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審決分類 審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する H02K
管理番号 1045165
審判番号 訂正2001-39056  
総通号数 22 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2001-10-26 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2001-04-10 
確定日 2001-06-13 
訂正明細書 有 
事件の表示 実用新案登録第2045509号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 実用新案登録第2045509号に係る明細書及び図面を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び図面のとおり訂正することを認める。
理由 1.請求の要旨
本件審判請求の要旨は、実用新案登録第2045509号の明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり、すなわち、請求項1および請求項2の「切欠部若しくは凹部」を「切欠部」と、請求項3の「凹部又は切欠部」を「切欠部」と、請求項4の「凹部または切欠部」を「切欠部」と、それぞれ訂正することを求めるものである。

2.当審の判断
2-1.訂正の目的の適否、新規事項の有無および拡張変更の存否
上記訂正は、実用新案登録請求の範囲の記載中「切欠部若しくは凹部」、「凹部又は切欠部」あるいは「凹部または切欠部」と択一的に記載していたものを「切欠部」とその一方のみとしたものであるから、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。

2-2.独立登録要件の判断
2-2-1.本件訂正後の考案
訂正後における実用新案登録請求の範囲に記載されている事項により構成される考案(以下、訂正考案という)は訂正明細書の実用新案登録請求の範囲第1項に記載された次のとおりのものと認める。
「隣配置の磁極が異極となるようにN極、S極の磁極を複数組備えて形成した界磁マグネットを回転子として備え、該界磁マグネットと軸方向の空隙を介して対向する固定側の同相位置にのみ1以上の空心型電機子コイル群を1相配置に設けて固定側コアレス電機子を形成し、上記電機子コイルの発生トルクに寄与する導体部若しくは該導体部と同相位置の固定側位置に上記界磁マグネットの磁極を検出する1個の位置検知素子を設けると共に、上記固定側コアレス電機子の下部にステータヨークを配設してなる位置検知素子1個の一相のディスク型ブラシレスモータにおいて、上記ステータヨークにトルクの発生する位置よりも、上記回転子の回転方向とは反対方向に進んだ位置に位置検知素子が1個でも上記回転子が一方向に自起動回転できるようにするための自起動用のコギングトルクを発生させることができる幅の切欠部を形成していることを特徴とする位置検知素子1個の一相のディスク型ブラシレスモータ。」

2-2-2.無効審判事件における請求人の主張および証拠方法
本件実用新案登録第2045509号に対する無効審判事件における請求人の主張および提出された証拠方法は以下のとおりである。
(1)本件出願に係る考案(甲第2号証)は、その分割のもととなる原出願の考案(甲第1号証)に対して新規事項を追加するものであるから、分割要件を満たさず、したがって、出願日は遡及しないこととなることによって、本件出願前に頒布されたこととなる甲第3号証に記載された考案に基いてきわめて容易に考案をすることができたものであり、また同じく本件出願前に頒布されたこととなる甲第10号証に記載された考案と同一もしくは同号証に記載された考案に基いてきわめて容易に考案をすることができたものであるので、実用新案法第3条第1項または第2項の規定に違反する。
(2)甲第4?7号証により未完成考案であり、同法第5条第3項または第4項の規定に違反する。
(3)甲第8号証に記載された考案と同一または実質的に同一であり、または甲第8?9号証に記載された考案に基いてきわめて容易に考案をすることができたものであるので、同法第3条第1項または第2項の規定に違反する。
(4)出願日が繰り下がらないとしても、甲第10号証に記載された発明と同一であるので、同法第3条の2の規定に違反する。
証拠方法
甲第1号証 原(親)出願明細書及び図面(実願昭58-28954号)
甲第2号証 本件考案出願時明細書及び図面(実願昭60-68416号)
甲第3号証 実願昭58-28954号(実開昭59-138378号)のマイクロフイルム
甲第4号証 実開昭61-153485号公報(実願昭60-30593号)甲第5号証 実願昭60-30593号で通知された拒絶理由通知書
甲第6号証 実願昭60-30593号で提出された意見書
甲第7号証 実願昭60-30593号で提出された補正書
甲第8号証 特開昭56-25365号公報
甲第9号証 特開昭55-71166号公報
甲第10号証 特願昭58-231615号(特開昭59-117453号公報)

2-2-3.前記主張(1)について
