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審決分類 |
審判 全部申し立て B22D |
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管理番号 | 1047010 |
異議申立番号 | 異議2000-74532 |
総通号数 | 23 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案決定公報 |
発行日 | 2001-11-30 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2000-12-19 |
確定日 | 2001-10-01 |
異議申立件数 | 2 |
事件の表示 | 登録第2605079号「溶融金属流量制御用スライドバルブのプレート煉瓦」の請求項1ないし4に係る実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第2605079号の請求項1ないし4に係る実用新案登録を維持する。 |
理由 |
1、本件考案 本件実用新案登録第2605079号は、平成5年1月28日に出願された実用新案登録出願に係り、平成12年4月14日に設定登録がされたものであって、本件実用新案登録に係る考案は、設定登録時の明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1?4に記載された次のとおりのものである。なお、請求項1については、分説して符号を付して記載した。 「【請求項1】 (a)溶鋼処理設備等の注出口部に設けられ溶融金属の流出量を制御するためのノズル孔を備えたプレート煉瓦を有し、 (b)その長手方向両端部のうちノズル孔に近い端部側を固定端、ノズル孔とは離間した稼働部となる端部側をプレート煉瓦固定のために押圧する押圧端とし、これら各端部の左右両側部に形成された傾斜面部により4面拘束し、 (c)その一つをスライドさせて前記ノズル孔の開度を調節することにより溶融金属の流出量を制御する溶融金属流量制御用スライドバルブにおいて、 (d)前記プレート煉瓦は、その長手方向両側面に所要長さの直線部を互いに平行に設け、この直線部に連なる長手方向一端の固定端側の側面を該直線部の延長線に対し角度αを持つ傾斜面部とし、他端の押圧端側の側面を前記傾斜面部の角度αより小なる角度βを持つ傾斜面部としたことを特徴とする溶融金属流量制御用スライドバルブのプレート煉瓦。 【請求項2】前記角度αを30°?50°の範囲内とし、前記角度βを5°?30°の範囲内とした請求項1記載の溶融金属流量制御用スライドバルブのプレート煉瓦。 【請求項3】前記直線部の長さは、ノズル孔の中心から固定端および押圧側端部までの長さL1 ,L2 に対し固定端側が1/2?1/3L1 ,押圧端側が1/2.5?1/3.5L2 とし、固定端の端面の長さは、プレート煉瓦の幅Wに対し1/3?1/4Wとした請求項1または2記載の溶融金属流量制御用スライドバルブのプレート煉瓦。 【請求項4】前記押圧側の端部側面をアール面とし、外周面に鉄バンドを囲繞した請求項1?3のいずれか1項記載の溶融金属流量制御用スライドバルブのプレート煉瓦。」 (以下、各請求項に係る考案を、順に、「本件考案1」、「本件考案2」、「本件考案3」、「本件考案4」という。) 2、実用新案登録異議申立の概要 実用新案登録異議申立人 本田匠政は、証拠として 甲第1号証:特開昭49-84924号公報 甲第2号証:実公昭52-31290号公報 参考資料1:実公平2-37491号公報 参考資料2:大鋼商事株式会社カタログ、TOYO-TAP、スライディングノズル取扱説明書 を提出して、本件考案1、2について、 また、実用新案登録異議申立人 黒崎播磨株式会社は、証拠として 甲第1号証:実公平2-37491号公報 甲第2号証:特開昭61-159260号公報 甲第3号証:実公昭52-31290号公報 甲第4号証:特開平2-41768号公報 甲第5号証:実公平5-289号公報 を提出して、本件考案1?4について、 それぞれ提出した証拠に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、それらの考案に係る実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものであると主張している。 3、引用例の記載事項 ここで、本田匠政による実用新案登録異議申立書に引用された甲第1、2号証を、以下、それぞれ引用例1、2とし、同じく参考資料1、2を引用例3、4とする。また、黒崎播磨株式会社による実用新案登録異議申立書に引用された甲第1?4号証を、以下、それぞれ引用例5?9とする。そして、各引用例には、次のような事項が記載されている。 (1)引用例1 スライデイングノズル用の上側または下側プレート煉瓦に関し、第4図には、長手方向両端部の左右両側部を傾斜面部とし、一端側の傾斜面の角度を、他端側の斜傾面の角度より小としたものが示されている。 (2)引用例2 「溶鋼出口を開閉するスライデイングノズル装置に使用される耐火物、主としてプレートレンガ等の所定金枠内固定手段であって、当該金枠周壁側にプレートレンガの板面と平行な方向に作用するボルト締め付け機構を配設し、当該締め付け機構に装着したボルト先端を・・・スライドブロックを介在させて該プレートレンガ側面に当接してなることを特徴とするプレートレンガ構成体」(実用新案登録請求の範囲)が記載され、その具体例が第2、3図に示されている。 (3)引用例3 「取鍋及びタンデイツシユ等の溶融金属容器から、溶融金属を注出する場合に使用される、溶融金属流量制御装置用耐火物プレート・・・の締付固定装置」(第1欄第21行?第2欄第2行)に関して記載され、締付固定されるプレートとして、第1図などに、長手方向両端部の左右両側部を傾斜面部としたものが記載されている。 従来例のプレート締付固定装置ものについて、「プレート固定金具の変形及びプレートの製造寸法のばらつきにより、テーパー面での面接触が困難で、・・・キレツ発生の原因となる。」(第3欄第1?4行)と記載されており、図1に示されたものについて、「固定金具12は、その周面の1点でケース13及びガイドピース11にそれぞれ接触し、かつその接触面12”でプレート周面のテーパ部に接触しておりプレート7のテーパ角度が異なっても、テーパ角度に追従して回動する構造としており常にプレート7を固定する部分は面接触するためプレートに応力集中が生じない機構としてある。」(第4欄第8?15行)と記載されている。 (4)引用例4 スライディングノズルの構造と、その取り扱いについて記載されている。 (5)引用例5 引用例3と同一の証拠である。 (6)引用例6 固定盤と摺動盤とからなる溶融金属排出装置に関し、「摺動盤は、上面が固定盤の下面に圧接されるべく構成されており、一端部の両側に該一端面に対して斜めに形成された角落部を有する耐火物製の摺動盤本体部と、該本体部が収容されるべく構成された凹部を有する金属製の摺動盤枠体と、該枠体の凹部内に摺動盤本体部を着脱自在に固定すべく、摺動盤本体部の前記一端に対向する側の端部が枠体の凹部の側壁に当接せしめされるように、摺動盤本体部の一対の角落部を前記対向端部側に押圧する押圧固定機構とからな」(特許請求の範囲)るものが記載されている。 (7)引用例7 引用例2と同一の証拠である。 (8)引用例8 「溶融金属の流量調整用スライドゲートバルブ」に関し、 第4図には、「内側フレーム58を・・・外側フレーム60に連結して構成されており、内側フレーム58の内部には貫通孔を有する耐火プレート62が設けられ」(第4頁右上欄第17?20行)たものであって、外側フレームの長手方向両端部の左右両側部に傾斜面部を形成し、一端側の傾斜面の角度を、他端側の斜傾面の角度より小とした摺動枠体48が示され、第2図には、摺動枠体48が、「摺動枠体ホルダーに装着されている」(第4頁右上欄第7?8行)状態が示されている。 (9)引用例9 「溶融金属流量制御用摺動式スライドバルブにおいて、・・・側周面を鋼製バンドで拘束したスライドバルブ用プレートれんが」(実用新案登録請求の範囲)について、「本考案によると・・・プレートれんが中央の長手方向のキレツの発生を防止でき・・・」(第4欄第8?11行)と記載されている。 4、当審の判断 (1)実用新案登録異議申立人 本田匠政の申立理由について、 本件考案1は、前記(b)にあるように傾斜面部によって4面拘束されるプレート煉瓦について、同じく(b)にあるように固定端をノズル孔に近いものとし、かつ、前記(d)にあるように押圧端側の傾斜面部の角度をノズル孔に近い固定端側のものより小となるようにして、固定端へのプレート煉瓦の食い込みを防止すると同時に稼働部での亀裂の発生を防止したものである(明細書の段落【0019】【0020】参照)。 これに対し、引用例1には、前記のように、長手方向両端部の左右両側部に傾斜面部を形成し、一端側の傾斜面の角度を、他端側の斜傾面の角度より小としたスライデイングノズル用のプレート煉瓦、すなわち、本件考案1の前記(a)、(c)及び(d)の一部の構成を有するプレート煉瓦が図示されているが、そのプレート煉瓦を本件考案1における前記(b)のように4面拘束することについては何ら記載されておらず、そのため前記(d)にあるような各傾斜面部と固定端・押圧端との関係についても何ら記載されていない。 そこで、引用例1に記載のものを本件考案1の(b)(d)の構成のようにすることが当業者にとってきわめて容易に想到できることかどうかさらに検討する。 引用例2、3には、プレート煉瓦の長手方向両端部の左右両側部に形成された傾斜面部を用いて拘束するものが記載されているが、引用例2のものは、押圧端のみ傾斜面部で拘束するもので4面拘束するものではなく、また、引用例3のものは、押圧端をノズル孔に近いものとしており、いずれも前記(b)のようにするものではない。しかもこれら引用例には、傾斜面部の角度と固定端へのプレート煉瓦の食い込みや稼働部での亀裂の発生との関係についても何ら記載されていない。