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審決分類 審判 全部申し立て   E05C
審判 全部申し立て   E05C
管理番号 1050178
異議申立番号 異議2001-71801  
総通号数 25 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2002-01-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-06-18 
確定日 2001-11-17 
異議申立件数
事件の表示 登録第2606662号「ガードアーム錠」の請求項1ないし4に係る実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 登録第2606662号の請求項1ないし4に係る実用新案登録を維持する。
理由 1.手続の経緯
本件実用新案登録第2606662号の請求項1ないし4に係る考案は、平成5年11月16日に実用新案登録出願され、平成12年10月6日のその考案についての実用新案権の設定登録がなされ、その後、請求項1ないし4に係る考案の実用新案登録について株式会社ゴールより実用新案登録異議の申立てがなされたものである。

2.実用新案登録異議の申立ての理由の概要
実用新案登録異議申立人株式会社ゴールは、甲第1号証(実願平1-3101号(実開平2-95774号)のマイクロフィルム)、甲第2号証(実開平1-79759号公報)、甲第3号証(実開平4-130683号公報)を提出し、請求項1に係る考案は、甲第1号証に記載の考案と実質的に同一、もしくは甲第1及び2号証に記載の考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第1項第3号もしくは同2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであり、また、請求項2に係る考案は、甲第1ないし3号証に記載の考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであり、さらに、請求項3及び4に係る考案は、甲第1及び2に記載の考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであって、請求項1ないし4に係る考案の実用新案登録は取り消されるべきものであると主張している。

3.本件考案
本件実用新案登録第2606662号の請求項1ないし4に係る考案(以下、「本件考案1ないし4」という。)は、明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1ないし4に記載された次のとおりのものである。

「【請求項1】 ガードアームの一端に後方に向け固設した回転軸を、扉に固定した錠箱に進退可能かつ回動可能に保持させると共に、ガードアームの他端に前方に向け突設した係合突部を扉枠に固定したストライクの長孔に選択的に係合できるようにし、又、錠箱内における回転軸に回動可能に装着された受動部材と扉の室内側に設けられたサムターンの操作によりカムを介し錠箱内で横方向に摺動変位する横動部材との間を、錠箱内に揺動可能に設けた揺動部材で連係させることにより、横動部材の横方向の変位を受動部材の横方向及び傾動方向の変位に変換できるようにし、一方、受動部材の後方に連結部材を一体に形成し、他方、この連結部材と一端部を重合させ、中央部を回動自在に支承された制御部材をばねで回転軸の進出方向に付勢させて設けると共に、連結部材及び制御部材の一端部の何れか一方に連結ピンを植設し、他方に長孔を開口させて、これら連結ピン及び長孔を摺動可能に係合させることにより制御部材及び受動部材を相互に連結し、制御部材の他端部は、サムターンに連係させて設けた停止部材にガードアームの非作用時選択的に係合して非作用状態に停止できるように係合させたことを特徴とするガードアーム錠。
【請求項2】 ガードアームの一端に後方に向け固設した回転軸を、扉に固定した錠箱に進退可能かつ回動可能に保持させると共に、ガードアームの他端に前方に向け突設した係合突部を扉枠に固定したストライクの長孔に選択的に係合できるようにし、又、錠箱内における回転軸に回動可能に装着された受動部材と扉の室内側に設けられたサムターンの操作によりカムを介し錠箱内で横方向に摺動変位する横動部材との間を、錠箱内に揺動可能に設けた揺動部材で連係させることにより、横動部材の横方向の変位を受動部材の横方向及び傾動方向の変位に変換できるようにし、一方、受動部材の後方に連結部材を一体に形成し、他方、この連結部材と一端部を重合させ、中央部を回動自在に支承された制御部材をばねで回転軸の進出方向に付勢させて設けると共に、連結部材及び制御部材の一端部の何れか一方に連結ピンを植設し、他方に長孔を開口させて、これら連結ピン及び長孔を摺動可能に係合させることにより制御部材及び受動部材を相互に連結し、制御部材の他端部は、サムターンに連係させて設けた停止部材にガードアームの非作用時選択的に係合して非作用状態に停止できるように係合させ、更に、サムターン又はキーの操作によりデッドカムを介して錠箱内で横方向に案内されるデッドボルトは、錠箱からの突出時その先端部がガードアームの縦方向の中間部分に設けた貫通孔を通じて選択的に貫通できるように配設し、デッドボルト先端部は前記ストライクの長孔に係入するようにしたことを特徴とするガードアーム錠。
【請求項3】 上記ガードアームの回転軸の受動部材との係合部分に、回転軸線に平行な平面部を形成し、受動部材に包持され、この平面部と面接合可能な接合部を有する調整部材を回転軸にばねで弾接させると共に、回転軸の平面部と調整部材の接合部が面接合したとき、ガードアームが錠箱のフロント板と平行になるようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載のガードアーム錠。
【請求項4】 上記揺動部材を横動部材と受動部材との間に配設し、中央部を錠箱の側板に揺動可能に支承すると共に、一端を上記横動部材に係合させ、また、この揺動部材の他端に駆動ピンを植設し、この駆動ピンを、錠箱の側板と平行な板状体で、上記受動部材に一体に結合されると共に、カム孔を開口させた突片のカム孔に係合させるようにし、このカム孔を、駆動ピンに後方から係合可能に臨む傾斜端縁、及び、この傾斜端縁と駆動ピンを挟むようにして斜交する作動端縁を含む略3角形に形成したことを特徴とする請求項1、2及び3の何れかに記載のガードアーム錠。」