まず、本件実用新案登録出願の出願日について検討する。本件実用新案登録出願は、実願昭58-28954号を原出願とする分割出願であるとして出願されたものであり、当該原出願の出願当初明細書には、「19は上記導体部7bと7a間のデッド・ポイントとなる点線16上位置に該当するステータヨーク5の裏面部に設けた通電制御回路用集積回路収納凹部である。なお、この凹部19に対応するステータヨーク5部を切欠部に形成しておくと更に自起動しやすくなる。」(原出願の出願当初明細書第10頁第16行?第11頁第1行参照)との記載がある。この記載において、「凹部19に対応するステータヨーク5部を切欠部に形成しておくと更に自起動しやすくなる」とは、「螺子を形成することにより、自起動できるようになるが、凹部19に対応するステータヨーク部を切欠部として形成しておくと、螺子を形成している場合に比べて更に自起動が容易になる」ことを意味しており、螺子を形成していることによりコギングトルクが発生して自起動が可能となるという原出願に係る考案の趣旨を考慮すると、凹部に対応するステータヨーク部に切欠部を形成すると更に自起動が容易になるということは、当該切欠部によってもコギングトルクが発生し、したがって螺子に代えて切欠部を形成することによっても自起動が可能となることについて、開示されていると認められる。したがって、上記訂正後の本件実用新案登録請求の範囲に記載される考案は、原出願の出願当初の明細書に記載されたものであると認められるから、本件実用新案登録出願の出願日は、原出願の出願日である昭和58年3月2日と認める。
そうすると、原出願の出願公開公報である甲第3号証は本件出願後に公開されたものであり、また甲第10号証も同じく本件出願後に公開されたものであるから、これら各号証をもとに実用新案法第3条第1項または第2項の規定に違反するということはできない。

2-2-4.前記主張(2)について
本件実用新案登録出願の原(親)出願に係る明細書および図面の内容を撮影したマイクロフイルム(甲第3号証)が、別件実用新案登録出願(実願昭60-30593号)(甲第4号証)の審査過程で拒絶理由通知に引用され(甲第5号証)、当該別件実用新案登録出願の出願人であり本件実用新案登録出願の出願時の出願人である高橋義照は、前記拒絶理由通知に対する意見書(甲第6号証)において、引用された考案は大きなコギングトルクが発生せず、実用化のためには改良を施さなければならないものである旨主張しているが、同時に引用された考案は非常に有用なものである点をも指摘しており、当該意見書の主張をもって、本件実用新案登録出願の出願時の出願人が、本件原出願に係る考案や訂正考案が未完成のものであると認めたものとはいえない。また、回転子の慣性モーメントが大きくなると、自起動させるのに必要となるトルクも大きくなること、したがって回転子毎に自起動させることのできる切欠部の最小幅は異なるものであることは明らかであり、このような場合に、モータの大きさや、回転子毎に、切欠部の必要幅を規定することに代えて、「自起動用のコギングトルクを発生させることができる幅」のように記載することは許容されるものである。そして、かかる記載があれば、当業者は本件考案を容易に実施できるものと認められるから、訂正明細書に記載不備があるとは認められない。

2-2-5.前記主張(3)について
前記甲第8号証である特開昭56-25365号公報には、
・「特に回転子の停止位置が不確定な負荷に連結されたとき、回転子の停止位置を永久磁石の磁力を利用して極めて簡単に強制的に定位置に停止さすようにし、自己起動を可能にし、モータの利用範囲を拡大することを目的としている。」(第1頁右下欄第1?5行)
・「1は2相巻線式無刷子直流モータの本体で、フレーム2に固定した固定子3と、回転軸4を結合した回転子5とよりなる。・・・回転子5は180゜の間隔でN、S極を着磁したリング状の永久磁石8を有し、8aは説明の便宜上記入した両極の境目である。また9はN極を覆うように設けた回転子5と固定子3との相対位置を検出するための導電性非磁性体からなる位置検出部材である。・・・11は巻線10a・・・の挿入用スロットである。12は180度の間隔で設けた凹陥部13よりなる弱磁性部分で、その位置は弱磁性部分12の中心線Cと前記中心線La、Lbとが直交しないように配置してある。」(第1頁右下欄第8行?第2頁左上欄第5行)
・「モータ1の巻線10a・・・への通電が停止した場合は、負荷、あるいは回転子5の慣性により多少回転がつづき、そののちその速度が0に近ずくと、今度は回転子5の永久磁力8を単なる磁性体と化した固定子3間の磁力の影響化に入いる。このとき、クーロンの磁力の法則に従い、回転子8の磁化力の強い位置、即ち中心部の磁化力のアンバランスにより、磁力の弱い境目8aが固定子3の弱磁性部分に相対向するように、即ち第2図において中心線Cと境目8aが整列するように係止する。 従って回転子の最大磁化部分と固定子7の各相の中心線La、Lbとは所定角度θのズレを生じている。この状態で起動が行なわれ、各相の巻線10a、10a’又は10b、10b’に電流が流れると、固定子7の最大磁化部分が前記中心線La、Lbと角度的にズレているため起動トルクがゼロとなることがなく自己起動を行なうことができる。 本発明は上記したように、固定子に設けた2相巻線の各々の中心線と直交しない位置に弱磁性部分を設けるという極めて簡単な構成により、回転子の永久磁力の磁力を利用して回転子磁心の停止位置を固定子に対して所定位置に決定し、これにより起動時におけるトルクがゼロとなり起動不能を回避できるものである。」(第2頁左上欄第18行?同頁左下欄第3行)
が記載されている。
また、前記甲第9号証である特開昭55-71166号公報には、
・「本発明はムラのない高精度の回転を必要とするモータ装置、例えばレコードプレーヤー用モータやテープデッキようモータ等に関するものであり、ロータマグネットに対向する部分の磁気的不均一さによって生ずるロータマグネットの回転トルクムラを改善しモータの回転精度を高めることを目的とするものである。」(第1頁右下欄第17行?第2頁左上欄第3行)
