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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) B65H
管理番号 1048667
判定請求番号 判定2001-60018  
総通号数 24 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案判定公報 
発行日 2001-12-28 
種別 判定 
判定請求日 2001-02-05 
確定日 2001-10-30 
事件の表示 上記当事者間の登録第2566004号の判定請求事件について、次のとおり判定する。   
結論 イ号図面及びその説明書に示す「字消し具」は、登録第2566004号実用新案の技術的範囲に属しない。
理由 1.請求の趣旨
イ号図面及びその説明書に示す「字消し具」は、実用新案登録第2566004号の請求項1に係る考案(以下、「本件考案」という。)の技術的範囲に属する、との判定を求めるものである。

2.本件考案
(2-1)本件考案の構成
本件考案の構成は、その実用新案登録明細書及び図面の記載からみて、実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであり、それを構成要件ごとに分説すると次のとおりである。
A:巻取りリールギアと噛合い、この巻取りリールギアより大径とした供給リールギアを、容器本体に固定する供給リール軸に回動自在に嵌合するとともに、
B:この供給リール軸と同軸にOリングを介して修正塗料転写テープ供給リールのカラー部分を嵌合し、
C:上記供給リールギアの裏面に、一方向逆回転防止爪を設け、この防止爪を容器本体対向面の突起と係合してなる字消し具において、
D:巻戻しボタンの操作部を供給リールギアの表面側に容器本体から露出して設け、
E:この巻戻しボタンを、上記供給リール軸上に回動自在に嵌合し、上記巻戻しボタンの操作部の下部に設けた突起が修正塗料転写テープ供給リールのカラー部分に係止してなる構造。

(2-2)本件考案の目的及び効果
本件実用新案登録明細書の記載によれば、
本件考案が解決しようとする課題は、
「従来のものの有する欠点を改善するものであり、常にヘッドにおいて修正塗料転写テープに対して過剰の引張による修正塗料転写テープの切断が生じさせることなく、適正な緊張を与えて確実な修正作業が行えるように、使用中にリールの逆回転を防止するものにおいて、供給リールとヘッド間の転写テープ、あるいはヘッドと巻取りリール間の転写テープの弛みをとるために巻戻し可能にし、更に、マガジンの変形に対しても確実に修正塗料転写テープの供給、巻取りが行えるようにしてなるものである。」(段落【0006】、本件実用新案登録公報第4欄第14?23行)というものであり、
本件考案の効果は、
「 使用中に過剰に送り出された未使用の修正塗料転写テープを、供給リールギアに噛合する部分を回転させることなく容易に巻戻して、使用中にヘッドにおける適度の緊張を有するものとすることができ、巻取りリールに未使用の転写テープを巻取って作動不能となるおそれがなく、無駄な転写テープの使用を防止できると共に、容器本体を二分割とする場合に容器本体内において離隔杆を配設することで供給リールギアの防止爪と突起との係止の外れを防止して修正塗料転写テープの送出、巻き取りを行う供給リールの円滑な回転を確保できるので、熱や応力に対する容器本体の耐久性を著しく向上させることができる優れた効果を有するものである。」(段落【0018】、本件実用新案登録公報第8欄第1?12行)というものである。

3.イ号物件
請求人の主張するイ号物件は、本件請求書に記載のとおりであり、それを分説すると次のとおりである。
a:巻取りリールギアと噛合い、この巻取りリールギアより大径とした供給リールギア6を、容器本体2に固定する供給リール軸5に回動自在に嵌合する。
b:この供給リール軸5と同軸に、修正塗料転写テープ3の供給リール4のカラー部分8を嵌合する。この際、カラー部分8は、その上面に巻き戻しボタン11が係止され、その底面が供給リールに設けられた板バネ14の突部14’と摩擦接触している。
c:上記供給リールギア6の裏面に、一方向逆回転防止爪10を設け、この防止爪10を容器本体対向面の突起A9と係合してなる字消し具において、
d:巻戻しボタン11の操作部12を供給リールギア6の表面側に容器本体2から露出して設け、
e:この巻戻しボタン11を、上記供給リール軸5上に回動自在に嵌合し、上記巻戻しボタン11の操作部12の下部に設けた突起B13が修正塗料転写テープ供給リール4のカラー部分8に係止してなる構造。
そして、イ号物件は、本件請求書に記載の次の作用効果を奏するものである。
使用中に過剰に送り出された未使用の修正塗料転写テープを、供給リールギアに噛合する部分を回転させることなく容易に巻き戻すことができ、使用中にヘッドにおける適度の緊張を有するものとすることができ、巻き取りリールに未使用の転写テープを巻き取って作動不能となるおそれがなく、無駄な転写テープの使用を防止できる。

