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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) B61F
管理番号 1045200
判定請求番号 判定2001-60015  
総通号数 22 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案判定公報 
発行日 2001-10-26 
種別 判定 
判定請求日 2001-01-30 
確定日 2001-08-09 
事件の表示 上記当事者間の登録第2571077号の判定請求事件について、次のとおり判定する。   
結論 (イ)号図面及びその説明書に示す「鉄道車両の軸ハリ連結装置」は、登録第2571077号実用新案の技術的範囲に属しない。
理由 【1】請求の趣旨
本件判定請求の趣旨は、イ号図面並びにその説明書で示す「鉄道車両用の軸ハリ連結装置」(以下「イ号」という。)は、実用新案登録第2571077号の技術的範囲に属する、との判定を求めるものである。
【2】実用新案登録第2571077号考案
本件実用新案登録に係る考案は、願書に添付した明細書及び図面の記載からみて、実用新案登録請求の範囲に記載されたとおりのものであって、その構成、作用効果は、以下のとおりのものと認める。
1.構成
本件考案を、その構成要件毎にA?Lの符号を附して示せば、次のとおりのものと認める。
(A)車軸を支持する軸箱部から車両進行方向に延び出た軸ハリの端部の、
(B)該車両進行方向に直角で水平方向に配向した筒状形態のハウジング部の内周面に、
(C)該車両進行方向に直角で水平方向に配向した中心軸と該中心軸の外周面に固着した実質的に筒状形態のゴム弾性体及び該ゴム弾性体の外周面に固着した外側金具を有する防振ゴムブッシュを
(D)該外側金具において嵌合・固定するとともに、
(E)該中心軸を台車フレームに回転不能に固定した形態の鉄道車両の軸ハリ連結装置において、
(F)前記ハウジング部を前記車両進行方向に2分割するとともに、
(G)前記防振ゴムブッシュのゴム弾性体を該車両進行方向に2つのブロック体に分けてそれらブロック体の間に隙間を形成した上、
(H)各ブロック体の外周面に別体の前記外側金具を固着し、
(I)該ハウジング部の締結によって該防振ゴムブッシュを軸直角方向に締め付けるようになし、
(J)且つ該ハウジング部の内周面及び該防振ゴムブッシュ外周面の何れか一方に軸直角方向に突出する滑り防止用の係合ピンを、他方に対応する係合穴を設けてそれらを係合させるとともに、
(K)該防振ゴムブッシュの少なくとも前記外側金具の軸方向端部に拡径状の鍔状部を設けたことを特徴とする
(L)鉄道車両用の軸ハリ連結装置。
2.作用効果
願書に添付した明細書の【作用及び考案の効果】の項に、以下の記載がある。
上記のように本考案は軸ハリのハウジング部及び防振ゴムの一方に設けた係合ピンと他方に設けた係合穴とを係合させるようにしたものであり、本考案によれば防振ゴムブッシュのゴム弾性体を二つのブロック体に分け且つそれぞれに外側金具を固着した場合において、かかる防振ゴムブッシュに対し過剰な締付けを行わなくても防振ゴムブッシュとハウジング部との間の滑りを良好に防止することができる。(段落0011)
また防振ゴムブッシュを強く締め付ける必要がないのでこれに適正な予備圧縮を与えることができ、目標とするバネ特性と良好な耐久性とを共に確保することができる。(段落0012)
【3】イ号
イ号は、イ号図面及びイ号説明書の記載からみて、以下の構成を有するものと認められる。
(a)車軸(1)を支持する軸箱部(2)から車両進行方向に延び出た軸はり(3)の端部の、
(b)該車両進行方向に直角で水平方向に配向した筒状ハウジング部(4)の内周面に、
(c)該車両進行方向に直角で水平方向に配向した中心軸(7)と該中心軸(7)の外周面に固着した筒状ゴム弾性体(10)及び該筒状ゴム弾性体(10)の外周面に固着した外筒(11)を有する防振ゴムブツシユ(6)を
(d)該外筒(1l)において嵌合・固定するとともに、
(e)該中心軸(7)を台車フレーム(8)に回転不能に固定した形態の鉄道車両の軸ハリ連結装置において、