・「第1図は本発明の一実施例である平面対向型ブラシレスモータの断面図であり、1は6極に着磁されたローターマグネット、2は駆動コイル、3はローターマグネット1のバックヨークとしてのステーター板でありケイ素鋼板又は軟鉄板によって構成されている。」(第2頁右上欄第9?14行)
・「第2図はステーター板を上から見た図、第3図は第2図におけるA-A’線による断面図であり、12、12’はローターマグネット1の位置を検出して駆動コイル2のスイッチングを行なうためのホール素子であり、ホール素子12、12’はプリント板10に取付けられている。 13、13’はホール素子12、12’をローターマグネット1に対向させて取付けるためにステータ板3にあけた穴である。」(第2頁左下欄第5?13行)
・「第2図、第3図に示す如くステータ板3のローターマグネット1に対向する面上の一部に穴13がある場合は第4図Bに実線で示す如きコギングトルクを発生する。」(第2頁右下欄第7?10行)
・「穴13によるコギングトルク量と全く同量のコギングトルクを発生するように突部20の突き出し高さおよび面積を決めてやれば、穴13によるコギングトルクと突部20によるコギングトルクは互いに打ち消し合い結果としてコギングトルクは発生しないことになり安定した回転が得られる。」(第3頁左上欄第9?14行)
が記載されている。
本件訂正考案と甲第8号証および甲第9号証の記載事項とを対比すると、甲第8号証および甲第9号証には、いずれも、少なくとも訂正考案の構成要件である、「位置検知素子1個の一相のディスク型ブラシレスモータにおいて、上記ステータヨークにトルクの発生する位置よりも、上記回転子の回転方向とは反対方向に進んだ位置に位置検知素子が1個でも上記回転子が一方向に自起動回転できるようにするための自起動用のコギングトルクを発生させることができる幅の切欠部を形成している」に関して開示がない。甲第8号証は、2組のコイル群に交互に通電する2相式のモータに係るものであり、かつ固定子に配置される凹陥部13よりなる弱磁性部分は、ロータマグネットの磁力の弱い境目8aが固定子3の弱磁性部分に相対向する位置に停止させるためのものであって、訂正考案のように位置検知素子1個の一相のディスク型ブラシレスモータにおいて、上記回転子が一方向に自起動回転できるようにするための自起動用のコギングトルクを発生させることに関する記載も示唆もない。甲第9号証には、コギングトルクに関する記載があるが、甲第9号証は位置検出素子(2個)を配置するためにステータ板に穴を開けることにより発生するコギングトルクがモータに回転ムラとして現れないように、コギングトルクを打ち消す突部等をステータに設けて、モータの回転精度を向上させるもので、訂正考案とは目的・構成が異なる。そして、訂正考案は上記構成要件を具備することにより、「本考案のディスク型ブラシレスモータは、・・・確実に一方向に自起動が可能で、安価で小型の一相のディスク型ブラシレスモータが得られる効果がある。」という甲第8?9号証の記載から予測できない明細書記載のとおりの効果を奏するものと認められる。したがって、訂正考案が、甲第8号証に記載された考案と実質的に同一であるとはいえず、また甲第8?9号証に記載された考案に基づいてきわめて容易に考案をすることができたものであるともいえない。

2-2-6.前記主張(4)について
前記甲第10号証である特願昭58-231615号(特開昭59-117453号公報)の願書に最初に添付された明細書または図面には、
・「固定子10を形成する中間部分7は該中間部分の半径方向外方の凹所に配置される環状のプリント回路基板14に取付けられた2つの直径的に対向するコイル13及び13’を有する。小板の形のホール素子15はコイル13、13’から、好ましくは図示の如く90゜だけ角度的にずれている位置においてプリント回路基板14に取付けられる。プリント回路基板14の下方に、即ち回転子11から離れて回転させられるプリント回路基板14の側部に、両コイル13、13’にわたって直径的に延びる磁束伝導板16が取付けられる(第2図)。しかしながら、磁束伝導板16の中心線はコイル13、13’の直径的中心線から周面内で小角度だけ移動される。」(第4頁左上欄第4?17行)
・「停止において、即ち連続電圧が正端子25及び負端子26に発生される以前に、回転子11は第6図に示された位置または多分、磁束伝導板16の力により前の位置から60゜だけ移動された位置を取る。結果として、南極Sの磁石18(1)はコイル13に関連して偏心して位置決めされる。南極Sをもつ磁石18(3)は北極Nをもつ磁石18(2)よりホール素子15に接近して位置決めされる。 直流電源電圧が今第5図の正端子25および負端子26に発生されるならば、そこで電流は磁石18(3)の磁束の一部がホール素子15を通過するのでコイル13を通って流れる。固定子10のコイル13、13’に比して停止において回転子11のほぼ10゜の回転角度から第9図に示されるように、相当に小さな電流がコイル13’を流れる。2つの同じ極、すなわち南極がコイル13の点において幾らか斜めに互いに向い合うので、回転子11の磁石18(1)はコイル13の磁界によって反発され、その結果回転子11は矢印31の方向に回転し始める。」(第5頁右上欄第12行?同頁左下欄第11行)
が記載されている。
