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審決分類 審判 全部申し立て   F16F
管理番号 1045189
異議申立番号 異議2000-74676  
総通号数 22 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2001-10-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-12-19 
確定日 2001-07-16 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 登録第2605043号「液体封入式マウント」の請求項1に係る実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 訂正を認める。 登録第2605043号の請求項1に係る実用新案登録を維持する。
理由 I.手続きの経緯
本件実用新案登録第2605043号の請求項1に係る考案は、平成5年4月9日に実用新案登録出願がなされたものであって、平成12年4月14日にその考案について実用新案権の設定登録がなされ、その実用新案登録について、平成12年12月19日に実用新案登録異議申立人・伊藤壽朗(以下、「申立人」という。)により異議申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成13年5月11日に訂正請求がなされたものである。

II.訂正の適否
1.訂正の内容
実用新案権者が求めている訂正の内容は以下1)及び2)のとおりである。
1)訂正事項a
実用新案登録第2605043号の願書に添付された明細書(以下、「登録明細書」という。)の実用新案登録請求の範囲の請求項1を、
「【請求項1】加振側および支持側の一方に取り付けられる第一取付部材(1)と他方に取り付けられる第二取付部材(4)をゴム脚部(8)を介して接続し、前記第二取付部材(4)の内側にオリフィス部材(9)とダイアフラム(21)を設け、前記ゴム脚部(8)と前記オリフィス部材(9)の間の第一液室(23)と前記オリフィス部材(9)と前記ダイアフラム(21)の間の第二液室(24)を前記オリフィス部材(9)に設けたオリフィス流路(10)を介して連通し、前記オリフィス流路(10)の中途に第三液室(13)を設け、前記第三液室(13)に面してサブダイアフラム(22)を設け、前記液室(23)(24)(13)に作動液(25)を封入したことを特徴とする液体封入式マウント。」から、
「【請求項1】加振側および支持側の一方に取り付けられる第一取付部材(1)と他方に取り付けられる第二取付部材(4)をゴム脚部(8)を介して接続し、前記第二取付部材(4)の内側にオリフィス部材(9)とダイアフラム(21)を設け、前記ゴム脚部(8)と前記オリフィス部材(9)の間の第一液室(23)と前記オリフィス部材(9)と前記ダイアフラム(21)の間の第二液室(24)を前記オリフィス部材(9)に設けたオリフィス流路(10)を介して連通し、前記オリフィス流路(10)の中途に第三液室(13)を設け、前記第三液室(13)に面してサブダイアフラム(22)を設け、前記液室(23)(24)(13)に作動液(25)を封入し、前記サブダイヤフラム(22)は円盤形であって、かつ前記オリフィス部材(9)における前記第三液室(13)を設けた第一オリフィスプレート(11)と基本的に環状の第二オリフィスプレート(17)との間にその周縁部が挟持されたものであることを特徴とする液体封入式マウント。」と訂正する。
2)訂正事項b
登録明細書の段落【0004】を、
「【0004】【課題を解決するための手段】本考案は以上の点に鑑み、上記従来技術にみられる問題を解消すべく案出されたものであって、この目的を達成するため、加振側および支持側の一方に取り付けられる第一取付部材と他方に取り付けられる第二取付部材をゴム脚部を介して接続し、前記第二取付部材に内側にオリフィス部材とダイアフラムを設け、前記ゴム脚部と前記オリフィス部材の間の第一液室と前記オリフィス部材と前記ダイアフラムの間の第二液室を前記オリフィス部材に設けたオリフィス流路を介して連通し、前記オリフィス流路の中途に第三液室を設け、前記第三液室に面してサブダイアフラムを設け、前記液室に作動液を封入する構成とした。」から、
