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審決分類 審判 一部申し立て   F16F
審判 一部申し立て   F16F
管理番号 1045198
異議申立番号 異議1999-74748  
総通号数 22 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2001-10-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-12-14 
確定日 2001-09-07 
異議申立件数
事件の表示 登録第2596400号「油圧緩衝器」の請求項1に係る実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 登録第2596400号の請求項1に係る実用新案登録を取り消す。
理由 I.手続の経緯
実用新案登録第2596400号に係る考案は、実用新案法第7条の2第1項の規定に基づく優先権主張を伴い昭和63年3月28日に出願(優先日:昭和63年1月29日)された実願昭63-40717号の一部を平成6年12月12日に新たな実用新案登録出願(実願平6-16355号)としたものであって、平成11年4月9日にその実用新案権の設定登録がなされ、その後、異議申立人株式会社ショーワより請求項1に係る実用新案登録について実用新案登録異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成12年5月30日に訂正請求がなされた後、訂正拒絶理由の通知がされ、その指定期間内に応答がなかったものである。

II.訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
1)訂正事項a
実用新案登録2596400号の願書に添付した明細書(以下、「登録明細書」という。)における実用新案登録請求の範囲の請求項1を、
「【請求項1】アウターチューブ内にインナーチューブを移動自在に挿入し、インナーチューブの下部中央にダンパーシリンダを起立し、ダンパーシリンダ内にピストンを介してピストンロッドが移動自在に挿入され、ピストンロッドはアウターチューブに連結し、ダンパーシリンダとアウターチューブ間に懸架スプリングが介装されている倒立型フロントフォークに於て、ピストンロッドの外周上部に懸架スプリングの内側に配設したスペーサを挿入し、当該スペーサは円筒基部と円筒基部の外周に軸方向に沿って形成した放射状の複数のリブと、リブとリブとの間に軸方向に沿って形成した溝とで構成され、更に懸架スプリングの内周が前記リブの外周で軸方向に沿って案内されている油圧緩衝器。」から、
「【請求項1】アウターチューブ内にインナーチューブを移動自在に挿入し、インナーチューブの下部中央にダンパーシリンダを起立し、ダンパーシリンダ内にピストンを介してピストンロッドが移動自在に挿入され、ピストンロッドはアウターチューブに連結し、当該ピストンロッドの上方外周にオイルロック用のロックピースを設け、ダンパーシリンダとアウターチューブ間に懸架スプリングが介装されている倒立型フロントフォークに於て、ピストンロッドの外周上部には上記オイルロックピースより上方に位置し且つ懸架スプリングの内側に配設したスペーサを挿入し、当該スペーサは円筒基部と円筒基部の外周に軸方向に沿って形成した放射状の複数のリブと、リブとリブとの間に軸方向に沿って形成した溝とで構成され、更に懸架スプリングの内周が前記リブの外周で軸方向に沿って案内されている油圧緩衝器。」に訂正する。
2)訂正事項b
登録明細書の段落番号【0009】を、
「【0009】【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するため、本考案の構成は、アウターチューブ内にインナーチューブを移動自在に挿入し、インナーチューブの下部中央にダンパーシリンダを起立し、ダンパーシリンダ内にピストンを介してピストンロッドが移動自在に挿入され、ピストンロッドはアウターチューブに連結し、ダンパーシリンダとアウターチューブ間に懸架スプリングが介装されている倒立型フロントフォークに於て、ピストンロッドの外周上部に懸架スプリングの内側に配設したスペーサを挿入し、当該スペーサは円筒基部と円筒基部の外周に軸方向に沿って形成した放射状の複数のリブと、リブとリブとの間に軸方向に沿って形成した溝とで構成され、更に懸架スプリングの内周が前記リブの外周で軸方向に沿って案内されていることを特徴とするものである。」から、