訂正考案と甲第10号証に記載された発明とを対比すると、甲第10号証に記載された発明は、少なくとも訂正考案の構成要件である、「電機子コイルの発生トルクに寄与する導体部若しくは該導体部と同相位置の固定側位置に界磁マグネトの磁極を検出する1個の位置検出素子を設ける」構成および「ステータヨークにトルクの発生する位置よりも、上記回転子の回転方向とは反対方向に進んだ位置に位置検知素子が1個でも上記回転子が一方向に自起動回転できるようにするための自起動用のコギングトルクを発生させることができる幅の切欠部を形成している」構成を具備していない。甲第10号証は、2組のコイル群に交互に通電する2相式のモータに係るものであり、かつ、磁束伝導板をコイルの中心線から小角度ずらして配置するものであって、訂正考案の構成を備えたものではない。
したがって、訂正考案が甲第10号証に記載された発明と同一であるとはいえない。

2-2-7.独立登録要件の判断のむすび
したがって、本件実用新案登録第2045509号に対する無効審判事件における請求人の主張および提出された証拠方法によっては、訂正考案が実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができないものであるとすることはできない。
また、他に、訂正考案が実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができないものであるとする理由を発見しない。

3.むすび
以上のとおりであるから、本件審判請求は、旧実用新案法第39条第1項ただし書き、第2項および第3項の規定に適合する。
よって結論のとおり審決する。
発明の名称 (54)【考案の名称】
位置検知素子1個の一相のディスク型ブラシレスモータ
(57)【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】
隣配置の磁極が異極となるようにN極、S極の磁極を複数組備えて形成した界磁マグネットを回転子として備え、該界磁マグネットと軸方向の空隙を介して対向する固定側の同相位置にのみ1以上の空心型電機子コイル群を1相配置に設けて固定側コアレス電機子を形成し、上記電機子コイルの発生トルクに寄与する導体部若しくは該導体部と同相位置の固定側位置に上記界磁マグネットの磁極を検出する1個の位置検知素子を設けると共に、上記固定側コアレス電機子の下部にステータヨークを配設してなる位置検知素子1個の一相のディスク型ブラシレスモータにおいて、上記ステータヨークにトルクの発生する位置よりも、上記回転子の回転方向とは反対方向に進んだ位置に位置検知素子が1個でも上記回転子が一方向に自起動回転できるようにするための自起動用のコギングトルクを発生させることができる幅の切欠部を形成していることを特徴とする位置検知素子1個の一相のディスク型ブラシレスモータ。
【請求項2】
上記切欠部は、その一方の端部が界磁マグネットの約4分の1磁極乃至2分の1磁極幅の位置だけ上記電機子コイルの発生トルクに寄与する導体部位置から回転子の回転方向とは反対方向に進んだ位置に位置するように設けてなる、実用新案登録請求の範囲第(1)項記載の位置検知素子1個の一相のディスク型ブラシレスモータ。
【請求項3】
上記切欠部はその中心が上記電機子コイルの発生トルクに寄与する導体部から上記回転子の回転方向とは反対方向に上記界磁マグネットの約2分の1磁極ほど進んだ位置または該位置と同相となる位置のステータヨーク部に形成した、実用新案登録請求の範囲第(1)項記載の位置検知素子1個の一相のディスク型ブラシレスモータ。
【請求項4】
上記切欠部に電気部品を臨ませた、実用新案登録請求の範囲第(1)項または第(2)項記載の位置検知素子の一相のディスク型ブラシレスモータ。
【考案の詳細な説明】
(産業上の利用分野)
本考案は位置検知素子が1個でも自起動できるようにしたコアレスタイプの一相のディスク型ブラシレスモータで、特にディスク型ブラシレスファンモータ(DCブラシレス軸流ファン)に用いて有用なものである。
(従来技術の問題点)
従来、空心型の電機子コイルを2個用いて構成したステータ電機子を有する二相のディスク型ブラシレスモータにおいては高価な駆動回路と位置検知素子を2個必要としていた。ここにおいて、位置検知素子としては、ホール素子やホールIC等の磁電変換素子が使用されている場合が多いが、単に回転すれば良いようなDCブラシレス軸流ファンモータのような場合には、上記位置検知素子は高価であるため、できれば1個のみとすること及び駆動回路を1個とすることにより一相のディスク型ブラシレスモータ構造とすることが安価で小型のディスク型ブラシレスモータを得る点において好ましい。しかしながら、位置検知素子が1個の一相のディスク型ブラシレスモータにすると、モータ起動時において、たまたま当該ブラシレスモータが死点位置に停止していると、これに用いた位置検知素子が界磁マグネットのN極とS極との境界部、すなわちデッド・ポイント(死点位置)を検出しているため、自起動できないという欠点を有する。このことは、起動時のみならず回転中においても、起こるため、効率良く連続回転を続行することができなかった。
二相や三相のブラシレスモータの場合には、その内の何れかの相が死点位置にあってその相の電機子コイルによっては、トルクを発生することができない状態にある(この状態のときは、その電機子コイルのための位置検知素子も界磁マグネットのN極とS極の中間部と対向していて当該界磁マグネットの磁極を検出することができない状態にある)としても、残りの相の電機子コイルはトルクを発生することができる状態にあり、しかもこのための位置検知素子も界磁マグネットの磁極を検出しているため、トルクを発生することができるため、自起動回転及び連続回転ができる。
