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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1050168
審判番号 不服2001-1865  
総通号数 25 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2002-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-02-13 
確定日 2001-11-26 
事件の表示 平成11年実用新案登録願第 5447号「バルカナイズドファイバー歯付カートン」拒絶査定に対する審判事件[平成11年11月30日出願公開、実開平11- 151]について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1.手続の経緯・本願考案
本願は、平成3年9月12日(優先権主張平成3年2月18日)に出願された実願平3-81640号の一部を平成11年7月21日に新たな実用新案登録出願としたものであって、その請求項1に係る考案は、明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。
「【請求項1】 一枚の板紙により底板、前面板、背面板及び妻板とからなる紙箱本体と、該紙箱本体の開口を覆う蓋体とを一体に形成してなるカートンに、カートンとは別体のバルカナイズドファイバーまたはその加工品からなる切歯を取り付けたものにおいて、前記切歯には中央部に形成した二等辺三角形状の歯と、この歯の両側に形成され外向きに開いた錐刃を設けたことを特徴とするバルカナイズドファイバー歯付カートン。」

2.引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された実願昭54-101382号(実開昭56-20786号)のマイクロフィルム(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(イ)「ラップフィルム容器(1)に装着されたフィルム切断用鋸刃(2)において、紙または合成紙を材質として、刃山(5)の角度(a)が直角を含む鋭角を成し、刃山(5)の高さ(h)が3mm以上、刃のピッチ(p)が2?20mmに形成されていることを特徴とするラップフィルム切断用鋸刃」(実用新案登録請求の範囲)
(ロ)「本考案者らは従来の金属製鋸刃2を紙に代え先ず安全性を確保したのちこれに種々のアイデアを加えフィルム4切断の実験をくりかえした結果、刃山5の角度aを好ましくは直角から30度、刃山5の高さhを3mm以上に形成すると、ポリエチレンフィルムが伸びによって刃山5の底6に密着するまでに完全に各刃山5がフィルムに傷を与えることを知った。」(第4頁第20行?第5頁第7行)
(ハ)「鋸刃2を別に作って容器1のフィルムを切断し易い位置に取付けてもよいが容器1の一部である取出口覆い2(3の誤記と認められる)の端末部を鋸刃2に形成して容器1に装着したものとしてもよく、鋸刃の取付位置には制限はない。」(第6頁第7?11行)
(ニ)「鋸刃2の部分は、単に厚紙で作成してもよいが、樹脂ラテックス・パラフィン等を刃先となる部分に塗布しておくと、紙質が硬化して刃先の折曲りを防ぐことができる。」(第6頁第12?15行)
同じく引用された「化学大辞典7」縮刷版(化学大辞典編集委員会編、共立出版株式会社、昭和43年1月10日縮刷版第4冊発行、第193頁、以下、「引用例2」という。)には、バルカナイズドファイバーについて以下のように記載されている。
(ホ)「塩化亜鉛で処理してつくった硬質耐水性の紙または板紙、硬化繊維バルカナイズド紙(略)、バルカナイズド板紙(略)などともいう。……(略)……用途 電気絶縁に使い、また歯車、スーツケースその他の容器に加工する。」(第193頁右欄第28?42行)
さらに、引用された特開平1-308752号公報(以下、「引用例3」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(へ)「長方形の前面、底面、後面及び正方形の両側面からなる横長の箱の後面端部から開閉自在に上蓋を延出し、該上蓋端縁部から前フラップを延出してなる巻回フィルムの紙箱において、巻出した巻回フィルムを切断するための切断刃は少なくとも開封前の不使用状態において露出してはおらず、且つ切断刃が鋸歯状であって紙箱の端縁部において上記鋸歯の刃山が外方に傾斜して設けられていることを特徴とする巻回フィルムの紙箱。」(特許請求の範囲)
(ト)「第6図は本発明に用いる切断刃の概念を示す平面図である。通常の刃先にあってはa部のように中央部に位置して上を向いているが、b部のように刃山を外側に向かって傾斜させると、フィルムに鋭く突き刺さり、より優れた切断効果を有する。」(第2頁右下欄第16?20行)