「【0004】【課題を解決するための手段】本考案は以上の点に鑑み、上記従来技術にみられる問題を解消すべく案出されたものであって、この目的を達成するため、加振側および支持側の一方に取り付けられる第一取付部材と他方に取り付けられる第二取付部材をゴム脚部を介して接続し、前記第二取付部材に内側にオリフィス部材とダイアフラムを設け、前記ゴム脚部と前記オリフィス部材の間の第一液室と前記オリフィス部材と前記ダイアフラムの間の第二液室を前記オリフィス部材に設けたオリフィス流路を介して連通し、前記オリフィス流路の中途に第三液室を設け、前記第三液室に面してサブダイアフラムを設け、前記液室に作動液を封入し、前記サブダイヤフラムは円盤形であって、かつ前記オリフィス部材における前記第三液室を設けた第一オリフィスプレートと基本的に環状の第二オリフィスプレートとの間にその周縁部が挟持されたものである構成とした。」と訂正する。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
訂正事項aは、登録明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に、登録明細書の「オリフィス部材9は第一オリフィスプレート11と第二オリフィスプレート17からなり、この両プレート11,17の間に円盤形のサブダイアフラム22がその周縁部において挟持されている。」(段落【0007】)の記載、「第一オリフィスプレート11は、図2および図3に単品状態を示すように、基本的に円盤形であって、第一液室23に対する開口12と、平面円形の第三液室13と、開口12と第三液室13を連通させる円弧形の溝14と、第三液室13と後記する第二オリフィスプレート17の円弧形の溝19を連通させる直線状の溝15と、サブダイアフラム22の周縁部を挟圧する円弧形の突起16とを有している。」(段落【0008】)の記載、「また第二オリフィスプレート17は、図4および図5に単品状態を示すように、基本的に環状体であって、」(段落【0008】)の記載を根拠として、「前記サブダイヤフラム(22)は円盤形であって、かつ前記オリフィス部材(9)における前記第三液室(13)を設けた第一オリフィスプレート(11)と基本的に環状の第二オリフィスプレート(17)との間にその周縁部が挟持されたものである」という記載を追加するものであり、これは、サブダイヤフラム及びオリフィス部材の構成、及び両者の関連性を限定しようとするものであるから、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。また、この訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正であり、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
訂正事項bは、考案の詳細な説明の記載の訂正であり、訂正事項aによる実用新案登録請求の範囲の請求項1の訂正に伴い、実用新案登録請求の範囲の記載と考案の詳細な説明の記載との整合を図るためのものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。また、この訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正であり、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

3.訂正の適否についてのむすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成11年法律第41号)附則第15条の規定による改正後の特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第2項の規定により準用され、同附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

III.実用新案登録異議の申立てについての判断
1.実用新案登録異議申立の概要
申立人は、甲第1号証(刊行物1)、甲第2号証(刊行物2)、甲第3号証(刊行物3)、及び甲第4号証(刊行物4)を提出し、本件実用新案登録の請求項1に係る考案は、甲第1号証ないし甲第4号証のそれぞれに記載された考案であるから、実用新案法第3条第1項第3号に該当し、実用新案登録を受けることができないと主張している。