4.甲各号証に記載の考案
甲第1号証は、扉の開放角度を規制できる用心錠に関するものであり、その実用新案登録請求の範囲、明細書11頁7ないし14行、及び同19頁9行ないし22頁12行の記載、並びに第9ないし12図の記載からみて、「用心杆の一端に後方に向け固設した軸体が用心杆テコ本体に固定されており、用心杆テコ本体の進退によって、軸体を扉に固定した錠ケースに進退可能に保持させると共に、用心杆の他端に前方に向け突設した係止部を枠に固定した受部材の受孔に選択的に係合できるようにし、サムターンやシリンダー等の操作部材の操作によるデッドハブの一方の羽根部の回転変位を用心杆テコ本体の横方向及び傾動方向の変位に変換できるようにした用心錠」の考案が記載されていると認められる。

甲第2号証には、その実用新案登録請求の範囲の記載、及び第1、3ないし5図の記載からみて、「内側操作部材5の回転により、テールピース8と係脱自在に係合される内側回転体30と、テールピース8と連結したデッド兼用ラッチボルト7と、一端をデッド兼用ラッチボルト7に、他端をデッドハブ13に連結されたリンク機構60を有する電気錠において、デッドハブ13の回動により、デッドボルト12に設けた長孔66内を移動する連結ピン67によって、デッドボルト12を進退させること」が記載されていると認められる(なお、後段の構成は、甲第2号証の公報には明記されていないが、異議申立人の主張を考慮して、図面及び甲第2号証に係る出願である実願昭62-174337号のマイクロフィルムを参照して認定した。)。

甲第3号証には、その実用新案登録請求の範囲の記載、及び図1、2の記載からみて、「デッドカム4を介して錠箱3内で横方向に案内されるデッドボルト1を、錠箱3からの突出時にその先端部がガードアーム2に設けた貫通孔を通じて選択的に貫通できるように配設すること」が記載されていると認められる。

5.対比・判断
(1)本件考案1について
本件考案1と甲第1号証に記載の考案とを比較すると、甲第1号証に記載の考案の用心杆の一端に後方に向け固設した軸体は、「前記用心杆テコ本体(17)の軸穴(17a)の一部にはばね嵌装孔(46)が形成され、このばね嵌装孔(46)にクリックバネ(47)が嵌挿されており、このクリックバネ(47)により開扉状態における用心杆(20)を、閉扉時の姿勢(垂直状態)に復帰させるようにしてある。」(明細書21頁4ないし9行)の記載及び用心錠使用形態からみて、用心杆テコ本体に回動可能に装着されていると認められ、また、甲第1号証に記載の考案の「用心杆」、「軸体」、「用心杆テコ本体」、「錠ケース」、「係止部」、「枠」、「受部材」、「受孔」、「サムターンやシリンダー等の操作部材」、「デッドハブの一方の羽根部」及び「用心錠」が、それぞれ本件考案1の「ガードアーム」、「回転軸」、「受動部材」、「錠箱」、「係合突部」、「扉枠」、「ストライク」、「長孔」、「サムターン」、「カム」及び「ガードアーム錠」に相当するから、両者は、「ガードアームの一端に後方に向け固設した回転軸を、扉に固定した錠箱に進退可能かつ回動可能に保持させると共に、ガードアームの他端に前方に向け突設した係合突部を扉枠に固定したストライクの長孔に選択的に係合できるようにし、又、扉の室内側に設けられたサムターンの操作によりカムを介して、錠箱内における回転軸に回動可能に装着された受動部材を横方向及び傾動方向に変位させるガードアーム錠。」の点で一致し、次の点で相違する。

相違点1
本件考案1では、受動部材と、サムターンの操作によりカムを介し錠箱内で横方向に摺動変位する横動部材との間を、錠箱内に揺動可能に設けた揺動部材で連係させるのに対し、甲第1号証に記載の考案では、そのような構成を有していない点

