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審決分類 審判 全部申し立て   E06B
管理番号 1047012
異議申立番号 異議1999-70680  
総通号数 23 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2001-11-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-02-17 
確定日 2001-09-20 
異議申立件数
事件の表示 登録第2579985号「防水ル-バ-」の請求項1に係る実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 登録第2579985号の請求項1に係る実用新案登録を取り消す。
理由 1.手続の経緯
本件実用新案登録第2579985号に係る出願は、平成5年12月25日の出願であって、平成10年6月19日に実用新案登録の設定がなされ、その後飯塚紳一から実用新案登録異議の申立がなされ、取消理由が通知され、その指定期間内である平成13年3月27日に訂正請求がなされた後、訂正拒絶理由が通知され、それに対して平成13年6月23日付けで意見書が提出されたものである。
2.訂正の要旨
訂正事項a:実用新案登録明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1を、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的として以下のように訂正する。
「その幅方向のほぼ中心部で折曲げて断面く字状に構成された帯状の板体からなる複数の羽根板部材を縦方向に設置し、その羽根板部材の断面く字状の屋外側縁部には屋内方向に折返部を、断面く字状の折曲部の背部にその先端に屋外側に折返部を備えた突片部を、また屋内側縁部には屋外方向に折返部を備えてなる防水ルーバーにおいて、断面く字状の羽根板部材のく字状折曲角度を110°?130°に形成するとともに、その羽根板部材の断面く字状の屋外側縁部の折返部及び屋内側縁部の折返部を断面円弧状に構成してなることを特徴とする防水ルーバー。」