また、本件実用新案登録の請求項1に係る考案は、甲第1号証ないし甲第4号証に記載された一つ乃至は複数の考案に基いて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定に該当し、実用新案登録を受けることができないと主張している。
なお、( )内の記載は、当審において通知した取消し理由において引用したものである。

2.本件考案
前述のとおり、本件訂正が認められたことにより、本件実用新案登録の請求項1に係る考案(以下、「本件考案」という。)は、訂正明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものと認められ、それを分説して示すと、次のとおりである。
【請求項1】
(A)加振側および支持側の一方に取り付けられる第一取付部材(1)と他方に取り付けられる第二取付部材(4)をゴム脚部(8)を介して接続し、前記第二取付部材(4)の内側にオリフィス部材(9)とダイアフラム(21)を設け、前記ゴム脚部(8)と前記オリフィス部材(9)の間の第一液室(23)と前記オリフィス部材(9)と前記ダイアフラム(21)の間の第二液室(24)を前記オリフィス部材(9)に設けたオリフィス流路(10)を介して連通し、
(B)前記オリフィス流路(10)の中途に第三液室(13)を設け、
(C)前記第三液室(13)に面してサブダイアフラム(22)を設け、
(D)前記液室(23)(24)(13)に作動液(25)を封入し、
(E)前記サブダイヤフラム(22)は円盤形であって、かつ前記オリフィス部材(9)における前記第三液室(13)を設けた第一オリフィスプレート(11)と基本的に環状の第二オリフィスプレート(17)との間にその周縁部が挟持されたものであることを特徴とする液体封入式マウント。

3.刊行物に記載された考案
(1) 刊行物1:特開昭60-139941号公報
(2) 刊行物2:特公平2-37497号公報
(3) 刊行物3:特開平4-60231号公報
(4) 刊行物4:特開平2-42226号公報
(刊行物1)
刊行物1には、「この防振装置の底筒10は軸方向中間部の内側へリングプレート12の周縁部をかしめ固着している。」(第2頁左上欄第20行?同頁右上欄第3行)、「底筒10の上端部はリングプレート18の下面へ当接されると共に接続筒20の下端部へリングプレート18と共にかしめ固着されている。」(第2頁右上欄第8?10行)、「前記リングプレート12とリングプレート18との間には円筒ダイヤフラム32の上下両端部がそれぞれ加硫接着されており」(第2頁左下欄第5?7行)等と記載されており、また、第1?4図の第1実施例の記載からみて、下記の引用考案1が開示されている。
【引用考案1】
(A)加振側および支持側の一方に取り付けられる台板24と他方に取り付けられる接続筒20及び底筒10をゴム22を介して接続し、前記接続筒20及び底筒10の内側に上下隔壁板36、56と下ダイヤフラム14を設け、前記ゴム22と前記上下隔壁板36、56の間の上液室37Aと前記上下隔壁板36、56と前記下ダイヤフラム14の間の下液室37Cを前記上下隔壁板36、56に設けたオリフィス54、64を介して連通し、
(B)前記オリフィス54、64の中途に中液室37Bを設け、
(C)前記中液室37Bに面して円筒ダイヤフラム32を設け、
(D)前記液室37A、37B、37Cに液体を封入し、
(E)前記円筒ダイヤフラム32は円筒形であって、かつ前記接続筒20及び底筒10にかしめ固着されたリングプレート12、18にその上下両端部がそれぞれ加硫接着されたものであるエンジンマウント。
(刊行物2)
刊行物2には、「仕切板5は、上板19a、下板19bおよび両板19a、19bを連結する側板19cとにて画成した中間室19を有し、側板19cの少なくとも一部はゴムまたはエラストマよりなる比較的軟質の弾性体19dにて形成されて中間室19を弾性変形可能な構成とする。」(第2頁第3欄第27?32行)等と記載されており、また、第3?6図の一実施例の記載からみて、下記引用考案2が開示されている。
【引用考案2】