相違点2
本件考案1では、受動部材の後方に連結部材を一体に形成し、この連結部材と一端部を重合させ、中央部を回動自在に支承された制御部材をばねで回転軸の進出方向に付勢させて設けると共に、連結部材及び制御部材の一端部の何れか一方に連結ピンを植設し、他方に長孔を開口させて、これら連結ピン及び長孔を摺動可能に係合させることにより制御部材及び受動部材を相互に連結し、制御部材の他端部は、サムターンに連係させて設けた停止部材にガードアームの非作用時選択的に係合して非作用状態に停止できるように係合させるのに対し、甲第1号証に記載の考案では、そのような構成を有していない点

そこで、相違点1について検討すると、甲第2号証には、一端をデッド兼用ラッチボルト7に、他端をデッドハブ13に連結されたリンク機構60を設けるとともに、デッドハブ13の回動により、デッドボルト12に設けた長孔66内を移動する連結ピン67を設けることにより、デッド兼用ラッチボルト7の横方向の変位をデッドボルト12の横方向の変位に変換することが記載されており、甲第2号証に記載の「デッド兼用ラッチボルト7」、「リンク機構60」及び「デッドボルト12」は、それぞれ本件考案1の「横動部材」、「揺動部材」及び「受動部材」に一応対応しているといえるが、甲第2号証に記載の構成は、横動部材の横方向の変位を受動部材の横方向の変位に変換するものであり、受動部材と横動部材との間を揺動部材で連係させることにより、横動部材の横方向の変位を受動部材の横方向及び傾動方向の変位に変換することは甲第2号証には記載も示唆もされていない。
次に、相違点2について検討すると、甲第2号証には、デッドハブ13の回動により、デッドボルト12に設けた長孔66内を移動する連結ピン67によって、デッドボルト12を進退させることが記載されており、甲第2号証に記載の「デッドハブ13」及び「デッドボルト12」は、それぞれ本件考案1の「制御部材」及び「連結部材」に一応対応しているといえるが、甲第2号証には、制御部材をばねで回転軸の進出方向に付勢させて設けること、及び制御部材の他端部を、サムターンに連係させて設けた停止部材にガードアームの非作用時選択的に係合して非作用状態に停止できるように係合させることは記載も示唆もされていない。
そして、本件考案1は、相違点1及び2に係る構成により、明細書に記載された、「ガードアーム及びその回転軸と一体の受動部材と、ガードアーム装置作動時これを前方に押出す制御部材とを、長孔とこれに摺動可能に係合する連結ピンとの係合により、相互の揺動は可能であるが、前後方向には相互に拘束される態様で連結したので、ガードアーム装置作動時、扉の隙間からサムターンを操作してガードアーム装置を不正解除しようとしても、制御部材の後方への移動に受動部材及びこれと一体のガードアームが従動する結果となり、錠箱のフロント板に対し傾斜した状態のガードアームがフロント板に引っ掛かることになるので、サムターンをそれ以上回動させることができず、結局ガードアーム装置の不正解除を完全に防止することができる」(明細書段落番号【0067】)という甲第1及び2号証に記載の考案からは期待できない顕著な効果を奏するものである。
したがって、本件考案1は、甲第1号証に記載された考案とは認められず、また、甲第1及び2号証に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとも認められない。
なお、相違点1及び2に係る本件考案1の構成は、甲第3号証にも記載も示唆もされておらず、本件考案1は、甲第1ないし3号証に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとも認められない。

(2)本件考案2について
本件考案2は、本件考案1と比較すると引用形式では記載されていないが、本件考案1のガードアーム錠に、「サムターン又はキーの操作によりデッドカムを介して錠箱内で横方向に案内されるデッドボルトは、錠箱からの突出時その先端部がガードアームの縦方向の中間部分に設けた貫通孔を通じて選択的に貫通できるように配設し、デッドボルト先端部は前記ストライクの長孔に係入するようにした」という構成を追加した考案であり、上記本件考案1についての判断と同様の理由により、甲第1ないし3号証に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるとは認められない。

(3)本件考案3及び4について
本件考案3及び4は、本件考案1又は2を更に限定したものであるから、上記本件考案1又は2についての判断と同様の理由により、甲第1ないし3号証に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるとは認められない。

6.むすび
以上のとおりであるから、実用新案登録異議の申立ての理由によっては本件考案1ないし4についての実用新案登録を取り消すことはできない。
また、他に本件考案1ないし4についての実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件考案1ないし4についての実用新案登録は拒絶の査定をしなければならない実用新案登録出願に対してされたものと認めない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第7項の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第3条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
異議決定日 2001-10-25 
出願番号 実願平5-65942 
審決分類 U 1 651・ 113- Y (E05C)
U 1 651・ 121- Y (E05C)
最終処分 維持    
前審関与審査官 向後 晋一江塚 政弘  
特許庁審判長 安藤 勝治
特許庁審判官 鈴木 憲子
中田 誠
登録日 2000-10-06 
登録番号 実用新案登録第2606662号(U2606662) 
権利者 美和ロック株式会社
東京都港区芝3丁目1番12号
考案の名称 ガードアーム錠  
代理人 飯田 岳雄  

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