• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て   H01H
管理番号 1043372
異議申立番号 異議2000-70592  
総通号数 21 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2001-09-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-02-08 
確定日 2001-05-02 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 登録第2598611号「プッシュスイッチ」の請求項1に係る実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 訂正を認める。 登録第2598611号の請求項1に係る実用新案登録を取り消す。
理由 1.手続の経緯
実用新案登録第2598611号の請求項1に係る考案は、平成10年8月21日に実用新案登録出願(実願平10-6438号(実願平3-80327号の分割出願、原出願日:平成3年9月6日))され、平成11年6月18日に設定登録され、その後、申立人小椋久男より請求項1に係る考案について実用新案登録異議の申立がなされ、取消理由通知がなされ、訂正請求がなされ、訂正拒絶理由通知がなされ、訂正請求書の補正がなされ、再度の取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成13年2月26日に以前の訂正請求を取り下げるとともに再度の訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断
ア.訂正の内容
実用新案登録権者が求めている訂正の内容は、以下の(1)ないし(3)のとおりである。

(1)実用新案登録請求の範囲の請求項1の第6行「であって、」(実用新案登録公報第1欄第9行)の後に「前記絶縁基板の端縁部に前記第1の接点及び前記第2の接点にそれぞれ接続される第1及び第2の端面電極が形成されており、」を挿入する。

(2)実用新案登録請求の範囲の請求項1の第7行「前記フィルムは耐熱性フィルムにより」(実用新案登録公報第1欄第10行)を「前記粘着層及び前記フィルムは溶融半田の熱に対して耐え得る耐熱性を有する耐熱性粘着剤及び耐熱性フィルムによりそれぞれ」に訂正する。

(3)明細書の段落番号【0004】の「ものである。」(実用新案登録公報第3欄第14行)の後に「絶縁基板の端縁部に第1の接点及び前記第2の接点にそれぞれ接続される第1及び第2の端面電極が形成されている。」を挿入する。

イ.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
(1)及び(2)の訂正事項は、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的とするものであり、当該訂正内容は実用新案登録明細書に記載されたもので、新規事項の追加に該当しない。
(3)の訂正事項は、実用新案登録請求の範囲の記載と考案の詳細な説明の記載との整合をとるためものであり、明りょうでない記載の釈明に相当するもので、新規事項の追加に該当しない。
そして、上記(1)ないし(3)のいずれの訂正も実質上実用新案登録請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。

ウ.むすび
したがって、この訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成11年法律第41号)附則第15条の規定による改正後の特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第2項の規定により準用され、同附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正は認められるものである。

3.実用新案登録異議の申立てについての判断
ア.申立ての理由の概要
申立人小椋久男は、請求項1に係る考案は甲第1号証(実願昭1-83025号(実開平3-22323号)のマイクロフィルム)に記載された考案であるから、実用新案法第3条第1項第3号の規定に該当し、実用新案登録を受けることができないものであり、実用新案登録を取り消すべきと主張している。
また、予備的主張として、「耐熱性粘着剤」を用いることを限定する訂正があったとしても、甲第1号証及び甲第2号証(特開昭56-49778号)に記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2号の規定により実用新案登録を受けることができないものであり、実用新案登録を取り消すべきと主張している。

イ.本件考案
実用新案登録第2598611号の請求項1に係る考案は、訂正後の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。

「【請求項1】表面に第1の接点及び該第1の接点の外側に配置された第2の接点を有する絶縁基板と、
周縁部が前記第2の接点と接触するように前記絶縁基板の前記表面上に配置されて前記表面から離れる方向に湾曲した金属ばね板製のタクト板と、
粘着層を介して前記タクト板を覆い且つ前記粘着層により前記絶縁基板上に固定されるフィルムとを具備してなるプッシュスイッチであって、
前記絶縁基板の端縁部に前記第1の接点及び前記第2の接点にそれぞれ接続される第1及び第2の端面電極が形成されており、
前記粘着層及び前記フィルムは溶融半田の熱に対して耐え得る耐熱性を有する耐熱性粘着剤及び耐熱性フィルムによりそれぞれ形成されていることを特徴とするプッシュスイッチ。」

ウ.引用刊行物に記載された事項
これに対し、当審が平成12年12月14日付で通知した取消理由通知で引用した刊行物には、それぞれ、以下の事項が記載されている。

刊行物1:実願昭1-83025号(実開平3-22323号)のマイクロフィルム(異議申立人の提出した甲第1号証)
刊行物2:特開昭56-49778号(異議申立人の提出した甲第2号証)

