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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て成立) F16L
管理番号 1050182
判定請求番号 判定2001-60073  
総通号数 25 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案判定公報 
発行日 2002-01-25 
種別 判定 
判定請求日 2001-06-27 
確定日 2001-11-16 
事件の表示 上記当事者間の登録第2107185号の判定請求事件について、次のとおり判定する。   
結論 (イ)号図面及びその説明書に示す「樹脂製管継手」は、登録第2107185号実用新案の技術的範囲に属しない。
理由 1.請求の趣旨
本件判定の請求の趣旨は、イ号図面およびその説明書に示す「樹脂製管継手」(以下、「イ号物件」という。)は、実用新案登録第2107185号の技術的範囲に属しない、との判定を求めるものである。

2.本件登録実用新案
本件登録実用新案は、明細書および図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「A:管材の一端部から突出する状態に管材の一端部内に圧入して管材の一端部を拡径させる流体の移動を妨げないインナリングと、
B:前記インナリングを圧入した管材の挿し込み部を挿入するための筒状の受口を一端部に形成した継手本体と、
C:前記管材の一端部から突出させたインナリングの内端シ-ル部を前記受口の奥部に当接させるために受口の奥部に該受口の軸線と交差状に形成した一次シール部と、
D:前記継手本体の一端部に螺合し、その継手本体の一端部への螺進により前記インナリングを管材の外側から押圧して前記インナリングの内端シール部と前記受口の一次シール部に密封力を与える押輪と
E:を具備したことを特徴とする樹脂製管継手。」
〔なお、符号A?Eは便宜上付した。〕

3.イ号物件
被請求人は答弁書において、「請求人が製造販売している『樹脂製管継手』を入手して、反論したい。」と主張し、答弁の延長を求めた。当審では、被請求人の求める期限を待ったが被請求人からの反論はなかった。
したがって、請求人が提出した「イ号図面およびその説明書」に示すものをイ号と特定する。
イ号図面およびその説明書の記載によれば、イ号物件の構成は以下のとおりのものである。
「樹脂製管継手であって、円筒状の継手ボデイ16と、継手ボデイ16に対しチューブ20を保持するナット部材22と、チューブ20が挿入されて、継手ボデイ16の内部で保持されるインサートブッシュ26とからなり、
a:インサートブッシュ26は、
軸線に沿って貫通孔39が形成され、且つ断面山形状を呈しチューブ20の一端部側開口部内に挿入される挿入部36と、チューブ20の一端部から突出する環状の膨出部38とから一体に成形され、前記挿入部36と膨出部38との境界部分には、チューブ20の端縁部が当接する環状段部40が形成され、また、前記膨出部38には、継手ボデイ16の環状突部34の形状に対応する環状凹部42が設けられ、前記膨出部38の第1面44には、所定間隔離間する3条の第1突起部(環状突起部)46a?46cが環状に形成され、前記第1突起部46a?46cは、断面円弧状を呈し継手ボデイ16の円筒面30に線状に接触するように形成されており、
b:継手ボデイ16は、
開口部24と、雄ねじ部15と、一端部から除々に縮径するテーパ面28と、前記テーパ面28に連続する円筒面30と、前記円筒面30に連続し前記インサートブッシュ26の環状突起部46a?46cを具えた膨出部38の一部が臨む環状溝32と、前記環状溝32と貫通孔12との間に形成されチューブ20側に向かって所定長だけ突出する環状突部34とから構成されており、
c:ナット部材22は、
本体70とチューブ20の一端部を挿入するためのチューブ導入部72と、前記雄ねじ部15に螺合する雌ねじ部18と、半径方向外方に撓曲自在に形成されたチューブ押圧部74とを具えており、
d:継手ボデイ16、ナット部材22およびインサートブッシュ26は比較的硬度の高いPFA(テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテルコポリマー)からなる樹脂製材料によって形成されている。」
〔なお、符号a?dは便宜上付した。〕
さらに、イ号物件は、判定請求書の記載によれば、以下の構成を具えている。
・インサートブッシュ26の膨出部38には、継手ボデイ16の環状溝32を画成する第2面47に対し非接触状態となる第3面48が形成され、膨出部38の第3面48と継手ボデイ16の第2面47との間で第1クリアランス50が形成される。(判定請求書5頁2?5行)