(A)加振側および支持側の一方に取り付けられる基板1と他方に取り付けられる基板2をマウントラバー4を介して接続し、前記基板2の内側に仕切板5とダイヤフラム6を設け、前記マウントラバー4と前記仕切板5の間の流体室17と前記仕切板5と前記ダイヤフラム6の間の副次室18を前記仕切板5に設けたオリフィス13、14を介して連通し、
(B)前記オリフィス13、14の中途に中間室19を設け、
(C)前記中間室19に面して弾性体19dを設け、
(D)前記液室17、18、19に液体を封入し、
(E)前記弾性体19dは軸方向に長く配置されるものであって、かつ前記中間室19を画成する側板19cの少なくとも一部として形成されたものであるパワーユニットマウント。
(刊行物3)
刊行物3には、「また一方、第二の取付金具12の内部における、仕切板32よりも底部側に収容配置された前記オリフィス形成部材30には、仕切板32が重ね合わされる軸方向端面の略中央部に開口する第一の凹所36が設けられている。そして、該第一の凹所36の開口が仕切板32によって覆蓋されると共に、該第一の凹所36内に、薄肉のゴム膜から成る第一のダイヤフラム40が配されて、その内部が、該第一のダイヤフラム40を挟んだ底部側と開口部側とに仕切られている。なお、図中、44は、第一のダイヤフラム40の外周縁部を第一の凹所36の内面に対して押圧せしめて、シールするための押え金具である。」(第5頁左上欄第2?14行)等と記載されており、また、第1?5図の一実施例の記載からみて、下記引用考案3が開示されている。
【引用考案3】
(A)加振側および支持側の一方に取り付けられる第一の取付金具10と他方に取り付けられる第二の取付金具12をゴム弾性体14を介して接続し、前記第二の取付金具12の内側にオリフィス形成部材30及び仕切板32と第二ダイヤフラム58を設け、前記ゴム弾性体14と前記オリフィス形成部材30及び仕切板32の間の受圧室34と前記オリフィス形成部材30及び仕切板32と前記第二ダイヤフラム58の間の第二平衡室60を前記オリフィス形成部材30及び仕切板32に設けた第一、第二オリフィス通路54、68を介して連通し、
(B)前記第一、第二オリフィス通路54、68の中途に第一平衡室46を設け、
(C)前記第一平衡室46に面して第一ダイヤフラム40を設け、
(D)前記液室34、46、60に非圧縮性流体を封入し、
(E)前記第一ダイヤフラム40は薄肉であって、かつ前記オリフィス形成部材30に設けられた第一の凹所36の内面に対してその外周縁部が押え金具44により押圧されたものであるエンジンマウント。
(刊行物4)
刊行物4には、「この第1副液室42は隔壁板32の外側へ重ねて配置される隔壁板38と隔壁板32との間に形成されている。この隔壁板38は隔壁板32よりも薄肉であり、中央部に形成される矩形開口38Aにはゴム等の弾性体44が加硫接着されて弾性変形可能となっており、第1副液室42の拡縮手段を構成している。」(第2頁左下欄第10?16行)等と記載され、また、第1?5図の第1実施例の記載からみて、下記引用考案4が開示されている。
【引用考案4】
(A)加振側および支持側の一方に取り付けられる内筒12と他方に取り付けられる外筒14をゴム等の弾性体26を介して接続し、前記外筒14の内側に隔壁板32、38とダイヤフラム52を設け、前記ゴム等の弾性体26と前記隔壁板32、38の間の受圧液室34と前記隔壁板32、38と前記ダイヤフラム52の間の第二副液室48を前記隔壁板32、38に設けた第1連通路36および第2連通路46を介して連通し、
(B)前記第1連通路36および第2連通路46の中途に第1副液室42を設け、
(C)前記第1副液室42に面してゴム等の弾性体44を設け、
(D)前記液室34、42、48に液体を封入し、
(E)前記ゴム等の弾性体44は軸方向に長く配置されて、かつ前記第1副液室42を形成する前記隔壁板32、38の外側の隔壁板38の中央部に形成される矩形開口38Aにその周縁部が加硫接着されたものであるエンジンマウント。

4.対比・判断
本件考案と、上記引用考案1乃至引用考案4とをそれぞれ個別に対比すると、本件考案の構成(A)乃至(D)においては、両者は一致するものの、本件考案の構成(E)に係る「サブダイヤフラム(22)は円盤形であって、かつ前記オリフィス部材(9)における第三液室(13)を設けた第一オリフィスプレート(11)と基本的に環状の第二オリフィスプレート(17)との間にその周縁部が挟持されたものである」点については、上記引用考案1乃至引用考案4のいずれも具備していない。
