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審決分類 審判 全部申し立て   A41B
審判 全部申し立て   A41B
管理番号 1048659
異議申立番号 異議2001-71866  
総通号数 24 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2001-12-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-07-06 
確定日 2001-10-01 
異議申立件数
事件の表示 登録第2606778号「使い捨てパンツ型着用物品」の請求項1に係る実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 登録第2606778号の請求項1に係る実用新案登録を維持する。
理由 1.手続の経緯
本件実用新案登録第2606778号は、平成2年10月25日に実用新案登録出願した実願平2-111729号(優先権主張平成2年4月26日)の一部を、平成10年12月7日に新たな実用新案登録出願としたものであって、平成12年10月27日に設定の登録がなされ、実用新案登録公報が平成13年1月9日に発行され、平成13年7月6日付けで山田博より、平成13年7月9日付けで土山健二より、実用新案登録異議の申立てがあったものである。

2.本件考案
請求項1に係る考案は、実用新案登録明細書および図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。
「【請求項1】
A.透液性内面シートと不透液性外面シートとの間に吸収体が介在してなる積層パネルを有し、前記内面シートが内側に位置するように前記積層パネルが折り重ねられ、前記積層パネルの前胴回り域と後胴回り域の横方向対向側部がそれらの外側縁を残してそれぞれ外向き合掌状に接合され、胴開口部と脚開口部とにそれぞれ弾性部材を備える使い捨てパンツ型着用物品において、
B.前記前後胴回り域の横方向対向側部の接合が、前記横方向対向側部の縦方向に延在する所定の幅寸法を有する接合域に沿ってなされ、
C.前記接合域が、前記接合域の縦方向に所定間隔で配列した多数の接合部によって構成され、
D.前記接合域の幅寸法が2?20mm、前記接合部の高さ寸法が0.5?15mmであり、前記接合部が、前記接合域の縦方向と交差する方向に長く、かつ、前記接合域の幅寸法よりも小さい高さ寸法を有し、前記胴開口部から前記脚開口部にわたる前記接合部の占有面積の合計が40?80%であり、
E.前記脚開口部の弾性部材が、前記物品の前後方向へ湾曲し前記外面シートと前記吸収体との間に位置して前記物品の股下域を横切っている前後部材からなることを特徴とする前記物品。」
(符号A?Eは当審で付した。)

3.異議の申立ての理由の概要
(1)申立人・山田博は、証拠として下記の甲第1号証ないし甲第7号証を提出し、以下の取消し理由により、本件実用新案登録は取り消されるべきである旨主張している。
(理由1) 請求項1に係る考案は、甲第1号証ないし甲第6号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案することができたものであるから、請求項1に係る実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものである。
(理由2) 本件実用新案登録は、分割の要件を満たしていない出願について登録されたものであるから、出願日の遡及は認められず、現実の分割出願日もしくは手続補正時をもって登録要件が判断されるべきである。だとすれば、請求項1に係る考案は、本件出願の原出願の公開公報である甲第7号証に記載された考案であり、請求項1に係る実用新案登録は、実用新案法第3条第1項第3号の規定に違反してなされたものである。
甲第1号証:特表平1-503473号公報
甲第2号証:特開昭61-207605号公報
甲第3号証:特開昭57-117602号公報
甲第4号証:特開昭57-77304号公報
甲第5号証:特開昭58-115106号公報
甲第6号証:特許庁公報53-219「周知・慣用技術集(包装産業)」
(昭和53年発行)43頁
甲第7号証:実開平4-44920号公報
(2)申立人・土山健二は、証拠として下記の甲第1号証ないし甲第6号証を提出し、請求項1に係る考案は、甲第1号証ないし甲第6号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案することができたものであるから、請求項1に係る実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものであり、本件実用新案登録は取り消されるべきである旨主張している。
