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審決分類 |
審判 判定 同一 属さない(申立て成立) B43M |
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管理番号 | 1050181 |
判定請求番号 | 判定2000-60170 |
総通号数 | 25 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案判定公報 |
発行日 | 2002-01-25 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2000-12-22 |
確定日 | 2001-11-14 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第3068559号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | (イ)号図面及びその説明書に示す「両面硯」は、登録第3068559号実用新案の技術的範囲に属しない。 |
理由 |
1.請求の趣旨 本件判定請求の趣旨は、(イ)号図面並びにその明細書に記載する両面硯は、登録実用新案第3068559号考案の技術的範囲に属しない、との判定を求めるものである。 2.本件登録実用新案 本件登録実用新案は、その明細書および図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲1ないし3に記載されたとおりのものであり、それを構成要件に分説すると、次のとおりである。 【請求項1】 A 表面側を墨すり部と墨溜まり部を備えた硯面に形成すると共に裏面側を墨池部と墨払いを備えた墨池面に形成した合成樹脂製の両面硯に於いて、 B 該墨すり部を鉱物その他の硬質の微細物を混入した合成樹脂のプレートで構成し、該両面硯の残部を該硬質の微細物の混入のない軽量合成樹脂で形成したこと C を特徴とする両面硯。 【請求項2】 D 上記墨池面に筆の穂先が載る程度の奥行き長さの筆ならし部を設け、 E 上記墨池部に衝立状の墨払い部を設けたこと C’を特徴とする請求項1に記載の両面硯。 【請求項3】 F 上記墨池面の周縁の対向部に夫々1対ずつの滑り止め突起を設け、 G 該周縁に墨池部の墨汁を排除するための切欠溝を2箇所に対称的に形成したこと C”を特徴とする請求項1または2に記載の両面硯。 3.イ号物件 これに対して、(イ)号図面並びにその説明書に記載された両面硯の構成は、上記本件登録実用新案の構成要件に対応させて、分説すると、次のとおりである。 a 表面側を墨すり部と墨溜まり部を備えた硯面に形成すると共に裏面側を墨池部と墨払いを備えた墨池面に形成した両面硯に於いて、 b 鉱物その他の硬質の微細物など他物の混入の無い軽量の合成樹脂のみを以て製し、 d 墨池面に筆の穂先が載る程度の奥行き長さの筆ならし部を設けると共に e 墨池部に衝立状の墨払い部を設け、 f 硯面及び墨池面の夫々の対向部に各1対ずつの滑り止め突起を突設し g 且つ硯面の墨溜り部及び墨池面の墨池部の各周縁の1個所に墨汁を排除するための切欠溝を夫々設けた c 両面硯。 4.対比・判断 (1)(イ)号物件の構成が本件登録実用新案の請求項1に係る考案の各構成要件を充足するか否かについて検討する。 (a)構成要件Aについて (イ)号物件は、表面側を墨すり部と墨溜まり部を備えた硯面に形成すると共に裏面側を墨池部と墨払いを備えた墨池面に形成した合成樹脂製の両面硯であるから、構成要件Aを充足する。 (b)構成要件Bについて (イ)号物件は、鉱物その他の硬質の微細物など他物の混入の無い軽量の合成樹脂のみを以て製しているから、構成要件Bを充足しない。 (c)構成要件Cについて (イ)号物件は、両面硯であるから、構成要件Cを充足する。 (2)次に、上記相違点(構成要件B)に係る部分が均等であるか否かについて検討する。 本件明細書(登録実用新案第3068559号公報)には次の記載がある。 「【従来の技術】従来、合成樹脂製の両面硯として、熱硬化性樹脂にガーネット粉末などの硬質の鉱物の粒子や、ガラス繊維の短繊維などを混入して成型したものが知られている(実公平3ー46959号公報)。