。(マルロ)とどのつまり。最後。結局。」(大修館書店新漢和辞典)とあることから、「回転軸に結着された・・・弾性ヒモ」とは、少なくとも、「回転軸に結びつけられた・・・弾性ヒモ」の意味である。一方、イ号物件の「葉落し部材」は「回転軸に形成された挿通孔にまっすぐストレートに挿入し、挿通孔の両側部に抜け止めのためのストッパーを装着し」たものであり、該イ号物件の「葉落し部材」は回転軸に結びつけられたものとはいえない。

また、「結着」の上記一般的な解釈に加え、本件考案の解釈の基となる本件登録明細書及び図面を参酌すると、
「それらの孔36に直径2?4粍程度のウレタンゴムヒモ、アメゴムヒモ等の表面が軟らかく折曲自在の弾性ヒモ37を通して両端を揃えた後、ビニール製結束バンドで回転軸29,30に弾性ヒモ37を結着する。第3図のように弾性ヒモ37を結着すると、回転軸29,30を回転したとき、弾性ヒモ37はそれ自体の遠心力によって一文字状のプロペラのように回転する。」(本件登録公報5欄13?19行)、
「一方、第4図のように2つの孔36に通して回転軸の表と裏に弾性ヒモ37を結着すると共に上下にも結着して4本の弾性ヒモにすると、十文字状の形状を保って回転する。2つの孔にすると2?6本の弾性ヒモを結着でき、」(本件登録公報5欄20?23行)、
「又前記実施例では回転軸に穿孔して弾性ヒモの中間部を結着したが、回転軸にピンを植設したり、鈎片を溶着して弾性ヒモの一端を取付けるようにしても良い。」(本件登録公報6欄13?15行)と記載されており、
本件考案の「結着」とは、単に、弾性ヒモを回転軸に結びつけたものにとどまらず、上記本件登録明細書に記載されているように、弾性ヒモを回転軸の孔36に挿通し2つ折りにして回転軸の近傍を結束バンドで取り付けたり、回転軸に取り付けたピンや鈎片に弾性ヒモを結びつけたり結束バンドで取り付けたりすることをも意味しているものと認められる。
しかし、イ号物件の「葉落し部材」は「回転軸に形成された挿通孔にまっすぐストレートに挿入し、挿通孔の両側部に抜け止めのためのストッパーを装着したものであり、本件明細書の実施例に記載したような回転軸への取付けをしたものではない。

したがって、イ号物件の「葉落し部材は回転軸に形成された挿通孔にまっすぐストレートに挿入され、挿通孔の両側部に抜け止めのためのストッパーを装着し」という構成要件は、本件考案の「結着」を充足しない。

上記(4-1)及び(4-2)において検討したとおり、イ号物件の構成要件(b)は、本件考案の構成要件Bを充足しない。

(4-3)構成要件Dの充足性について
本件考案の弾性ヒモの作用について検討する。
被請求人は、
(1)「掻き取る」(出願当初の明細書)、「茎の表面を滑走して掻き落とす」(平成5年10月6日付け意見書)、「茎の表面を滑走して下葉を掻き落とし」(平成5年10月6日付け手続補正書)、「叩いて掻き落とす」(平成6年2月1日付け手続補正書)、「衝撃して叩き落とす」(本件登録公報)と記載し、葉落し部材の作用の表現を変遷させ、
本件登録公報において、「回転軸に結着されて回転している弾性ヒモは、自由回転状態ではほぼ直線状をなしているが、生花の葉や葉柄に衝突して自由回転が妨げられると、当該葉柄や葉の部分を衝撃的に強く叩くと同時に、慣性力によって、それよりも先端の部分が、葉や葉柄との衝突点からさらに回転方向へ曲がり込んでこれに巻き付くように屈曲変形し、これによって葉や葉柄はこれとほぼ直交する力で確実に叩き落とされる。」(実用新案登録公報4欄12?19行)と記載し、
(2)「特に乙7号証では、直径2?4mm、長さ12?15cm程度のウレタンゴムヒモを1300?1600rpm程度で回転させ、ヒモの先端から幾分内側の位置で竹製の細棒(生花の葉柄に見立てた)を衝撃するようにした時の、ヒモの先端部の状態をストロボ装置で観察したところ、ヒモの先端部がその回転方向前方へ屈曲変形することが確認されたことが明記されている。」(平成12年12月8日付け答弁書7頁25ないし29行)と記載し、
(3)「(別件無効審判において被請求人(本件の被請求人)が提出した)検乙第1号証のビデオ画像によれば、本件考案の1300?1500rpmに較べれば低い回転数においてではあるが、回転しているウレタンゴムヒモが小径で柔軟な針金、樹脂棒などの障害物に衝突すると、ウレタンゴムヒモの衝突点よりも先端側およびその内側(回転中心側)の部分が回転方向前方へ曲がり込む様子が視認される。これと同様の曲がり込み現象は、人が右手で持って回転させているウレタンゴムヒモの中間点を反対側の手の指や、箸、棒などの障害物に衝突させれば、容易に体験、確認でき、またその際に回転速度が大きいほど、また障害物の質量が大きいほど、曲がり込みの度合いが大きくなることも容易に視認できるところである。」(平成12年12月8日付け答弁書8頁1ないし9行)と記載している。
また、請求人は、
(4)「実開平2-57348号公報(甲3)には、葉落し部材の作用は「葉を落す」と記載されている。また実公昭60-38354号公報(甲4)には、軟質の合成樹脂棒の作用は「葉を払落する」と記載されている。また実開昭56-131754号(甲5)には、ゴムブラシの突起の作用は「(葉に)当接して落す」と記載されている。これに対し本件弾性ヒモの作用は「衝撃して叩き落とす」と記載されている。
以上のように、この種下葉取装置に係る各公報・明細書の葉落し部材の作用の表現は様々であるが、これらの作用を客観的に区別方法や区別基準はない。」(請求書10頁12ないし21行)と記載している。