甲第1号証:特開昭61-207605号公報
甲第2号証:特表平1-503473号公報
甲第3号証:特開昭57-77304号公報
甲第4号証:特開昭58-115106号公報
甲第5号証:米国特許第4586199号明細書(抜粋訳あり)
甲第6号証:特許庁公報53-219「周知・慣用技術集(包装産業)」
(昭和53年発行)43頁

4.甲各号証に記載された考案
(1)申立人・山田博提出の甲各号証
・甲第1号証
伸縮可能な使い捨て吸収性下着に関するものであり、図面と共に以下の 記載がある。
a.「1.以下のものを含む、解剖学的に体形に合う、一般に自己調整式3 次元使い捨て吸収性下着:
-弾性不織ウェブが単数又は複数のギャザリング可能な不織ウェブに合 わされ、ウエスト開□部、脚開□部、中央股セクション、この股セクショ ンで分離された前後パネル及び前記脚開口部とウエスト開口部及び前記前 パネルと後ろパネルの間にそれぞれ延びこれらを相互接続している1対の サイドパネルを構成している、通気性のあるエラストマ-不織製外側カバ ー;
-液体浸透性のある体側のライナー、体液不浸透性のバリヤ及びその間 に置かれた吸収性の複合材を含む、前記前後パネル及び前記股セクション の上にほぼ積重なることのできる吸収性のインサート構造;
-前記吸収性構造を前記外側エラストマーカバーにとりつけ-体化させ それと同時にほぼ制約の無いその機能的伸縮可能性を与えるためのとり付 け手段;そして
-そのシームを開き分離し当該衣料を汚れた時点で着用者からとり外す ための手でひきちぎることのできる応力解放手段を含む、前記サイドパネ ルの各々の前記脚部及びウエスト開口部の間に延びこれらを相互接続して いる再度締めつけることのできないサイドシーム。」(請求項1)
b.「最後に、サイドパネル(27)は、超音波又は熱によるボンド(46 )によってサイドシーム(42)に合わせて閉じられ結合させられる。 使用中、衣料(10)は再利用可能な布製パンツと同じように体にすべり 上げられ、トイレを使うときには着用者が腰全体にわたってすべりおろす ことができる。この衣料が汚れると、サイドシーム(27)は、ボンド
(46)をひきちぎることによって手で分離され、それから衣料(10) を着用者からとり外すことになる。
分離可能なサイドシーム(42)締めつけシステムに必要とされる物理 的特性に関しては、自生ボンド(46)は、ユーザー(例えば親)のサイ ドシーム(42)ひきちぎり能力又は強さならびに外側カバー材料によっ て約600グラムから約2500グラムの剥離強度をシーム(42)に与 えるべきである。サイドシーム(42)は1平方インチ約3750グラム 以上のせん断強度を持っていなくてはならない。本発明は着用中、ウエス トのたるみ又は腰の空隙やふくらみを最小限におさえて衣料の寸法的無欠 性を保持する。
第1図から第3図までは、外向き(第1図)、内向き(第2図)又は重 なり合い(第3図)のいずれでもありうるサイドシームのさまざまな形態 を示している。サイドシーム(42)は、第4及び5図で、内側向きのサ イドシーム(第4図)及び重なり合ったシーム(第5図)の場合について 、手で分離された状態で示されている。」(5頁右下欄9行?6頁左上欄 2行。Fig.1?5参照。)
・甲第2号証
伸縮自在な脚部開口と腰部開口を有する使い捨てパンツに関するもので あり、図面と共に以下の記載がある。
c.「(1)液体浸透性の内部の身体側ライナと、前板及び後板を画成する 液体不浸透性の外部カバーと、これらライナとカバーとの間に配置された 吸収性の芯材とを具備する形式の使い捨てパンツにおいて、
一対の脚部開□と腰部開口とを有する立体的なパンツを形成するように 上記の前板及び後板の側緑部分の一部を互いに接合する側部シームと、
一方の脚部開口のまわりに延びる第1の伸縮手段、他方の脚部開口のま わりに延びる第2の伸縮手段及び腰部開口のまわりに延びる第3の伸縮手 段とを具備し、更に、
上記外部カバーは、液体不浸透性のプラスチック材料の内層と、不織フ ァイバ材料の外層とで構成され、上記内層は吸収性の芯材に面し、上記外 層はパンツの外面を構成することを特徴とする使い捨てパンツ。」(特許 請求の範囲第1項)
d.「更に別の実施例では、外部シームも含まれるが、これは図示されない 。