上記刊行物1には、「押し釦スイッチ」に関して以下の事項が図面とともに記載されている。

「本考案の目的とするところは、・・・生産性や信頼性を損なうことなく大幅な薄型化が図れる押釦スイッチを提供することにある。」(明細書第4頁第4行?第7行)

「これらの図において、裏側シート10は、ポリイミドやPPS等のはんだ耐熱性を有するベースフィルム10aの片面にアクリル系やゴム系の粘着剤を塗布して粘着層10bとなした粘着剤付きシートで、この裏側シート10の粘着層10b上には、互いに離間した位置に第1の金属板11と第2の金属板12とが載置固定してある。これらの金属板11,12は、例えばリン青銅に銀クラッドや銀メッキを施したもので、それぞれ外部へ端子13を延出形成しているとともに、第1の金属板11には、中央固定接点14が、また第2の金属板12には2個所に凹状の周辺固定接点15が、突出形成してある。さらに、第2の金属板12は、その延出部分を円椀状にフォーミングして反転ばね16となした後、折返し部12aでこの延出部分を折り返し、反転ばね16を中央固定接点14に対向させている。つまり、反転ばね16は反転時に中央固定接点14に当接する可動接点として機能するものであり、この反転ばね16が非反転時に第1の金属板11に誤って接触するという事故を回避するため、第1の金属板11の一部で反転ばね16の周縁部と対向する個所は、例えばPET等の絶縁性フィルム17で被覆してある。表側シート18は、裏側シート10と同様、はんだ耐熱性を有するベースフィルム18aの片面に粘着剤を塗布して粘着層18bとなした粘着剤付きシートで、この表側シート18の粘着層18bは反転ばね16に密着させてある。そして、裏側シート10と表側シート18の各粘着層10b,18bは周縁部どうしが密着接合してあるので、この押釦スイッチは密封構造になっている。」(同書第6頁第5行?第7頁第15行)

「本考案によれば、一対の粘着剤付きシートに固定接点や折り返しの反転ばねを貼着して密封しているので、ハウジングとして金属板をインサートした樹脂成形品を用いていた従来品に比べて厚さ寸法が著しく薄くなり、しかも生産性や信頼性を損なう虞れがなく、所望の薄型化が図れる優れた押釦スイッチを提供することができる。」(同書第9頁第7行?第14行)

上記刊行物2には、「粘着剤」に関し以下の事項が記載されている。

「現在知られているシリコーン系粘着剤は粘着剤としての性能を発揮する温度範囲が-65℃から260℃と他の有機系粘着剤に比較してはるかに広く、」(公報第1頁右下欄第15行?第18行)

エ.対比・判断
請求項1に係る考案と刊行物1記載の考案とを対比すると、後者の「中央固定接点14」、「周辺固定接点15」、「裏側シート10」、「反転ばね16」、「粘着層18b」、「ベースフィルム18a」、「押釦スイッチ」、「第1と第2の金属板11、12の端子13、13」が、それぞれ前者の「第1の接点」、「第1の接点の外側に配置された第2の接点」、「表面に第1の接点及び該第1の接点の外側に配置された第2の接点を有する絶縁基板」、「周縁部が第2の接点と接触するように絶縁基板の表面上に配置されて表面から離れる方向に湾曲した金属ばね板製のタクト板」、「粘着層」、「粘着層を介して前記タクト板を覆い且つ粘着層により絶縁基板上に固定されるフィルム」、「プッシュスイッチ」、「第1の接点及び第2の接点にそれぞれ接続される第1及び第2の電極」に相当している。
また、後者の「はんだ耐熱性を有するベースフィルム18a」が、前者の「フィルムは溶融半田の熱に対して耐え得る耐熱性を有する耐熱性フィルムにより形成されている」との構成に相当する。

そうすると、両者は、
「表面に第1の接点及び該第1の接点の外側に配置された第2の接点を有する絶縁基板と、
周縁部が前記第2の接点と接触するように前記絶縁基板の前記表面上に配置されて前記表面から離れる方向に湾曲した金属ばね板製のタクト板と、
粘着層を介して前記タクト板を覆い且つ前記粘着層により前記絶縁基板上に固定されるフィルムとを具備してなるプッシュスイッチであって、
前記絶縁基板に前記第1の接点及び前記第2の接点にそれぞれ接続される第1及び第2の電極が形成されており、
前記フィルムは溶融半田の熱に対して耐え得る耐熱性を有する耐熱性フィルムにより形成されているプッシュスイッチ。」である点で一致し、