しかしながら安価に形成できる点においては、有利だが、一相のブラシレスモータでは、上記したように死点位置ではトルクを発生できないため、自起動回転及び連続回転続行をすることができない欠点をもっている。
そこで、通常では、かかる一相のブラシレスモータを自起動できるように別個に自起動用のコギングトルクを発生させるための磁性体などの自起動処理手段を設けるなどして、種々工夫を試している。
しかしながら、従来では、自起動処理手段をわざわざ別個に設ける方法を採用したり、効率を悪くする方法を採用せざるを得ず、高価になるばかりか効率の悪い一相のブラシレスモータになる欠点があった。
なお、自起動できるようにした一相のディスク型ブラシレスモータとしては、特開昭50-76509号公報に示す方法が知られている。
然し、このものは、有鉄心型構造となっていて、空心型の電機子コイルを巻装するためのコアの発生するコギングトルクが大き過ぎて、自起動用の小さなコギングトルク発生用の磁性体を用いた程度では、確実に一方向に自起動回転することができないものであり、しかもコアによって発生するコギングトルクと電機子コイルを巻装したコアによって発生する電磁トルクの死点位置が同じ位置で発生するため、死点現象を解消できず、その上更に位置検知素子を所定角度正規な位置からずらしてその角度の分だけ電磁トルクが発生しない構造となっているために、もっと悪い反トルクが発生するため、とても実用に供することが出来ない欠点をもっている。その上更に、小さな自起動用のコギングトルクを発生させるための磁性体の上に、位置検知素子を配設しなければならず、その端子の処理が厄介で、しかもステータヨークの上に別個に上記磁性体を設けなければならないため、製造工程が増え、安価に量産できない欠点をもっていた。
また特公昭54-34885号公報に示すディスク型ブラシレスモータも知られているが、これに開示されている方法によると、従来同様に別個独立に自起動処理手投を設けねばならないほか、不安定要因が有り、またステータヨークを設けられる構造となっておらず、目的とするトルクを得るために両面励磁構造を採用したり、確実に一方向に自起動回転することができないなど価格的にも、性能的にも実用に優れるものを得ることができないなどの欠点を備えていた。
(本考案の目的)
本考案は上記事情に基づいてなされたもので、位置検知素子が1個でも自起動可能とし、しかも効率良好で安価な一相のディスク型ブラシレスモータを得ることを目的としてなされたものである。特に本考案の目的とするのは、別個独立の自起動処理手段を特別に用いなくても、大きなトルクを得る目的で漏洩磁束を防ぐためのステータヨークを用いた形式のコアレス構造の一相のディスク型ブラシレスモータを確実に一定方向の自起動及び連続回転できるようにすることを目的になされたもので、特に従来からあるステータヨークに単に凹部または切欠部を形成し、かかる凹部または切欠部を有するステータヨークを電機子コイルとの関係で適切な位置に配設するのみで、当該一相通電されるディスク型ブラシレスモータを確実に一方向に自起動回転できるようにして、部品点数が少なく安価に構成される性能及び効率の良いコアレス構造の一相のディスク型ブラシレスモータを得ることを目的とする。更にまた、電気部品を当該モータに合理的に内蔵して当該モータ又は当該モータを極めて厚みの薄いものにし、また軽量のものにすることを目的とする。
(本考案の目的達成手段)
かかる本考案の目的は、隣配置の磁極が異極となるようにN極、S極の磁極を複数組備えて形成した界磁マグネットを回転子として備え、該界磁マグネットと軸方向の空隙を介して対向する固定側の同相位置にのみ1以上の空心型電機子コイル群を1相配置に設けて固定側コアレス電機子を形成し、上記電機子コイルの発生トルクに寄与する導体部若しくは該導体部と同相位置の固定側位置に上記界磁マグネットの磁極を検出する1個の位置検知素子を設けると共に、上記固定側コアレス電機子の下部にステータヨークを配設してなる位置検知素子1個の一相のディスク型ブラシレスモータにおいて、上記ステータヨークに、トルクの発生する位置よりも、上記回転子の回転方向とは反対方向に進んだ位置に位置検知素子が1個でも上記回転子が一方向に自起動回転できるようにするための自起動用のコギングトルクを発生させることのできる幅の切欠部若しくは凹部を形式することによって達成される。
その他の本考案の課題達成手段については、後記の説明にて明らかにする。
(本考案の第1実施例)
第1図は本考案を適用した位置検知素子1個、2コイル、4極、一相のディスク型ブラシレスファンモータの縦断面図である。このディスク型ブラシレスファンモータは平面角型で、断面カップ型のファンモータケーシング1を有し、このケーシング1には後記する羽根14の回転により生ずる風を下方向に通すための孔2が設けられている。ケーシング1の略々中心部には軸受3によって回転軸4が回動自在に軸支されている。ケーシング1の内底には、磁性体からなる円環状のステータヨーク5が固定されている。上記ステータヨーク5面上には一相のステータ電機子を形式する2個の空心型の電機子コイル7-1,7-2が同相位置に固設され、ホール素子等の位置検知素子8は電機子コイル7-1の半径方向に延びた発生トルクに寄与する導体部7aの下部に配置している(第4図参照)。上記回転軸4の上部は回転ファン9のボス部10に固設され、該ファン9と共に一体して回転するようになっている。回転ファン9のカップ型本体11の内面部には磁性体からなる円環状のロータヨーク12が設けられ、該ヨーク12の下面には、第2図に示すように、N極、S極の磁極を交互に有する4極の界磁マグネット13が固設され、上記ステータ電機子に面対向して相対的回動をする回転子を構成している。