そして、本件考案は、この点の構成により、「第一液室と第二液室とを連通するオリフィス流路の中途に設けられる第三液室に面してサブダイアフラムが設けられているために、オリフィス部材にオリフィス流路を一本設けるだけの構成で低周波振動とアイドル振動の双方をそれぞれ有効に低減させることができる。したがって(中略)オリフィスの構成が比較的簡単で、減衰特性を比較的容易に設計することができ、更にオリフィス形状を小さくすることができる。」(段落【0014】)という明細書記載の格別の作用効果を奏するものと認められる。
したがって、本件考案は、上記刊行物1乃至4のいずれかに記載された考案とはいえない。
また、上記構成が、上記刊行物1乃至4のいずれにも記載も示唆もされていない以上、どのように組み合わせても、当業者が刊行物1乃至4に記載された考案に基いてきわめて容易に考案をすることができたものともいえない。

5.実用新案登録異議の申立てについてのむすび
したがって、本件実用新案登録の請求項1に係る考案は、実用新案法第3条第1項第3号、及び同第3条第2項の規定に該当するとはいえない。

IV .むすび
以上のとおりであるから、実用新案登録異議申立ての理由及び証拠によっては、本件考案についての実用新案登録を取り消すことはできない。
また、他に本件考案についての実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
発明の名称 (54)【考案の名称】
液体封入式マウント
(57)【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 加振側および支持側の一方に取り付けられる第一取付部材(1)と他方に取り付けられる第二取付部材(4)をゴム脚部(8)を介して接続し、前記第二取付部材(4)の内側にオリフィス部材(9)とダイアフラム(21)を設け、前記ゴム脚部(8)と前記オリフィス部材(9)の間の第一液室(23)と前記オリフィス部材(9)と前記ダイアフラム(21)の間の第二液室(24)を前記オリフィス部材(9)に設けたオリフィス流路(10)を介して連通し、前記オリフィス流路(10)の中途に第三液室(13)を設け、前記第三液室(13)に面してサブダイアフラム(22)を設け、前記液室(23)(24)(13)に作動液(25)を封入し、
前記サブダイアフラム(22)は円盤形であって、かつ前記オリフィス部材(9)における前記第三液室(13)を設けた第一オリフィスプレート(11)と基本的に環状の第二オリフィスプレート(17)との間にその周縁部が挟持されたものであることを特徴とする液体封入式マウント。
【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、液体封入式マウントの改良に関する。本考案の液体封入式マウントは主に、自動車のエンジンマウントとして用いられる。
【0002】
【従来の技術】
従来から、この種の液体封入式マウントとして、特開昭57-77223号公報または特開平3-292431号公報に記載されたものが知られている。
【0003】
【考案が解決しようとする課題】
しかしながら、特開昭57-77223号公報に記載された液体封入式マウントは、低周波振動(ショック振動)と高周波振動を低減させるべく構成されている。したがって、この液体封入式マウントによると、低周波振動(ショック振動)とアイドル振動を有効に低減させることができない問題がある。低周波振動(ショック振動)は10HZ前後の振動であり、またアイドル振動は中間域の20?30HZ前後の振動である。