側部シーム13として特に有用な構造は、手で剥離できるシームもしく は手で引き剥ぐシームである。これは、互いに接触する側縁部分を側部シ ーム部分内の細い接合領域に沿って接合することによって達成できる。手 で引き剥ぐシームを形成するには、シーム長さ1インチについて約200 0グラムの接合強度(インストロン(lnstron)強力テスタのよう な適当な器具で測定して)が適当であり、然も、これはパンツを互いに保 持するのに充分な強度でもある。この種のシームを形成する1つの方法は 、中が約1/8インチ(約3.1mm)の細い接合部分に沿って適当に制 御した音波シールを施すことにより互いに接触する側部を接合することで ある。このような引き剥ぎシームが常に便利で且つ好ましい理由は、子供 からパンツを脱がせるために親が手で側部シームを引き剥がすことができ るからであり、これは、パンツがかなり汚れている通常の脱がせ方では不 潔となるような時に特に有用である。」(8頁左上欄1行?同右上欄2行 )
e.「一連のシール線は、所望の方法で形成することができる。典型的な方 法は、接着剤及び熱シールによるものである。本発明について特に好まし い方法は、超音波シールであることが分かった。1/8インチ(約3.1 mm)ないし3/16インチ(約4.7mm)の好ましいスペース内に4 本のシール線を適合させるように至近離間された複数の線を有する超音波 シールアンビルが特に望ましいと分かった。シール線は、点線を形成する ような断続的なものであってもよい。」(9頁左下欄1?10行)
f.「第7図は、第3図のシーム13の拡大断面図である。・・・このシー ル作業は、約1/8インチ(約3.1mm)の好ましい巾で行われ、この スペース内に複数のシール線が形成される。図示されたように、シール1 3内には3本のシール線80、84、86がある。」(9頁右上欄4?1 7行。FIG.3・7参照。)
g.「第9図は、本発明のパンツの別の実施例を示しており、この場合、パ ンツ10’は、別々の前板11と後板12を備え、これらは、中央の又シ ーム65に沿って互いに接合される。パンツ10’の他の部分は前記のパ ンツ10と同じであり、これらの共通部分は、第1図に使用された対応す る参照番号で示されている。」(9頁右下欄12?18行。FIG.9参 照。)
h.「本発明の個別の強力な漏れのない側部シールは、所望の巾で形成する ことができる。一般に、シームの巾は、約1/16インチ(1.6mm) ないし約3/16インチ(4.7mm)である。シームには、全巾が約1 /8インチ(3.1mm)であるのが好ましい。シームの複合領域におい てシール線によって囲まれたシーム領域内では、シールされる谷部分が一 般的に全体の約25%ないし約100%である。線の本数は、1より大き い所望の数である。一般に、約50%のシール領域で約1/8インチのス ペース内に4本のシール線があるのが適当であると分かった。」(10頁 左上欄2?13行)
・甲第3号証
足を挿通する足開□部の湾曲した外周部の少なくとも一部に沿ってゴム ひものような弾性部材が付設されこれにより足開口部においても大腿部に 緊密に被着可能な使い捨てのおしめブリーフを製造する方法に関するもの であり、図面と共に以下の記載がある。
i.「1.吸湿性の当て布と湿気を通さない外側のシーツ材と湿気を通す内 側の表面布とを備え、前記当て布が前記シーツ材と前記表面布との間に付 設され、足を挿通する足開口部の湾曲した周部に弾性部材が付設される使 い捨てのおしめブリーフを連続的に製造する方法において、湿気を通さず 熱により接着可能で柔軟な連続した長手のシーツ材と接触させるべく延伸 状態で移動する弾性部材の表面に高温の接着剤を断続的に塗布する工程と 、ロータリドラムの外周部に前記シーツ材を掛ける工程と、前記ロータリ ドラム上の前記シーツ材と接着剤が塗布された前記弾性部材との接触点を 前記シーツ材の巾方向に移動し前記足開□部の少なくとも一の湾曲した周 部に沿って弾性部材を接着させる工程とを包有して成るおしめブリーフの 製造方法。」(特許請求の範囲第1項)
j.「7.吸湿性を持つ矩形の当て布を湿気を通さないシーツ材の長手軸線 に対し直角に付設し、対称軸線に対し対称に開□部を形成し、前記長手軸 線に沿ってブリーフ材を折り重ね、前記シーツ材の巾方向と平行な開□部 を通る対称軸線に沿ってブリーフ材を切断し溶着する工程を包有してなる 特許請求の範囲第1項乃至第5項のいずれか一項記載のおしめブリーフの 製造方法。
8.シーツ材の長手縁部の全長にわたり延伸状態で連続した直線状の弾性 部材を接着してウエスト部に弾性締付力を与える工程を包有してなる特許 請求の範囲第7項記載のおしめブリーフの製造方法。」(特許請求の範囲 第7項、第8項)
