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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認めない。無効とする(申立て全部成立) E06B
管理番号 1048646
審判番号 審判1998-35279  
総通号数 24 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2001-12-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 1998-06-19 
確定日 2001-10-29 
事件の表示 上記当事者間の登録第2568487号実用新案「チューブラ電動装置」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 実用新案登録第2568487号の請求項1ないし2に係る考案についての実用新案登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第一 手続の経緯
出願:平成4年9月25日(実願平4-72895号)
登録:平成10年1月16日(実用新案登録第2568487号)
無効審判請求:平成10年6月19日
答弁書(第1):平成10年9月17日
審尋:平成11年5月28日(平成11年6月11日発送)
回答書、証人尋問申請書:平成11年8月10日
答弁書(第2):平成11年10月27日
上申書(被請求人):平成11年12月7日
第1回口頭審理、証人尋問:平成11年12月21日
上申書(被請求人)、補正書:平成11年12月21日
証拠提出書(請求人):平成11年12月21日
第1訂正請求、答弁書(第3)、補正書:平成12年1月12日
弁駁書(第1)、意見書:平成12年5月1日
第2回口頭審理:平成12年7月10日
口頭審理陳述要領書(請求人)、同(その2)、補正書:平成12年7月10日
口頭審理陳述要領書(被請求人):平成12年7月10日
無効理由通知、書面審理通知:平成12年8月22日(平成12年8月30日発 送)
第2訂正請求、意見書:平成12年10月20日
弁駁書(第2):平成13年2月5日
答弁書(第4):平成13年5月7日
訂正拒絶理由通知:平成13年6月8日(平成13年6月22日発送)
意見書:平成13年8月15日

第二 審判請求人の主張及び提出した証拠方法
審判請求書において、審判請求人は、本件実用新案登録第2568487号の請求項1及び2に係る各考案は、甲第1号証?甲第6号証に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法3条2項の規定により、実用新案登録を受けることができないものであると主張している。そして、甲第1号証及び甲第2号証が公知であることを証明するために、平成11年8月10日に、内海豊、関永輝彦、金井勝及び山口福男の証人尋問を申請している。さらに、平成11年12月21日の第1回口頭審理において、補充の証拠(甲第7号証?甲第10号証)を提出している。
第1回訂正請求に対し、審判請求人は、訂正の要件を充足せず認められないと主張し、さらに甲第11号証?甲第19号証を提出し、本件実用新案登録第2568487号の請求項1及び2に係る各考案は、甲第11号証?甲第19号証に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法3条2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであると主張している。なお、第2回口頭審理において、甲第6B号証を提出している。
平成12年8月22日付け無効理由通知の後になされた第2回訂正請求に対する平成13年2月5日付け弁駁書(第2)において、同訂正請求は訂正の要件を充足せず認められないと主張し、補充資料1(特開平4-254687号公報)及び同2(米国特許第5105871号明細書)を提出している。

甲第1号証:審判請求人に係るパンフレット(「ソムフィ・オペレーター」)の 写し
甲第2号証:審判請求人に係るパンフレット(「SOMFY1982」)の写し
甲第3号証:審判請求人が販売するチューブラ電動装置の分解写真
甲第4号証:和栗明著「歯車の設計・製作とその耐久力」、発行日、昭和57年 3月20日第2版発行、発行所、株式会社養賢堂、183?185頁[歯車 の騒音]
甲第5号証:中田孝著「歯車とその検査」発行日、昭和40年6月30日第14 版発行、発行所、株式会社オーム社、237?243頁[歯車の騒音の測定]甲第6号証:甲第3号証写真で撮影されている歯車
甲第6B号証:ソムフィ・オペレータLS50シリーズ「543B」の1989 年2?5月、7?11月の売上伝票の写し
甲第7号証:塚本尚久著「動力伝達用プラスチック歯車の設計技術」、発行日、1987年3月30日1版1刷発行、発行所、技報堂出版株式会社、序、もくじ、 134?145頁[ナイロン歯車の騒音と振動]
甲第8号証:立川ブラインド工業株式会社の1989年4月度買掛金・未払金元 帳の写し
甲第9号証:ソムフィ・オペレータ543B(製造番号:8707M1)の「点 検&処理報告書」の写し
甲第10号証:審判請求人に係るパンフレット(「ソムフィ・アクセサリー」) の写し
甲第11号証:実願昭61-124155号(実開昭63-30648号)のマ イクロフィルム
甲第12号証:特開平3-244852号公報
甲第13号証:特開昭60-201146号公報
甲第14号証:特開平3-121335号公報
甲第15号証:特開平1-320362号公報
甲第16号証:米国特許第4443112号明細書
甲第17号証:米国特許第4099478号明細書
甲第18号証:米国特許第4080787号明細書
甲第19号証:米国特許第4317343号明細書

第三 被請求人の主張
当審での無効理由通知に対し、被請求人は、意見書とともに再度の訂正請求を提出した。その再度の訂正請求に対してなされた訂正拒絶理由通知に関する意見書において、被請求人は、概略、以下の主張を行っている。
引用例1では、電動機の回転数を減速装置(遊星歯車減速機構)を経て減速させるようにした点については開示しているが、本件考案の如く、電動機の駆動中に生ずる振動を遊星歯車減速機構を構成するプラネタリギヤにて良好に低減させるという技術思想については何等開示されていない。即ち、本件考案の如く、チューブラ電動装置の電動機と直接駆動結合する遊星歯車減速機構の第1段目のプラネタリギヤを合成樹脂で形成し、第1段目と最終段目との間のプラネタリギヤを、各段の出力に対応する機械的強度を備えた合成樹脂または金属材料で形成し、更に、最終段目のプラネタリギヤを金属材料で形成して前記遊星歯車減速機構を構成し、これにより、前記1段目の合成樹脂製のプラネタリギヤと、最終段目の金属製のプラネタリギヤと、第1段目と最終段目との間において介在する合成樹脂または金属製のプラネタリギヤとを用いることにより、円筒形のケースに伝播される電動機からの振動による共振現象を良好に抑制し、共振及び共鳴による騒音を低減させるようにした技術的思想は全く開示されてないし、また、示唆さえもされていない(平成13年8月15日付け意見書5頁27行?6頁12行)。
減速機構という機構が共通し、電動機と駆動結合する部位に樹脂製の歯車を用いるからといって、電動機から発生する振動音を当該遊星歯車減速機構によって効果的に吸収・緩和させて低騒音とし、かつ、円滑な駆動を可能とするという課題が生じ得ない引用例2によって、本件考案の進歩性を否定することは当を得ないことである(同9頁14?18行)。
遊星歯車機構を構成する太陽歯車、遊星円板、遊星歯車リング、キャリア、外殻内歯歯車をプラスチックまたは金属で形成する遊星歯車減速機構の記載があるからといって、円筒形のケース内に収容した電動機から発生する振動音を遊星歯車減速機構によって効果的に吸収・緩和させて低騒音とし、かつ、円滑な駆動を可能とするという課題が生じ得ない引用例3によって、本件考案の進歩性を否定することは当を得ないことである(同10頁4?9行)。
引用例4は、「高負荷、衝撃荷重が加わるところには、金属製の歯車が、低負荷で低騒音を要求される所にはプラスチック製の歯車を用いる」点が示されている。この引用例4には、負荷に応じて金属製、樹脂製の歯車を用いるという一般論が記載されているにすぎず、本件考案の円筒形のケース内に収容した電動機から発生する振動音を遊星歯車減速機構で如何に低減させるかを開示、示唆するものではない(同10頁10?15行)。
引用例1乃至引用例4をどのように組合せてみても、本件考案の要部である「電動機からの振動音を低減するために、遊星歯車減速機構の第1段目に合成樹脂製のプラネタリギヤを、最終段には金属製のプラネタリギヤを組合せてチューブラ電動装置の遊星歯車減速機構」の構成、及び、本件考案の最終段目の音はあえて大きくなっても、より共振しない高周波化した音となるようにし、それによって共振現象を抑制し、装置全体の共振及び共鳴に起因する騒音の発生を抑制し、チューブラ電動装置全体の騒音を低減するという作用効果については、これを開示または示唆するものが全くない(同10頁29行?11頁8行)。