(a)「第1及び第2の電極」に関し、請求項1に係る考案では、「絶縁基板の端縁部」に形成された「端面電極」であるのに対し、刊行物1に記載された考案では「外部へ端子13を延出形成」したものである点、及び、
(b)「粘着層」に関し請求項1に係る考案は、「溶融半田の熱に対して耐え得る耐熱性を有する耐熱性粘着剤」で形成されているのに対し、刊行物1に記載された考案では、「耐熱性」に関して特に限定されていない点で、それぞれ相違する。

相違点(a)について検討すると、「絶縁基板の端縁部」に「端面電極」を形成することは、表面実装技術として慣用されているものであり(例えば、実開昭58-184845号公報、特開平2-73608号公報等参照)、刊行物1に記載の端子に代えて当該慣用技術を適用する程度のことは、当業者がきわめて容易になし得たものと認められる。

また、相違点(b)について検討すると、刊行物2にも記載されているとおり、「耐熱性粘着剤」自体は、周知のものであって、刊行物1に記載された発明においても、請求項1にかかる考案と同様に「粘着剤」を「溶融半田の熱に対して耐え得る耐熱性を有する耐熱性フィルム」を固定する「粘着層」の材料として使用しており、それ自体周知の「耐熱性粘着剤」を採用し、その「粘着剤」の耐熱性を「溶融半田の熱に対して耐え得る」ものとする程度のことは、当業者であればきわめて容易に想到できたものと認められる。

そして、請求項1に係る考案は、上記刊行物1に記載された考案および周知・慣用された技術を組み合わせたものに相当するが、そうすることにより、これらの公知技術が持つ効果の和以上の格別の効果を奏するものとも認められない。

したがって、請求項1に係る考案は、上記刊行物1に記載された考案および周知・慣用された技術に基づき当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。

オ.むすび
以上の通りであるから、本件請求項1に係る考案についての実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してされたものであり、平成6年法律第116号附則第9条の規定により準用する特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

