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審決分類 審判 補正却下不服   H01B
管理番号 1046979
審判番号 補正2000-50050  
総通号数 23 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2001-11-30 
種別 補正却下不服の審決 
審判請求日 2000-05-25 
確定日 2001-09-14 
事件の表示 平成 5年実用新案登録願第 59286号「電線測長装置」において、平成12年2月28日付けでした手続補正に対してされた補正の却下の決定に対する審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1.手続の経緯
本願は、平成5年11月4日の出願であって、平成12年2月28日付けで手続補正書が提出されたところ、平成12年4月7日付けで上記手続補正書による補正について補正の却下の決定がなされたものである。

2.原決定の理由
原決定の理由の概要は、次のとおりである。
「上記手続補正書による補正によって、請求項1及び考案の詳細な説明に、送りローラ及び測長ローラを強制的に同期して同一方向へ回転させる同期駆動手段を具備するという考案の構成に関する技術的事項が記載された。
しかし、願書に最初に添付した明細書又は図面には、送りローラ及び測長ローラを強制的に同期して同一方向へ回転させる手段として伝動ベルトを具備することが記載されているだけであって、その他の同期駆動手段については何ら記載されていないし、伝動ベルト以外の同期駆動手段を具備することが当業者にとって自明の事項とも認められない。」

3.当審の判断
願書に最初に添付した明細書には、以下の記載がある。

摘示3-1 : 「【請求項1】電線のストリップに端子を圧着して取付ける端子圧着装置において、電線の搬送路の本体に電線を挟持して搬送するように軸装された一対の測長ローラと、この一方の測長ローラに連結されたエンコーダと、上記両測長ローラの下流側の上記本体に電線を挟持して搬送するように軸装された一対の送りローラと、この送りローラ及び上記測長ローラに強制的に同期して同一方向へ回転するように連結された各伝動ベルトとを具備したことを特徴とする電線測長装置。」(【実用新案登録請求の範囲】)、

摘示3-2 : 「【産業上の利用分野】 本考案は、電線のストリップに端子を圧着して取付ける端子圧着装置における電線の長さを計測して切断する電線測長装置に関する。 【従来の技術】 既に提案されているこの種の端子圧着装置における電線の長さを計測して切断する電線測長装置は、図3に示されるように構成されている。 図3に示されるように、電線のストリップに端子を圧着して取付ける端子圧着装置における電線wの搬送路の本体(図示されず)には、上下一対の測長ローラ1,2が電線wを摩擦的に挟持するように回転可能に軸装されており、この一方の測長ローラ1には、電線wの長さを計測するロータリータイプのエンコーダ3が連結されている。又、上記両測長ローラ1,2の下流側の上記本体には、上下一対の送りローラ(フィードローラ)4、5が電線wを挟持して回転するように回転可能に軸装されており、この送りローラ4の各回転軸4aには、例えば、サーボモータによる駆動モータ6の出力軸6aが伝動ベルト7を介して連結されており、この駆動モータ6は上記エンコーダ3からの計測信号により停止するように電気的に連結されている。さらに、上記出力軸6aには、駆動歯車8が軸着されており、この駆動歯車8には、同形等大の伝動歯車9が噛み合っており、この伝動歯車9の回転軸9aには、送りローラ5の各回転軸5aが伝動ベルト10を介して連結されている。」(段落【0001】?【0003】)、

摘示3-3 : 「【考案が解決しようとする課題】 しかしながら、上述した電線測長装置は、エンコーダ3からのフィードバックにより、駆動モータ6が停止するから、両送りローラ4、5の回転を停止し、電線wの供給を終ることになるけれども、実際には、電線wが細くて軟弱ときは、両送りローラ4、5の回転が停止しても、エンコーダ3は慣性によって停止しないので、電線wを所定の測長した長さによりも長くなり、このため、上記駆動モータ6は余分に搬送した分だけ逆回転して電線wを押し戻す方向へ回転することになり、図3の鎖線で示されるように、電線wに弛みを生じて電線wを高精度に測長して切断することが困難である。 本考案は、上述した問題を解消するために、送りローラ及び上記測長ローラを強制的に同期して同一方向へ回転するように各伝動ベルトで連結して、駆動モータを逆回転して電線を押し戻す方向へ回転することなく、電線の弛みの発生を解消して電線を高精度に測長して切断するようにした電線測長装置を提供することを目的とする。」(段落【0006】?【0007】)、