第四 訂正請求の内容
一 訂正請求の要旨
本件訂正請求の要旨は、実用新案登録第2568487号考案の明細書を、同訂正請求書に添付された訂正明細書のとおり、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的として、訂正を求めるものである。

二 訂正事項
実用新案登録請求の範囲の
「【請求項1】円筒形のケース内に、電動機と該電動機の回転力を減速させる遊星歯車減速機構とを収容し、前記ケースの外側には遊星歯車減速機構の出力端と駆動結合した巻取りパイプを回転自在に外嵌してなるチューブラ電動装置において、前記遊星歯車減速機構を、電動機との駆動結合部及び各段においてその出力に対応する機械的強度を備えた合成樹脂材料、あるいは、金属材料により形成したプラネタリギヤを所要のギヤ比に配設して構成したことを特徴とするチューブラ電動装置。
【請求項2】前記プラネタリギヤは、電動機と駆動結合する遊星歯車減速機構の第1段目を軟質の合成樹脂材料にて形成し、遊星歯車減速機構の第2段目以降は硬質の合成樹脂材料、あるいは、金属材料にて形成し、前記軟質及び硬質のプラネタリギヤを所定数配設して遊星歯車減速機構を構成したことを特徴とする請求項1記載のチューブラ電動装置。」を、
「【請求項1】円筒形のケース内に、電動機と該電動機の回転力を減速させる遊星歯車減速機構とを収容し、前記ケースの外側には遊星歯車減速機構の出力端と駆動結合した巻取りパイプを回転自在に外嵌してなるチューブラ電動装置において、前記遊星歯車減速機構は、前記電動機と駆動可能に結合する第1段目のプラネタリギヤを合成樹脂材料で形成し、第1段目と最終段目との間のプラネタリギヤを各段においてその出力に対応する機械的強度を備えた合成樹脂材料または金属材料で所要のギヤ比に形成し、前記巻取りパイプを回転させる駆動軸と駆動可能に結合する前記遊星歯車減速機構の最終段目のプラネタリギヤを金属材料で形成したことを特徴とするチューブラ電動装置。」
と訂正する。

第五 訂正の当否について
一 訂正後の実用新案登録請求の範囲
上記訂正明細書の実用新案登録請求の範囲の記載は、以下のとおりである。
「【請求項1】円筒形のケース内に、電動機と該電動機の回転力を減速させる遊星歯車減速機構とを収容し、前記ケースの外側には遊星歯車減速機構の出力端と駆動結合した巻取りパイプを回転自在に外嵌してなるチューブラ電動装置において、前記遊星歯車減速機構は、前記電動機と駆動可能に結合する第1段目のプラネタリギヤを合成樹脂材料で形成し、第1段目と最終段目との間のプラネタリギヤを各段においてその出力に対応する機械的強度を備えた合成樹脂材料または金属材料で所要のギヤ比に形成し、前記巻取りパイプを回転させる駆動軸と駆動可能に結合する前記遊星歯車減速機構の最終段目のプラネタリギヤを金属材料で形成したことを特徴とするチューブラ電動装置。」

二 引用刊行物記載の事項
1 本件登録実用新案の出願前に公知の刊行物である、特開昭60-47189号公報(以下、「引用例1」と言う)、実願昭59-76367号(実開昭60-187286号)のマイクロフィルム(以下、「引用例2」と言う)、特開昭60-201146号公報(平成12年5月1日付け弁駁書で提出した甲第13号証、以下、「引用例3」と言う)、及び特開平3-295851号公報(以下、「引用例4」と言う)には、それぞれ以下の考案が記載されているものと認められる。