「【0009】【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するため、本考案の構成は、アウターチューブ内にインナーチューブを移動自在に挿入し、インナーチューブの下部中央にダンパーシリンダを起立し、ダンパーシリンダ内にピストンを介してピストンロッドが移動自在に挿入され、ピストンロッドはアウターチューブに連結し、当該ピストンロッドの上方外周にオイルロック用ロックピースを設け、ダンパーシリンダとアウターチューブ間に懸架スプリングが介装されている倒立型フロントフォークに於て、ピストンロッドの外周上部には上記オイルロックピースより上方に位置し且つ懸架スプリングの内側に配設したスペーサを挿入し、当該スペーサは円筒基部と円筒基部の外周に軸方向に沿って形成した放射状の複数のリブと、リブとリブとの間に軸方向に沿って形成した溝とで構成され、更に懸架スプリングの内周が前記リブの外周で軸方向に沿って案内されていることを特徴とするものである。」に訂正する。
3)訂正事項c
登録明細書の段落番号【0038】を、
「【0038】(2)スペーサは、懸架スプリングの内周側に設けられており、インナーチューブとは摺接しない。この為、インナーチューブはアウターチューブ以外とは接触しないから摺動性が向上する。」から、
「【0038】(2)スペーサは、懸架スプリングの内周側に設けられており、インナーチューブとは摺接しない。この為、インナーチューブはアウターチューブ以外とは接触しないから摺動性が向上する。更にスペーサはオイルロック用のオイルロックピースより上方に位置してピストンロッド外周上部に挿入されているから伸縮作動に関与しないピストンロッドの上部外周をスペーサの取付用スペースとして有効に利用できる。」に訂正する。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
1)訂正事項a
訂正事項aは、請求項1について「ピストンロッドはアウターチューブに連結し、」を「ピストンロッドはアウターチューブに連結し、当該ピストンロッドの上方外周にオイルロック用ロックピースを設け、」と訂正し、同じく、「ピストンロッドの外周上部に」を「ピストンロッドの外周上部には上記オイルロックピースより上方に位置し且つ」と訂正しようとするものである。
この訂正事項aは、登録明細書に「ピストンロッド5の外周上部にはスペーサ15が挿入され、更にキャップ6の下部には支持部材18が設けられ、この支持部材18と前記ロックピース部材を構成するナット15との間にスプリングガイドたるスペーサ13が挾持されている。」(段落番号【0022】)及び「即ち、スペーサ13は、ロックピース部材で下端が支持され、上下方向に動かないように固定されている。」(【0023】)と記載され、また、図1、2に記載されている技術的事項に基づいて、実用新案登録請求の範囲の請求項1に、オイルロック用ロックピースを新たな構成として付加するとともに、オイルロック用ロックピースとスペーサとの取付けの位置関係を限定しようとするものであるから、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的とした訂正に該当するとともに、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正であり、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
2)訂正事項b
訂正事項bは、請求項1に関する訂正事項aと、それに対応する考案の詳細な説明の欄の段落番号【0009】の【課題を解決するための手段】の記載との整合性を持たせようとしたものである。このような整合性を持たせる訂正を行わなければ、不明りょうな記載となってしまうところを改めたものである。したがって、この訂正事項bは、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当するとともに、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正であり、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
3)訂正事項c