摘示3-4 : 「【課題を解決するための手段】 本考案は、電線のストリップに端子を圧着して取付ける端子圧着装置において、電線の搬送路の本体に一対の測長ローラを電線を挟持して搬送するように軸装し、この一方の測長ローラにエンコーダを連結し、上記両測長ローラの下流側の上記本体に一対の送りローラを電線を挟持して搬送するように軸装し、この送りローラ及び上記測長ローラを強制的に上記送りローラと同期して同一方向へ回転するように各伝動ベルトで連結したものである。」(段落【0008】)

摘示3-5 : 「【作用】 本考案は、電線を所定の長さに測長して切断するとき、制御パネルからの信号により、駆動モータが駆動されると、各伝動ベルトを介して一対の送りローラで電線を挟持して搬送すると共に、一対の測長ローラも電線を強制的に上記送りローラと同期して同一方向へ回転し、この測長ローラに連結されたエンコーダで所定の長さに電線を測長して、このエンコーダからの計測信号により、駆動モータを停止すると同時に測長ローラと上記送りローラの回転を停止して電線に弛みの発生を解消すると共に上記上下一対のカッタ装置の各カッタで電線を切断するものである。」(段落【0009】)、

摘示3-6 : 「【実施例】 以下、本考案を図示のー実施例について説明する。 なお、本考案は、上述した具体例と同一構成部材には、同じ符号を付して説明する。 図1及び図2において、・・・。又、上記他方の測長ローラ2の回転軸2aには、従動輪20が軸着されており、・・・。さらに、上記両測長ローラ1、2の下流側の上記本体には、一対の送りローラ(フィードローラ)4、5が電線wを挟持して回転するように回転可能に軸装されており、この送りローラ4の回転軸4aには、例えば、サーボモータによる駆動モータ6の出力軸6aが伝動ベルト7を介して連結されており、この駆動モータ6は上記エンコーダ3からの計測信号により停止するように電気的に連結されている。さらに、上記出力軸6aには、駆動歯車8が軸着されており、この駆動歯車8には、同形等大の伝動歯車9が噛み合っており、この伝動歯車9の回転軸9aには、送りローラ5の各回転軸5aが伝動ベルト10を介して連結されている。・・・他方、上記回転軸4aの軸端には、例えば、シリンダ装置によるグリップ圧調整装置22が電線wの挟持状態を調整可能に設けられており、上記出力軸6aには、駆動輪23が軸装されており、この駆動輪23には、上記従動輪20が伝動ベルト24を介して連結されている。 以下、本考案の作用について説明する。 したがって、今、電線wを所定の長さに測長して切断するとき、図示されない制御パネルからの信号により、駆動モータ6が駆動されると、各伝動ベルト7、10、24を介して一対の送りローラ4、5及び上記両測長ローラ1、2で電線wを挟持して、電線wを強制的に同期して同一方向へ回転するから、この測長ローラ1に連結されたエンコーダ3が所定の長さに電線wを測長し、このエンコーダ3からの計測信号により、駆動モータ6が停止すると同時に測長ローラ1、2と上記送りローラ4、5の回転を停止する。」(段落【0010】?【0014】)

以上の記載からみると、本考案は、「電線wが細くて軟弱ときは、両送りローラ4、5の回転が停止しても、エンコーダ3は慣性によって停止しないので、・・・、図3の鎖線で示されるように、電線wに弛みを生じて電線wを高精度に測長して切断することが困難である。」という問題を解消するために、「送りローラ及び測長ローラを強制的に同期して同一方向へ回転するよう」な技術的手段として、「駆動モータ」を介して「送りローラ及び測長ローラ」を「各伝動ベルトで連結」する手段を採用して「電線の弛みの発生を解消」したものであって、願書に最初に添付した明細書においては、具体的には、駆動モータ6の回転が、同駆動モータ6の出力軸6a、伝動ベルト7を介して一方の送りローラ4に伝達され、同出力軸6aに軸着された駆動歯車8から、この駆動歯車8に噛み合った同形等大の伝動歯車9、伝動ベルト10を介して他方の送りローラ5に伝達されると共に、同出力軸6aに軸装された駆動輪23、伝動ベルト24、測長ローラ2の回転軸2aに軸着された従動輪20を介して測長ローラ2に伝達される構成のみが示されているだけであって、「送りローラ及び測長ローラを強制的に同期して同一方向へ回転するよう」な技術的手段として、上記以外の構成は記載も示唆もない。