4.請求人の主張
イ号物件の構成a、c、d、eが本件考案の構成要件A、C、D、Eを充足している。
イ号物件の構成bは、本件考案の構成要件Bと相違するが、均等である。

5.イ号物件が本件考案の技術的範囲に属するか否かについて
(5-1)対比
本件考案とイ号物件とを対比すると、イ号物件の構成a、c、d、eは、本件考案の構成要件A、C、D、Eをそれぞれ充足しているが、
本件考案の構成要件Bが「供給リール軸と同軸にOリングを介して修正塗料転写テープ供給リールのカラー部分を嵌合し」ているのに対し、イ号物件の構成bが「供給リール軸5と同軸に、修正塗料転写テープ3の供給リール4のカラー部分8を嵌合する。この際、カラー部分8は、その上面に巻き戻しボタン11が係止され、その底面が供給リールに設けられた板バネ14の突部14’と摩擦接触している」点で、両者は構成が相違する。

(5-2)相違点の検討(均等論の適用について)
[本質的部分について]
本件考案は、「常にヘッドにおいて修正塗料転写テープに対して過剰の引張による修正塗料転写テープの切断が生じさせることなく、適正な緊張を与えて確実な修正作業が行えるように、使用中にリールの逆回転を防止するものにおいて、供給リールとヘッド間の転写テープ、あるいはヘッドと巻取りリール間の転写テープの弛みをとるために巻戻し可能に」することを目的とするものであり、「 使用中に過剰に送り出された未使用の修正塗料転写テープを、供給リールギアに噛合する部分を回転させることなく容易に巻戻して、使用中にヘッドにおける適度の緊張を有するものとすることができ、巻取りリールに未使用の転写テープを巻取って作動不能となるおそれがなく、無駄な転写テープの使用を防止できる」という作用効果を奏するために、「巻戻しボタンの操作部を供給リールギアの表面側に容器本体から露出して設け」(構成要件D)、「この巻戻しボタンを、上記供給リール軸上に回動自在に嵌合し、上記巻戻しボタンの操作部の下部に設けた突起が修正塗料転写テープ供給リールのカラー部分に係止してなる構造」(構成要件E)を採用するものであるから、本件考案の本質的部分は構成要件D及びEということができるのであって、実用新案登録請求の範囲に記載された構成要件Bの構成を採用することは、本件考案の本質的な部分ではない。