2 引用例1(特開昭60-47189号公報)には、以下(1)?(7)の記載があり、
(1) 「筒状体の巻取り軸を設け、この巻取り軸の一方の開口端には外方で外端部を固定した支持軸の内端側を挿通し、この支持軸上に内端側より正・逆転モータと、このモータ出力を減速する遊星歯車減速機構を配設し、この遊星歯車減速機構の出力で巻取り軸を駆動し、前記支持軸上の外端側には巻取り軸に連絡された手動巻取り用プーリを配設したスクリーン巻取り装置。」(同公報1頁左下欄5?13行、特許請求の範囲)、
(2) 「(ニ)発明の要約
この発明は、巻取り用のモータとその減速機構を、この巻取り軸の内部空間に収納することに基づいて巻取り軸片端部の外部設置をなくし、これにより巻取り軸の巻取り面を延長して設置スペースの有効利用を図ったスクリーン巻取り装置であることを特徴とする。
(ホ)発明の効果
そしてこの発明によれば、筒状体の巻取り軸を使用し、この巻取り軸の内部空間に、支持軸を介して正・逆転モータおよび遊星歯車減速機構の各駆動機構を内設してあるため、巻取り軸の片端部外方には駆動機構を要せず、その分だけ巻取り軸を延長できることになり、現状の巻取り装置に比べスクリーンの巻取り幅を十分に長く取れ、設置スペース全体を効率よく使用できる。
なお、通常はモータの駆動操作によりスクリーンを自動的に巻取って収納し、また巻戻して展開使用するが、停電時等においては手動巻取り用プーリの手動操作により適宜スクリーンを巻取りおよび展開操作する。また、モータの出力を減速する減速機構にあっては、小型で高出力が得られる遊星歯車減速機構を用いてあるため、巻取り軸の中空内部への配設に適し、かつ巻取り装置をコンパクトに形成できる。」(同1頁右下欄18行?2頁右上欄2行)、
(3) 「図面はスクリーン巻取り装置の例として、日除け、光除けを行なうロールブラインドの巻取り装置を示し、第1図において、このロールブラインドの巻取り装置1はブラインド(図外)を装備した巻取り軸2と、その駆動部3と、減速機構部4と、第1セルフロック部5と、第2セルフロック部6と、手動巻取り部7と、ブラインドの位置決め機構部8とから構成される。
上述の巻取り軸2は、筒状体に形成され、この中空内部に当該巻取り軸2を駆動制御する駆動機構が内装されるものであって、両端部にはこの軸2を壁面に取付けるための取付け部材9、10をそれぞれ備えている。
・・・・・
一方この固定ケース19の内端面中央部には長尺筒体に形成された支持軸21の外端部が内嵌固定され、かつ固定ピン20aにて抜止めされ、その内端側が巻取り軸2の内方に同芯して挿入されて巻取り軸2の内周面に支持環22を介して軸受け23で軸支されている。そして、この固定された支持軸21上に巻取り軸2に対する各々の後述する駆動機構が装備される。」(同2頁右上欄6行?右下欄3行)、
(4) 「前述の駆動部3は、たとえはアウタロータタイプの正・逆転モータ24により構成され、この正・逆転モータ24は、支持軸21の内端部の軸上に固定されたステータ25の外周(注:一文字不鮮明)をアウタロータ26が回動すべくロータ26の両端部が軸受け27、27を介して支持軸21上に軸支される。また、支持軸21の内端側にはこのモータのコンデンサCが螺着接続されている。そして、支持軸21の中空内部にはこの軸21の外端部側より内方のモータ位置およびコンデンサ位置まで挿通されたモータ配線用のリード線28が接続されてこの正・逆転モータ24はON、OFF制御される。これにより、アウタロータ26の回動、停止操作が行なわれ、このアウタロータ26の出力は後述する減速機構部に伝導されて巻取り軸2が回動される。」(同2頁右下欄4?19行)、
(5) 「上述の減速機構部4は、小型で高出力が得られる第1?第4段の遊星歯車減速機構29、30、31、32を支持軸21上に連設して構成するものであり、第1段目29は、上述のアウタロータ26の外端側に一体に連結されて回転する第1サンギャ33と、これと噛合する第1プラネタリギャ34・・・と、第1?第3段目の各プラネタリギャ34、35、36・・・と共通して噛合する第1インターナルギャ37と、第1プラネタリギャ34・・・の公転出力を第2段目30に伝導する第1キャリア38とから構成される。
この第1キャリア38の外端部には第2サンギャとしての軸を突設しており、この第2サンギャ兼用の第1キャリア38を介して第2段目30に伝導される。このようにして、第2?第4段目の遊星歯車減速機構3O、31、32は、同様なギャ構成にてモータ出力が第4段目32に伝導され、第4段目32にあっては、所定の回転力に減速され、巻取り軸2を一定速度で回動させる。この場合、第4段目32は第4キャリア39の軸端部の周面が六角形成され、後述する第2セルフロック部の第5キャリアに嵌合固定されて回り止めされている。そのため、第4プラネタリギャ40は自転のみを許容した状態となり、この第4段目32に対応する第2インターナルギャ41を回動し、このギャ41の回動に基づいて当該ギャ41と一体の巻取り軸2が回動される。なお、上述の第1インターナルギャ37は、巻取り軸2の内周面に一体に嵌着されている。」(同2頁右下欄20行?3頁右上欄8行)、
(6) 「このように構成された口ールブラインドの巻取り装置は、正・逆転モータ24の正転、または逆転操作によりモータ出力が第1?第4遊星歯車減速機構29?32を介して所定の回転速度に減速され、その回転力が巻取り軸2に伝導され、巻取り軸2は所定の回転速度でブラインドを巻取り、または展開して所定の設定位置に達すると、位置決め機構部8が作動してモータ24の回転を停止し、ブラインドの巻取りまたは展開位置を自動的に固定してそのブラインドの昇降操作は完了する。」(同6頁右上欄3?12行)、
(7) 第1図、
これら(1)?(7)の記載によると、
「モータと該モータの回転力を減速させる遊星歯車減速機構とを収容し、外側には遊星歯車減速機構の出力端と駆動結合した巻取り軸を回転自在に外嵌してなるスクリーン巻取り装置において、前記遊星歯車減速機構は、前記モータと駆動可能に結合する第1段目のプラネタリギヤと最終段目との間のプラネタリギヤを各段においてその出力に対応する機械的強度を備えた材料で所要のギヤ比に形成し、前記巻取り軸を回転させるスクリーン巻取り装置」
が開示されているものと認める。