k.「第5図および第6図は本発明の他の実施例を示すのもであり上述の実 施例と同一の部材には同一符号が付されている。本実施例においては長手 軸線X-Xと平行な矢印F方向に移動するシーツ材2の長手軸部にまず連 続した長手のゴムひも(本実施例においてシーツ材(20)の長手緑部に 付設されたゴムひもを符号(20)で示す)が直線状にかつ延伸状態で接 着剤により接着される。これによりおしめブリーフのウエスト部の略全体 に互ってゴムひも(20)が付設されるのでウエスト部が人体の腹部に対 し緊密に被着され得る。また足開口部の縁部に沿って位置するようにゴム ひも(本実施例においてシーツ材(20)に設けられる足開□部近傍に付 着されるゴムひもを符号(20)、(22)で示す。)が付設される。」 (4頁右下欄末行?5頁左上欄14行。FIG.5、6参照。)
・甲第4号証
湿気を通さず柔軟な外被シーツ材を備えた使い捨ておしめブリーフおよ びその製造方法に関するものであり、図面と共に以下の記載がある。
l.「シーツ材はほぼ中央の長手軸線に沿って折り重ねられ、当て布間の前 記対称線に沿う熱による切断・溶着作業により折り重ねられたシ-ツ材が ゴム部材と共に切断されかつ対称軸の両側で2つのシ-ツ層が溶着される 。この時ウエスト部分のゴム部材の2端部も溶着される。」(4頁左下欄 5?10行)
m.「ブリーフ1の開口部に付設される弾性部材は夫々2つのゴムひも18 、19で成る。ゴムひも18は湿気を通さない外被シーツ2上のブリーフ 正面側において長手軸線X-Xに対し波状の線に沿って一定の間隔で取り 付けられる。一方ゴムひも19は外被シーツ2の2b側即ち仕上がったブ リーフの背面部にあたる側において長手軸線に対し波状をなす線に沿って 前記ゴムひも18に対応して付設される。
ゴムひも18は対称線10に対し対称な弧状部18aと直線状部18b とから成り、円弧部18aはその全長にわたり湿気を通さない外被シーツ 2に付着される。」(7頁右上欄7?19行)
n.「第4図の実施例においても長手軸線X-Xを中心に折りたたみ対称線 10に沿って分断し同時に側緑部を接着させることによりブリーフの製造 工程が完了される。」(8頁左下欄7?10行。FIG.4参照。)
o.「接着剤の付いていない直線状部21d、22dは切除後の当て布23 との位置関係を示すために点線で示してある」(9頁左上欄3?5行。F IG.5参照。)
・甲第5号証
使い棄ておむつとその製造法に関するものであり、図面と共に以下の記 載がある。
p.「(1)端縁に頂縁と底縁とを連結させる前身頃および後身頃と、これ ら身頃の間にあって股部をなす吸収パッドとを備えてなる使い棄ておむつ であって、身頃のおのおのにはおむつのウエストバンドになる頂縁に沿っ た伸縮片があり、身頃はさらに側縁で互いに合わされ、身頃のおのおのに は吸収パッドを協動して股部のシールとなる底縁に沿った伸縮片がある使 い棄ておむつ。」(特許請求の範囲第1項)
q.「伸縮片38、40は隣接縁16、18に接して身頃12、14に接着 剤で接合するのがよい。
ポリエチレンまたはポリプロピレンのプラスチックフィルムの如き不透 水性材料でできた裏地シート52と、木毛の吸収層54と、ポリエチレン またはポリプロピレンの繊維から疎水性の肌接触シートを作っている不織 繊維の頂部シート56とを備えた吸収パッド50が用意される。この吸収 パッド50は身頃12,14を横切っておかれ、これらの間にのび、かつ これらに接合されるのがよい。吸収パッド50は伸縮片38、40の上に おかれる。
その後で身頃12、14の一方は他方に対して重なる位置に折畳まれて 吸収パッド50を畳むので側縁30、32および34、36は互いにそれ ぞれ接合しておむつの側部を形成する。伸縮片24、26はウエストバン ドとなっている。吸収パッド50と協動して、裾口には伸縮片38、40 でできた伸縮シールが形成される。」(2頁右下欄10行?3頁左上欄 8行。FIG.3参照。)
・甲第6号証
周知・慣用の技術として、各種シール形態が記載されており、そのうち の一つとして、多数の接合部を並設し、各接合部は並設方向と交差する方 向に長くされた「縦目シール」の形態が記載されている。
・甲第7号証
本件実用新案登録出願の原出願の公開公報であり、請求項1に係る考案 が記載されている。
(2)申立人・土山健二提出の甲各号証
・甲第1号証
申立人・山田博提出の甲第2号証に同じ。
・甲第2号証
申立人・山田博提出の甲第1号証に同じ。
・甲第3号証
申立人・山田博提出の甲第4号証に同じ。