(f)前記筒状ハウジング部(4)を前記車両進行方向に半割体4A,4Bに2分割するとともに、
(g)前記防振ゴムブッシュ(6)の筒状ゴム弾性体(10)を該車両進行方向に2つのブロック体(10A),(10B)に分けてそれらブロック体(10A),(10B)の間に切欠(12)を形成した上、
(h)各ブロック体(10A),(10B)の外周面に別体の前記外筒(11)を固着し、
(i)該筒状ハウジング部(4)の締結によって該防振ゴムブッシュ(6)を軸直角方向に締め付けるようになし、
(j)且つ該筒状ハウジング部(4)の内周面に凹部(13)を設ける一方、防振ゴムブッシュ外周面に軸直角方向に突出する滑り防止用の凸部(14)をバーリング加工により外筒(11)に一体形成してそれらを係合させるとともに、
(k)該防振ゴムブッシュ(6)の少なくとも前記外筒(11)の軸方向端部に拡径状の鍔状部を設けた
(l)鉄道車両用の軸ハリ連結装置。
なお、上記イ号の認定において、各部分の用語は、イ号図面に使用された用語に従った。
【4】請求人の主張
1.イ号の構成(a)?(i),(k),(l)は、それぞれ、本件考案の構成要件(A)?(I),(K),(L)と完全に一致する。
2.本件考案の構成要件(J)とイ号の構成(j)とは、微差があるが、以下のとおり、本件考案の「係合ピン」は、「防振ゴムフッシュ」と一体の「係合ピン」も含むものであるから、イ号の構成(j)は、本件考案の構成要件(J)に含まれる。
(1)本件登録実用新案の出願時において、軸ハリ連結装置における防振ゴムブッシュのゴム弾性体と外側金具とを車両進行方向に2分割して、同じく車両進行方向に2分割した筒状のハウジング部を締結することでゴム弾性体に予備圧縮を与えるようになしたときに、防振ゴムフッシユと筒状のハウジングとの間に相対滑りが生じ易くなるといった課題は知られておらず、そしてその課題解決のために防振ゴムブッシュの外周面とハウジング部の内周面とに係合ピンと係合穴とを設けて、それらの係合により(防振ゴムブッシュとハウジング部とに設けた物理的ないし機械的な係合部分,引っ掛かり部分によって)相対滑りを防止するようになしたものは他に全く存在せず、従ってこの構成自体は本件登録実用新案の特徴部分である。
(2)実施例に開示した、別体構成の係合ピンを外側金具に設けた態様のものは、あくまで本件登録実用新案の望ましい一態様を示したに過ぎないものであって、敢えて外側金具に係合ピンを一体形成により設けたものについて例示をしていないのは、本件登録実用新案における技術的思想からみて、特に断らなくても実用新案登録請求の範囲にそのような場合も当然に含まれると考えたからに外ならない。
(3)本件登録実用新案の技術的思想、即ちその特徴は、防振ゴムブッシュにおける外周面とハウジング部の内周面との一方に係合ピンを、他方に係合穴を設けてそれらを係合させ、以て防振ゴムブッシュとハウジング部との間の相対滑りを防止する点にあるのであって、このことは本件登録実用新案によって初めて達成されたものであり、係合ピンを外側金具に一体形成によって設けた場合でも本件登録実用新案と同一の作用効果を奏するものである以上、敢えてこうした態様での実施を本件登録実用新案の技術的思想から除外する理由も意図も全く存しない。
(4)本件登録実用新案の明細書では、係合ピンを外側金具に一体形成により設ける点を除外する旨の記載は一切なされておらず、また本件登録実用新案の特有の効果として記述しているのは、係合ピンと係含穴との係合による相対滑りを防止する点のみであって、係合ピンを別体化したことによる効果を本件登録実用新案特有の効果として記述していることも一切行われていない。
(5)ある部品にピンを設ける態様として、これをその部品に一体構成で設けるといったことも常識的に行われているところである。「係合ピン」をある部材に一体構成で設けたものをも「係合ピン」と呼ぶことは、一般的に行われているところのものである。
3.結局、イ号は、本件考案に属する。
4.証拠方法
(1)甲第1号証……実用新案登録第2571077号公報
(2)甲第2号証……特開昭47-28610号公報
(3)甲第3号証……特開2000-225941号公報
(4)甲第4号証……「機械の事典」発行所朝倉書店.