さらに、引用例4にも、(b)(d)の構成を示唆する記載はない。 そうすると、引用例2?4には、引用例1に記載のものを本件考案1の(b)(d)の構成のようにすることについて何ら示唆するところはない。 そして、本件考案1はそのようにすることにより、前記のような顕著な効果を奏するものである。 したがって、本件考案1は、引用例1?4に記載のものに基づいて当業者がきわめて容易に考案できたものとすることはできない。 さらに、本件考案2は、本件考案1を引用した考案であるから、本件考案1と同様に本件考案2も、引用例1?4に記載のものから当業者が容易に考案をすることができたものとすることはできない。 (2)実用新案登録異議申立人 黒崎播磨株式会社の申立理由について 引用例5には、前記のように、長手方向両端部の左右両側部に傾斜面部を形成して4面拘束されるとともに、押圧端部を押圧する金具を、傾斜面の角度に追従して回動する構造としたプレート煉瓦、すなわち、本件考案1の前記(a)、(c)及び(b)の一部の構成を有するプレート煉瓦が記載されているが、押圧端をノズル孔に近いものとしており、固定端に近いものとする本件考案1とは逆の配置になっており、かつ、傾斜面の角度を長手方向両端部で異ならせることについては何ら記載されていない。 そこで、引用例5に記載のものを本件考案1の(b)(d)の構成のようにすることが当業者にとってきわめて容易に想到できることかどうかさらに検討する。 引用例5には、押圧端部を押圧する金具を、「テーパ角度が異なっても、テーパ角度に追従して回動する構造」(第4欄11?13行)とすることが記載されているが、その目的は、前記摘記した第3欄第1?4行に記載されているように、プレート固定金具の変形やプレートの製造寸法のばらつきがあっても、金具とテーパー面が面接触できるようにするためであり、傾斜面の角度を長手方向両端部で異ならせることを示唆するものではない。 引用例6、7には、プレート煉瓦の長手方向両端部の左右両側部に形成された傾斜面部を用いて拘束するものにおいて、固定端をノズル孔に近いものとすることが記載されているが、傾斜面部の角度と固定端へのプレート煉瓦の食い込みや稼働部での亀裂の発生との関係についても何ら記載されていない。 引用例8には、前記のように、長手方向両端部の左右両側部に傾斜面部を形成し、一端側の傾斜面の角度を、他端側の斜傾面の角度より小とした摺動枠体が記載されているが、摺動枠体はホルダーに装着されてその全周を拘束されるもので、本件考案1の(b)のように押圧端と固定端とによって拘束されるものでないから、摺動枠体の形状によってプレート煉瓦の形状が示唆されるものではない。 引用例9には、プレートれんがの側周面を鋼製バンドで拘束してキレツの発生を防止するものが記載されているが、本件考案1の(b)のような押圧端と固定端とによって4面拘束する場合のキレツ発生の防止については、何ら記載されていない。 そうすると、引用例5?9には、引用例5に記載のものを、前記(b)(d)の構成を合わせ持つようにすることを何ら示唆するものではない。 そして、本件考案1はそのようにすることにより、前記のような顕著な効果を奏するものである。 したがって、本件考案1は、引用例5?9に記載のものに基づいて当業者がきわめて容易に考案できたものとすることはできない。 さらに、本件考案2?4は、本件考案1あるいは本件考案1を引用する他の考案を引用した考案であるから、本件考案1と同様に本件考案2?4も、引用例5?9に記載のものに基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとすることはできない。 (3)まとめ 以上のように、いずれの実用新案登録異議申立人の主張も採用することはできず、かつ、プレート煉瓦において、前記(b)(d)の構成を合わせ持つようにすることは、引用例1?9に記載されておらず、かつそれを示唆するような記載もないから、両異議申立人の提出した引用例1?9を総合しても本件考案1?4を当業者がきわめて容易に考案できたものとすることはできない。 5、むすび 以上のとおりであるから、いずれの実用新案登録異議申立の理由及び証拠によっても、本件考案1?4に係る実用新案登録を取り消すことはできない。 また、他に本件考案1?4に係る実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2001-09-12 |
出願番号 | 実願平5-1940 |
審決分類 |
U
1
651・
121-
Y
(B22D)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 田中 則充 |
特許庁審判長 |
影山 秀一 |
特許庁審判官 |
雨宮 弘治 中村 朝幸 |
登録日 | 2000-04-14 |
登録番号 | 実用新案登録第2605079号(U2605079) |
権利者 |
品川白煉瓦株式会社 東京都千代田区九段北四丁目1番7号 |
考案の名称 | 溶融金属流量制御用スライドバルブのプレート煉瓦 |
代理人 | 堤 隆人 |
代理人 | 小堀 益 |