上記ファン9の本体11の側面部には風を孔2へ送るに適した形状の羽根14が一体形成されている。上記ファン9の形成に当っては、ロータヨーク12をインサートし、該ロータヨーク12に円環状のプラスチックマグネットを固設して、プラスチックで二重成型してロータヨーク12及びプラスチックマグネットを一体形成し、その後に図示しない着磁器を用いて上記プラスチックマグネットの所定箇所に着磁することで、上記4極の界磁マグネット13を形成すると便利である。即ち、ロータヨーク12を堅固に同着でき、また界磁マグネット13の同心をとる必要がなくなり、また回転軸4をも二重成型時に一体化すると、特別やっかいな調整等を要することなく、回転バランスのとれた回転子を形成できるので都合が良い。
第2図はフラットな4極の円環状の界磁マグネット13の下面図で、N極,S極の磁極が機械角で90度の幅で交互等間隔に着磁形成され、上記同相配置の2個の電機子コイル7-1,7-2からなる一相のコアレス構造の固定側電機子に面対向して、例えば、矢印A方向に回転するようになっている。尚、界磁マグネット13は、この実施例では、円環状のものに形成しているが、N極、S極がそれぞれ分離されたものを用いて形成しても良く、N極,S極の磁極間が離れているものを用いて形成しても良いことはいうまでもない。
第3図は一例としての電機子コイル7-1,7-2の斜視図を示すものである。この電機子コイル7-1,7-2は、扇状に巻同形成され空心型のものとなっており、発生トルクに寄与する半径方向の2つの導体部7aと7bとの開角が上記界磁マグネット13の一磁極幅と略等しい開角幅、即ち、上記において界磁マグネット13として4極のものを用いたので、上記電機子コイル7-1、7-2の開角幅は機械角で90度のものとなっている。ここにディスク型ブラシレスファンモータのモータ部を半径の小さなものとするためには、ステータヨーク5及び電機子コイル7-1、7-2の半径を小さくする必要がある。このようにすることで、ディスク型ブラシレスファンモータを径の小さなものにすることができる。しかしながら、電機子コイル7-1、7-2の径を小さくすることは、当該電機子コイル7-1、7-2の発生トルクに寄与する導体部7a,7bの長さが短かくなって効率の悪いディスク型ブラシレスファンモータになる欠点がある。そこで、第4図及び第1図から明らかなようにステータヨーク5の径を若干、例えば、電機子コイル7-1、7-2の発生トルクに寄与しない外周方向の導体部7cの幅ほど、小さなものに形式し、該ステータヨーク5の外周側面部に上記電機子コイル7-1、7-2の発生トルクに寄与しない外周方向の導体部7cの一部が陥ることのできるように第3図に示すような形状の電機子コイル7-1、7-2を形成している。
第4図は、ステータヨーク5の上面に第3図に示した電機コイル7-1、7-2を180度対称な同相の一相配置に形成した一相の固定側コアレス電機子の平面図を示すものである。ステータヨーク5は、上記で示した幅だけ径の小さいものに形成されており、電機子コイル7-1、7-2の発生トルクに寄与しない外周方向の導体部7cの一部が、上記したようにステータヨーク5の外周側面部にくずれ落ちたように位置されている。このため、半径の小さなモータ部及びディスク型ブラシレスファンモータを形成することができる。電機子コイル7-1の発生トルクに寄与する導体部7aと対応する該導体部7aの下面位置のステータヨーク5に設けた位置検知素子収納用凹部または透孔に位置検知素子8を設けている。尚、位置検知素子8の配設位置については更に後記にて詳しく説明する。ステータヨーク5には界磁マグネット13の回転方向(矢印A方向・・・第2図参照)とは反対方向に上記電機子コイル7-1の発生トルクに寄与する導体部7bから回転子(界磁マグネット13等)の略2分の1磁極幅(約22.5度)の角度だけ進んだ位置までのステータヨーク5位置に、回転子が自起動できる大きさのコギングトルクを発生することができる形状、大きさ且つ幅、例えば約22.5度の開角幅の凹部または切欠部19を形式している。すなわち上記凹部または切欠部19は、その中心が上記導体部7bの中心から界磁マグネット13の回転方向とは反対方向に略2分の1磁極幅の角度だけ反対方向に進んだ位置に位置するように上記ステータヨーク5位置に設けている。上記凹部又は切欠部19は、望ましくは、その一方の端部が、電機子コイル7-1又は/及び7-2の発生トルクに寄与する導体部7a又は/及び7b位置から界磁マグネット13の回転方向[矢印A方向]とは反対方向[反矢印A方向]に界磁マグネット13の一磁極の幅の約4分の1磁極幅乃至2分の1磁極幅の角度だけ進んだ位置に位置するように形成することが望ましい。この実施例では、上記凹部又は切欠部19は、電機子コイル7-1の発生トルクに寄与する導体部7b寄りの一方の端部19aが、電機子コイル7-1の発生トルクに寄与する導体部7b位置から界磁マグネット13の回転方向[矢印A方向]とは反対方向[反矢印A方向]に界磁マグネット13の一磁極の幅の約4分の1磁極幅乃至2分の1磁極幅の角度だけ進んだ位置に位置するように形成している。ここで、この実施例では、後記するように磁性体でできた螺子6´によっても自起動用のコギングトルクを発生させるようにしているが、かかる螺子6´が非磁性体で出来たものを用いる場合には、上記凹部又は切欠部19の上記一方の端部19aは上記螺子6´の位置まで周方向に延びて形成することが望ましい。