(5)甲第5号証……特開平8-227057号公報
(6)甲第6号証……特開平6-88578号公報
(7)甲第7号証……特開平7-120885号公報
(8)甲第8号証……特開平5-95853号公報
(9)甲第9号証……特開平5-280247号公報
(10)甲第10号証……特開平9-53614号公報
(11)甲第11号証……特開平8-138303号公報
(12)甲第12号証……「角川漢和中辞典」発行所株式会社角川書店
【5】被請求人の主張
1.被請求人が実際に製造している実施品は、「車両進行方向に対して直角な中心軸とこの中心軸の外周に配置し固着された筒状ゴム弾性体及びこの筒状ゴム弾性体の外周面の全域を覆うように固着された外筒とを有する防振ゴムブッシュであって、筒状ゴム弾性体の軸方向両端に鍔状部分が一体に連設されているとともに、この筒状ゴム弾性体が車両進行方向に2つのブロック体に分割され、これに対応して2分割された外筒の一方の分割外筒体の軸線方向の中央部にバーリング加工により径外方に突出する円筒形状の凸部が一体形成されてなる鉄道車両軸ハリ装置用の防振ゴムブッシュ」であり、この「防振ゴムブッシュ」は鉄道車両軸ハリ装置を構成する多くの構成要素のうちの一つの構成要素に過ぎない。
2.鉄道車両軸ハリ装置を構成する構成要素の一つとして用いられる実施品(防振ゴムブッシュ)が有する構成を、請求人が被請求人の製造品であるとして分説しているイ号の構成に当て嵌めてみると、実施品は、(c),(g),「ハウジング部(4)の内周面に凹部(13)を設ける一方」を除く(j),(k)の構成要件に対応するが、その他の(a),(b),(d),(e),(f),(h),(i),(l)の構成要件には対応せず、それらの構成は備えていない。
3.被請求人が実際に製造(実施)している実施品は、(a),(b),(d),(e),(f),(h),(i),(j)のハウジング部(4)の内周面に凹部(13)を設ける構成及び(l)を備えていないから、本件登録実用新案の構成要件(A),(B),(D),(E),(F),(H),(I),(L)に対応するところの構成をもともと欠如しているものであるから、実施品は本件登録実用新案の技術的範囲に当然属しない。
4.また、被請求人が実際に製造(実施)している実施品が備えている構成(c),(g),「ハウジング部(4)の内周面に凹部(13)を設ける一方」を除く(j),(k)と、これらに対応する本件登録実用新案の構成要件(C),(G),(J),(K)とを対比しても、以下のとおり、両者間には大きな相違があり、実施品は本件登録実用新案の技術的範囲に属さない。
(1)本件登録実用新案はほとんどが公知の技術事項であり、その特徴といえば、構成要件(J)の「ハウジング部の内周面及び防振ゴムブッシュ外周面の何れか一方に軸直角方向に突出する滑り防止用の係合ピンを、他方に対応する係合穴を設けてそれらを係合させる」という構成を採用したことに過ぎない。
(2)かかる構成における「係合ピン」として、本件登録実用新案の明細書及び図面には、外筒とは独立した通常の別体のピンを用いることのみが記載され、ピンと観念されていないものまで含める記載も認識も一切存在しない。
「ピン」とは、乙第3号証の「pinピン」の項には、「単純な形状をした細長い棒状の部品をいう。」と記載されている。また、乙第4号証には、「部品(座金・ピン・リベットを含む)」と記述されている。これらの記載からみても明らかなように、「ピン」とは、独立した機械部品であって、一般的には他物と一体化されたものは含まない。
(3)ましてや、実施品では、単に別体のピンを外筒の一部に溶接等で固着一体化したものとは異なり、外筒そのものをバーリングという特殊な加工を施して径外方に突出する円筒形状の凸部を一体形成しているもので、このような凸部構成を用いた技術に関して、被請求人は特許を得ており(特許第3170641号)、自明ではなく、「ピン」と観念されるものは一切使用していない。