訂正事項cは、登録明細書の段落番号【0038】中の「向上する。」を「向上する。更にスペーサはオイルロック用のオイルロックピースより上方に位置してピストンロッド外周上部に挿入されているから、伸縮作動に関与しないピストンロッドの上部外周をスペーサの取付用スペースとして有効に利用できる。」と訂正しようとするものである。
権利者は、訂正事項cは、上記訂正事項a、bの構成に対応する効果を明りょうにしたものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当すると主張している。
しかしながら、登録明細書には、「懸架スプリングの内周は、その伸縮作動時に振動したり曲っても、スペーサを構成するリブの外周に沿って案内されているから、インナーチューブの内周と接触しない。」(段落番号【0012】)、「スペーサは、懸架スプリングの内周側に設けられて軸方向に沿って懸架スプリングを案内するから懸架スプリングが半径方向に曲がったり、座屈したり、振れたりするのが防止され、これにより振動時に懸架スプリングがインナーチューブと接触するのが防止される。」(段落番号【0037】)、及び「スペーサは、リブを介して懸架スプリングと接触するから、その接触面積を減少させて摺接抵抗を小さくし、懸架スプリングの作動を円滑にできる。」(段落番号【0039】)と記載されていることからみて、スペーサは、懸架スプリングの内周を案内する機能を果たすのであるから、その限りにおいて、スペーサ、そしてその取付用スペースとしてのピストンロッドの上部外周が、「伸縮作動に関与しない」部分であるとはいえない。
してみると、訂正事項cの「伸縮作動に関与しないピストンロッドの上部外周をスペーサの取付用スペースとして有効に利用できる」という記載は、ピストンロッドの上部外周が伸縮作動に関与しないという、事実に反する事項を含む点で不明りょうであるから、誤記の訂正又は明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当するものとは言えないし、また、登録明細書又は図面のどこの記載を根拠として訂正をしようとしているのか不明りょうでもあるので、訂正事項cは、願書に添付した明細書および図面に記載した事項の範囲内の訂正とは認められない。
また、「伸縮作動に関与しない」という語句が不明りょうであるとしても、「ピストンロッドの上部外周」は明確であるから、上記記載は全体としては明りょうであるとしたところで、上記記載は願書に添付した明細書および図面に記載されていない新たな効果を主張するものであるから、願書に添付した明細書および図面に記載した事項の範囲内のものとすることはできない。

3.むすび
上記訂正事項cは、前述のとおり、誤記の訂正又は明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当するものとは言えず、かつ、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものとも言えないから、上記訂正は、不適法な訂正であるので、本件の訂正後の請求項1?3に係る考案が実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができたかどうかの判断を行うまでもなく、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号。以下「平成6年改正法」という。)附則第9条第2項において準用する特許法第120条の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第1項ただし書の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。

II.実用新案登録異議の申立てについての判断
1.実用新案登録異議の申立ての理由の概要
実用新案登録異議申立人は、本件考案は、甲第1号証の1(刊行物1)及び甲第1号証の2と、甲第2号証の1(刊行物2)、甲第2号証の2、又は甲第2号証の3を加味した甲第2号証の2と、甲第3号証の1(刊行物3)、甲第3号証の2(刊行物4)又は甲第3号証の3(刊行物5)に基いてきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により登録を受けることができないと主張している。
( )内の記載は、当審において通知した取消し理由において引用したものである。

2.本件考案