・甲第4号・
申立人・山田博提出の甲第5号証に同じ。
・甲第5号証
図面と共に、以下の記載がある。
r.「パンツの股間に近づくにつれて先が細くなる中央部を定める弾性糸を 有し、及び/又はパンツの残部よりも緩くクロッシェ編み又はニット編み された、股間部から上に延在する中央領域を有する前及び後ピースの双方 を備え、それによって使用者の体に対する下の使い捨ておむつの有効な密 着を達成する、使い捨ておむつを所定位置に保持するための弾性パンツま たはブリーフ。」(要約・訳文)
s.「図3に示される本発明に係る弾性おむつは、クロッシェ編みされた弾 性材料からなる前ピース1及び後ピース2のそれぞれから構成されている 。これらのピースは、それらの全表面にわたり実質的に平坦にクロッシェ 編みさる。したがって、2つのピース1、2は全体的に同一である。下に ある使い捨ておむつに抗して少なくとも実質的に図2に示されるタイプの 圧力分配を与えるために、例えばスパンデックス糸のような、相当数の弾 性糸が各ピースにクロッシェ編みにより編み込まれる。各ピースの弾性糸 は、各側端部からウエスト端部に沿う範囲9、およびそこから股間部3に 近づくように中心に向かって斜め向かって延在し、最終的にウエスト端部 と平行に、パンツの中央部を横切る部分11にう範囲10全体に延在する 、第1の糸8と;各側端部から第1の糸8の中央部のレベルでもってその 糸まで及び、そこから股間部に近づくように突出する部分14を有するよ うに延在する第2の糸12と、から構成される。
図4は、図3に係るパンツを、実質的にT字状をなした使い捨ておむつ 15を支持するために使用したときの外見を示している。第1の弾性糸の 中央部11および第2の弾性糸における股間部13(3)に近づくように 突出する部分14が、おむつの側端部およびおむつの上端部近傍における 水平部分を圧して、使用者の体に対してぴったりと接触させる。おむつの 背面もまた相応に緊張される。図5は、どのようにして使い捨ておむつ1 5の端部が使用者に対して圧されているかを示している。図3に係るパン ツによる、下の使い捨ておむつに対する及び使用者に対する圧力分配は図 6に示されている。図1及び2に係る圧力分配との対比によって、本発明 に係るパンツにおける一対の図3に示される形態の弾性糸により生じる圧 力分配が理想に近いことが示される。」(2欄49行?3欄18行・訳文 。FIG. 1?6参照。)
・甲第6号証
申立人・山田博提出の甲第6号証に同じ。

5.当審の判断
(1)申立人・山田博の取消理由2について
この主張は、本件実用新案登録の審査の過程において、請求項1に構成Eを付加限定したことに伴って、「脚開口部の弾性部材が外面シートと吸収体との間、すなわち、吸収体の下面に位置して股下域を横切っているから、吸収体を支持する状態になり、排泄物の荷重を受けても、股下域が妄りに垂れ下がることがない。」(【0019】)という効果を新たに加入しているが、この効果は、原出願の明細書に記載のないものであり、本件実用新案登録は分割の要件を満たしていない、というものである。
しかしながら、申立人も認めているように、構成Eが原出願の明細書に記載されていたことは明らかであり、新たに加入された前記効果は構成自体に内在していたものであって、自明のものである。
したがって、前記効果は構成を限定したことに伴い顕在化したものであって、実用新案登録請求の範囲の実質的変更にはあたらない。
してみると、本件実用新案登録は、旧実用新案法第9条第1項において準用する特許法第44条第1項の規定を満たすものであり、その出願日は、同条第2項の規定により原出願の日とみなされるから、請求項1に係る実用新案登録の登録要件についての判断において、甲第7号証を採用することはできない。
(2)請求項1に係る考案と甲各号証に記載された考案との対比・判断
請求項1に係る考案と、甲各号証(両申立人提出の甲第1号証ないし甲第6号証)に記載された考案とを対比すると、後者にはそのいずれにも、側部の接合域が、接合域の縦方向に所定間隔で配列した多数の接合部によって構成され、前記接合域の幅寸法が2?20mm、前記接合部の高さ寸法が0.5?15mmであり、前記接合部が、前記接合域の縦方向と交差する方向に長く、かつ、前記接合域の幅寸法よりも小さい高さ寸法を有し、前記胴開口部から前記脚開口部にわたる前記接合部の占有面積の合計が40?80%であること(構成CおよびD)が記載されていない。