5.以上のように、請求人は、本判定請求におけるイ号の特定を誤認しており、また、被請求人が実際に製造(実施)している実施品と本件登録実用新案とは技術的に明らかに異なるものであって、実施品は、本件登録実用新案の技術的範囲に属さない。
8.証拠方法
(1)乙第1号証……「車両検修技術 台車・輪軸編[1]」日本国有鉄道工作所発行 表紙、207?210頁、奥付
(2)乙第2号証……「機械図集 防振・緩衝装置(上巻)」社団法人日本機械学会発行 表紙、68?69頁、奥付
(3)乙第3号証……「機械用語辞典」 株式会社コロナ社発行 表紙、414頁、奥付
(4)乙第4号証……「JIS ねじ用語」財団法人日本規格協会発行 表紙、29頁、奥付
(5)乙第5号証……「公開特許公報の表1」
(6)乙第6号証……「公開実用新案公報の表2」
【6】当審の認定・判断
1.イ号について
答弁書における「被請求人が実際に製造しているイ号実施品は、『……鉄道車両軸ハリ装置用の防振ゴムブッシュ』であり、この防振ゴムブッシュは鉄道車両軸ハリ装置を構成する多くの構成要素のうちの一つの構成要素に過ぎない。」旨の被請求人の主張を受けて、当審より請求人に対して、イ号を検討して回答するよう審尋したところ、請求人から、上記構成(a)?(l)の「鉄道車両用の軸ハリ連結装置」をイ号として判定を求める旨の回答があったので、被請求人の実施品がどのようなものであるかに拘わらず、上記構成(a)?(l)の「鉄道車両用の軸ハリ連結装置」をイ号として、判定を行う。
2.対比・判断
(1)本件考案とイ号「鉄道車両用の軸ハリ連結装置」とを対比すると、前者の「軸ハリ」、「筒状形態のハウジング部」、「実質的に筒状形態のゴム弾性体」、「外側金具」、「ブロック体」、「隙間」は、それぞれ、後者の「軸はり(3)」、「筒状ハウジング部(4)」、「筒状ゴム弾性体(10)」、「外筒(11)」、「ブロック体10A,10B」、「切欠(12)」に相当し、また、「鉄道車両の軸ハリ連結装置」と「鉄道車両用の軸ハリ連結装置」とは同義と認められるから、後者の(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)、(i)、(k)、(l)は、それぞれ、前者の(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)、(G)、(H)、(I)、(k)、(L)を充足する。
(2)次に、本件考案の(J)「且つ該ハウジング部の内周面及び該防振ゴムブッシュ外周面の何れか一方に軸直角方向に突出する滑り防止用の係合ピンを、他方に対応する係合穴を設けてそれらを係合させるとともに、」と、イ号の(j)「且つ該筒状ハウジング部(4)の内周面に凹部(13)を設ける一方、防振ゴムブッシュ外周面に軸直角方向に突出する滑り防止用の凸部(14)をバーリング加工により外筒(11)に一体形成してそれらを係合させるとともに、」とを対比する。
(2-1)本件考案の上記構成要件(J)のうちの「且つ該防振ゴムブッシュ外周面に軸直角方向に突出する滑り防止用の係合ピンを、他方に対応する係合穴を設けてそれらを係合させるとともに、」とイ号の(j)「且つ該筒状ハウジング部(4)の内周面に凹部(13)を設ける一方、防振ゴムブッシュ外周面に軸直角方向に突出する滑り防止用の凸部(14)をバーリング加工により外筒(11)に一体形成してそれらを係合させるとともに、」とは、滑り防止用の係合構造における防振ゴムブッシュ側の構成が、前者は「係合ピン」であるのに対して、後者は「バーリング加工により外筒(11)に一体形成」した「凸部(14)」である点で相違する。