この種の両面硯は、表面側が墨すり部と墨溜まり部を備えた硯面に形成され、その裏面側が墨池部と墨払い部を備えた墨池面に形成され、書道授業の目的に応じてその使用面が選択される。」(段落【0002】)、「【考案が解決しようとする課題】従来の合成樹脂製の両面硯は、その全体が前記硬質の粒子等を混合した熱硬化性樹脂で形成されており、こうした硬質の粒子は比重がかなり大きいので、両面硯の重量が大きくなり、これを書道箱などに詰めて児童が通学するときを考慮するとより一層軽量化することが望ましい。?」(段落【0003】)、「【課題を解決するための手段】本考案では、表面側を墨すり部と墨溜まり部を備えた硯面に形成すると共に裏面側を墨池部と墨払い部を備えた墨池面に形成した合成樹脂製の両面硯に於いて、該墨すり部を鉱物その他の硬質の微細物を混入した合成樹脂のプレートで構成し、該両面硯の残部を該硬質の微細物の混入のない軽量合成樹脂で形成することにより、軽量な両面硯を得るようにした。?」(段落【0005】)、「【考案の効果】以上のように本考案によるときは、合成樹脂製の両面硯の墨すり部を鉱物などの硬質の微細物を混入した合成樹脂のプレートで構成し、残部を該硬質の微細物の混入のない軽量な合成樹脂で形成したので、両面硯の重量が大幅に軽量になり、児童の通学時などの負担が少なくなり?」(段落【0011】)。 上記記載によれば、墨すり部を鉱物その他の硬質の微細物を混入した合成樹脂のプレートで構成し、該両面硯の残部を該硬質の微細物の混入のない軽量合成樹脂で形成したこと(構成要件B)により、上記課題を解決し、上記の効果を奏するものであるから、構成要件Bは、本件登録実用新案の請求項1に係る考案の本質的な部分であって、(イ)号物件の構成要件b「鉱物その他の硬質の微細物など他物の混入の無い軽量の合成樹脂のみを以て製し」とは目的、構成および効果が相違する。 そうすると、上記相違点は、本件登録実用新案の請求項1に係る考案の本質的な部分に係る相違点であるといえる。 したがって、均等を判断するための他の要件を判断するまでもなく(イ)号物件は、本件登録実用新案の請求項1に係る考案と均等なものとすることはできない。 また、本件登録実用新案の請求項2ないし3に係る考案は、本件登録実用新案の請求項1を引用したものであるから、上記本件登録実用新案の請求項1に係る考案での判断と同様の理由で、(イ)号物件は、本件登録実用新案の請求項2ないし3に係る考案の技術的範囲に属するとすることはできない。 なお、この判定請求に対して、平成13年2月15日付けで、被請求人に、判定請求書を送達すると共に、期間を指定して答弁書を提出する機会を与えたが、被請求人からは何ら応答はなかった。 6.むすび 以上のとおりであるから、(イ)号物件は、少なくとも本件登録実用新案の前記分説した構成要件Bを充足するものではないから、本件考案の技術的範囲に属しないものである。 よって、結論のとおり判定する。 |
別掲 |
(イ)号説明書 1.構成 表面側を墨すり部と墨溜まり部を備えた硯面に形成すると共に裏面側を墨池部と墨払いを備えた墨池面に形成した鉱物その他の硬質の微細物など他物の混入の無い軽量の合成樹脂のみを以て製し、墨池面に筆の穂先が載る程度の奥行き長さの筆ならし部を設けると共に墨池部に衝立状の墨払い部を設け、硯面及び墨池面の夫々の対向部に各1対ずつの滑り止め突起を突設し且つ硯面の墨溜り部及び墨池面の墨池部の各周縁の1個所に墨汁を排除するための切欠溝を夫々設けた両面硯。 2.図面の説明 【図1】全体の表面側の斜視図。 【図2】全体の裏面側の斜視図。 【図3】図1のA-A線に沿う断面図。 【符号の説明】 1 両面硯 7 墨払い部 2 硯面 10 筆ならし部 3 墨池面 12 周縁 4 墨すり部 13 突起 5 墨溜まり部 14 切欠部 6 墨池部 |
判定日 | 2001-11-02 |
出願番号 | 実願平11-8209 |
審決分類 |
U
1
2・
1-
ZA
(B43M)
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最終処分 | 成立 |
特許庁審判長 |
村山 隆 |
特許庁審判官 |
藤井 靖子 鈴木 寛治 |
登録日 | 2000-02-16 |
登録番号 | 実用新案登録第3068559号(U3068559) |
考案の名称 | 両面硯 |
代理人 | 杉山 泰三 |