3 引用例2(実願昭59-76367号[実開昭60-187286号]のマイクロフィルム)には、以下(1)?(5)の記載があり、
(1) 「『従来技術の問題点』
そして、オートドアは一般に通常の生活環境で使用されるものであるため、それより生じる騒音をできるだけ低く抑える必要があるが、従来のオートドア用減速装置では、噛み合わせる歯車を金属同志とするか、又はせいぜい一方を樹脂製とし、他方を金属製としていたので騒音をある程度までしか抑制することができず、更に低騒音化が望まれていた。
上記のように従来噛み合わせる減速歯車の少なくとも一方を金属製にしていた理由は、歯車の強度及び摩耗を考慮したものである。そのため特にモータの出力軸に取り付ける歯車は出力軸に直接歯切りを施し、合成樹脂製の歯車と噛み合わせるようにしているが、オートドアは前記の如く生活環境中で使用されるものであるため、極めて高度の安全性に対する配慮がなされており、例えばドアの開閉時には加速度,減速度が一定以上にならないように緩始動.緩停止の制御がなされており、減速機に作用する負荷は実際には非常に小さい。そのため他の負荷の大きい機械と同様の強度をオートドア用の減速機に求める必要はない。
従って本考案は上記オートドアにおける特殊性に鑑み、その騒音防止を図るために、従来の減速機における『噛み合いを保つ一対の歯車のうち少なくとも1個は金属でなければならない』とする常識を打破したものである。」(同明細書2頁6行?3頁12行)、
(2) 「『考案の構成』
従って本考案における主たる構成は、ガイドレールに案内されて走行するオートドアをベルトを介してモータにより駆動するに際し、モータの回転数を減速してベルト駆動用プーリに伝達するための減速機において、噛み合いを保つ少なくとも1対の歯車の両方を合成樹脂により構成した点である。
上記構成要素中の歯車の材質として使用しうるものは、所謂エンジニアリングプラスチックスと称される一連の合成樹脂であり、例えばデルリン、ジュラコン、ナイロン6-6、ナイロン6、ナイロン12(以上商品名)等であり、同材質の歯車を噛み合わせても、異材質の歯車を噛み合わせてもよい。」(同3頁13行?4頁7行)、
(3) 「第1図においてモータ15は第4図に示したフレーム16に取り付けたケーシング17に固定され、その出力軸18にデルリン(商標)よりなる小径の駆動歯車19が固着されている。20は上記駆動歯車19と噛み合う大径の第1の歯車で、同じくデルリンにより構成され、ケーシング17に回転自在に軸支された中間軸21に同軸に固着されている。中間軸21はその外周に第2の歯車22が形成されている。
・・・・・
前記中間軸21と平行に設けられたプーリ取付軸25には、前記第1の歯車20と平行の第3の歯車26がピン27によって固着されている。この第3の歯車26の歯形は図示の如く第2の歯車22と噛み合い得るように、第2の歯車22の歯形と同一に成形されている。
・・・・・
従ってモータ15の回転は出力軸18から駆動歯車19に伝達され、更に駆動歯車19と噛み合う大径の歯車20に減速されて伝達され、歯車20の回転はこれと一体状に嵌合する歯車22を外周に形成した中間軸21に伝達される。中間軸21の回転は更に第3の歯車26に減速して伝達され、この第3の歯車26を固定したプーリ取付軸25と共に、Vプーリ28がモータ15の回転数よりもはるかに減速されて回転し、第4図に示す如くVプーリ28に巻きかけたVベルト29が走行することにより、このVベルト29に固定されレール30に沿って走行するオートドア31がレール30に沿って走行する。」(同4頁16行?6頁15行)、
(4) 「『考案の効果』
本考案は以上述べた如く、ガイドレールに案内されて走行するオートドアをベルトを介してモータにより駆動するに際し、モータの回転数を減速してベルト駆動用プーリに伝達するための減速機において、噛み合いを保つ少なくとも1対の歯車の両方を合成樹脂により構成したことを特徴とするオートドア用減速装置であるから、従来のオートドア用減速装置のように駆動歯車を金属(鉄)とし、第1歯車をデルリンで構成した場合と較べて騒音レベルが著しく低下した。実験値の一例を挙げると、従来の金属の駆動歯車と合成樹脂の第1の歯車の噛み合わせの場合、71dBの音圧レベルであったものが、デルリン-デルリンの歯車の噛み合わせに係る本考案装置の場合には62dBに音圧レベルが低下した。これは特に高速回転する駆動歯車を合成樹脂製となした効果が著しいものと考えられるが、このような駆動歯車は従来、モータの出力軸に直接歯切りしていたのでこれが摩耗した場合はモータごと取り換えていたのに対して、本考案では安価な合成樹脂製の歯車を採用したので、簡単に取り換えることができ、高価なモータを半永久的に使用しうるという副次的効果もある。」(同6頁欄16行?7頁19行)、
(5) 第1?4図、
これら(1)?(5)の記載によると、
「ケーシング内に、モータと該モータの回転力を減速させる歯車減速機構とを収容し、前記ケーシングの外側には歯車減速機構の出力端と駆動結合したVプーリを回転自在に外嵌してなるオートドア用減速装置において、前記歯車減速機構は、前記モータと駆動可能に結合する第1段目の歯車を合成樹脂材料で形成し、歯車を各段においてその出力に対応する機械的強度を備えた合成樹脂材料または金属材料で所要のギヤ比に形成し、前記Vプーリを回転させる取付軸と駆動可能に結合する前記歯車減速機構の最終段目の歯車を金属材料で形成したオートドア用減速装置」
が開示されているものと認める。

4 引用例3(特開昭60-201146号公報)には、
「(1) 太陽歯車1と、これに噛合する適数個の遊星歯車2と、これに噛合する外殻内歯歯車3と、遊星歯車2を遊星軸5によって軸支するキヤリヤ4とよりなる遊星歯車装置に於て、・・・・
(4) 大陽歯車1、遊星円板6、遊星歯車リング7、キヤリヤ4、外殻内歯歯車がプラスチック製である特許請求の範囲(1)項記載の遊星歯車装置。
(5) 太陽歯車1、遊星歯車2、外殻内歯歯車3、キャリヤ4が金属製である特許請求の範囲第(1)項記載の遊星歯車装置」(同公報1頁左下欄5行?2頁左上欄2行、特許請求の範囲)、
の記載があり、これらによると、
「遊星歯車機構を構成する遊星歯車をプラスチックで形成したり、金属で形成したりする点」が開示されているものと認める。

5 引用例4(特開平3-295851号公報)には、
「【従来の技術】
現在、歯車の素材としてはクロムモリブデン鋼、鋳鉄、ステンレス鋼等の金属及びプラスチックが各々の特性を生かして使用されている。
一般に、高負荷、衝撃荷重が加わる所には金属製の歯車が、低負荷で低騒音を要求される所にはプラスチック製の歯車が用いられている。
その他に、焼結金属を素材として含油させ、自己潤滑性を生かした歯車も一部使用されている。
【発明が解決しようとする課題】
金属製歯車は強度が大きく、衝撃荷重に対しても信頼性がある反面、比重が大きくて慣性力を増大させている。また、耐食性の面でも充分とは言えない。
プラスチック製歯車は軽量(鋼の約1/7)で低騒音が期待できるが、強度が小さく(鋼の約1/7)、また、熱膨張率が大きいので使用環境の制約が大きい。」(同公報1頁左下欄17行?右下欄14行)、
の記載があり、これらによると、
「歯車の素材として金属及びプラスチックが各々の特性を生かして使用されている点」、
「高負荷、衝撃荷重が加わる所には金属製の歯車が、低負荷で低騒音を要求される所にはプラスチック製の歯車が用いられている点」、
「金属製歯車は強度が大きく、衝撃荷重に対しても信頼性がある点」、
「プラスチック製歯車は軽量で低騒音が期待できるが、強度が小さい点」
が開示されているものと認める。