・前記膨出部38の環状凹部42は、第3面48から所定角度傾斜し、継手ボデイ16の環状突部34の傾斜する第4面52に所定距離離間して対面する第5面54と、第5面54から延在し、環状突部34の頂部との間で第2クリアランス56を形成する第6面58と、第6面58に直交するように延在し、且つ継手ボデイ16の環状突部34の軸線方向に延在する第7面60に対面する第8面62とから構成される。(判定請求書5頁20?25行)
・第7面60と第8面62との間には第3クリアランス66が形成され、且つ環状突部64と第7面60が湾曲して終端する隅角部67の端部との間には第4クリアランス68が形成される。継手ボデイ16に設けられた環状突部34の傾斜する第4面52には、第1クリアランス50と第2クリアランス56とを連通させるための溝部65が形成される。(判定請求書5頁26行?6頁2行)
そして、チューブ20の一端部の孔部内にインサートブッシュ26の挿入部36を嵌挿し、チューブ20の一端部に環状段部40の端面が当接するまでインサートブッシュ26を押入する。この結果、チューブ20の一端部が挿入部36の形状に沿って拡径し、チューブ20の内周面と挿入部36の外周面とが液密に保持される。続いて、インサートブッシュ26が圧入されたチューブ20の一端部を継手ボデイ16の開口部24に沿って挿入する。次に、予め、チューブ20に遊嵌されているナット部材22の雌ねじ部18を継手ボデイ16の雄ねじ部15に沿って螺回させ、ナット部材22を締め付けることにより、チューブ20が継手ボデイ16の開口部24内に液密に保持される。すなわち、ナット部材22を締め付けることにより、チューブ押圧部74を介してチューブ20と一体的にインサートブッシュ26が継手ボデイ16の開口部24の奥側に向かって押圧される。このため、ナット部材22の端面70aが継手ボデイ16の拡径部13の端面13aに当接する。この場合、端面70aが端面13aに当接することから、インサートブッシュ26のそれ以上の進動作は阻止される。(判定請求書6頁16行?7頁2行)

4.対比・判断
本件登録実用新案とイ号物件とを対比検討する。
イ号物件の「インサートブッシュ26」(構成a)、「チューブ20」、「継手ボデイ16」(構成b)および「ナット部材22」(構成c)は、本件登録実用新案の「インナリング」(構成A)、「管材」、「継手本体」(構成BおよびC)および「押輪」(構成D)にそれぞれ対応するが、以下イ号物件の構成が本件登録実用新案の構成A?Eを充足するか否かについて検討する。
(1)構成Aについて
イ号物件のインサートブッシュ26は、チューブ20の一端部から突出する状態で挿入される挿入部36が一端に形成されたスリーブ状をなしており、貫通孔39の内周は流体の移動を妨げない径に形成されているので、本件登録実用新案の構成Aの要件を全て具備している。
したがって、イ号物件の「インサートブッシュ26」は、本件登録実用新案の構成Aを充足する。
(2)構成Bについて
イ号物件の継手ボデイ16において、貫通孔12の一端部に形成された開口部24は、インサートブッシュ26が圧入されたチューブ20の挿し込み部を挿入するためのものであるので、本件登録実用新案の構成Bの要件を全て具備している。
したがって、イ号物件の「継手ボデイ16」は、本件登録実用新案の構成Bを充足する。
(3)構成Cについて
本件登録実用新案では、管材の一端部から突出させたインナリングの内端シール部を受口の奥部に当接させるために、受口の奥部に受口の軸線と交差状に形成した一次シール部を有する、という構成を備えている。
一方、イ号物件は、受口の奥部に受口の軸線と交差状に形成した一次シール部に対応する構成を備えていない。すなわち、インサートブッシュ26の内端部は、環状突部64が継手ボデイ16の隅角部67に第4クリアランス68を介して対峙し、第8面62が継手ボデイ16の環状突部34に第3クリアランス66を介して対峙し、第6面58が継手ボデイ16の環状突部34に第2クリアランス56を介して対峙し、第3面48が継手ボデイ16の環状溝32の第2面に第1クリアランス50を介して対峙し、第5面54に対峙する継手ボデイ16の環状突部34の傾斜する第4面52には、第1クリアランス50と第2クリアランス56とを連通させるための溝部65が形成されている。そして、ナット部材22の端面70aが継手ボディ16の拡径部13の端面13aに当接し、これによって、継手ボディ16の開口部24内へのインサートブッシュ26のさらなる押入が制限されるため、インサートブッシュ26の環状突部64の先端部が継手ボデイ16の隅角部67に、インサートブッシュ26の第8面62が継手ボデイ16の環状突部34に、インサートブッシュ26の第6面58が継手ボデイ16の環状突部34に、インサートブッシュ26の第3面48が継手ボデイ16の環状溝32に、それぞれ当接することはなくシール機能は達成しない。また、インサートブッシュ26の第5面54と継手ボデイ16の環状突部34の傾斜する第4面52との間には、第1クリアランス50と第2クリアランス56とを連通させるための溝部65が存在するため、同じくシール機能は達成しない。