3.対比・判断
本願請求項1に係る考案(以下、「本願考案」という。)と引用例1に記載された考案(以下、「引用考案」という。)を対比する。
引用例1には、「ラップフィルム容器」について具体的に記載されていないが、ラップフィルム容器を、本願考案でいうような、「一枚の板紙により底板、前面板、背面板及び妻板とからなる紙箱本体と、該紙箱本体の開口を覆う蓋体とを一体に形成したカートン」で構成することは、本願出願前きわめて一般に行われていることである。そして、引用考案の「切断用鋸刃」は、本願考案の「切歯」に相当し、上記(ハ)の記載は、切断用鋸刃を容器を構成するカートンとは別体に形成してカートンに取り付けることを示しているものということができる。
してみると、本願考案と引用考案とは従来周知の容器を構成するカートンに、カートンとは別体の切歯を取付けた切歯付きカートンである点で一致しており、以下の点で相違しているものと認められる。
相違点1.本願考案の「切歯」が「バルカナイズドファイバーまたはその加工品からなる」のに対し、引用考案の「切断用鋸刃」は「紙または合成紙を材質とし」とされている点。
相違点2.本願考案は、「切歯」に「中央部に形成した二等辺三角形状の歯と、この歯の両側に形成された外向きに開いた錐刃を設け」ているのに対し、引用考案は、切断用鋸刃の形状については特定しておらず、引用例1の第2図には中央部及びその両側部の刃が同じ二等辺三角形状のものが示されている点。
上記の相違点について検討する。
(1)相違点1について
引用例1の記載(ロ)及び(ニ)によれば、引用考案の「切断用鋸刃」の材質である「紙または合成紙」は、金属の代替物であり、硬化処理により一般の紙より硬いものとして折れ曲がりを防ぐことができることが示唆されているということができる。
他方、引用例2の記載(ホ)によれば、バルカナイズドファイバーは「紙または合成紙を材質とし」ているものということができ、また、歯車としての用途が示されているように金属材料に置き換えて使用されることも本願出願前周知であったことが示唆されている。
したがって、引用例1及び引用例2の上記の記載に接した当業者であれば、引用考案の従来の金属製鋸刃に代える「紙または合成紙を材質とし」た鋸刃の材料として、本願出願前周知のバルカナイズドファイバーを採用することはきわめて容易に想到することができるものと認められる。
また、そのことによって奏せられる効果も引用例1及び引用例2の記載から当業者がきわめて容易に予測しうる範囲を超えるものとはいえない。
なお、請求人は、審判請求書において、「特許庁が平成10年審判第3691号についてした審決に対して東京高等裁判所に審決取消訴訟(平成12年(行ケ)第188号)を提起しており、この裁判で問題になっている進歩性の判断は、本件考案の進歩性の判断に重要な影響があるので審決取消訴訟が終了するまで審決を待ってほしい」旨の主張をしているが、上記審決取消訴訟は平成13年3月21日に判決が言い渡され、相違点1に対しての上記判断は、すでに判決の支持するところである。
(2)相違点2について
本願考案の「錐刃」は本願明細書の【0011】の記載からみて、通常の二等辺三角形状の切歯と区別して頂角が外向きに開いた形状の切歯をいうものと認められ、本願考案は、中央部の二等辺三角形状の歯の両側部の歯の形状を「外向きに開いた錐刃」となすことによって、ラップフィルムを所定の位置で確実にカットすることができるとしているが、ラップフィルムを所定の位置で確実にカットし、切断性を向上させることは、ラップフィルムの容器に取り付けられる切歯に当然要求される周知の課題であり、引用考案においても、記載(ロ)に示されるように、鋸刃の形状を工夫することでフィルムの切断性の向上を図ることが行われている。
そして、引用例3には、記載(ヘ)、記載(ト)によれば、引用考案のラップフィルム容器に相当する巻回フィルムの紙箱に設ける切断刃を、紙箱の端縁部において通常は二等辺三角形状(第6図a部)の鋸刃の刃山が外側に傾斜して(第6図b部)設けられるようにすることによって、より優れた切断効果を有することが示されている。
したがって、引用考案のような、通常の二等辺三角形状の鋸刃を有する切歯の端縁部を、フィルムの切断性の向上を意図して、引用例3に記載されたように、刃山が外側に傾斜して設ける、すなわち外向きに開く切歯とすることは当業者がきわめて容易に想到しうる事項と認められる。そして、その場合、中央部の切歯は、通常の二等辺三角形状のものとなることも明らかである。

4.まとめ
以上のとおりであるから、本願考案は、引用例1乃至3に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2001-09-11 
結審通知日 2001-09-18 
審決日 2001-10-01 
出願番号 実願平11-5447 
審決分類 U 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 渡邊 豊英一ノ瀬 覚上尾 敬彦  
特許庁審判長 吉国 信雄
特許庁審判官 鈴木 美知子
杉原 進
考案の名称 バルカナイズドファイバー歯付カートン  
代理人 朝倉 正幸  
代理人 朝倉 正幸  

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