三 当審での検討
1 本件訂正後の請求項1に係る考案と引用例1に記載された考案との対比
本件訂正後の請求項1に係る考案と引用例1に記載された考案とを対比すると、本件訂正後の請求項1に係る考案における、「電動機」、「巻取りパイプ」及び「チューブラ電動装置」は、それぞれ、引用例1に記載された考案における、「モータ」、「巻取り軸」及び「スクリーン巻取り装置」に対応し、両者は次の点で一致する。
「電動機と該電動機の回転力を減速させる遊星歯車減速機構とを収容し、外側には遊星歯車減速機構の出力端と駆動結合した巻取りパイプを回転自在に外嵌してなるチューブラ電動装置において、前記遊星歯車減速機構は、前記電動機と駆動可能に結合する第1段目のプラネタリギヤと最終段目との間のプラネタリギヤを各段においてその出力に対応する機械的強度を備えた材料で所要のギヤ比に形成し、前記巻取りパイプを回転させるチューブラ電動装置」
そして、両者は、下記の点で相違している。
相違点1
本件訂正後の請求項1に係る考案においては、電動機と遊星歯車減速機構を円筒形のケース内に収容し、ケースの外側に巻取りパイプを外嵌しているのに対し、引用例1に記載された考案においては、このような構成を有しない点。
相違点2
遊星歯車減速機構のプラネタリギヤについて、本件訂正後の請求項1に係る考案においては、第1段目のプラネタリギヤを合成樹脂材料で形成し、第1段目と最終段目との間のプラネタリギヤを合成樹脂材料または金属材料で形成し、最終段目のプラネタリギヤを金属材料で形成しているのに対し、引用例1に記載された考案においては、このような材料についての明示がない点。

2 相違点についての検討
(1) 相違点1について
引用例1に記載された考案においては、「駆動部3は、たとえはアウタロータタイプの正・逆転モータ24により構成され、この正・逆転モータ24は、支持軸21の内端部の軸上に固定されたステータ25の外周(注:一文字不鮮明)をアウタロータ26が回動すべくロータ26の両端部が軸受け27、27を介して支持軸21上に軸支される。・・・このアウタロータ26の出力は後述する減速機構部に伝導されて巻取り軸2が回動される。」(同2頁右下欄4?19行)との記載にもあるように、モータ(電動機)と遊星歯車減速機構を巻取り軸(巻取りパイプ)の内部に収容しているものの、その回転する部材が「アウタロータ26」であることから、中心部に配置した「支持軸21」に「ステータ25」等を取付ける構造が開示されている。
これに対し、本件訂正後の請求項1に係る考案におけるように、電動機の「回転子軸a」を中心部に配置する構造を用いれば、、「コイルc」や「固定子鉄心d」を外周部に配置する必要があり、そのためには、それら「コイルc」、「固定子鉄心d」を外周部に支持するための何らかの構成(例えば、外周部に支持するための円筒形のケース等)を採用しなければならないことになる。
結局、相違点1におけるような、電動機と遊星歯車減速機構を円筒形のケース内に収容し、ケースの外側に巻取りパイプを外嵌しているような構成は、その駆動部における電動機の構成により、必要に応じて適宜選択し得る設計的事項に過ぎず、このようなことは当業者であれば、格別の困難性を伴うことなく、きわめて容易になし得た程度のことである。
(2) 相違点2について
引用例2において、遊星歯車ではなく平歯車を使用した減速機構ではあるが、「ケーシング内に、モータと該モータの回転力を減速させる歯車減速機構とを収容し、前記ケーシングの外側には歯車減速機構の出力端と駆動結合したVプーリを回転自在に外嵌してなるオートドア用減速装置において、前記歯車減速機構は、前記モータと駆動可能に結合する第1段目の歯車を合成樹脂材料で形成し、歯車を各段においてその出力に対応する機械的強度を備えた合成樹脂材料または金属材料で所要のギヤ比に形成し、前記Vプーリを回転させる取付軸と駆動可能に結合する前記歯車減速機構の最終段目の歯車を金属材料で形成したオートドア用減速装置」が公知の技術手段として開示されている。
又、引用例3において、「遊星歯車機構を構成する遊星歯車をプラスチックで形成したり、金属で形成したりする点」が開示され、さらに引用例4において、「歯車の素材として金属及びプラスチックが各々の特性を生かして使用されている点」、「高負荷、衝撃荷重が加わる所には金属製の歯車が、低負荷で低騒音を要求される所にはプラスチック製の歯車が用いられている点」、「金属製歯車は強度が大きく、衝撃荷重に対しても信頼性がある点」、及び「プラスチック製歯車は軽量で低騒音が期待できるが、強度が小さい点」が開示されている。
そして、引用例1はスクリーン巻取り装置に関するものであり、本件訂正後の請求項1に係る考案と同じ技術分野に属するものであり、引用例2?4は、本件訂正後の請求項1に係る考案や引用例1に係るものとは直接の技術分野は異にはするものの、歯車等を使用した伝動装置に関わるものであり、技術上の関連性を有するものである。
してみると、引用例1におけるような、スクリーン巻取り装置(チューブラ電動装置)において、その遊星歯車減速機構のプラネタリギヤについて、第1段目のプラネタリギヤを合成樹脂材料で形成し、第1段目と最終段目との間のプラネタリギヤを合成樹脂材料または金属材料で形成し、最終段目のプラネタリギヤを金属材料で形成するようなことは、引用例2において、モータと駆動可能に結合する第1段目の歯車を合成樹脂材料で形成し、歯車を各段においてその出力に対応する機械的強度を備えた合成樹脂材料または金属材料で所要のギヤ比に形成し、最終段目の歯車を金属材料で形成した歯車減速機構が開示されていること、そして引用例3において「遊星歯車機構を構成する遊星歯車をプラスチックで形成したり、金属で形成したりする点」が、引用例4において、「歯車の素材として金属及びプラスチックが各々の特性を生かして使用されている点」、「高負荷、衝撃荷重が加わる所には金属製の歯車が、低負荷で低騒音を要求される所にはプラスチック製の歯車が用いられている点」等の技術事項が開示されていること、さらに引用例1におけるスクリーン巻取り装置(チューブラ電動装置)に引用例2?4に開示された技術事項を適用することを特に阻害する要因もないことを考慮すると、当業者であれば、格別の困難性を伴うことなく、きわめて容易になし得た程度のことである。
(3) まとめ
全体として、本件訂正後の請求項1に係る考案によってもたらされる効果も、引用例1?4に記載されたそれぞれのものから、当業者であれば当然に予測することができる程度のものであって、格別なものとは言えない。
したがって、本件訂正後の請求項1に係る考案は、引用例1?4に記載されたそれぞれのものに基いて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法3条2項の規定により実用新案登録を受けることができないものである。

四 結び
以上によると、本件訂正後の請求項1に係る考案は、実用新案法3条2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであり、実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができないものである。
したがって、本件訂正は、平成6年法律116号附則10条によりなお従前の例によるとされ、平成5年法律26号附則4条2項により読み替える旧実用新案法40条2項の読み替え後の同条5項の規定により準用する旧実用新案法39条3項の規定に適合しないので、認められない。