なお、上記凹部又は切欠部19の端部は、電機子コイル7-1又は/及び7-2の発生トルクに寄与する導体部7a又は/及び7b位置から界磁マグネット13の回転方向[矢印A方向]とは反対方向〔反矢印A方向〕に界磁マグネット13の一磁極の幅の約4分の1磁極幅乃至2分の1磁極幅の角度だけ進んだ位置に位置するように形成することが望ましいのは、もしも上記端部が電機子コイル7-1又は/及び7-2の発生トルクに寄与する導体部7a又は/及び7bと対向する位置にあるようにすると、この位置は最大起動トルクが発生する位置であるため、起動時のトルクロスが生じて効率の良い一相のディスク型ブラシレスモータを形成できなくなることと、又この位置は電機子コイル7-1、7-2の通電切換点、即ち電磁トルクの切換点とコギングトルクの切換点が一致する惧れがあり、確実な一方向への自起動回転が成し得なくなる恐れが生ずる事を考慮したためである。上記凹部又は切欠部19の位置は、上記位置と同相位置に形成してもよい。
従って、電機子コイル7-2の導体部7bを基準に上記ステータヨーク5の上記条件と合致する位置に上記凹部または切欠部19を設けてもよい。尚、上記実施例では電機子コイル7-1の導体部7b及び電機子コイル7-2の導体部7bから略4分の1磁極の角度だけ上記界磁マグネット13の回転方向[矢印A方向]とは反対の方向に進んだ位置に一相配置の固定側コアレス電機子を当該ステータヨーク5に固定するための磁性体からなる螺子6、6´を設けているのは、螺子6、6´によって固定側コアレス電機子をステータヨーク5に固定する目的以外に螺子6、6´によっても当該一相のディスク型ブラシレスモータがより確実に矢印A方向の一方向にのみ確実に自起動回転できるようにするためであるが、接着剤を用いてステ一タヨーク5を上記本体2の固定側面に固定する場合には、上記螺子6、6´が不用になるので、この場合には、上記自起動用のコギングトルクを発生させることができる幅に形成された凹部又は切欠部19を設けることによってのみでも、自起動用のコギングトルクが発生するので、通電停止時に、常に上記界磁マグネット13は上記凹部又は切欠部19の半径方向の端部によって自起動できる位置に磁気的に吸引されて停止しており、また起動時、即ち通電時には界磁マグネット13は自起動できる状態にあり、即ち、この時は位置検知素子8が界磁マグネット13のN極又はS極の磁極を検出しており、電機子コイル7-1、7-2に通電すればトルクを発生することができる状態にあるため、常に自起動回転できることになる。以上のように、本考案では、従来からもともと用いているステータヨーク5に単に自起動できる大きさのコギングトルクを発生することができる幅の切欠部19を設けるのみで、この切欠部19の端部によって界磁マグネット13が切欠部19の切欠端部に磁気的に引きつけられて当該界磁マグネット13が自起動できるような位置、即ち、位置検知素子8が死点(デッド・ポイント)を検知しない位置に停止するように上記したステータヨーク5位置に切欠部19を形成し、この切欠部19の位置が自起動できるような上記適した位置に位置するようにステータヨーク5と電機子コイル7-1、7-2を位置決め配設することができるようにするのみで、位置検知素子8がたとえ1個でも、2コイル一相のディスク型ブラシレスモータあるいはこのモータを用いた一相のディスク型ブラシレスファンモータを自起動できるようにしている。19は上記したように上記導体部7bと7aの間のデッド・ポイントとなる点線16位置に該当するステータヨーク5上に設けた通電制御回路用集積回路収納凹部または切欠部で、即ち自起動回転させるためにステータヨーク5に形成した凹部又は切欠部19が通電制御回路用集積回路収納用の凹部又は切欠部を兼用しており、該一相のディスク型ブラシレスモータ切欠部19に通電制御回路用集積回路[通電制御回路]20を収納している。
第5図は4極、2コイル、一相のブラシレスモータにおける界磁マグネット13とステータ電機子を構成する一相配置の電機子コイル7-1、7-2との展開図である。
電機子コイル7-1、7-2の発生トルクに寄与する導体部7a、7bは、それぞれ電気角で180度(尚、この実施例では機械角90度となっている)の等間隔配置になっている。電機子コイル7-1の発生トルクに寄与する導体部7aの他方の端子と電機子コイル7-2の発生トルクに寄与する導体部7bの他方の端子は共通接続され、電機子コイル7-1の発生トルクに寄与する導体部7bの他方の端子は通電制御回路20内のトランジスタ21のコレクタとトランジスタ22のエミッタとの接続点23に接続され、電機子コイル7-2の発生トルクに寄与する導体部7aの一方の端子はトランジスタ24のコレクタとトランジスタ25のエミッタとの接続点26に接続されている。通電制御回路20は一相の往復通電制御回路を形成している。トランジスタ21、24のエミッタはそれぞれプラス電源端子27に接続され、トランジスタ22、25のエミッタはそれぞれグランド28に接続されている。位置検知素子8の電源端子29、31及び出力端子30-1、30-2は通電制御回路20に接続されている。従って、位置検知素子8が界磁マグネット13のN極を検出すると、出力端子30-1を介して、トラジスタ22、24を導通して、電機子コイル7-1、7-2には矢印方向の電流を流して、一方向の回転力を得ることができる。位置検知素子8が界磁マグネット13のS極を検出すると、出力端子30-2を介してトランシスタ21、25が導通し、電機子コイル7-1、7-2には上記と反対方向の電流が流れ、一方向の回転力を得ることができる。
次に位置検知素子8の配設位置について説明する。