また、特開平3-292431号公報に記載された液体封入式マウントによれば、低周波振動とアイドル振動を低減させることができるが、この液体封入式マウントにおいては、このように低周波振動とアイドル振動を低減させるためにオリフィス流路が二本並行して設けられている。したがって、この液体封入式マウントによると、その構成が複雑であり、減衰特性の設計が煩わしい上に、二本のオリフィス流路に共有部分がないために、オリフィス形状が大きくなる傾向にある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本考案は以上の点に鑑み、上記従来技術にみられる問題を解消すべく案出されたものであって、この目的を達成するため、加振側および支持側の一方に取り付けられる第一取付部材と他方に取り付けられる第二取付部材をゴム脚部を介して接続し、前記第二取付部材に内側にオリフィス部材とダイアフラムを設け、前記ゴム脚部と前記オリフィス部材の間の第一液室と前記オリフィス部材と前記ダイアフラムの間の第二液室を前記オリフィス部材に設けたオリフィス流路を介して連通し、前記オリフィス流路の中途に第三液室を設け、前記第三液室に面してサブダイアフラムを設け、前記液室に作動液を封入し、前記サブダイアフラムは円盤形であって、かつ前記オリフィス部材における前記第三液室を設けた第一オリフィスプレートと基本的に環状の第二オリフィスプレートとの間にその周縁部が挟持されたものである構成とした。
【0005】
【作用】
上記構成を有する本考案の液体封入式マウントにアイドル振動が入力されるとその入力方向に従って、例えば、第一液室の作動液がオリフィス流路を通って第三液室に流れ、その際、20?30HZで、作動液が共振する。そして作動液が共振すると、動ばね定数が下がるために、これを利用してアイドル振動を低減する。また本考案の液体封入式マウントに低周波振動が入力されると、その入力方向に従って、例えば、第一液室の作動液がオリフィス流路を通って第三液室に流れるが、この場合にはアイドル振動の場合と違って、サブダイヤフラムでは内圧をキャンセルすることができない。したがって作動液は第三液室から更にオリフィス流路を通って第二液室に流れることになり、その際、10HZ前後で、作動液が共振する。そしてこの場合には、オリフィス流路全体の作動液が共振するために、減衰が大きくなり、これを利用して低周波振動を低減する。
【0006】
【実施例】
つぎに本考案の実施例を図面にしたがって説明する。
【0007】
図1に示す液体封入式マウントにおいて、第一取付部材1はボス2とボルト3からなり、第二取付部材4はケース5と蓋6とボルト7からなっており、この第一取付部材1と第二取付部材4が、ボス2とケース5に加硫接着されたゴム脚部8を介して接続されている。第二取付部材4に内側にオリフィス部材9とダイアフラム21がカシメによって固定されており、ゴム脚部8とオリフィス部材9の間の第一液室23とオリフィス部材9とダイアフラム21の間の第二液室24がオリフィス部材9に設けられた唯一のオリフィス流路10を介して接続されている。オリフィス部材9は第一オリフィスプレート11と第二オリフィスプレート17からなり、この両プレート11,17の間に円盤形のサブダイアフラム22がその周縁部において挟持されている。
【0008】
第一オリフィスプレート11は、図2および図3に単品状態を示すように、基本的に円盤形であって、第一液室23に対する開口12と、平面円形の第三液室13と、開口12と第三液室13を連通させる円弧形の溝14と、第三液室13と後記する第二オリフィスプレート17の円弧形の溝19を連通させる直線状の溝15と、サブダイアフラム22の周縁部を挟圧する円弧形の突起16とを有している。また第二オリフィスプレート17は、図4および図5に単品状態を示すように、基本的に環状体であって、第二液室24に対する開口18と、開口18と前記した直線状の溝15を連通させる円弧形の溝19と、サブダイアフラム22の周縁部を挟圧する環状の突起20とを有している。そして、この両プレート11,17を拝み合わせに重ねると、第一液室23と第二液室24を連通させる唯一のオリフィス流路10が形成せしめられ、オリフィス流路10の中途に第三液室13が設けられ、第三液室13に面してサブダイアフラム22が配置されることになる。オリフィス流路10は第三液室13を含めて、開口12、円弧形の溝14、第三液室13、直線状の溝15、円弧形の溝19、そして開口18の順である。液室23,24,13には作動液25が封入されている。またダイアフラム21とサブダイアフラム22の拡張弾性率は互いに異なるように設定されている。
【0009】
つぎに上記構成の液体封入式マウントの作動を説明する。図6は当該液体封入式マウントの構造説明図、図7は当該液体封入式マウントの動ばね定数を示す説明図である。
【0010】