第六 無効理由について
一 本件考案
本件実用新案登録第2568487号の請求項1及び請求項2に係る考案は、明細書及び図面の記載から、その実用新案登録請求の範囲の請求項1及び請求項2に記載されたとおりの次のものと認める。
「【請求項1】円筒形のケース内に、電動機と該電動機の回転力を減速させる遊星歯車減速機構とを収容し、前記ケースの外側には遊星歯車減速機構の出力端と駆動結合した巻取りパイプを回転自在に外嵌してなるチューブラ電動装置において、前記遊星歯車減速機構を、電動機との駆動結合部及び各段においてその出力に対応する機械的強度を備えた合成樹脂材料、あるいは、金属材料により形成したプラネタリギヤを所要のギヤ比に配設して構成したことを特徴とするチューブラ電動装置。
【請求項2】前記プラネタリギヤは、電動機と駆動結合する遊星歯車減速機構の第1段目を軟質の合成樹脂材料にて形成し、遊星歯車減速機構の第2段目以降は硬質の合成樹脂材料、あるいは、金属材料にて形成し、前記軟質及び硬質のプラネタリギヤを所定数配設して遊星歯車減速機構を構成したことを特徴とする請求項1記載のチューブラ電動装置。」

二 引用刊行物記載の事項
1 本件登録実用新案の出願前に公知の刊行物である、引用例1(特開昭60-47189号公報)、引用例2(実願昭59-76367号[実開昭60-187286号]のマイクロフィルム)、引用例3(特開昭60-201146号公報)、及び引用例4(特開平3-295851号公報)には、それぞれ以下の考案が記載されているものと認められる。

2 引用例1(特開昭60-47189号公報)には、
「モータと該モータの回転力を減速させる遊星歯車減速機構とを収容し、外側には遊星歯車減速機構の出力端と駆動結合した巻取り軸を回転自在に外嵌してなるスクリーン巻取り装置において、前記遊星歯車減速機構を、モータとの駆動結合部及び各段においてその出力に対応する機械的強度を備えたプラネタリギヤを所要のギヤ比に配設して構成したスクリーン巻取り装置」
が開示されているものと認める。

3 引用例2(実願昭59-76367号[実開昭60-187286号]のマイクロフィルム)には、
「ケーシング内に、モータと該モータの回転力を減速させる歯車減速機構とを収容し、前記ケーシングの外側には歯車減速機構の出力端と駆動結合したVプーリを回転自在に外嵌してなるオートドア用減速装置において、前記歯車減速機構を、モータとの駆動結合部及び各段においてその出力に対応する機械的強度を備えた合成樹脂材料、あるいは、金属材料により形成したギヤを所要のギヤ比に配設して構成したオートドア用減速装置」、及び
「前記ギヤは、モータと駆動結合する歯車減速機構の第1段目を合成樹脂材料にて形成し、歯車減速機構の第2段目は金属材料にて形成し、前記軟質及び硬質のギヤを所定数配設して歯車減速機構を構成したオートドア用減速装置」
が開示されているものと認める。

4 引用例3(特開昭60-201146号公報)には、
「遊星歯車機構を構成する遊星歯車をプラスチックで形成したり、金属で形成したりする点」
が開示されているものと認める。

5 引用例4(特開平3-295851号公報)には、
「歯車の素材として金属及びプラスチックが各々の特性を生かして使用されている点」、
「高負荷、衝撃荷重が加わる所には金属製の歯車が、低負荷で低騒音を要求される所にはプラスチック製の歯車が用いられている点」、
「金属製歯車は強度が大きく、衝撃荷重に対しても信頼性がある点」、
「プラスチック製歯車は軽量で低騒音が期待できるが、強度が小さい点」
が開示されているものと認める。