前述のとおり、本件訂正が認められないことにより、本件実用新案登録第2596400号の請求項1に係る考案(以下、「本件考案」という。)は、登録明細書及び図面の記載からみて、実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「アウターチューブ内にインナーチューブを移動自在に挿入し、インナーチューブの下部中央にダンパーシリンダを起立し、ダンパーシリンダ内にピストンを介してピストンロッドが移動自在に挿入され、ピストンロッドはアウターチューブに連結し、ダンパーシリンダとアウターチューブ間に懸架スプリングが介装されている倒立型フロントフォークに於て、ピストンロッドの外周上部に懸架スプリングの内側に配設したスペーサを挿入し、当該スペーサは円筒基部と円筒基部の外周に軸方向に沿って形成した放射状の複数のリブと、リブとリブとの間に軸方向に沿って形成した溝とで構成され、更に懸架スプリングの内周が前記リブの外周で軸方向に沿って案内されている油圧緩衝器。」

3.通知した取消しの理由に引用した刊行物に記載された考案
(1)刊行物1:米国特許第4561669号明細書(甲第1号証の1)
(2)刊行物2:米国特許第3794309号明細書(甲第2号証の1)
(3)刊行物3:米国特許第3163411号明細書(甲第3号証の1)
(4)刊行物4:米国特許第2874955号明細書(甲第3号証の2)
(5)刊行物5:米国特許第2999678号明細書(甲第3号証の3)
(刊行物1)
上記刊行物1には、下記の技術事項が記載されている。
(ア)「本発明のもう一つの目的によれば、小さな外形の懸架スプリングがスプリングシリンダー(実施例中のスプリングリテイニングチューブ96を指す)内に収容され、このスプリングシリンダーは、スプリングを常時真直ぐに保持して、スプリングのスネーキング(バックリング、座屈、胴曲りと同義)を防ぎ、スプリングが小径であることからフォークメンバーの重量を軽く維持する。」(第1欄第56?62行)、
(イ)「今、図3?5を参照して、各フロントフォークメンバー13は、アッパーアウターフオークアッセンブリー21とロワーフオークチユーブアッセンブリー41を含む。アウターフオークチューブアッセンブリー21は、例えばアルミニウムからなるアッパーアウターフオークチューブ22を含み…、」(第3欄第1?15行)、
(ウ)「フォークキャップ24は、ピストンダンパーロッド72を取り付けるために、アッパーフォークチューブ22内に突出し、かつ、内径にねじを設けた中央部26を含む。」(第3欄第8?11行)、
(エ)「ロワーフオークチューブアッセンブリー41は、例えば、合金鋼からなるロワーインナーフオークチューブ42を含み・・・、」(第3欄第28?29行)、
(オ)「アキシャルクランプ部材の上端43aは、ダンパーピストンチューブ52の下端52bを取り付けるために、内径にねじを設けた中空の円筒状の凹所51を備える。」(第3欄第39?45行)
(カ)「ピストン74は、テフロンのようなピストンリング75を備え、一連の通路74aがピストン74に設けられ、バルブワッシャー70が軸方向に移動し、ポート74aを覆う。」(第4欄第26?29行)、
(キ)「上下のフオークチューブアッセンブリー21と41を伸張する主伸張スプリング91がダンパーピストンチューブ52の外側で、フォークチューブ22と42の内側に位置する。伸張スプリング91の内径はダンパーピストンチューブ52の外側を摺動するように配設され、スプリングの外径は実質的にインナーフォークチューブ42の内径より小さい。」(第4欄第46?53行)、
(ク)「伸張スプリング91の上端91aは、フォークキャップ24の中央突部26の外側に設けられたスプリングチューブセンタリングワッシャー93の軸方向に中空な円筒状の延長部94上に着座し、……」(第4欄第53?55行)、
(ケ)「センタリングワッシャー93が、Lexan(PC樹脂の商標名)のような軽量のスプリングリテイニングチユーブ96の上端96a内にリテイニングリング95により収容されている。スプリングリテイニングチユーブ96は伸張スプリング91の外周をスライドすることができる内径を有し、圧縮時にスプリングがスネーキングすることを防止する。」(第4欄第56?62行)、
(コ)「伸張スプリング91の下端91bは、ダンパーピストンチューブ52の下端52bの拡径孔52c外周の拡径部に当接するスプリングワッシャー98に係止している。」(第4欄第67行?第5欄第2行)
したがって、刊行物1には、特許明細書及び図面の記載からみて、下記の考案(以下、「引用考案」という。)が記載されているものと認める。
【引用考案】