請求項1に係る考案は、前記構成CおよびDを有することにより、接合域に沿って容易に引き裂くことができ、その脱がせ操作が容易であるとともに、接合域には、所要の接合強度ないし引き裂き抵抗が付与され、着用中に不用意に連続的に引き裂かれて着用した物品が身体からずれ落ちることがない(【考案の効果】)という、甲各号証に記載された考案には期待できない効果を奏するものである。
したがって、甲各号証に記載された考案をいかように組み合わせても請求項1に係る考案の構成を得ることはできず、請求項1に係る考案が、甲各号証に記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易に想到することができたものであるということはできない。
申立人・山田博は、甲第2号証(特開昭61-207605号公報)には、構成Dにおける数値と完全に一致する記載がある旨主張する。
しかしながら、甲第2号証に記載された考案では、側部の接合域におけるシール線は、縦方向に1ないし複数本設けられているのであり(記載e、fおよびh)、請求項1に係る考案の側部の接合域における接合部のように、接合域の縦方向に所定間隔で配列した多数の、接合域の縦方向と交差する方向に長く、かつ、接合域の幅寸法よりも小さい高さ寸法を有する構成のものではない。
したがって、甲第2号証には、側部の接合域の幅寸法について構成Dと重なる数値の記載はあるが(記載h)、甲第2号証に記載された考案におけるこの数値は、1本ないし複数本のシール線全体の幅が前記数値であるということであるのに対し、構成Dにおけるこの数値は、1つの接合部の幅寸法を規定するものであって、接合部の構成自体が異なる両者の幅寸法を同等のものとして対比することはできない。また、甲第2号証に記載された考案における、接合部の高さ寸法および接合部の占有面積に関する数値を、構成Dにおけるこれらの数値と対比することも意味のないことである。
したがって、甲第2号証に記載された考案には、構成Dが記載されているとはいえず、当該主張は採用できない。
申立人・土山健二は、甲第2号証(特表平1-503473号公報)には、図面を参酌すると、接合部は接合域の縦方向と交差する方向に長く、かつ、接合域の幅寸法よりも小さい高さ寸法を有することが開示されており、高さ寸法も構成Dにおける数値と重なるものである旨主張する。
しかしながら、申立人が主張の根拠とする図面(FIG.4・5)の記載から把握できるのは、接合部が縦方向に間隔をおいて設けられているということのみであって、それ以上の構成が開示されているということはできない。
したがって、当該主張は採用できない。

6.むすび
以上のとおり、請求項1に係る考案は、異議申立人・山田博の提示した甲第1号証ないし第6号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に想到することができた考案ではないから、請求項1に係る実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反して登録されたものではない。
また、異議申立人・山田博の提示した甲第7号証は本件実用新案登録の出願前に頒布されたものではないから、請求項1に係る実用新案登録は、実用新案法第3条第1項第3号の規定に違反して登録されたものではない。
さらに、請求項1に係る考案は、異議申立人・土山健二の提示した甲第1号証ないし第6号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に想到することができた考案ではないから、請求項1に係る実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反して登録されたものではない。
したがって、実用新案登録異議の申立ての理由によっては請求項1係る実用新案登録を取り消すことはできない。
また、他に請求項1に係る実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2001-09-10 
出願番号 実願平10-10914 
審決分類 U 1 651・ 121- Y (A41B)
U 1 651・ 113- Y (A41B)
最終処分 維持    
前審関与審査官 門前 浩一  
特許庁審判長 吉国 信雄
特許庁審判官 杉原 進
鈴木 美知子
登録日 2000-10-27 
登録番号 実用新案登録第2606778号(U2606778) 
権利者 ユニ・チャーム株式会社
愛媛県川之江市金生町下分182番地
考案の名称 使い捨てパンツ型着用物品  
代理人 白浜 吉治  
代理人 小林 義孝  

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