三 当審での検討
1 本件請求項1について
(1) 本件請求項1に係る考案と引用例1に記載された考案との対比
本件請求項1に係る考案と引用例1に記載された考案とを対比すると、本件請求項1に係る考案における、「電動機」、「巻取りパイプ」及び「チューブラ電動装置」は、それぞれ、引用例1に記載された考案における、「モータ」、「巻取り軸」及び「スクリーン巻取り装置」に対応し、両者は次の点で一致する。
「電動機と該電動機の回転力を減速させる遊星歯車減速機構とを収容し、外側には遊星歯車減速機構の出力端と駆動結合した巻取りパイプを回転自在に外嵌してなるチューブラ電動装置において、前記遊星歯車減速機構を、電動機との駆動結合部及び各段においてその出力に対応する機械的強度を備えたプラネタリギヤを所要のギヤ比に配設して構成したチューブラ電動装置」
そして、両者は、下記の点で相違している。
相違点3
本件請求項1に係る考案においては、電動機と遊星歯車減速機構を円筒形のケース内に収容し、ケースの外側に巻取りパイプを外嵌しているのに対し、引用例1に記載された考案においては、このような構成を有しない点。
相違点4
遊星歯車減速機構のプラネタリギヤを、本件請求項1に係る考案においては、電動機との駆動結合部及び各段においてその出力に対応する機械的強度を備えた合成樹脂材料、あるいは、金属材料により形成したプラネタリギヤとしているのに対し、引用例1に記載された考案においては、このような材料についての明示がない点。
(2) 相違点についての検討
相違点3について
引用例1に記載された考案においては、「駆動部3は、たとえはアウタロータタイプの正・逆転モータ24により構成され、この正・逆転モータ24は、支持軸21の内端部の軸上に固定されたステータ25の外周(注:一文字不鮮明)をアウタロータ26が回動すべくロータ26の両端部が軸受け27、27を介して支持軸21上に軸支される。・・・このアウタロータ26の出力は後述する減速機構部に伝導されて巻取り軸2が回動される。」(同2頁右下欄4?19行)との記載にもあるように、モータ(電動機)と遊星歯車減速機構を巻取り軸(巻取りパイプ)の内部に収容しているものの、その回転する部材が「アウタロータ26」であることから、中心部に配置した「支持軸21」に「ステータ25」等を取付ける構造が開示されている。
これに対し、本件請求項1に係る考案におけるように、電動機の「回転子軸a」を中心部に配置する構造を用いれば、、「コイルc」や「固定子鉄心d」を外周部に配置する必要があり、そのためには、それら「コイルc」、「固定子鉄心d」を外周部に支持するための何らかの構成(例えば、外周部に支持するための円筒形のケース等)を採用しなければならないことになる。
結局、相違点3におけるような、電動機と遊星歯車減速機構を円筒形のケース内に収容し、ケースの外側に巻取りパイプを外嵌しているような構成は、その駆動部における電動機の構成により、必要に応じて適宜選択し得る設計的事項に過ぎず、このようなことは当業者であれば、格別の困難性を伴うことなく、きわめて容易になし得た程度のことである。
相違点4について
引用例2において、遊星歯車ではなく平歯車を使用した減速機構ではあるが、「ケーシング内に、モータと該モータの回転力を減速させる歯車減速機構とを収容し、前記ケーシングの外側には歯車減速機構の出力端と駆動結合したVプーリを回転自在に外嵌してなるオートドア用減速装置において、前記歯車減速機構を、モータとの駆動結合部及び各段においてその出力に対応する機械的強度を備えた合成樹脂材料、あるいは、金属材料により形成したギヤを所要のギヤ比に配設して構成したオートドア用減速装置」が公知の技術手段として開示されている。
又、引用例3において、「遊星歯車機構を構成する遊星歯車をプラスチックで形成したり、金属で形成したりする点」が開示され、さらに引用例4において、「歯車の素材として金属及びプラスチックが各々の特性を生かして使用されている点」、「高負荷、衝撃荷重が加わる所には金属製の歯車が、低負荷で低騒音を要求される所にはプラスチック製の歯車が用いられている点」、「金属製歯車は強度が大きく、衝撃荷重に対しても信頼性がある点」、及び「プラスチック製歯車は軽量で低騒音が期待できるが、強度が小さい点」が開示されている。
そして、引用例1はスクリーン巻取り装置に関するものであり、本件請求項1に係る考案と同じ技術分野に属するものであり、引用例2?4は、本件請求項1に係る考案や引用例1に係るものとは直接の技術分野は異にはするものの、歯車等を使用した伝動装置に関わるものであり、技術上の関連性を有するものである。
してみると、引用例1におけるような、スクリーン巻取り装置(チューブラ電動装置)において、その遊星歯車減速機構を、モータ(電動機)との駆動結合部及び各段においてその出力に対応する機械的強度を備えた合成樹脂材料、あるいは、金属材料により形成するようなことは、引用例2において、合成樹脂材料と金属材料により形成したギヤを複数段に組合せ、モータとの駆動結合部及び各段においてその出力に対応する機械的強度を備えた合成樹脂材料あるいは金属材料により形成したギヤを所要のギヤ比に配設して構成した歯車減速機構が開示されていること、そして引用例3において「遊星歯車機構を構成する遊星歯車をプラスチックで形成したり、金属で形成したりする点」が、引用例4において、「歯車の素材として金属及びプラスチックが各々の特性を生かして使用されている点」、「高負荷、衝撃荷重が加わる所には金属製の歯車が、低負荷で低騒音を要求される所にはプラスチック製の歯車が用いられている点」等の技術事項が開示されていること、さらに引用例1におけるスクリーン巻取り装置(チューブラ電動装置)に引用例2?4に開示された技術事項を適用することを特に阻害する要因もないことを考慮すると、当業者であれば、格別の困難性を伴うことなく、きわめて容易になし得た程度のことである。
全体として、本件請求項1に係る考案によってもたらされる効果も、引用例1?4に記載されたそれぞれのものから、当業者であれば当然に予測することができる程度のものであって、格別なものとは言えない。
したがって、本件請求項1に係る考案は、引用例1?4に記載されたそれぞれのものに基いて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法3条2項の規定により実用新案登録を受けることができないものである。

2 本件請求項2について
(1) 本件請求項2に係る考案と引用例1に記載された考案との対比
本件請求項2に係る考案は、請求項1に係る考案における上記プラネタリギヤにさらに限定を加える内容であり、引用例1に記載された考案と対比すると、その相違点は、さきの請求項1に係る考案との対比における相違点3及び4と下記の相違点5となり、両者は、それら相違点3?5を除いて、その余の点で一致している。
相違点5
請求項2に係る考案においては、そのプラネタリギヤが、電動機と駆動結合する遊星歯車減速機構の第1段目を軟質の合成樹脂材料にて形成し、遊星歯車減速機構の第2段目以降は硬質の合成樹脂材料、あるいは金属材料にて形成し、前記軟質及び硬質のプラネタリギヤを所定数配設して遊星歯車減速機構を構成したのに対し、引用例1記載の考案においては、このような構成を有しない点。
(2) 相違点についての検討
相違点3及び4について
さきの、「1 本件請求項1について、(2) 相違点についての検討」の項で検討した内容が、そのまま準用できる。
相違点5について
引用例2において、上記の技術手段の他に、「ギヤは、モータと駆動結合する歯車減速機構の第1段目を合成樹脂材料にて形成し、歯車減速機構の第2段目は金属材料にて形成し、前記軟質及び硬質のギヤを所定数配設して歯車減速機構を構成したオートドア用減速装置」が、公知の技術手段として開示されている。
してみると、引用例1におけるような、スクリーン巻取り装置(チューブラ電動装置)において、その遊星歯車減速機構のプラネタリギヤを合成樹脂材料、あるいは、金属材料により形成し、そのプラネタリギヤが、モータ(電動機)と駆動結合する遊星歯車減速機構の第1段目を軟質の合成樹脂材料にて形成し、遊星歯車減速機構の第2段目以降は硬質の合成樹脂材料、あるいは、金属材料にて形成し、前記軟質及び硬質のプラネタリギヤを所定数配設して遊星歯車減速機構を構成ようなことは、特に、引用例2において、第1段目を合成樹脂で、第2段目を金属材料で形成し、前記軟質及び硬質のギヤを所定数配設して歯車減速機構を構成することが開示されていること、引用例4において、「歯車の素材として金属及びブラスチックが各々の特性を生かして使用されている点」等の技術事項が開示されていること、さらに引用例1におけるスクリーン巻取り装置(チューブラ電動装置)に引用例2?4に開示された技術事項を適用することを特に阻害する要因もないことを考慮すると、当業者であれば、格別の困難性を伴うことなく、きわめて容易になし得た程度のことである。
全体として、本件請求項2に係る考案によってもたらされる効果も、引用例1?4に記載されたそれぞれのものから、当業者であれば当然に予測することができる程度のものであって、格別なものとは言えない。
したがって、本件請求項2に係る考案は、引用例1?4に記載されたそれぞれのものに基いて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法3条2項の規定により実用新案登録を受けることができないものである。