アッパーアウターフォークチューブ22内にロワーインナーフォークチューブ42を移動自在に挿入し、ロワーインナーフォークチューブ42の下部中央にダンパーピストンチューブ52を起立し、ダンパーピストンチューブ52内にピストンを介してピストンダンパーロッド72が移動自在に挿入され、ピストンダンパーロッド72はアッパーアウターフォークチューブ22に連結し、ダンパーピストンチューブ52とアッパーアウターフォークチューブ22間に伸長スプリング91が介装されているフロントフォークメンバー13に於て、ピストンダンパーロッド72の外周上部に伸長スプリング91の外側に配設したスプリングリテイニングチューブ96を挿入し、伸長スプリング91の外周が前記スプリングリテイニングチューブ96の内周で軸方向に沿って案内されている油圧緩衝器。
(刊行物2)
上記刊行物2には、下記の技術事項が記載されている。
(サ)「図1に示すように、円筒状のスプリングガイド15がアウターチューブの端壁13の内面上に取り付けられている。スプリングガイド15は孔16を備え、この孔16は内端から内方に孔16の後端を閉じる端壁17に延びている。スプリングガイド15の先端部外周はスプリングをガイドするように面取りしてある。軸方向に長い円筒状のピストンロッド18がアウターチューブ内に軸方向に配設され、その後端又は下端はスプリングガイド15の孔16内に移動可能に取り付けられている。ピストンロッド18の後端は、ロッドを保持するボルト20を収容する内方に延びるねじ孔19を備え、このボルト20はアウターチューブの端壁13を貫通形成された段付き孔を介して取り付けられる。ボルト20はスプリングガイド15とピストンロッド18をそれぞれ、アウターチューブ内の軸方向の位置に保持することが見てとれます。」(第3欄第3?19行)、
(シ)「番号36はインナーチューブ11の下端開口部或いは近傍を指す。図1、2に示すように、番号37で示すように、リテーナリング38を収容するために、下室34aの表面はアンダーカットされている。リターンスプリング39は、アウターチューブ10に作動可能に取り付けられ、その下端はアウターチューブ10の端壁13の内面に着座している。リターンスプリング39の上端はインナーチューブ11の後端部に上方に延び、リテーナリング38に着座している。」(第4欄第7?18行)
(刊行物3)
上記刊行物3には、下記の技術事項が記載されている。
(ス)「この縮小された隙間が使用中のガタガタを最小にするが、圧縮時に、スプリングの素線がシリンダーの上端に引っかかったり、擦らない様に自由に摺動させることを確保するガイド手段を備えることが好ましいと分かった。この目的のためにシリンダー20の上端付近に密に固定され、また、変位しないようにロックされるスリーブ120が設けられる。このスリーブは、第6、7図に明瞭に示されるように、好ましくは、シリンダー側壁にぴったりと嵌まり、溝又はスロットを形成した外面を有し、122で示す泥を排出するリブを備えた円筒状の側壁121として形成されるのが好ましい。スリーブのリブと側壁は、好ましくは、123で示すようにカーブしたり、斜めにしたり、又は、両端でテーパー状に形成されるのが好ましい。」(第6欄第10?18行)
(刊行物4)
上記刊行物4には、下記の技術事項が記載されている。
(セ)「そして、スペーサ61とスプリング45の間の摩擦係合を減少させるのが望ましい。それゆえに、スペーサ61は、内面と外面に複数の軸方向に延び、周方向に間隔をおいた溝又は流路63と655を設けて成形される。」(第4欄第3?16行)
(刊行物5)
上記刊行物5には、下記の技術事項が記載されている。
(ソ)「ショックアブソーバーのシリンダー16にスプリング40が当るのを防止する予備手段として補助バンパーリング70が設けられ、……」(第3頁第4欄第3?16行)
(タ)「このリングは、第5図に70Aで示されるような純粋な円筒形状でも良いし、目的によっては、第3図に示すような形状でも良く、中央の円筒部71は、ベローの上部又は首部との接続に関連して、65に示されているものとやや類似したリブを径方向に設けられている。」(第3頁第4欄第8?14行)

4.対比・判断
そこで、本件考案と引用考案を比較すると、それぞれの有する機能に照らしてみると、引用考案の「アッパーアウターフォークチューブ22」は本件考案の「アウターチューブ」に、以下同様に、「ロワーインナーフォークチューブ42」は「インナーチューブ」に、「ダンパーピストンチューブ52」は「ダンパーシリンダ」に、「ピストンダンパーロッド72」は「ピストンロッド」に、「伸張スプリング91」は「懸架スプリング」に、「フロントフォークメンバー13」は「倒立型フロントフォーク」に、「スプリングリテイニングチューブ96」は「スペーサ」にそれぞれ相当するから、両者の一致点及び相違点は下記のとおりである。