よって、結論の通り決定する。
発明の名称 (54)【考案の名称】
プッシュスイッチ
(57)【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 表面に第1の接点及び該第1の接点の外側に配置された第2の接点を有する絶縁基板と、
周縁部が前記第2の接点と接触するように前記絶縁基板の前記表面上に配置されて前記表面から離れる方向に湾曲した金属ばね板製のタクト板と、
粘着層を介して前記タクト板を覆い且つ前記粘着層により前記絶縁基板上に固定されるフィルムとを具備してなるプッシュスイッチであって、
前記絶縁基板の端縁部に前記第1の接点及び前記第2の接点にそれぞれ接続される第1及び第2の端面電極が形成されており、
前記粘着層及び前記フィルムは溶融半田の熱に対して耐え得る耐熱性を有する耐熱性粘着剤及び耐熱性フィルムによりそれぞれ形成されていることを特徴とするプッシュスイッチ。
【考案の詳細な説明】
【考案の属する技術分野】
この考案は、操作パネルやキーボード等の接点部に用いられるプッシュスイッチに関する。
【従来の技術】
従来、個別に単体で用いられるプッシュスイッチは、図11に示すように、PBT等の絶縁樹脂中に電極10をインサート成形により設けて、ケース12を形成し、このケース12内に表面が球面状に僅かに湾曲したタクト板14を収納し、ケース12の上面開口部をポリイミドシート16により覆い、さらにSUS等の金属板18で覆って形成されている。
【考案が解決しようとする課題】
上記従来の技術のプッシュスイッチは、インサート成形により形成したケース12内にタクト板14を収納して、金属板18等で開口部を覆っているので、強度や成形型の精度上、形状を小さくすることには限界があり、電子機器の小型薄型化の妨げになっていた。さらに、電極10とケース12の形状が複雑になり成形が難しく、成形樹脂と電極10との密着性が悪く、強度的に問題があった。
【課題を解決するための手段】
本考案のプッシュスイッチは、表面に第1の接点及びこの第1の接点の外側に配置された第2の接点を有する絶縁基板と、周縁部が第2の接点と接触するように絶縁基板の表面上に配置されて表面から離れる方向に湾曲した金属ばね板製のタクト板と、粘着層を介してタクト板を覆い且つ前記粘着層により絶縁基板上に固定されるフィルムとを具備する。本考案のプッシュスイッチは、厚さが基板とタクト板及びフィルムの厚み分のみで形成されるので、簡単な構造で薄く強度が良いものである。絶縁基板の端縁部に第1の接点及び第2の接点にそれぞれ接続される第1及び第2の端面電極が形成されている。特に、本考案では、粘着層及びフィルムを溶融半田の熱に対して耐え得る耐熱性を有する耐熱性粘着剤及び耐熱性フィルムによりそれぞれ形成している。本考案のプッシュスイッチを回路基板上に表面実装する際に、フィルムに溶融半田が触れた場合でも、フィルムが溶融または変形したりすることがなく、また粘着層が剥離してしまうおそれもない。そのため一般的な表面実装部品と同様の方法で、回路基板に表面実装することができ、汎用性が非常に高くなる。耐熱性フィルムとしてポリイミド樹脂等の耐熱性樹脂によって形成されたものを用いると、強度及び耐久性が大幅に向上する。
また本考案は、表面に接点を有する絶縁基板と、絶縁基板上に配置されて接点を覆うように中央部が表面から離れる方向に湾曲した金属ばね板製のタクト板と、粘着層を介してタクト板を覆い且つ粘着層により絶縁基板に対して固定されるフィルムとを具備し、絶縁基板の両端部には該絶縁基板を厚み方向に貫通する一対の透孔が形成され、タクト板の両端部には一対の透孔に挿通されて絶縁基板の裏面側に折曲げられる一対の突出片が一体に形成されたプッシュスイッチにも適用できる。
【考案の実施の形態】
以下本考案の実施例について図面に基づいて説明する。図1はこの考案の第一実施例を示すもので、エポキシ銅箔張り積層板等の絶縁基板20の表面に、円弧状に銅箔で導体部22が形成されている。この導体部22には、球面状に湾曲し中央部が膨らんだ金属ばね板製のタクト板24の周縁部が接する。この導体部22は、スイッチの一方の接点を構成している。さらに、基板20の中央部には、銅箔パターンの一部からなる接点26が形成され、接点26から銀箔の導体部28が、基板20の端縁部に延出している。この導体部28の表面には、タクト板24とショートしないように、図示しないレジスト等が被覆されている。基板20の一端縁部には、銅箔または導電塗料が表面に設けられたスルーホールを分割して形成された端面電極30,32が形成され、端面電極30,32にはそれぞれ導体部22,28の先端部が接続されている。
タクト板24が載置された基板20は、耐熱性粘着剤の粘着層34を有したポリイミド樹脂等の耐熱性フィルム36で覆われており、タクト板24はこの耐熱性フィルム36と基板20との間で接点26と接触可能に固定されている。
この実施例のプッシュスイッチによれば、粘着層34を介して耐熱性フィルム36でタクト板24を覆い固定したので、構造が簡単であり、厚さが極めて薄くなる。しかも、耐熱性フィルム及び耐熱性粘着剤は、溶融はんだの熱に対しても耐え得るので、プッシュスイッチを回路基板の表面に実装する場合に、通常の表面実装技術を用いることができ、表面実装を容易に行なうことができる。また、電極30,32も簡単に形成することができ、製造工数及びコストも削減することができる。さらに、大きさもタクト板を3φの小型のものを使用でき、チップサイズも2.5×3mmのものも可能である。