上記(2)において、被請求人は、「ヒモの先端部がその回転方向前方へ屈曲変形する」根拠として、乙7号証鑑定書において鑑定人がストロボ装置で観察して確認したとしているが、当合議体に直接的に提示されたわけでなく、また、竹製の細棒は生花の葉柄とはその性質はかなり異なることから、竹製の細棒を生花の葉柄と見立てて本件考案の生花の下葉取装置の作用を説明するにはその前提において異なる。
また、上記(3)において、被請求人は、(別件無効審判において被請求人(本件の被請求人)が提出した)検乙第1号証のビデオ画像によって、ウレタンゴムヒモの衝突点よりも先端側およびその内側(回転中心側)の部分が回転方向前方へ曲がり込むことが視認されるとしている。確かに、回転しているウレタンゴムヒモが針金および柔軟な合成樹脂と衝突した時に、ウレタンゴムヒモの先端が回転方向前方へ曲がり込むことを示しているが、低速回転であり、葉落としできる程度の高速で回転したものではない。
したがって、上記(2)、(3)によっては、弾性ヒモが具体的にどのような状態で葉落しをするかは実証的には明確でなく、結局のところ、弾性ヒモが葉を落とすものであれば足りる。

一方、被請求人は、上記(1)のように、出願当初から特許査定されるまで弾性ヒモの作用についてその表現を逐一変え、また、上記(4)のように、従来の生花の葉落し装置において葉落し部材の作用は種々に表現されることから、弾性ヒモの具体的作用をどのように表現しようと、本件考案の弾性ヒモで葉落としができるものであればよいと解される。

以上のとおり、弾性ヒモが葉を落とすものであれば足り、本件考案がこのような構成であれば、例えば、ムチのようにしなって葉落としできることは明らかであるから、弾性ヒモの具体的作用をどのように表現しようと、本件考案の弾性ヒモで葉を衝撃して叩き落とすことになる。その意味では、イ号物件の構成要件(d)は、本件考案の構成要件(d)を充足する。

(4-4)均等について
本件考案は、構成要件B(回転軸に結着された少なくとも1本の弾性ヒモとを具備した点)により、登録明細書に記載したとおりの「弾性ヒモはニッパーや鋏で容易に切断でき、また回転軸への結着交換も容易なので作業者が何時でも所要の下葉除去長さに応じた最適長さの弾性ヒモを取り付けることができる。」(実用新案登録公報6欄24ないし28行)という作用効果が得られ、本件考案の目的(構造や保守点検が簡単で、コストも安く、しかも葉落しはほぼ完全に行なえる下葉取装置を提供するにある(実用新案登録公報3欄40ないし42行))が達成されることに照らして、本件考案の本質的部分は、上記構成要件Bにある。
そして、イ号物件の構成要件(b)は、本件考案の本質的部分である構成要件Bを充足しないのであるから、均等を判断するための他の要件を判断するもでもなく、イ号物件が本件考案と均等なものとすることはできない。

5.むすび
以上のとおりであるから、イ号物件は、本件考案の技術的範囲に属しない。
別掲
判定日 2001-06-13 
出願番号 実願平2-57125 
審決分類 U 1 2・ 1- ZA (B07C)
最終処分 成立    
特許庁審判長 木原 裕
特許庁審判官 鈴木 寛治
村山 隆
登録日 1997-05-30 
登録番号 実用新案登録第2548320号(U2548320) 
考案の名称 生花の下葉取装置  
代理人 平木 道人  
代理人 田中 香樹  
代理人 田中 香樹  
代理人 平木 道人  
代理人 高松 利行  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