<一致点>
アウターチューブ内にインナーチューブを移動自在に挿入し、インナーチューブの下部中央にダンパーシリンダを起立し、ダンパーシリンダ内にピストンを介してピストンロッドが移動自在に挿入され、ピストンロッドはアウターチューブに連結し、ダンパーシリンダとアウターチューブ間に懸架スプリングが介装されている倒立型フロントフォークに於て、ピストンロッドの外周上部にスペーサを挿入し、懸架スプリングが前記スペーサの軸方向に沿って案内されている油圧緩衝器。
<相違点>
a.本件考案は、スペーサを「懸架スプリングの内側に配設し、懸架スプリングの内周がリブの外周で軸方向に沿って案内されている」のに対し、引用考案は、スペーサを懸架スプリングの外側に配設し、懸架スプリングの外周がスペーサの内周で軸方向に沿って案内されている点。
b.本件考案は、スペーサが「円筒基部と円筒基部の外周に軸方向に沿って形成した放射状の複数のリブと、リブとリブとの間に軸方向に沿って形成した溝とで構成され」ているのに対し、引用考案のスペーサは、そのような構成を具備していない点。
次に、上記各相違点について検討する。
・相違点aについて
上記刊行物2には、油圧緩衝器において、リターンスプリング39(本件考案の「懸架スプリング」に相当。)を案内するスプリングガイド15(本件考案の「スペーサ」に相当。)を、リターンスプリング39の内側に配設し、ピストンロッドの外周に挿入する技術が記載され、このスプリングガイド15も、その軸方向に前記リターンスプリング39を案内し、リターンスプリング39がインナーチューブ11と接触するのを防止する等の作用効果を奏するものであり、油圧緩衝器として同じ技術分野に属する刊行物2に記載された技術を引用考案に適用して、上記相違点aに係る本件考案のように構成することは、当業者が格別の困難性を有することなくきわめて容易に想到し得たものである。
・相違点bについて
油圧緩衝器において、懸架スプリングを案内するスペーサを、円筒基部と円筒基部の外周に軸方向に沿って形成した放射状の複数のリブと、リブとリブとの間に軸方向に沿って形成した溝とで構成することは、上記刊行物3乃至5にも記載されているように従来周知の技術手段であること、また、そのようにスペーサにリブ及び溝を形成することにより、懸架スプリングとの接触面積が減少して摺動抵抗が小さくなり、懸架スプリングの作動が円滑にできる等の作用効果を奏することは、当業者がきわめて容易に想到できることと認められることから、上記従来周知の技術手段を引用考案のスペーサに適用して、上記相違点bに係る本件考案のように構成することに格別の困難性は認められない。
以上のとおりであるから、本件考案は、上記刊行物1及び2に記載された考案及び従来周知の技術手段に基いて、当業者がきわめて容易に考案することができたものである。

5.むすび
以上のとおりであるから、本件考案は、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。
したがって、本件考案についての実用新案登録は拒絶の査定をしなければならない実用新案登録出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第7項の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第3条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
異議決定日 2001-07-23 
出願番号 実願平6-16355 
審決分類 U 1 652・ 121- ZB (F16F)
U 1 652・ 841- ZB (F16F)
最終処分 取消  
前審関与審査官 大槻 清寿熊倉 強岩谷 一臣岸 智章  
特許庁審判長 西川 一
特許庁審判官 常盤 務
秋月 均
登録日 1999-04-09 
登録番号 実用新案登録第2596400号(U2596400) 
権利者 カヤバ工業株式会社
東京都港区浜松町2丁目4番1号 世界貿易センタービル
考案の名称 油圧緩衝器  
代理人 天野 泉  
代理人 塩川 修治  
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