3.訂正の適否
(1)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項aに係る訂正は、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的とするものであり、しかもその訂正は、願書に添附した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、さらに実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)独立実用新案登録要件の判断
イ.訂正明細書の請求項1に係る考案
訂正明細書の請求項1に係る考案(以下、「本件訂正後考案」という。)は、訂正明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】その幅方向のほぼ中心部で折曲げて断面く字状に構成された帯状の板体からなる複数の羽根板部材を縦方向に設置し、その羽根板部材の断面く字状の屋外側縁部には屋内方向に折返部を、断面く字状の折曲部の背部にその先端に屋外側に折返部を備えた突片部を、また屋内側縁部には屋外方向に折返部を備えてなる防水ルーバーにおいて、断面く字状の羽根板部材のく字状折曲角度を110°?130°に形成するとともに、その羽根板部材の断面く字状の屋外側縁部の折返部及び屋内側縁部の折返部を断面円弧状に構成してなることを特徴とする防水ルーバー。」
ロ.引用刊行物記載の考案
これに対して、当審が平成13年4月10日付けで通知した訂正拒絶理由で引用した、実願平4-27282号(実開平5-87441号)のCD-ROM(異議申立人提出の甲第3号証)(以下、「刊行物1」という。)には、段落【0001】?【0005】及び第4,5図の記載を参照すると、従来例として、その幅方向のほぼ中心部で折曲げて断面く字状に構成された帯状の板体からなる複数の羽根板を縦方向に設置し、その羽根板の断面く字状の屋外側縁部には屋内方向に断面円弧状の折返部を、断面く字状の折曲部の背面にその先端に屋外側に折返部を備えた突片部を、また屋内側縁部には屋外方向に折返部を備えてなる竪型ガラリが記載されている。
同、1979 Sweet’s Catalog File 「LOUVERS」 p.16 (異議申立人提出の甲第1号証)(以下、「刊行物2」という。)には、特に、第16頁「VERTICAL LINE LOUVERS」の右下図「MODELS 4201,4202」PLAN VIEW を参照すると、その幅方向のほぼ中心部で折曲げて断面く字状に構成された帯状の板体からなる複数の羽根板部材を縦方向に設置し、断面く字状の羽根板部材のく字状折曲角度を90°以上の鈍角に形成した縦型ルーバーが記載されている。
ハ.対比・判断
本件訂正後考案と、刊行物1に記載された考案とを比較すると、刊行物1に記載された考案における「羽根板」及び「竪型ガラリ」はそれぞれ、訂正後考案の「羽根板部材」及び「防水ルーバー」に相当するから、両者は、その幅方向のほぼ中心部で折曲げて断面く字状に構成された帯状の板体からなる複数の羽根板部材を縦方向に設置し、その羽根板部材の断面く字状の屋外側縁部には屋内方向に折返部を、断面く字状の折曲部の背面にその先端に屋外側に折返部を備えた突片部を、また屋内側縁部には屋外方向に折返部を備えてなる防水ルーバーにおいて、その羽根板部材の断面く字状の屋外側縁部の折返部を断面円弧状に構成してなる防水ルーバーの点で一致し、下記の点で相違している。
a.訂正後考案では、屋内側縁部の折返部も断面円弧状に構成しているのに対し、刊行物1に記載された考案では、屋内側縁部の折返部は断面円弧状に構成されていない点。
b.断面く字状の羽根板部材のく字状折曲角度を、訂正後考案では、110°?130°に形成しているのに対し、刊行物1に記載された考案では、そのような限定がない点。
刊行物1に記載された考案において、屋外側縁部の折返部は断面円弧状に構成しており、上記相違点aにおける訂正後考案のように、屋内側縁部の折返部も断面円弧状に構成することは、当業者がきわめて容易に想到しうる程度のことにすぎない。
次に、刊行物2をみると、刊行物2には、断面く字状の羽根板部材のく字状折曲角度を90°以上の鈍角に形成した縦型ルーバーが記載されている。一方、訂正後考案において、断面く字状の羽根板部材のく字状折曲角度を110°?130°に限定し、それによって、防水ルーバーとしての機能を維持しつつ、その開口率を大幅に改善するという作用効果を奏するとしているが、防水機能を維持するためには、また、開口率にも、突片部及び屋外側縁部の長さも関係し、く字状折曲角度のみで上記作用効果を奏するとは認められず、かつ、特に限定した数値の臨界的意義も認められないから、刊行物2に記載された考案の縦型ルーバーの断面く字状の羽根板部材の鈍角のく字状折曲角度を、刊行物1に記載された断面く字状の羽根板部材のく字状折曲角度に採用することは、当業者が適宜なし得る程度のことであり、該鈍角の角度を、上記相違点bにおける訂正後考案のように110°?130°とすることは、設計的事項にすぎない。
なお、権利者は平成13年6月23日付け意見書で、刊行物2の「1979 Sweet’s Catalog File」は、実用新案法第3条第2項が適用される刊行物ではないと主張しているが、「Sweet’s Catalog File」は、建築・設備等の分野では、従来から引用文献として使用されている刊行物であって、上記の原本も、昭和54年7月16日に特許庁資料館に受入られている(付記すれば、「LOUVERS」は、10.35の項目にある。)から、上記主張は採用できない。また、同意見書で、屋外側縁部の折返部と屋内側縁部の折返部は、向きも形も違い、従って技術的意義が違うものであるのに、技術的意義について判断されていないから、相違点aについての認定及び判断が誤っていると主張しているが、訂正後考案及び刊行物1に記載された考案において、屋外側縁部の折返部及び屋内側縁部の折返部の向きは各々同じであり、断面円弧状の形についても、訂正後考案において、実用新案登録請求の範囲の請求項1には「屋外側縁部の折返部及び屋内側縁部の折返部を断面円弧状に構成してなる」とあるだけであるから、上記主張も採用できない。また、同意見書で、刊行物1には、断面く字状の羽根板部材のく字状折曲角度については何の技術的思想も有していないから、相違点bの認定が誤っていると主張しているが、刊行物1の従来例としての図面に、断面く字状の羽根板部材が記載されているが、く字状折曲角度については限定されていないとした相違点bの認定に誤りはなく、上記主張も採用できない。また、同意見書で、相違点bの判断において、数値の臨界的効果を認められないとしたことに対し、本件考案においては、開口率との関係で断面く字状の角度を基に開口率を改善することを課題とするのに対し、刊行物1にも刊行物2にも上記課題は無いから、数値限定に臨界的意義を要しないと主張しているが、上記したように、相違点bの判断として、「防水機能を維持するためには、また、開口率にも、突片部及び屋外側縁部の長さも関係し、く字状折曲角度のみで上記作用効果を奏するとは認められず、」とした上で、「かつ、特に限定した数値の臨界的意義も認められない」と判断しており、上記主張は採用できない。さらに、同意見書で、「本件考案では、1.側縁部(屋外側縁部と解される)の折返部を円弧状に構成すること、2.屋内側縁部の折返部を円弧状に構成すること、3.断面く字状折曲部の背面にその先端に屋外側に折返部を備えた突片部を備えてなること、4.断面く字状の角度を110°?130°の角度にすること、これら1.?4.が全体として機能的及び作用的に一体に関連し」ているから、各事項の単なる組み合わせ(寄せ集め)ではないと主張しているが、上記1.?4.の各事項がすべて関連して一機能及び一作用を奏するものではない(当初請求の範囲において、断面く字状の角度は、直角に比して大幅に鈍角となっていたし、3.の事項は存在すらしていなかったことからも明らかである。)から、上記主張も採用できない。
したがって、訂正後考案は、上記刊行物1及び2に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案することができたものであり、本件訂正後考案は、実用新案登録出願の際、独立して実用新案登録を受けることができないものである。