第七 審判請求人の主張に対して
再度の訂正請求に対してなされた訂正拒絶理由通知に関する意見書において、被請求人は、特に、以下の点を強調する主張を行っている。
一 本件考案の顕著な作用効果について
審判請求人は、「遊星歯車減速機構の各段のプラネタリギヤが全て合成樹脂製であると、サンギヤとプラネタリギヤとが噛合すると、遊星歯車減速機構の各段に発生する音の周波数が基本的に大部分が同一となり、それらが噛合する位置関係と相侯って円筒形のケースの共振現象によって共振音の発生となり、しかも、これらが円筒形のケース内に発生し、結果的に、これが円筒形のケースによる共鳴音となって、騒音が大きくなる。このような要因によって、従来のチューブラ電動装置では、電動機の振動音以上の共振音が発生していた。そこで、本件考案はこの共振音に注目し、各種実験の結果、前記共振現象を抑制すれば騒音は減少することを見出し、最終段目の音はあえて単独で騒音が大きくなっても、総合的に、共振の少ない高周波となるように各段の噛み合いを設定したものである。」(平成13年8月15日付け意見書3頁9?20行)とか、さらに、「本件考案のチューブラ電動装置では、電動機と直接駆動結合する第1段目のプラネタリギヤを合成樹脂で形成し、最終段目となる負荷と駆動結合するプラネタリギヤは金属材料で形成しているから、音の発生を促した最終段目は他段と異なる周波数の音が発生することになり、これにより共振現象を軽減し、電動機の振動が遊星歯車減速機構を収容する円筒形のケース内で共鳴するという現象を、確実に減衰させることができるという実用上優れた作用効果を奏するものである。」(同5頁7?13行)と、本件考案の顕著な作用効果について主張している。
しかしながら、本件考案の明細書における、「本考案は、前記の問題点に鑑み、電動機を高速回転させても、この電動機から発生する振動音を遊星歯車減速機構によって効果的に吸収・緩和させることにより、低騒音で、しかも、円滑な駆動を可能としたチューブラ電動装置を提供することにある。」(【0006】)、
「前記減速機構の第1段目を形成するプラネタリギヤを軟質の合成樹脂材料により形成したので、前記回転子軸に伝播する振動は、前記軟質のプラネタリギヤによって吸収・緩和することが可能となり、この結果、電動機の運転中に発生する
騒音を良好に軽減することができる。」(【0008】)、「その上、前記遊星歯車減速機構の第2段目以降のプラネタリギヤは、電動機の回転数を所定のギヤ比により順次落として減速回転されるため、前記各段における公転出力が順次増大することを勘案して硬質の合成樹脂材料や金属材料からなる比較的機械的強度に優れたプラネタリギヤを使用しても、電動機の回転数が第1段目のプラネタリギヤに入力される場合に比べて激減しているため、前記減速回転に伴う騒音はほとんど生じない。」(【0009】)、及び「このチューブラ電動装置から発生する電動機の振動音は、前記遊星歯車減速機構の第1段目に配置した軟質の合成樹脂材料からなるプラネタリギヤによって良好に吸収・緩和させることができるため、この種のチューブラ電動装置を駆動源とする電動ブラインド等を低騒音化させて製造することができる。」(【0027】)との記載や、さらに【0019】や【0020】での動作についての「振動音を良好に吸収・緩和することができる。」との記載、【0021】における「減音性能をも具備させることができる。」との記載、そして【表1】、【表2】における「騒音測定結果」の記載等を考慮すると、上記の主張におけるような「円筒形のケースの共振現象によって共振音の発生」とか、「円筒形のケースによる共鳴音」、さらには「最終段目の音はあえて単独で騒音が大きくなっても、総合的に、共振の少ない高周波となるように各段の噛み合いを設定したものである」、及び「音の発生を促した最終段目は他段と異なる周波数の音が発生することになり、これにより共振現象を軽減し、電動機の振動が遊星歯車減速機構を収容する円筒形のケース内で共鳴するという現象を、確実に減衰させる」といったようなことは、明細書中には何ら記載されてなく、明細書の記載に基づかない審判請求人独自の主張に過ぎないものと言わざるを得ず、採用することはできない。

二 引用例2の認定について
審判請求人は、「審判合議体が訂正拒絶理由通知書第6頁第8行?13行で指摘する『前記モータと駆動可能に結合する第1段目の歯車を合成樹脂材料で形成し、歯車を各段においてその出力に対応する機械的強度を備えた合成樹脂材料または金属材料で所要のギヤ比に形成し、前記Vプーリを回転させる取付軸と駆動可能に結合する前記歯車減速機構の最終段目の歯車を金属材料で形成したオートドア用減速装置』が開示されていると認めるとの記載については、引用例2記載の技術は単に1対の歯車の両方を合成樹脂で構成した減速装置が開示されているのみで、『最終段目の歯車を金属材料で形成した』との根拠はない。特に、引用例2の技術は、減速装置の電動機と駆動結合する最初の歯車(電動機のシャフトに固着した小径な駆動歯車19)と、この歯車19と噛合する大径の第1の歯車20とが合成樹脂で形成されているが、減速装置の最終段に取付けられている第3歯車26については何の記載もない。」(同8頁16?22行)と、引用例2の認定について主張している。
たしかに審判請求人が主張するように、引用例2の明細書及び図面中において、「第3の歯車26」が金属製の歯車であるとの明示の記載はされていない。しかしながら、引用例2における、実用新案登録請求の範囲での「少なくとも1対の歯車の両方を合成樹脂により構成した」との記載、従来技術の問題点の項での「従来のオートドア用減速装置では、噛み合わせる歯車を金属同志とするか、又はせいぜい一方を樹脂製として、他方を金属製としていたので騒音をある程度までしか抑制することができず、更に低騒音化が望まれていた。・・・特にモータの出力軸に取り付ける歯車は出力軸に直接歯切りを施し、合成樹脂の歯車と噛み合わせるようにしているが、」との記載、さらに駆動歯車19と第1の歯車20については合成樹脂製とするものの、第3の歯車については材料等に関して特に言及がされていないこと、そして歯車を金属製とすることは技術常識であること等を考慮すると、引用例2における第3の歯車は金属製と認定することができるものであり、金属製である旨の明示の記載がないからと言ってただちに認定の誤りになるものではなく、審判請求人の主張は採用できない。

第八 結論
以上のとおりであるから、本件請求項1及び請求項2に係る考案の実用新案登録は、平成6年法律116号附則10条によりなお従前の例によるとされ、平成5年法律26号附則4条1項によりなおその効力を有する旧実用新案法37条1項1号の規定に該当し、無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2001-08-29 
結審通知日 2001-09-03 
審決日 2001-09-17 
出願番号 実願平4-72895 
審決分類 U 1 112・ 121- ZB (E06B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 服部 秀男  
特許庁審判長 幸長 保次郎
特許庁審判官 蔵野 いづみ
鈴木 公子
登録日 1998-01-16 
登録番号 実用新案登録第2568487号(U2568487) 
考案の名称 チューブラ電動装置  
代理人 樋口 武尚  
代理人 萬田 正行  
代理人 森崎 俊明  
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