そうすると、イ号物件の継手ボデイ16は、「受口の軸線と交差状に形成した一次シール部」に対応する構成を備えていないので、本件登録実用新案の構成Cの要件を具備しない。
したがって、イ号物件の「継手ボデイ16」は、本件登録実用新案の構成Cを充足しない。
(4)構成Dについて
本件登録実用新案では、継手本体の一端部に螺合することにより、インナリングの内端シール部と受口の一次シール部に密封力を与える押輪を規定している。
一方、イ号物件の「ナット部材22」は、継手ボデイ16に螺合してもインサートブッシュ26の内端部と継手ボデイ16の間にシール部を形成しない。すなわち、イ号物件の「ナット部材22」は、継手ボデイ16の一端部に螺合し、他端部側へ螺進してもナット部材22の端面70aが継手ボディ16の拡径部13の端面13aに当接し、これによって、継手ボディ16の開口部24内へのインサートブッシュ26のさらなる押入が制限されるため、 環状突部64が継手ボデイ16の隅角部67に第4クリアランス68を介して対峙し、第8面62が継手ボデイ16の環状突部34に第3クリアランス66を介して対峙し、第6面58が継手ボデイ16の環状突部34に第2クリアランス56を介して対峙し、第3面48が継手ボデイ16の環状溝32の第2面に第1クリアランス50を介して対峙しており、また、第5面54に対峙する継手ボデイ16の環状突部34の傾斜する第4面52には、第1クリアランス50と第2クリアランス56とを連通させるための溝部65が形成されているので、これらの間にはシール部は形成されない。
そうすると、イ号物件のナット部材22は、継手ボデイ16とインサートブッシュ26の内端部の間に密封力を与えるものではないので、本件登録実用新案の構成Dの要件を具備しない。
したがって、イ号物件の「ナット部材22」は、本件登録実用新案の構成Dを充足しない。
(5)構成Eについて
イ号物件は、インサートブッシュ26、継手ボデイ16およびナット部材22が全て樹脂で形成されている樹脂製管継手であるので、本件登録実用新案の構成Eの要件を具備している。
したがって、イ号物件は本件登録実用新案の構成Eを充足する。
以上のとおり、イ号物件の構成aは本件登録実用新案の構成Aを充足し、イ号物件の構成bは本件登録実用新案の構成Bを充足するが構成Cを充足せず、イ号物件の構成cは本件登録実用新案の構成Dを充足せず、イ号物件の構成dは本件登録実用新案の構成Eを充足する。
(7)均等について
前記において充足しないと判断したイ号物件の構成bおよびcと本件特許発明の構成CおよびDが均等であるか否かについて検討する。
本件登録実用新案は、構成CおよびDに基づき「押輪の継手本体一端部への螺進によって、継手本体の一次シール部とインナリングの内端シール部とに強い密封力が生じ、流体漏れが確実に防止される」(段落【0009】)という特有の作用効果を奏し、さらに「インナリングを押輪と継手本体とによって軸方向に強く挟着させるので、高温流体によるインナリングの軟化にともなう応力緩和を十分に抑制することが可能であり、したがって、高温流体や温度変動が激しい流体に適用しても、インナリングや管材の挿し込み部の応力緩和に起因する継手本体の一次シール部の箇所での流体漏れを有効に防止することができるとともに、管材の引き抜き強度の低下も有効に防止し、長期間にわたって優れたシール効果を確保することができる。」(段落【0020】)という作用効果を奏するものであり、構成CおよびDは本件登録実用新案の本質的部分である。
一方、イ号物件は、前記のような押輪の継手本体一端部への螺進によって継手本体とインナリングの内端部に密封力を生じさせるものではない。
以上のとおり、本件登録実用新案の本質的部分である構成CおよびDをイ号物件の構成bおよびcが充足していない、すなわち、相違している以上、均等を判断するための他の要件を検討するまでもなく、イ号物件の構成が本件登録実用新案の構成と均等なものであるということはできない。

5.むすび
以上のとおりであるから、イ号物件は、本件登録実用新案の技術的範囲に属しない。
よって、結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2001-11-06 
出願番号 実願平4-34624 
審決分類 U 1 2・ 1- ZA (F16L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 秋月 均石川 昇治長谷川 吉雄  
特許庁審判長 吉国 信雄
特許庁審判官 山崎 豊
鈴木 美知子
登録日 1996-03-07 
登録番号 実用新案登録第2107185号(U2107185) 
考案の名称 樹脂製管継手  
代理人 鈴江 正二  
代理人 千葉 剛宏  
代理人 鈴江 孝一  
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