(3)訂正の適否のむすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成11年法律第41号)附則第15条の規定による改正後の特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第2項の規定により準用され、同附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項で準用する同第126条第3項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。

5.異議の申立てについての判断
(1)本件請求項1に係る考案
実用新案登録第2579985号の請求項1に係る考案(以下、「本件考案」という。)は、実用新案登録明細書の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】その幅方向のほぼ中心部で折曲げて断面く字状に構成された帯状の板体からなる複数の羽根板部材を縦方向に設置し、その羽根板部材の断面く字状の屋外側縁部には屋内方向に折返部を、また屋内側縁部には屋外方向に折返部を備えてなる防水ルーバーにおいて、断面く字状の羽根板部材のく字状折曲角度をほぼ110°?130°に形成するとともに、その羽根板部材の断面く字状の屋外側縁部の折返部及び屋内側縁部の折返部を断面円弧状に構成してなることを特徴とする防水ルーバー。」

(2)引用刊行物記載の考案
当審が先に取消理由通知において、刊行物1として引用した、実願平4-27282号(実開平5-87441号)のCD-ROM、及び、刊行物2として引用した、1979 Sweet’s Catalog File 「LOUVERS」 p.16には、各々、前記3.(2)ロ.に記載したとおりの考案が記載されている。

(3)対比・判断
本件考案と刊行物1に記載された考案とを比較すると、刊行物1に記載された考案における「羽根板」及び「竪型ガラリ」はそれぞれ、本件考案の「羽根板部材」及び「防水ルーバー」に相当するから、両者は、その幅方向のほぼ中心部で折曲げて断面く字状に構成された帯状の板体からなる複数の羽根板部材を縦方向に設置し、その羽根板部材の断面く字状の屋外側縁部には屋内方向に折返部を、また屋内側縁部には屋外方向に折返部を備えてなる防水ルーバーにおいて、その羽根板部材の断面く字状の屋外側縁部の折返部を断面円弧状に構成してなる防水ルーバーの点で一致し、下記の点で相違している。
a.本件考案では、屋内側縁部の折返部も断面円弧状に構成しているのに対し、刊行物1に記載された考案では、屋内側縁部の折返部は断面円弧状に構成されていない点。
b.断面く字状の羽根板部材のく字状折曲角度を、本件考案では、ほぼ110°?130°に形成しているのに対し、刊行物1に記載された考案では、そのような限定がない点。
刊行物1に記載された考案において、屋外側縁部の折返部を断面円弧状に構成しており、上記相違点aにおける本件考案のように、屋内側縁部の折返部も断面円弧状に構成することは、当業者がきわめて容易に想到しうる程度のことにすぎない。
次に、刊行物2をみると、刊行物2には、断面く字状の羽根板部材のく字状折曲角度を90°以上の鈍角に形成した縦型ルーバーが記載されており、この「縦型ルーバー」は請求項1に係る考案の「防水ルーバー」に相当する。一方、本件考案において、断面く字状の羽根板部材のく字状折曲角度をほぼ110°?130°に限定し、それによって、防水ルーバーとしての機能を維持しつつ、その開口率を大幅に改善するという作用効果を奏するとしているが、防水機能を維持するためには、また、開口率にも、屋外側縁部の長さ等も関係し、く字状折曲角度のみで上記作用効果を奏するとは認められず、かつ、特に限定した数値の臨界的意義も認められないから、刊行物2に記載された考案の縦型ルーバーの断面く字状の羽根板部材の鈍角のく字状折曲角度を、刊行物1に記載された断面く字状の羽根板部材のく字状折曲角度に採用することは、当業者が適宜なし得る程度のことであり、該鈍角の角度を、上記相違点bにおける本件考案のようにほぼ110°?130°とすることは、設計的事項にすぎない。

6.むすび
以上のとおりであるから、本件考案は、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。
したがって、本件考案についての実用新案登録は、拒絶の査定をしなければならない実用新案登録出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第7項の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第3条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
異議決定日 2001-07-18 
出願番号 実願平5-73984 
審決分類 U 1 651・ 121- ZB (E06B)
最終処分 取消    
前審関与審査官 五十幡 直子  
特許庁審判長 幸長 保次郎
特許庁審判官 鈴木 憲子
伊波 猛
登録日 1998-06-19 
登録番号 実用新案登録第2579985号(U2579985) 
権利者 三基ルーバ株式会社
東京都中央区八丁堀4丁目13番5号
考案の名称 防水ル-バ-  
代理人 加茂 裕邦  

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