すなわち、先ず当該液体封入式マウントに、例えば図上上方からアイドル振動が入力されると、第一液室23の作動液25がオリフィス流路10を通って第三液室13に流れ、その際、20?30HZで、作動液25が共振する。そして作動液25が共振すると、動ばね定数が下がるために、この作用を利用してアイドル振動を低減することができる。また当該液体封入式マウントに、例えば図上上方から低周波振動が入力されると、第一液室23の作動液25がオリフィス流路10を通って第三液室13に流れるが、この場合にはアイドル振動の場合と違って、サブダイヤフラム22では内圧をキャンセルすることができない。したがって作動液25は第三液室13から更にオリフィス流路10を通って第二液室24に流れることになり、その際、10HZ前後で、作動液25が共振する。そしてこの場合には、オリフィス流路10全体の作動液25が共振するために、減衰が大きくなり、この作用を利用して低周波振動を低減することができる。
【0011】
また上記液体封入式マウントにおいては、作動液25の流れが、オリフィス部材9に唯一設けられたオリフィス流路10一本に集中することになるために、製造時、当該マウントの減衰特性について、これを設計し易い特徴がある。
【0012】
【考案の効果】
本考案は、以下の効果を奏する。
【0013】
すなわち、本考案の液体封入式マウントによると、上記した構成と作用によって、低周波振動(ショック振動)とアイドル振動の双方を有効に低減させることができる。
【0014】
また、本考案の液体封入式マウントにおいては、第一液室と第二液室とを連通するオリフィス流路の中途に設けられる第三液室に面してサブダイアフラムが設けられているために、オリフィス部材にオリフィス流路を一本設けるだけの構成で低周波振動とアイドル振動の双方をそれぞれ有効に低減させることができる。したがって本考案の液体封入式マウントによれば、オリフィスの構成が比較的簡単で、減衰特性を比較的容易に設計することができ、更にオリフィス形状を小さくすることができる。
ここに、オリフィス流路を一本設けるだけの構成で低周波振動とアイドル振動の双方を低減させることができるのは、この唯一のオリフィス流路が以下のように機能するからである。
すなわち、本考案の液体封入式マウントに先ず、アイドル振動が入力されるとその入力方向に従って、例えば第一液室の作動液がオリフィス流路を通って第三液室に流れ、その際、作動液が共振する。そして作動液が共振すると、動ばね定数が下がるために、これを利用してアイドル振動を低減することができる。また本考案の液体封入式マウントに低周波振動が入力されると、その入力方向に従って、例えば第一液室の作動液がオリフィス流路を通って第三液室に流れるが、この場合にはアイドル振動の場合と違って、サブダイヤフラムでは内圧をキャンセルすることができない。したがって作動液は第三液室から更にオリフィス流路を通って第二液室に流れることになり、その際、作動液が共振する。そしてこの場合には、オリフィス流路全体の作動液が共振するために、減衰が大きくなり、これを利用して低周波振動を低減することができる。
したがって本考案によれば、唯一のオリフィス流路がこのように機能するために、オリフィス流路を一本設けるだけの構成で低周波振動とアイドル振動の双方をそれぞれ有効に低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本考案の実施例に係る液体封入式マウントの断面図
【図2】
図1のA-A線断面図
【図3】
図2のC-O-C線断面図
【図4】
図1のB-B線断面図
【図5】
図1における第二オリフィスプレートの拡大図
【図6】
同液体封入式マウントの構造を示す模式図
【図7】
同液体封入式マウントの動ばね定数を示すグラフ図
【符号の説明】
1 第一取付部材
2 ボス
3,7 ボルト
4 第二取付部材
5 ケース
6 蓋
8 ゴム脚部
9 オリフィス部材
10 オリフィス流路
11 第一オリフィスプレート
12,18 開口
13 第三液室
14,15,19 溝
16,20 突起
17 第二オリフィスプレート
21 ダイアフラム
22 サブダイアフラム
23 第一液室
24 第二液室
25 作動液
訂正の要旨 (1)訂正事項a
実用新案登録第2605043号の願書に添付された明細書(以下、「登録明細書」という。)の実用新案登録請求の範囲の請求項1を、