他方、上記手続補正書による明細書に関する補正内容は、以下のとおりである。

摘示3-7 : 「【請求項1】電線のストリップに端子を圧着して取付ける端子圧着装置において、電線の搬送路の本体に、電線を挟持して搬送するように軸装された一対の測長ローラと、この一方の測長ローラに連結されたエンコーダと、上記両測長ローラの下流側の上記本体に、電線を挟持して搬送するように軸装された一対の送りローラと、この送りローラ及び上記測量ローラを強制的に同期して同一方向へ回転させる同期駆動手段とを具備したことを特徴とする電線測長装置。」(【実用新案登録請求の範囲】)、

摘示3-8 : 「本考案は、上述した問題を解決するために、測長時における電線の弛みの発生を解消して、電線を高精度に測長することのできる電線測長装置を提供することを目的とする。」(段落【0007】)、

摘示3-9 : 「【課題を解決するための手段】 本考案は、電線のストリップに端子を圧着して取付ける端子圧着装置において、電線の搬送路の本体に、電線を挟持して搬送するように軸装された一対の測長ローラと、この一方の測長ローラに連結されたエンコーダと、上記両測長ローラの下流側の上記本体に、電線を挟持して搬送するように軸装された一対の送りローラと、この送りローラ及び上記測量ローラを強制的に同期して同一方向へ回転させる同期駆動手段とを具備したことを特徴とする電線測長装置である。」(段落【0008】)、

摘示3-10 : 「【作用】 本考案によれば、測長ローラに連結されたエンコーダによって電線を測長しながら、送りローラによって電線が所定の長さだけ送られる。その場合、共に電線を挟持した送りローラと測長ローラとが、同期駆動手段によって強制的に同期して同一方向へ回転させられるので、従来のようにエンコーダのみが余分に回転することを防止できる。」(段落【0009】)、

摘示3-11 : 「他方、上記回転軸4aの軸端には、例えば、シリンダ装置によるグリップ圧調整装置22が電線wの挟持状態を調整可能に設けられている。また、上記出力軸6aには、駆動輪23が軸装されており、この駆動輪23には、上記従動輪20が伝動ベルト24を介して連結されている。 そして、上記の駆動モータ6、駆動歯車8、伝動歯車9および伝動ベルト7,10,24によって、送りローラ4,5及び測量ローラ1,2を強制的に同期して同一方向へ回転させる同期駆動手段が構成されている。」(段落【0013】)、

摘示3-12 : 「【考案の効果】 以上述べたように本考案によれば、従来のようにエンコーダのみが余分に回転することを防止できるので、測長時における電線の弛みの発生を解消して、電線を高精度に測長することができる。」(段落【0016】)、

以上の補正内容からみると、請求項1に係る考案に「送りローラ及び測量ローラ(平成12年11月21日付け審判請求理由補充書にて、「測量ローラ」は「測長ローラ」の誤記であることを主張。)を強制的に同期して同一方向へ回転させる同期駆動手段」を具備する電線測長装置である点を規定しようとするものである。
然るに、「同期駆動手段」なる機能的表現は、伝動ベルトのみならず、伝動チェーンといった機械的伝動手段を含むほか、さらには、電気的な制御機構を備えたステップモータによる同期駆動手段など、機械分野における伝動手段として必ずしも自明とは限らない手段までをも含み得る表現である。
ひるがえって、願書に最初に添付した明細書には、前述のとおりの「伝動ベルトで連結」した構成(「駆動モータ6の回転が、同駆動モータ6の出力軸6a、伝動ベルト7を介して一方の送りローラ4に伝達され、同出力軸6aに軸着された駆動歯車8から、この駆動歯車8に噛み合った同形等大の伝動歯車9、伝動ベルト10を介して他方の送りローラ5に伝達されると共に、同出力軸6aに軸装された駆動輪23、伝動ベルト24、測長ローラ2の回転軸2aに軸着された従動輪20を介して測長ローラ2に伝達される構成」)の伝動手段のみが開示されているだけであるから、上記の補正は、「伝動ベルトで連結」した構成を、願書に最初に添付した明細書に記載した事項の範囲内でない、「伝動ベルトで連結」した構成からみて自明でない手段をも含み得る「同期駆動手段」に変更するものである。
したがって、上記の補正は、考案の要旨を変更するものであるから、実用新案法第41条において準用する特許法第159条第1項において更に準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

4.むすび
したがって、上記理由によって却下した原決定は妥当である。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2001-06-15 
結審通知日 2001-06-26 
審決日 2001-07-10 
出願番号 実願平5-59286 
審決分類 U 1 7・ 13- Z (H01B)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 高木 正博  
特許庁審判長 松本 悟
特許庁審判官 板谷 一弘
綿谷 晶廣
考案の名称 電線測長装置  
代理人 佐藤 一雄  
代理人 黒瀬 雅志  
代理人 佐藤 政光  

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