位置検知素子8は、この第5図においては、電機子コイル7-1の発生トルクに寄与する導体部7aの下面に配置している例を示すが、電機子コイル7-1、7-2のそれぞれの発生トルクに寄与する導体部7a、7bの下面に配置してもよい。尚、上記電機子コイル7-1、7-2の上記導体部7a、7b上に位置検知素子8を配置してもよいが、このようにすると、界磁マグネット13とステータヨーク5間のエアーギャップが上記位置検知素子8の厚み分だけ増加するので好ましくなく、またその配設方法もやっかいになる。従って、ステータヨーク5の上記位置に位置検知素子収納用の凹部又は透孔を設け、この凹部又は透孔に位置検知素子8を収納し、上記電機子コイル7-1又は7-2の上記発生トルクに寄与する導体部7a又は7bの下面に上記素子8が位置するようにすることが望ましい。
また、上記第5図における場合にあっては、2個の電機子コイル7-1、7-2が互いに180度対称に設けられているが、例えば実線で示すような位置に電機子コイル7-1があり、位置検知素子8は電機子コイル7-1の発生トルクに寄与する導体部7aと対向する位置にあるとすると、この素子8は界磁マグネット13のN極13aの略々中間部と対応しているので、これと均等関係にある位置をさがすと、N極13a´の略々中間位置部である点線囲い部31が該当する。従って、このような点線囲い部31に対応するステータヨーク5に設けた上記自起動用コギングトルク発生用の凹部または切穴部に位置検知素子8を配置すると量産面において有用である。すなわち、この場合には、電機子コイル7-1、7-2の発生トルクに寄与する導体部7a又は7bと対向していても上記のように位置検知素子8の厚み分だけエアーギャップを増すことがないので、大きな回転トルクが得られる。以上のように、位置検知素子8は電機子コイルの発生トルクに寄与する導体部と対向する位置若しくは該位置と同相位置に配設するなど、種々の設計に応じた最適の目的位置に配置できるものである。
(本考案の第2実施例)
次に本考案の第2実施例を示す。
第6図は第4図に対応するもので、第7図は第2図に対応するもので、第7図において、界磁マグネット13´として6極のものを用いたため、第6図において発生トルクに寄与する半径方向の導体部の開角が界磁マグネット13´の一磁極幅と略等しい開角、即ち、略60度に巻回した電機子コイル7-1、7-2を用いた場合を示している。この第2実施例においては、凹部又は切欠部19は、第1実施例において示した凹部又は切欠部19と同相位置に設けた例を示している。
また第6図に示すような同相配置の2個の電機子コイル7-1、7-2を有する一相のステータ電機子の場合には、界磁マグネット13´が6極のものとなっているので、位置検知素子8を電機子コイル7-1、7-2の発生トルクに寄与する導体部と対向しない同相位置のステータヨーク5位置に配設できるので、実に都合よいものとなる。
尚、ステータヨーク15として鉄基板を用いると誠に都合良いものとなる。他については上記第1実施例と同じであるため特に説明を要しないと思われるのでその説明は省略する。
(効果)
本考案のディスク型ブラシレスモータは、上記から明らかなように、位置検知素子1個の1相のモータでありながら、特別厄介な自起動処理手段を用いることなく予め用いているステータヨークに適宜な条件の切欠部または凹部を形成し、該切欠部または凹部と一相配置の電機子コイル群とを適宜な位置に配設するのみで、確実に一方向に自起動が可能で、安価で小型の一相のディスク型ブラシレスモータが得られる効果がある。
【図面の簡単な説明】
第1図は本考案を適用した一例としての一相のディスク型ブラシレスファンモータの縦断面図、第2図は4極の界磁マグネットの下面図、第3図は本考案の一実施例としての電機子の平面図、第4図は2つの電機子コイルを同相の一相配置に形成した一相の固定側コアレス電機子の平面図、第5図は一実施例としての界磁マグネットとの展開図、第6図は他の実施例としての固定側電機子の平面図、第7図は他の6極の界磁マグネットの下面図である。
1・・・ファンモータケーシング、2・・・孔、3・・・軸受、4・・・回転軸、5・・・ステータヨーク、6・・・螺子、7-1、7-2・・・電機子コイル、8・・・位置検知素子、9・・・回転ファン、10・・・ボス部、11・・・本体、12・・・ロータヨーク、13、13´・・・界磁マグネット、14・・・羽根、16・・・点線、19・・・凹部又は切欠部、20・・・通電制御回路、21、22、24、25・・・トランジスタ、23、26・・・接続点、27・・・プラス電源端子、28・・・グランド
訂正の要旨 訂正の要旨
・実用新案登録第2045509号の明細書中、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的として、請求項1および請求項2に「切欠部若しくは凹部」とあるのを「切欠部」と、請求項3に「凹部又は切欠部」とあるのを「切欠部」と、請求項4に「凹部または切欠部」とあるのを「切欠部」と、それぞれ訂正する。
審決日 2001-06-01 
出願番号 実願昭60-68416 
審決分類 U 1 41・ 851- Y (H02K)
最終処分 成立    
前審関与審査官 森田 信一  
特許庁審判長 下野 和行
特許庁審判官 吉村 宅衛
江頭 信彦
登録日 1995-01-11 
登録番号 実用新案登録第2045509号(U2045509) 
考案の名称 位置検知素子1個の一相のデイスク型ブラシレスモ-タ  
代理人 對崎 俊一  
代理人 對崎 俊一  
代理人 守谷 一雄  
代理人 守谷 一雄  

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