(2-2)この相違点について、請求人は、「【4】請求人の主張」の「2」に摘示のように主張する。
(2-3)そこで、本件実用新案登録の願書の添付した明細書及び図面の記載を検討する。
本件実用新案登録第2571077号の明細書には、「【0002】【従来の技術】この種軸ハリの連結装置として、図3(A)に示すような装置が従来公知である。同図において100は台車フレーム、102は車輪、104は車軸であり、この車軸104を支持する軸箱部105から軸ハリ106が車両進行方向に延び出している。軸ハリ106の端部には筒状形態のハウジング部108が設けられており、このハウジング部108に防振ゴムブッシュ110が嵌合固定されている。【0003】防振ゴムブッシュ110は、中心軸112とその外側に配されたゴム弾性体114とゴム弾性体114の外周面に固着された外側金具116とから成るもので、その外側金具116において軸ハリ106のハウジング部108に嵌合固定され、また中心軸112において台車フレーム100に固定されている。【0004】この形態の連結装置においては、防振ゴムブッシュ110の弾性作用に基づいて中心軸112周りの軸ハリ106の回動運動が許容されるとともに、軸ハリ106と台車フレーム100との連結部位で振動及び衝撃が良好に吸収される。」とあり、また、例えば特開平1ー160777号公報には、「軸箱体4は軸箱3、軸ハリ3′からなる一体で形成されており、台車枠12に弾性体7を介在して摺動部分や隙間がないように取り付けられている。車軸1と台車枠12間の相対的上下運動は、軸ハリ3′と台車枠12の間に設けた弾性体7の軸8を中心にして、軸箱体4が揺動運動することにより許容される。」(第2頁右下欄第19行?第3頁左上欄第4行)、「弾性体7は軸8に接着されており、滑りを生じさせない構造とし、軸8と台車枠12は、テーパ軸取付、ボルト締め等により固着されており、やはり滑りを生じさせない構造としている。従って、軸箱体4は弾性体7の変形により、軸8を中心にして図のEの方向に揺動運動することが許容されている。」(第3頁左上欄第20行?同頁右上欄第6行)とあるように、防振ゴムブッシュとハウジングとの間で滑りが生じないように、ハウジング内にゴムブッシュを取り付けることは、本件実用新案登録の出願前の技術水準と認められる。
そして、本件実用新案登録の願書に添付した明細書には、本件考案の実施例として「【0019】上記ハウジング部12には、図1(B)に示すように内周側にピン穴42が設けられていてそこに係合ピン44が押込固定されており、この係合ピン44の軸直角方向内方への突出部が防振ゴムブッシュ16に設けられた係合穴46内に入り込んでこれに係合している。【0020】尚ピン穴42は、これを係合ピン44に係合する係合穴と考えることもできる。即ち本例の構成において、係合ピン44を防振ゴムブッシュ16から軸直角方向外側に突出する係合ピンと考え、ピン穴42をこの係合ピン44に係合して滑り止めを行う係合穴と考えることもできる。」と記載され、これらの記載及び図面に記載された「係合ピン44」は、「ハウジング部12」とも「防振ゴムブッシュ16」とも別体に構成されたものであり、「係合ピン44」を「防振ゴムブッシュ16」の「外側金具28」と一体に構成することは記載されていないし、示唆もされていない。
(2-4)また、甲第4号証には、「ピン pin 穴に差し込んで連結、位置ぎめ、ねじの回り止めなどの目的に用いる棒状または筒状のものの総称で、形状、用途などによって多くの種類がある.主なものを説明する」と記載され、「割ピン」、「平行ピン」、「クレビスピン」、「テーパピン」、「スプリングピン」、「グルードピン」が記載されている。