[置換可能性について]
本件考案の構成要件Bをイ号物件の構成bに置き換えても、本件考案の上記目的を達成することができるし、上記効果を奏することができる。

[置換容易性について]
ア.甲各号証に記載された事項
請求人の提出した甲第1?5号証には、以下の事項が記載されている。
・甲第1号証:特開平5-58097号公報
塗膜転写具において、支軸32に支持した駆動歯車39のボス部40の外周に、Oリング41を介して繰出円筒42を嵌装してなる点。
・甲第2号証:特開平3-87283号公報
基板上に担体テープのフィルムを移す手動器具用の交換カセットにおいて、供給リール8に備えられたフランジ・ディスク23に、係止突起22がリング状に配置され、上記供給リール8の回転時に、上記係止突起22が、カセット2に設けられたばね作用を有する舌状片20の横リブ21を外方へ押出して通過し、制動モーメントを上記供給リール8に及ぼすようにした点。
・甲第3号証:実願平2-88056号(実開平4-46069号)のマイクロフィルム
塗膜転写具のテープ保持構造において、巻取コア54に係合する駆動軸52と繰出コア51に係合する駆動軸52同士を連動する大小一対のギヤ53,56が設けられ、大径ギヤ53と繰出コア51側の駆動軸52との間に、繰出速度と巻取速度との速度差をスリップにより吸収する爪クラッチ57が介装されている点。
・甲第4号証:実願平2-88057号(実開平4-46070号)のマイクロフィルム
塗膜転写具において、大径ギヤ14aを備えた中間回転体14と、繰出コア2のボス部内に係合する第2駆動軸15とを、受け軸12bに同軸芯上に外嵌保持させ、上記中間回転体14のボス部14cの先端に嵌合固定された受け部14dと、上記第2駆動軸15の内周面に連設された環状突起15aとの間に、上記中間回転体14と第2駆動軸15との摺接面同士を互いに圧接状態に移動付勢するコイルスプリング16を介装した点。
・甲第5号証:実願平3-41907号(実開平4-126878号)のマイクロフィルム
塗布膜転写具において、供給リール2のギヤ部2_(1)を、本体1に固定する支持軸1b_(1)に回動自在に嵌合し、上記供給リール2のギヤ部2_(1)と一体形成された連結筒部2aの上部にばね性を有するごとく細巾の基部を備えた係合爪2a_(1)を複数個設け、上記連結筒部2aに嵌装した巻芯4の内周面に形成した凹凸部4_(1)に上記係合爪2a_(1)を係合させ、上記巻芯4の上記供給リール2の連結筒部2aへの嵌装状態において、該連結筒部2a上部の係合爪2a_(1) は、その細巾基部の弾性により巻芯上部内周面の凹凸部4_(1)の凹部に嵌入して巻き芯4の上方への離脱は防止され、供給リール2と巻芯4とが相互に回動してスリップ状態となるとき、係合爪2a_(1)の基部は弾性により撓んで係合爪2a_(1)は往復動して等ピッチで形成された凹部への嵌入・退出をくり返し、剛体の歪を起す往復運動を利用して、巻芯4の供給リール2に対する回動に対しコンスタントの回転抵抗を与えるようにした点。
イ.検討
本件考案の構成要件Bは、「この供給リール軸と同軸にOリングを介して修正塗料転写テープ供給リールのカラー部分を嵌合し、」というものであり、イ号物件の構成bは、「この供給リール軸5と同軸に、修正塗料転写テープ3の供給リール4のカラー部分8を嵌合する。この際、カラー部分8は、その上面に巻き戻しボタン11が係止され、その底面が供給リールに設けられた板バネ14の突部14’と摩擦接触している。」というものであり、本件考案の構成要件Bをイ号物件の構成bに置き換えることが、イ号物件の実施の時点(平成11年1月頃(「判定請求書」の第7頁下から10行))において当業者にとってきわめて容易に想到し得るものかどうかについて検討する。
上記甲第2号証及び甲第5号証に記載のものは、いずれも板バネを用いた技術に関するものであるが、
甲第2号証に記載のものは、供給リール8とカセット2とが一体的に回転するものではなく、相対的な回転時のみ、供給リール8に備えられたフランジ・ディスク23にリング状に配置された係止突起22が、カセット2に設けられた舌状片20(板バネ)の横リブ21(突部)と、摩擦接触するものであって、イ号物件のカラー部分の底面と供給リールに設けられた板バネとに対応する構成はなく、
甲第5号証に記載のものは、供給リール2と巻芯4とが相互に回動してスリップ状態となるときのみ、巻芯4(カラー部分)の内周面に形成した凹凸部4_(1)の凸部が、供給リール2と一体成形された連結筒部2aに設けられた係合爪2a_(1) (板バネの突部)と摩擦接触するものであり、しかも、上記係合爪2a_(1) (板バネの突部)は、上記凹凸部4_(1)の凹部に嵌入することにより、巻芯4(カラー部分)の上方への離脱を防止するものであるから、係合爪2a_(1)(板バネの突部 )と摩擦接触する巻芯4(カラー部分)の部位は、巻芯4(カラー部分)の内周面に特定されるものである。
また、上記甲第1、3、4号証に記載のものは、板バネを用いたものではないから、上記甲第1?5号証に記載のものに基いて、イ号物件の構成bのうちの「カラー部分の底面が供給リールに設けられた板バネの突部と摩擦接触している」という構成を導き出すことは困難である。
ウ.判断
したがって、上記構成要件Bをイ号物件の構成bに置き換えることは、当業者にとってきわめて容易に想到し得るものではない。

[公知技術からの容易推考性について]
本件考案の審査経過より明らかなとおり、本件考案出願前には、イ号物件は本件考案の出願時における公知技術と同一又は当業者が公知技術からきわめて容易に推考できたものではない。

[意識的除外等の事情について]
本件考案の出願手続において、イ号物件の上記構成要件bを、実用新案登録請求の範囲から除外するとの特段の事情は存在しない。

(5-3)判断
以上の検討結果から、イ号物件の構成bは、本件考案の構成要件Bと均等ではなく、本件考案の構成要件Bを充足しない。

6.むすび
以上のとおりであるから、イ号物件は、本件請求項1に係る考案の技術的範囲に属しない。
よって、結論のとおり判定する。
別掲

















判定日 2001-10-18 
出願番号 実願平5-24704 
審決分類 U 1 2・ 1- ZB (B65H)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 菅野 あつ子  
特許庁審判長 村山 隆
特許庁審判官 鈴木 寛治
白樫 泰子
登録日 1997-12-12 
登録番号 実用新案登録第2566004号(U2566004) 
考案の名称 字消し具  
代理人 對崎 俊一  

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