次にこの考案の第二実施例について図2を基にして説明する。この実施例のプッシュスイッチは、基板20の表面に形成された接点26に、銅箔によるスルーホール38が形成され、このスルーホール38の裏面側の導体部39が一方の電極に接続しているものである。スルーホール38は樹脂40によって塞がれ、はんだやほこり等がタクト板24の方に侵入しないように形成されている。その他は第一実施例と同様に形成されている。
この実施例によれば、電極の一方に接続した導体部を基板20の裏面に設けるので、タクト板24との接触を防止するためのレジスト等が不要であり、電極の位置も自由に取ることができる。さらに、スルーホール38の周辺部を電極にすることにより、このプッシュスイッチの周囲に他の電子部品をより多く配置することができ、実装密度を上げることができる。
次にこの考案の第三実施例について図3、図4を基にして説明する。この実施例のプッシュスイッチは、図2のプッシュスイッチと同様の構成で、スルーホール42が銀塗料等の導電塗料により形成れている。そして、銅箔による接点44が、スルーホール42の周囲に形成され、タクト板46の中央部には、透孔48が形成されている。透孔48は、スルーホール42の導電塗料には接触せず、錫箔の接点44に透孔48の周縁部が接触するように形成されている。このスルーホール42は、内部で塞がれ、防塵効果を有するものでなければならない。その他の構成は、上述の第二実施例と同様である。
この実施例によれば、スルーホール42の形成が容易であり、タクト板46が導電塗料には接触せず銅箔の接点44に接触するので耐久性も高い。さらに、タクト板46の透孔48の周縁部が銅箔接点44に接触するので、接触部が広く動作が安定なものになる。
次にこの考案の第四実施例について図5を基にして説明する。この実施例のプッシュスイッチは、上記第二実施例と同様に、スルーホールを形成して電極の一方を基板20の裏面中央部に設けたものであり、スルーホールは、金属鋲50を基板20の中央部の透孔52に挿通し、先端部をカシメて固定するとともに、電極を形成したものである。また、他方の電極54は、コ字型の金属片を基板20の一端部に嵌め込み、導体部22の一部に接触させて接続を図って設けられている。その他の構成は、第二実施例と同様である。
この実施例によれば、スルーホールの形成がさらに容易になり、しかも耐久性も高い。また、電極の形成も容易であり、製造工数及びコストを大きく削減することができる。
次にこの考案の第五実施例について図6を基にして説明する。この実施例のプッシュスイッチは、基板20の両端縁部に、透孔60を形成し、帯状の金属ばね板の中央部を湾曲させて膨らませたタクト板62を設け、このタクト板62の両端部を透孔60に差し込んで、先端部を折り曲げて基板20に固定したものである。タクト板62の両端部は、中央の突出片64をあらかじめ折り曲げておき、ばね性を利用して透孔60に差し込み、その後、透孔60から突出した他の突出片66の先端を、突出片64とは互いに反対方向に折り曲げる。または、突出片64,66をあらかじめ折り曲げておき、ばね性を利用して透孔60に差し込んでもよい。このタクト板62の突出片64は、電極として機能し、回路基板に表面実装される際にはんだ付けされるのである。
また、基板20の中央部には、透孔52が形成され、金属鋲50が差し込まれて、上記第四実施例と同様に先端部がカシメられて電極が形成されている。基板20及びタクト板62は、耐熱性粘着層34を介して耐熱性フィルム36で覆われ保護及び固定されている。
この実施例によれば、基板に導体パターンや電極を形成する必要がなく、製造工数及びコストを削減することができ、信頼性や耐久性も向上させることができる。また、帯状のタクト板を用いており、基板の他のスペースに他の電子部品を配置することもできる。
次にこの考案の第六実施例について図7を基にして説明する。この実施例のプッシュスイッチは、基板20と等しい幅の帯状のタクト板72を設け、このタクト板72を覆うように、ほぼ等しい幅の耐久性のフィルム74を耐熱性の粘着層76を介して貼り付けたものである。電極は、上記第六実施例と同様に、中心部のスルーホール及び、タクト板72の周縁部から基板20の裏面側に突出片を突出させて設けられている。耐久性のフィルム74は、基板20の側面側及び裏面の一部を覆うように貼り付けられている。
この実施例によれば、タクト板72を帯状にし、基板20とほぼ等しい幅に形成して設けたので、プッシュスイッチを細長い形状にすることができ、集積度を上げることができ、電子機器の小型化に寄与するものである。
次にこの考案の第七実施例について図8を基にして説明する。この実施例のプッシュスイッチは、上記第六実施例のプッシュスイッチを樹脂ケース80で覆ったものである。樹脂ケース80は、表面側に開口部82が形成され、タクト板72は押圧可能に設けられ、基板20の裏面側の周縁部に固定されている。
この実施例によれば、タクト板72と基板20との間にほこり等が侵入することがなく、耐久性や信頼性を高くすることができる。