乙第3号証には、「pin ピン pin Stift(m)単純な形をした細長い棒状の部品をいう.その際各断面が、例えば直径の等しい円形のものであれば平行ピンといい、軸方向にこう配があるものをテーパピンという.またピンは用途により、キーと同様の固着目的に利用されたものをピンキー、継手一般に利用されたものを継手ピン、特にナックル継手に用いられたものをナックルピンという.」と記載され、また、乙第4号証は日本工業規格の「ねじ用語」を示すもので「1.適用範囲 この規格は、一般に用いるねじの基本、部品(座金・ピン・リベットを含む)、製作、検査及び表面欠陥に関する用語(以下、用語という。)と、その読み方及び意味について規定する。」と記載されている。
このように、一般に、「ピン」とは、棒状または筒状の単純な形をした独立した機械部品をいうものと認められる。
(2-5)このような明細書及び図面の記載、並びに「ピン」についての一般的解釈を参酌すると、本件実用新案登録に係る考案の構成要件(J)は、本件実用新案登録の出願前の技術水準と認められる、「防振ゴムブッシュとハウジングとの間で滑りが生じないように、ハウジング内にゴムブッシュを取り付ける」技術思想を、実施例に記載されたとおりの構成によって具体化したことを示す以上のものとは認められない。
したがって、本件考案の構成要件 (J)の「該ハウジング部の内周面及び該防振ゴムブッシュ外周面の何れか一方に軸直角方向に突出する滑り防止用の係合ピン」を、「該ハウジング部の内周面及び該防振ゴムブッシュ外周面の何れか一方と一体に成形された軸直角方向に突出する滑り防止用の係合凸部」を意味するものとは認められない。
(2-6)以上のとおりであるから、イ号の(j)「且つ該筒状ハウジング部(4)の内周面に凹部(13)を設ける一方、防振ゴムブッシュ外周面に軸直角方向に突出する滑り防止用の凸部(14)をバーリング加工により外筒(11)に一体形成してそれらを係合させるとともに」は、本件考案の構成要件(J)「且つ該ハウジング部の内周面及び該防振ゴムブッシュ外周面の何れか一方に軸直角方向に突出する滑り防止用の係合ピンを、他方に対応する係合穴を設けてそれらを係合させるとともに、」を充足しない。
(2-7)なお、本件判定請求人は、「係合ピン」をある部材に一体構成で設けたものをも「係合ピン」と呼ぶことは、一般的に行われているところのものであるとして、甲第5?11号証を引用している。
これら甲第5?11号証には、確かに、本体部材に棒状の部分を一体に形成して、この棒状の部分を「ピン」と称するものが記載されているが、これらに記載されたものは、本体部材に対して比較的長く棒状に延びた部分をピンと称しているものであり、平面或いは湾曲面にバーリング加工によりに一体形成した凸部を「ピン」と称しているものでもなく、また、「ピン」と称される部材が本体部分と一体に成形された凸部を当然に含むことを示すものでもないから、上記認定を覆す根拠とはならない。
【7】むすび
以上のとおりであるから、イ号は、本件実用新案登録の技術的範囲に属しない。
よって、結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2001-07-30 
出願番号 実願平4-67128 
審決分類 U 1 2・ 1- ZB (B61F)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 山内 康明  
特許庁審判長 蓑輪 安夫
特許庁審判官 ぬで島 慎二
粟津 憲一
登録日 1998-02-20 
登録番号 実用新案登録第2571077号(U2571077) 
考案の名称 鉄道車両の軸ハリ連結装置  
代理人 吉田 和夫  
代理人 鈴江 孝一  
代理人 鈴江 正二  

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