「【請求項1】加振側および支持側の一方に取り付けられる第一取付部材(1)と他方に取り付けられる第二取付部材(4)をゴム脚部(8)を介して接続し、前記第二取付部材(4)の内側にオリフィス部材(9)とダイアフラム(21)を設け、前記ゴム脚部(8)と前記オリフィス部材(9)の間の第一液室(23)と前記オリフィス部材(9)と前記ダイアフラム(21)の間の第二液室(24)を前記オリフィス部材(9)に設けたオリフィス流路(10)を介して連通し、前記オリフィス流路(10)の中途に第三液室(13)を設け、前記第三液室(13)に面してサブダイアフラム(22)を設け、前記液室(23)(24)(13)に作動液(25)を封入したことを特徴とする液体封入式マウント。」から、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的として、
「【請求項1】加振側および支持側の一方に取り付けられる第一取付部材(1)と他方に取り付けられる第二取付部材(4)をゴム脚部(8)を介して接続し、前記第二取付部材(4)の内側にオリフィス部材(9)とダイアフラム(21)を設け、前記ゴム脚部(8)と前記オリフィス部材(9)の間の第一液室(23)と前記オリフィス部材(9)と前記ダイアフラム(21)の間の第二液室(24)を前記オリフィス部材(9)に設けたオリフィス流路(10)を介して連通し、前記オリフィス流路(10)の中途に第三液室(13)を設け、前記第三液室(13)に面してサブダイアフラム(22)を設け、前記液室(23)(24)(13)に作動液(25)を封入し、前記サブダイヤフラム(22)は円盤形であって、かつ前記オリフィス部材(9)における前記第三液室(13)を設けた第一オリフィスプレート(11)と基本的に環状の第二オリフィスプレート(17)との間にその周縁部が挟持されたものであることを特徴とする液体封入式マウント。」と訂正する。
(2)訂正事項b
登録明細書の段落【0004】を、
「【0004】【課題を解決するための手段】本考案は以上の点に鑑み、上記従来技術にみられる問題を解消すべく案出されたものであって、この目的を達成するため、加振側および支持側の一方に取り付けられる第一取付部材と他方に取り付けられる第二取付部材をゴム脚部を介して接続し、前記第二取付部材に内側にオリフィス部材とダイアフラムを設け、前記ゴム脚部と前記オリフィス部材の間の第一液室と前記オリフィス部材と前記ダイアフラムの間の第二液室を前記オリフィス部材に設けたオリフィス流路を介して連通し、前記オリフィス流路の中途に第三液室を設け、前記第三液室に面してサブダイアフラムを設け、前記液室に作動液を封入する構成とした。」から、明りょうでない記載の釈明を目的として、
「【0004】【課題を解決するための手段】本考案は以上の点に鑑み、上記従来技術にみられる問題を解消すべく案出されたものであって、この目的を達成するため、加振側および支持側の一方に取り付けられる第一取付部材と他方に取り付けられる第二取付部材をゴム脚部を介して接続し、前記第二取付部材に内側にオリフィス部材とダイアフラムを設け、前記ゴム脚部と前記オリフィス部材の間の第一液室と前記オリフィス部材と前記ダイアフラムの間の第二液室を前記オリフィス部材に設けたオリフィス流路を介して連通し、前記オリフィス流路の中途に第三液室を設け、前記第三液室に面してサブダイアフラムを設け、前記液室に作動液を封入し、前記サブダイヤフラムは円盤形であって、かつ前記オリフィス部材における前記第三液室を設けた第一オリフィスプレートと基本的に環状の第二オリフィスプレートとの間にその周縁部が挟持されたものである構成とした。」と訂正する。
異議決定日 2001-06-28 
出願番号 実願平5-23431 
審決分類 U 1 651・ 113- YA (F16F)
最終処分 維持    
前審関与審査官 内田 博之窪田 治彦  
特許庁審判長 西川 一
特許庁審判官 秋月 均
常盤 務
登録日 2000-04-14 
登録番号 実用新案登録第2605043号(U2605043) 
権利者 エヌ・オー・ケー・ビブラコースティック株式会社
東京都港区芝大門1丁目12番15号
考案の名称 液体封入式マウント  
代理人 野本 陽一  
代理人 野本 陽一  

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