次にこの考案の第八実施例について図9を基にして説明する。この実施例のプッシュスイッチは、上記第六実施例のプッシュスイッチの耐熱性フィルム74を基板20の四方の側面を覆うように粘着層76を介して設けたものである。この耐熱性フィルム74には、両側縁部近傍にスリット84が形成され、基板20に貼り付けた際、図示するように開いて、基板20及びタクト板72を確実に覆って固定されるものである。
次のこの考案の第九実施例について図10を基にして説明する。この実施例のプッシュスイッチは、基板20の端縁部に透孔90を形成し、タクト板72を挟んで耐熱性フィルム74を基板20に貼り付け、さらに、樹脂ピン92を耐熱性フィルム74の上から差し込んで先端部94を溶融し固定したものである。
尚、この考案は、単体のプッシュスイッチにおいて、基板にタクト板を載置し、粘着層を介して耐熱性フィルムで上記タクト板及び基板を覆ったものであればよく、上記実施例以外に、電極構造やタクト板の形状は、適宜選択できるものである。また、粘着層は、耐熱性があればよく、その材質や厚さも適宜設定しうるものである。
このプッシュスイッチは、基板にタクト板を載せ、接着層を有した耐熱性フィルムで覆い、タクト板の固定を行なったので、構造が簡単であり、全体の厚さが極めて薄く、電子機器の薄型化に大きく寄与する。しかも、耐熱性の粘着層で耐熱性フィルムを接着しているので、溶融はんだの熱にも耐え得るものであり、実装作業も効率的に行なうことができる。さらに、構造が簡単であり、信頼性も高く、強度的にも強いものである。また、基板の種類を選ばず、用途にあわせて任意に基板を選択できるものである。さらにタクト板と一体に突出片を形成し、この突出片を選択できるものである。さらにタクト板と一体に突出片を形成し、この突出片を電極にすることで、コスト及び耐久性が向上し、しかも薄型化にも寄与する。
【考案の効果】
本考案によれば、粘着層及びフィルムを溶融半田の熱に対して耐え得る耐熱性を有する耐熱性粘着剤及び耐熱性フィルムによりそれぞれ形成しているので、本考案のプッシュスイッチを回路基板上に表面実装する際に、フィルムに溶融半田が触れた場合でも、フィルムが溶融または変形したりすることがなく、また粘着層が剥離してしまうおそれもない。そのため一般的な表面実装部品と同様の方法で、回路基板に表面実装することができ、汎用性が非常に高くなる利点がある。また耐熱性フィルムとしてポリイミド樹脂等の耐熱性樹脂によって形成されたものを用いると、強度及び耐久性が大幅に向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】
この考案の第一実施例のプッシュスイッチの分解斜視図である。
【図2】
この考案の第二実施例のプッシュスイッチの縦断面図である。
【図3】
この考案は第三実施例のプッシュスイッチの基板の斜視図である。
【図4】
この考案の第三実施例のプッシュスイッチのタクト板の平面図である。
【図5】
この考案の第四実施例のプッシュスイッチの分解斜視図である。
【図6】
この考案の第五実施例のプッシュスイッチの分解斜視図である。
【図7】
この考案の第六実施例のプッシュスイッチの斜視図である。
【図8】
この考案の第七実施例のプッシュスイッチの部分破断斜視図である。
【図9】
この考案の第八実施例のプッシュスイッチの斜視図である。
【図10】
この考案の第九実施例のプッシュスイッチの部分断面図である。
【図11】
従来の技術のプッシュスイッチの縦断面図である。
【符号の説明】
20 基板
22,28 導体部
24,46,72 タクト板
30,32 電極
34,76 粘着層
36,74 耐熱性フィルム
64,66 突出片
訂正の要旨 (1)実用新案登録請求の範囲の請求項1の第6行「であって、」(実用新案登録公報第1欄第9行)の後に「前記絶縁基板の端縁部に前記第1の接点及び前記第2の接点にそれぞれ接続される第1及び第2の端面電極が形成されており、」を挿入する。
(2)実用新案登録請求の範囲の請求項1の第7行「前記フィルムは耐熱性フィルムにより」(実用新案登録公報第1欄第10行)を「前記粘着層及び前記フィルムは溶融半田の熱に対して耐え得る耐熱性を有する耐熱性粘着剤及び耐熱性フィルムによりそれぞれ」に訂正する。
(3)明細書の段落番号【0004】の「ものである。」(実用新案登録公報第3欄第14行)の後に「絶縁基板の端縁部に第1の接点及び前記第2の接点にそれぞれ接続される第1及び第2の端面電極が形成されている。」を挿入する。
異議決定日 2001-03-08 
出願番号 実願平10-6438 
審決分類 U 1 651・ 121- ZA (H01H)
最終処分 取消    
前審関与審査官 吉村 伊佐雄  
特許庁審判長 田中 秀夫
特許庁審判官 熊倉 強
藤本 信男
登録日 1999-06-18 
登録番号 実用新案登録第2598611号(U2598611) 
権利者 北陸電気工業株式会社
富山県上新川郡大沢野町下大久保3158番地
考案の名称 プッシュスイッチ  
代理人 西浦 ▲嗣▼晴  
代理人 西浦 ▲嗣▼晴  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